軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

938 クマさん、氷竜の角の話をする

「いろいろと尋ねたいことがあるが、嬢ちゃん、本当に氷竜の角を持っているのか?」

ここまで聞かれて、今更、誤魔化すのは面倒くさい。

なにより、カガリさんの言うとおりに武器が強くなるなら、隠す必要はない。

隠して弱い武器になるか、教えて強い武器になるかの二択なら、教えて強い武器になるほうを選ぶ。

「持っているよ」

わたしの言葉に信じられない顔をする。

わたしは証明するために、氷竜の角をクマボックスから出す。

「本当に氷竜の角なのか?」

ロージナさんとバッソさんが半信半疑の表情で氷竜の角に触れる。

「魔力を流しながら触れてみれば分かるじゃろう」

「魔力?」

「証明になるか分からんが、冷たくなる。じゃが、気をつけるんじゃぞ。魔力量を間違えれば、手が凍るぞ」

「「…………!?」」

触っていたロージナさんとバッソさんが、もの凄い速さで手を引っ込める。

「魔力を流さなければ大丈夫だと言っているじゃろう」

ロージナさんは恐る恐る氷竜の角に触れる。

「冷たい」

魔力を流して確認したみたいだ。

その言葉にバッソさんも手を触れて魔力を流して確かめる。

「本当に冷たい」

「嬢ちゃん、どこで手に入れたんだ?」

「えっと、氷竜と戦うことになって……」

「倒したのか?」

「倒してはいないけど……。いろいろとあって」

話しても信じてくれない内容だ。

「そんなことはお主たちには関係ないことじゃろう。ただ、目の前に氷竜の角がある。それだけを理解し、この氷竜の角を使って、刀を作ることができるかどうかじゃ」

問い詰められているわたしを、カガリさんが助けてくれる。

「カガリさん、素人考えだけど、この氷竜の角だけで武器って作れないの?」

「お主は作れると思うのか?」

「作れる?」

ゲームだと作れる。

「まあ、作れるかどうかなら作れる。それが強いかと問われたら、分からんというしかない」

「分からんって」

「材料が貴重なため、作った者がいない。研究が進んでいない」

少し前のロージナさんの言葉じゃないけど、伝説級の素材なんて手に入らない。手に入ったとしても、その材料で武器を作った者なんて世界中にどれだけいるか。

ゲームだと伝説の素材を手に入れると、すぐに武器が完成する。

鉄、銅、鋼、ミスリル、素材の扱いは違うはずだ。

オリハルコンなんて手に入れたとしても、扱い方がわからないかもしれない。

わたしだって、知らない食材で料理なんて作れない。

レシピがあれば、作れるかもしれないけど。

「それじゃ、カガリさんは氷竜の角を使った武器の作り方を知っているの?」

「氷竜の角が、ってわけじゃない。魔力を帯びた素材だからできると言ったほうがいい」

「癒着か」

「俺も聞いたことがある。魔物の素材を使った武器」

「ほう、知っておるか。流石、ドワーフの町だけのことはある」

「この町の保管室にあるが、再現が困難だと言われている」

「その理由は分かっておるのか?」

「武器に使われている素材が分からなかったからだ。それでも再現しようとした者は多かったが、同じものを作り上げることはできなかった」

「まさか、使われていた素材が氷竜の角だと言うのか?」

「正確には違う。魔力を持った素材じゃ。しかも、上質の魔物素材。そんな物では確かめようもないじゃろう」

確かに、実験で氷竜の角ほどの素材は使えない。

コストがかかる。

例えば、ダイヤモンドで失敗する前提で研究するようなものだ。

ダイヤモンドなら、掘れば出てくる可能性はあるけど、ドラゴンとかになれば、見付け出し、倒さないといけない。

どれほどの被害と人件費がかかるか。

見つけ出すために、探索費、衣食住の費用。それ掛ける人数だ。

それが一年、二年となれば。どれほどの金額になるか。

見つけ出したあとの、討伐する被害。

ドラゴンを一人で倒せるなら問題はない。

でも、大人数で倒すとなったら、どれほどの損害が出るか、想像もできない。

そんなに苦労して手に入れた物を研究には使えない。

普通に考えて宝物庫行きだ。

クラーケンの魔石を国王に譲るときにも、簡単に手に入らないと言っていた。

それだけ、強い魔物は存在しないし、見つけるのも困難。倒すのは大変だと言うことだ。

なのに、そんな魔物に何度も出会っているわたしって。

先ほどのカガリさんに面倒ごとに巻き込まれるから強い武器を持ったほうがいいって言われたけど、正しいかもしれない。

「つまり、氷竜の角で作れば、伝説の武器の再現ができると」

「かもしれぬ」

ロージナさんの言葉にカガリさんは、曖昧に答える。

「どっちなんだ」

「作るのはお主たち、職人たちじゃ。できる、できないは、お主たち次第」

確かに、そうだ。わたしにミスリルを渡されたからといって、ミスリルの武器は作れない。作るのは鍛冶職人の腕があってこそだ。

「ふふ、面白い。その喧嘩、買った!」

「別に、喧嘩を申し込んだつもりはないが」

「だが、どうやってミスリルと組み合わせるんだ? 角単体だと使えないなら、削り取って混ぜるのか?」

薬みたいに?

