軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91 クマさん、クラーケンを倒す理由が出来る

商業ギルドのギルドマスターも捕まり、首謀者は全員捕まった。

全て終わった頃には日が沈み、夕食の時間になる。

「お帰り」

デーガさんが出迎えてくれる。

「本当に盗賊を討伐してくるとは思わなかったぜ。これで近くの町まで買い出しに行ける。改めて礼を言う。ありがとうな」

「気にしないでいいよ。本当ならクラーケンをなんとかしてあげたいんだけど」

「アハハハ、さすがにそれは無理だ。どんな子供だって知っているぞ。クラーケンがどんなに強いのか。俺たちにできることはクラーケンが海域から出ていくのを祈るだけさ」

「ゴメンね」

「なんで、嬢ちゃんが謝るんだ。俺たちは盗賊だけでも討伐してくれて感謝しているんだ。それに最近出回っているウルフの肉や小麦粉も嬢ちゃんのおかげだろ」

冒険者ギルドには内緒にしてもらったはずだけど。

「知っている者は知っているさ。でも、冒険者ギルドのギルドマスターから口止めされているんだよ。おまえさんが恥ずかしがりだから礼はいらないと」

「面倒なだけよ」

本心の言葉を口に出す。

夕飯を食べ、部屋に戻ろうとすると、デーガさんに呼び止められる。

「今朝約束した、今できる最高の料理を作ってやるから、明日の昼に食堂に来てくれ。朝一で準備して作るからよ」

「いいの? 食材少ないんでしょう」

「構わない。俺が嬢ちゃんにできる礼はこれぐらいしかないからな」

「分かった。楽しみにしておくよ」

わたしは部屋に戻り、今日1日の疲れを落とすために、白クマの服に着替え、護衛としてくまゆるとくまきゅうをこぐま状態で召喚する。

召喚するとくまきゅうの様子がおかしい。

背中を向けてこちらを見ない。

過去の経験から拗ねているらしい。

そういえば今日は行きも戦闘も帰りもくまゆるだった。

そのせいで拗ねている。

構ってあげないと駄目だ。

でも、今日は疲れて眠い。

なので、今日はくまきゅうを抱いて寝ることにする。

問題はくまきゅうと一緒に寝ることで、くまゆるが拗ねないかが心配だ。

くまきゅうを無理やり抱きしめてふとんに潜り込む。

疲れとくまきゅうの 温(ぬく) もりのおかげですぐに眠りに落ちていった。

翌朝、起きるとくまきゅうの機嫌も直り、くまゆるも拗ねた様子もない。大丈夫のようだ。

くまたちを戻し、黒クマの服に着替える。

下に降りるとブリッツたちがいた。

4人とも旅支度をしている。

「町を出るの?」

「すぐに戻ってくるけどな」

「盗賊も居なくなったから、食料の買い出しに隣の町まで行くのよ。それでわたしたちが護衛をすることになったの」

「まあ、往復10日ぐらいだ。上手く行けば数日の短縮もできるし、早く戻ってくるつもりだ」

「そうなんだ。そのときにわたしが居るか分からないから、言っておくね。今回はいろいろとありがとうね」

「それは違うよ。わたしたちこそ、ありがとうよ。ユナちゃんがいなかったら盗賊の討伐はできなかった」

今回はこのパーティーメンバーには精神的に助けられたと思っている。

人生経験が少ないわたしには捕まっていた女性にかける言葉は思い付かなかったし、何も行動もできなかった。盗賊は倒したけど、後の始末は全てブリッツたちに任せて、わたしは何もしていない。

「それじゃ、俺たちは行くよ」

「気を付けてね」

ブリッツは手を挙げて返事をすると宿屋を出ていく。

わたしも朝食を食べると外の空気を吸いに行く。

町の中を歩くと少しだけ住人の顔が明るくなったように見える。

町の人はわたしを見かけると軽く頭を下げてくれる。

子供たちも駆け寄ってくる。

わたしたちが盗賊を討伐したことは町中に広まっているようだ。

冒険者ギルドに立ち寄るとアトラさんや職員が忙しそうにしている。

話によると商業ギルドで独占していた魚や食材は一時的に冒険者ギルドで管理することになった。

アトラさんは大変そうだ。

数日前にはアトラさんがギルドに一人でいたのが懐かしい。

差し入れにプリンを渡しておく。

疲れたときには甘いものが一番だからね。

冒険者ギルドを出ると、初めて町に来たときに出会った商業ギルドのジェレーモさんに会う。

「嬢ちゃんか。今回はありがとうな」

「どうして、ここにいるの?」

「商業ギルドの仕事だよ。ギルドマスターを始め、その他にも捕まったからな。下っ端の俺に大量に仕事が回ってきたんだよ」

「そうなんだ」

「まあ、下っ端のおかげでギルドマスターの犯罪に巻き込まれなくてすんだけどな」

商業ギルドマスターは黙秘を続けているらしい。

盗賊に指示を出していたのは間違いなく、首謀者なのは確実だった。

住人は処罰を求めたが、現在は保留状態になっている。

捕らわれた女性の気持ちを考えると、すぐにでも処刑にしたかったが、ここがどこの国も属していない町であることと。さらに町長が逃げたことによって、裁く人間がいないことがこのような結果になっている。

