軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

926 クマさん、ジュウベイさんと戦う その1

「それじゃ、始めよう」

そう言って、ジュウベイさんは眼帯を外す。

「もう、外すの?」

「前回は俺よりも実力は下と思っていたが、今は嬢ちゃんのほうが実力は上だ。戦いを挑むのに、眼帯を着けたままでは嬢ちゃんへの礼儀に反する」

つまり、それだけ本気ってことだ。

ジュウベイさんは眼帯を懐に仕舞い、刀を構える。

カガリさんと黒男のことも気になるけど、今は目の前にいるジュウベイさんだ。

それにしても徐々に強くしてほしいなんて、難しいことを頼むものだ。

わたしとしても、ジュウベイさん相手に、どこまで通用するか試したい気持ちは少なからずある。

これもゲーマーだった名残かな。

ジュウベイさんには悪いけど、ゲーム感覚で楽しむことにする。

それがジュウベイさんが望んだことだ。

まずは、ナイフ一本から始める。

武器の長さは刀の方が有利。

小回りが利くのはナイフ。

戦い方としてはナイフで守りつつ、隙を狙って反撃する感じになる。

深夜暗い中、上にあるクマの灯りがわたしとジュウベイさんを照らしている。

そんなわたしたちの戦いをくまゆるが静かに見守っている。

ジュウベイさんがゆっくりと、間合いをつめる。

わたしはくまゆるナイフを構える。ジュウベイさんの足に力が入る。

動く。と思った瞬間、飛び込むように一気に間合いがつまる。

攻撃範囲に入ると刀を振り下ろされる。

速い。

体をずらし、躱す。

切り返しがくる。

ナイフで受け流す。

受け流されても、刀は綺麗な円を描き、刀は再度、わたしに襲いかかってくる。

ジュウベイさんの攻撃が止まらない。

わたしはジュウベイさんの攻撃を止めるために強く刀を弾く。

ジュウベイさんの腕が上にあがる。

わたしの右手もナイフを振り抜いたことで腕が伸びている。

一歩踏み込み、左手に力を入れ、振り抜く。

クマパンチがジュウベイさんの体に命中すると思った瞬間、ジュウベイさんの体が回るように逃げる。

白クマパペットが空を斬る。

ジュウベイさんの体を回転させたことで振り上がった刀が再度、襲ってくる。

わたしは体を捻って、ナイフで受け止める。

一瞬、お互いの動きが止まる。

その一瞬を逃さずに、後方にジャンプして逃げる。

「ふぅ」

お互いに息を吐く。

やっぱり、サタケさんや黒男よりも強い。

サタケさんが妖刀を使ってまで、ジュウベイさんに勝ちたいと思う気持ちが分かる。

ジュウベイさんは強い。

そのジュウベイさんが眼帯を外し、妖刀を使ってまで、勝ちたいと思わせるわたしって、なんなんだろう。

お互いに一呼吸入れたジュウベイさんとの攻防が始まる。

当初の考え通りに、主にジュウベイさんが攻撃し、わたしが防ぐ構図が出来上がる。

やっぱり、ナイフだとリーチ面で守りに回らないといけない。

さらにはジュウベイさんの動きが的確なので、反撃の隙がない。

受け流して、攻撃を仕掛けようとしても、すぐに切り返してくる。

次への攻撃に繋がっている。

やっぱり、ジュウベイさん相手にナイフ一本って甘くみていたみたいだ。

「やっぱり、強いな」

「ジュウベイさんも強いよ」

だから、本当ならジュウベイさんの相手はカガリさんに任せたかった。

「ナイフ一本で対処して、よく言う」

「ギリギリだよ」

躱しても、弾いても、攻撃が止まらない。

一連の動きが全て、次の攻撃に繋がっている。

だから、攻撃が止まらない。

「それじゃ、ナイフ一本じゃ避けられない攻撃をしないといけないな」

まだ、ジュウベイさんに三段突きがあるし、魔法もある。さらに妖刀の力も加われば、どうなるか分からない。

ふふ。

どこまで力を発揮せずにジュウベイさんを倒せるか、意外と楽しんでいる自分がいる。

これも元ゲーマーとしての 性(さが) なのかもしれない。

「妖刀魔花。魔力を斬る以外に知っていることはあるか?」

ジュウベイさんがいきなり尋ねてくる。

「あとは魔力を吸い取るぐらいだけど」

「そうか」

ジュウベイさんは少し考え込む。

「なに?」

「妖刀魔花について話さないのは卑怯な気もするが、なにも知らない嬢ちゃんが、どう対応するか見てみたい気持ちもあってな。もしかすると、対応できずに負けてしまうこともあり得る。そうなったら、嬢ちゃんの本気も見えず、終わってしまうだろう」