「いくら俺でも比率が分からないと作れない」

薬だって、分量が決まっている。

多ければ毒にもなるし、少なければ効果はない。

だから、適した配分がある。

料理を作るのだって、調味料の量は決まっている。

少なければ薄味、多ければ味は濃くなる。適量は何度も作ることによって、最適解が決まる。

使えばいいってものじゃない。

ゲームや漫画だったら、素材を手に入れたら完成するけど、ゲームでも漫画でもない現実だ。

「そこはユナに手伝ってもらえば、どうにかなるじゃろう」

「わたし?」

話はここまでになり、一度帰ることになり、ミスリルゴーレムの解体は仕事が終わる夜にもう一度来ることになった。

わたしたちは仕事に戻るバッソさんと別れ、倉庫をでる。

「次は酒じゃな」

カガリさんが嬉しそうに歩く。

「確認だが、本当に嬢ちゃんが試飲するのか?」

「酒を全部買ってもよいが、美味しい酒に金を出したい。お主だって、素材が悪い物にはお金は出したくないじゃろう」

「そうだが、やはり、子供に酒を飲ませるのは」

「ドワーフは子供のときから飲んでいるんじゃろう」

「いや、ドワーフだって、子供には飲ません」

「そうなの?」

「嬢ちゃんまで」

漫画や小説のせいで、ドワーフってお酒を飲んでいるイメージが強いけど、子供がお酒を飲んでいる描写はない気がする。

流石にドワーフとはいえ、子供にお酒を飲ませるのはダメってことだろう。

でも、ドワーフが酒飲みの初出しってなんなんだろう。

昭和時代なのかな。

「まず、確認だが、どれだけ買うつもりだ。それによって連れて行く場所が変わってくる」

確かに、一つ買うのと百買うのでは違う。

「今回はわたしからカガリさんへのお礼だから、わたしが払うから、お金のことは気にせずに、たくさん買って」

カガリさんには世話になっている。

「妾のほうがお主に助けてもらってばかりじゃと思うのだが」

この前の妖刀の件は、わたしが首を突っ込んだけど、助けた側だ。

大蛇の件もわたしが助けた側だ。

考えてみると確かにそうだ。

でも、なんとなくカガリさんにはお世話になっている気分なんだよね。

たぶん、いろいろと相談にのってもらったり、してくれているからだと思う。

「まあ、気にしないでいいよ。その代わりに、これからも相談に乗ってくれればいいから」

「よかろう。なんでも聞くがよかろう」

「嬢ちゃんたちの関係って、なんなんだ?」

ロージナさんが不思議そうにわたしたちを見ている。

本来なら、大人の知識を持った女性と、その女性に相談するわたしの構図だけど。

幼女に相談するクマの構図になっている。

傍から見たら、意味が分からないのも仕方ない。

なにより、大人が子供になったとは思わない。

「まあ、ともかく、いろいろな酒を買うなら、あそこが一番だろう」

そう言うとロージナさんは歩き出す。

そして、街の中心の近くまでやってくる。

人が多いので、わたしは人気者だ。

カガリさんとロージナさんは諦めた感じで、街の中を歩く。

「ここだ」

前には大きな建物がある。

「中に入るぞ」

建物の中に入ると、人がそれなりにいる。

ドワーフではない。わたしと同じ人だ。

しかも、格好からして、商人っぽい人たちだ。

「ここは、街で酒を造っている職人たちが卸している店だ。だから、街の酒は大概、ここに集まる」

問屋みたいなところかな。

「そして、いろいろな場所から来た商人たちが、それぞれ自分たちに合う酒を買っていく」

土地柄、人、好まれる酒も違うってことみたいだ。

食べ物でもそうだもんね。

引きこもっていたから、地方に食べに行ったことはなかったけど。都内に住んでいたわたしは、お爺ちゃんに連れていかれて、美味しい地方料理を食べたものだ。

「言い忘れたが、試飲には金がかかる」

まあ、試飲し放題にしたら、タダ酒を飲みに来る人もいるかもしれない。

まして、ドワーフなんて、たくさん飲むだろうし、そのあたりの線引きは必要なのかもしれない。

酔っ払ったら、歯止めが利かない大人を見たことがあるし。

「了解。問題はないよ」

「まあ、そのあたりはしかたないじゃろう」

「それじゃ、あっちに行くぞ」

ロージナさんが受付に向かって歩き出すので、わたしとカガリさんは付いていく。

いつもどおりにジロジロと見られるけど、気にしない。

「いらっしゃいませ。本日はどのお酒を購入でしょうか?」

小さい女性、ドワーフの女性が丁寧に尋ねてくる。

「すまない、ダダンを呼んでくれないか?」

「えっと、お約束でしょうか?」

「いや、約束はしていない。俺はロージナ。会えるかどうかの確認だけでもいい。頼む」

「分かりました。少々お待ちください」

丁寧に受け答えをする受付嬢は席を外す。

そして、すぐにロージナさんと同じぐらいの年齢の男性ドワーフが先ほどの女性と戻ってくる。

どうやら、この店で偉い人みたいだ。

「ロージナ、どうした? おまえさんがここに来るなんて珍しいな」

「おまえさんに頼みがあってな。少し大丈夫か?」

「大丈夫だが、そのおまえさんの後ろにいる変な嬢ちゃんはなんだ?」

いつものことだけど、変な嬢ちゃんって、わたしのことだよね。

「えっと、嬢ちゃんの格好については、聞かないでやってくれ」

「……そうか。分かった」

なにか、かわいそうな子を見るような目で見るのはやめてほしい。

そのような目で見られるのは久しぶり過ぎて、悲しくなってくる。