さらにアトラさんの仕事はザラッドを含む、犯罪者の取り調べだけではない。

早急にしないといけない仕事が山積みになっている。

盗賊がいなくなったことで漁業(釣り)ができる場所が増え、魚を均等に配分、盗賊に殺され、財産を盗まれた者への補償。捕まっていた女性が受け取ることになっているが、全員が殺されているケースも多い。本来、盗賊の討伐をしたら、討伐したわたしたちが貰えるが、わたしたちはそれを辞退した。

町の食料問題に充ててもらうことにしたのだ。

わたしも含めブリッツたちも甘いとアトラさんに言われたが、お礼を言われた。

ブリッツに言わせれば、何もしていないから貰えないと言っていた。

昼過ぎに宿に戻ってくると美味しそうな匂いが漂ってくる。

「おお、戻ったか。そろそろ出来上がるから座って待っててくれ」

座って待っていると、厨房から食欲をそそる匂いが運ばれてくる。

席で待つこと数分、料理が運ばれてくる。

そこにはこの世界で初めて見る食べ物で、わたしがよく知る食べ物だった。

「お米……」

「なんだ、知っているのか」

わたしの前にあるのは白いご飯じゃなかったけどお米だった。

いろんな具材と炒めてあり、チャーハンに似ている。

一口食べると懐かしさが滲み出てくる。

お米だ。

白くないけど、美味しい。

そのチャーハンの横には海で捕れた焼き魚もある。

「その魚は今朝、息子が釣ってきた」

その魚よりも、その隣にある瓶が気になる。

まさか、瓶の中にある液体を魚に掛ける。

少し黒い液体。

魚を食べる。間違いなく醤油だった。

チャーハンを食べ、醤油がかかった焼き魚を食べる。

白いご飯が良かったが贅沢は言わない。

「嬢ちゃん。泣いているのか?」

わたしは知らないうちに涙を流していた。

「デーガさんのお料理が美味しくて、涙が出たよ」

泣いているのが恥ずかしくなり、涙を拭くと笑顔で答える。

美味しいのは嘘ではないから。

「本当か?」

「うん、とっても美味しいよ」

「そう言って貰えるのは嬉しいが、無理をしているんじゃないよな?」

不味いから無理やり食べていると思ったのだろうか。

「うん、これ、わたしの国の故郷の味なんだ。もう、食べられないと思っていたから。嬉しくて」

「これが故郷の味って、もしかして、和の国の出身なのか?」

「和の国?」

「違うのか?」

「違うよ。もっと遠くで二度と行けないぐらい遠くの場所」

「そんな遠くから来たのか。寂しくないのか?」

「たまに故郷が懐かしくなるけど、ここも楽しいからね。でも、こうやって故郷の味が出ると嬉しくてね」

「そうか、本当ならもっと作ってやりたいんだが、在庫が無くてな。クラーケンが出る前だったら和の国から月に一度、船で運ばれてくるんだが」

「クラーケンか……」

倒す方法無いかな?

わたしはデーガさんにお礼を言って宿屋を出る。

そのまま海岸まで歩いていく。

広がる海。

その先の大陸にはお米、醤油がある。もしかすると味噌もあるかもしれない。

どうしてもお米が欲しい。

クラーケンか。

戦闘方法は限られている。

大型船を使ってそれが沈む前に倒す方法。答え、そんな船はこの町には存在しない。

空を飛んで上空から倒す。答え、飛べない。

次に実験をするために砂浜に行き、海を凍らせてみる。

凍るけど、波が覆い被さってくる。もし、戦闘になったら、クラーケンは暴れるだろうし、そうなれば、海は荒れて、波は数mどころか10mを超えるかもしれない。氷も割られると、戦う状況じゃなくなる。

それに氷の厚みも必要になるだろうし、足元を気にしながら戦うことはできない。

これが湖だったらできる可能性もあるんだけど。

あとは、空気の玉の中に入って海に潜る?

試しに作ってみる。

そして、海の中に入ってみる。

普通に海に潜れた。

でも、これってクラーケンの攻撃を喰らったらお仕舞いだよね。

それに、この玉の中から攻撃できるの?

割れたら終了だ。

酸素の問題もある。

いろいろ考えると、この方法も現状では無理だ。

あとはクマたちに乗って戦う?

くまゆるとくまきゅうを召喚する。

「ふたりとも、泳げる?」

くまたちは海に入ると普通に泳ぎ出す。

泳げるんだ。

まあ、北極クマとか泳いでいるもんね。

問題があるとすれば、わたしが海で泳いだことが無いことだ。それ以前に最後に泳いだの何年前?

思い出してみると最後に泳いだのは小学校の授業のプールが最後だ。

クマから落ちたら間違いなく死ぬね。

でも、クマに乗っている間は寝てても落ちないから落ちることは無いのかな。

ただ、跨いで乗るから間違いなく下半身濡れるね。戦いになれば、間違いなく全身が濡れることになる。

それに海の底に潜られたら何もできないのは変わらない。

この案は保留にしておこう。

うーん、倒す方法が見つからない。

あと、海で戦う物語あったかな?

本当は水の中でも息が出来るのが最高なんだけど。無い物ねだりをしても仕方ない。

それじゃ、モーゼのように海を割る? いや、無理だから。それに逃げられたら追いかけることができない。

それ以前にできないだろうし。

………………………………駄目。

…………………………没。

……………………却下。

………………断る。

…………嫌だ。

……無理。

そして、一つの考えが思い浮かぶ。

うん、この方法でやってみるかな。

失敗しても痛くも痒くもない。

成功すれば戦うことができる。

駄目だったらくまゆるたちに乗って戦うかな。