わたしだけでなく、ジュウベイさんも楽しんでいるみたいだ。

「教えなくてもいいよ」

ゲームだって、初めはなにも知らずに敵と戦うものだ。

対人戦だって、相手の情報がないまま戦う。有名な人は動画があったりするけど、基本、相手の情報はないものだ。

「それを自惚れと取るべきか、強者からの目線なのか」

「どちらも違うよ。ジュウベイさんと同じように楽しんでいるだけ。答えを聞いたら、面白くないでしょう。それにわたしには治療魔法があるから大丈夫だよ」

「シノブを治療してくれたんだったな」

これは大蛇のことを言っているんだよね。

今回、シノブが怪我をして、サクラがわたしを呼んだことは知らないはずだから。

「いいだろう。受け止めてくれ」

ジュウベイさんは構える。

刀が青白く光る。

なにかしてくる。

だけど、普通に斬りかかってくるだけだ。

普通と言っても、相手はジュウベイさんだ。

どれも鋭く、気を抜けば、切り裂かれることになる。

なにが起きる?

斬りかかってくる。

受け止めようとした瞬間。刀が無数に分身し、同時に襲いかかってくる。

至近距離。

ナイフに魔力を込める。

流れるようにナイフを振り、分身した刀を斬りながら本体の刀を受け止める。

受け止めるってことは、残りの分身の刀は残る。

残り2本の分身がわたしに迫ってくる。

わたしは左腕を振るう。

その振った左手には白い柄のナイフが握られている。

そのまま振り抜く。

分身した刀が消える。

残りの分身の刀は体を反らして躱す。

「今のを防ぐのか」

ジュウベイさんが笑っている。

「ギリギリだよ」

今のは危なかった。

刀が円のように広がり、同時にわたしを襲ってきた。

右手に持ったくまゆるナイフは右側にある分身された刀と本体の刀を止め、くまきゅうナイフで反対から迫ってくる分身の刀を斬った。

「余裕に見えたが」

余裕なんてない。

本当にギリギリだった。

「そのまま追い討ちをかけられていたら、危なかったよ」

あのまま連続で攻撃をされていたら、体に当たっていたかもしれない。

「ちなみに今のは、刀に集めた魔力を好きなタイミングで花のように広げ、相手を襲う技だ」

「ジュウベイさんには似合わない技だね」

「俺もそう思う」

ジュウベイさんは少し笑う。

「それにしても初見で躱すのか。本当に嬢ちゃんはどうなっているんだ。普通なら、なにが起きたか分からないまま、攻撃を受けると思うんだが」

体が動いていたと言った方が正しい。

考えて、くまきゅうナイフを出したわけではない。

避けられないと思った瞬間には、くまきゅうナイフを取り出しており、振り上げて、魔力で作られた分身の刀を斬っていた。

「だが、避けてくれてよかった。あれで終わっていたら、後悔していたからな。でもそれと同時に、興奮が収まらない」

ジュウベイさんは嬉しそうに笑う。

黒男も戦闘狂だったけど、ジュウベイさんもだよ。

まあ、たまになら戦ってもいいかなと思っているわたしもいるけど。

「このまま2本のナイフで戦わせてもらうよ」

くまきゅうナイフを出させられてしまった。

引っ込めるのもあれだから、このまま二刀流で戦わせてもらう。

それにナイフ一本だと防戦一方になってしまう。

「やっと、2本目を使ってくれるのか」

「今度は一方的に攻撃はさせないよ」

「そうだな。本気にさせるために、次はその逆さまに使っているナイフをちゃんと持たせたい」

逆にナイフを持っていたことに気づいていたみたいだ。

「気にしないで、ジュウベイさん相手だと手加減できないから、斬っちゃう恐れがあるから」

「自分は斬られる恐れがあるのにか」

「それは、かすり傷でも当ててから」

まあ、クマ装備があるから、かすり傷も難しいと思うけど。

その判断はクマ装備を斬られてから考えることにする。

「そうだな」

ジュウベイさんとの攻防が再開される。