軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

920 クマさん、嵐の前の静けさを感じる

サタケさんと戦ってから2日が過ぎた。

部屋にはわたしとカガリさんとくまゆるとくまきゅうしかいない。

サクラは、巫女や王妹の娘としての勉強などをするため、他の部屋にいる。

まだ、幼いのに勉強ばかりで大変だ。この数日間、妖刀に関することに関わっていたので、再開することにしたとのことだ。

シノブはジッとしていられないみたいで、城に行ったり、ジュウベイさんを探しに城下町に行っている。

ジュウベイさんのことは気にしていない感じにしているけど、気にしているみたいだ。

まあ、ジュウベイさんのことを師匠と呼んでいるぐらいだから、心配しているんだと思う。

カガリさんに、ジュウベイさんを見つけても「手を出すな」と言われていたけど、シノブは「師匠と戦う気なんてないっすよ」と言っていた。

それにしても、暇だ。

シノブ同様に城下町にジュウベイさんと黒男を捜しに行ってもいいんだけど。黒男のことを考えると、あまりここを動きたくない。

なにより、わたしがここにいるってことを黒男に知られてしまった。黒男が現れるかもと考えると、出歩くことができない。

わたしと戦いたいためにミサを攫ったことがある。今回も、わたしと戦いたいためにサクラを攫う可能性もある。

わたしはくまきゅうに寄りかかりながら、中庭を見る。

シノブと男が戦ったことで壊された中庭は修復された。

シノブは自分に代金の請求が来るのではないかと不安そうにしていたけど、サクラは笑いながら、「そんなことはしませんよ」と言っていた。

まあ、中庭の破壊はシノブが原因ではないと思う。

これで請求されたら、流石にシノブを擁護していた。

わたしだって、ここで戦うことになるかもしれないんだから、他人事ではない。

それどころか、サクラを守ったことや妖刀を回収したことで、スオウ王から金一封が出たと言う。

「わたしは貰っていないけど」

「妾もじゃ」

「えっと、お二人の場合は、お願いすれば、伯父様はなんでも叶えてくれると思いますよ。もちろん、常識の範囲内ですが」

「それなら、高い酒を頼むか」

カガリさんはそんなことを言っていた。

わたしも考えてみたけど、お願いすることがなにもなかった。

こんなに物欲がなかったっけ? それだけ、現状に満足しているってことかもしれない。

残りの妖刀は3本。

妖刀を持っているのはジュウベイさんが2本と黒男が1本。

ジュウベイさんが持っている妖刀が妖刀右京と妖刀狂華。

気になるのが妖刀狂華だ。

名前の由来どおりに狂暴になると言われている。

ジュウベイさんは心が強いから、妖刀に飲み込まれることはないと思うけど。姿を見せないところが不安にさせる。

ジュウベイさんが妖刀右京を持っているから、戦うことになればカガリさんが相手をすることになる。

ジュウベイさんとカガリさんと戦ったけど、どちらが勝つか分からない。

剣技だけなら、ジュウベイさんが勝つと思う。

でも、魔法ありなら、想像も付かない。

気になるのは、カガリさんが刀を用意したことだ。

わたしとの練習でも刀を中心に戦っている。

2人が戦うと思うと、少し心配になる。

まだジュウベイさんと戦うと決まったわけじゃない。

ジュウベイさんが「妖刀を回収してきた」と言って現れるかもしれない。

サタケさんとジュウベイさんの部下たちがジュウベイさんと黒男を探しているけど、未だに見つかっていない。

黒男は素性が分からないから見つからないのは仕方ないとはいえ、ジュウベイさんは顔を知られているんだから見つかってもいいのに、見つかっていない。

黒男は、なんとなくだけどあっちから来てくれると思っていたんだけど、現れる様子はない。

とりあえず、わたしにできることは待つことだけだ。

でも、その待つ身としては暇だ。

「暇じゃのう。いつ現れるか分からんから、酒も飲めん」

カガリさんが大きなくまゆるに寄りかかりながら、愚痴をこぼす。

いつ、妖刀右京を持ったジュウベイさんが現れてもいいように、カガリさんはお酒を我慢している。

そんなにお酒って美味しいものなのかな。

今回の礼として、高級なお酒をスオウ王に頼むみたいなことを言っていたけど。

「今度、ドワーフの街に行って、お酒、買ってこようか?」 お酒と言えば、ドワーフってイメージがある。この世界のドワーフがお酒を造っているか知らないけど。未成年だから、お酒に興味がないんだから、しかたない。でも、なにげないわたしのことばにカガリさんは反応する。

「なんじゃと。それは本当か?」

カガリさんは起き上がり、小さい目を開き、尋ねてくる。

「お酒の良し悪しは分からないけど。飲みたいなら買ってくるけど。それとも、一緒に行く?」

「例の門か」

「この街にドワーフはいないの?」

「おるぞ。あやつら種族は物作りに命をかけている」

「物作り?」

「武器に目が行きやすいが、あやつらは作るのが好きだ」

確かに、調理道具も作っていたね。

「酒もその一つだ。美味しい酒を造る情熱はすごい」

「この街にドワーフがいれば、お酒もあるんじゃない?」

「あるが、本場の酒が飲みたい。ここにいるドワーフは和の国の酒に侵されているからのう」

未成年で、酒を飲まないわたしにはお酒の知識はない。

ビール、日本酒、ワインぐらいしか、分からない。

カガリさんが飲んでいたお酒は透明だったから、日本酒に近いのかな?

つまり、ここのドワーフは日本酒みたいなお酒を造っているのかな。

「それじゃ、落ち着いたら買いに行こうね」

「約束じゃからな」

そんな会話をしながら、ゆっくりと時間が流れる。

「暇じゃのう」

「暇だね」

わたしたち大人がボーとしている間もサクラは勉強している。シノブが城下町を駆け回っている。

なんだろう。

誰もいない自分の部屋だったら、誰の目もないから、引きこもりをしていても気にならなかったけど。

周りが慌ただしく仕事をしているのを見ると、なにもしていないと罪悪感が湧いてくる。

「……ユナ、少し付き合え」

「また?」

ジュウベイさんと戦うつもりでいるカガリさんは、小さくなった体に順応させるために、昨日から、手合わせを何度かしている。

「お主相手なら、本気で攻撃しても安全じゃからのう」

「安全って」

「それに、弱い相手に練習をしても意味がない。カカシ相手にしているようなものだ」

確かに、相手が弱かったら練習にもならない。

ただの的に攻撃しているだけだ。

そんなわけで、お茶を飲んだわたしたちは中庭に移動する。

「それで、今日はどうする?」

「3分交代じゃ」

3分間、片方が攻撃し、片方が防御するって感じだ。

それを交互に行う。

攻撃の練習と身を守る練習だ。

そのあとに、実践的な練習をする。

お互いに木刀を持つ。くまゆるとくまきゅうが時間管理をしてくれる。くまゆるの手には砂時計がある。

「それじゃ、妾から行くぞ」

カガリさんが小さい体を使って、攻撃を仕掛けてくる。

相変わらず、下からの攻撃を捌くのは感覚がズレる。

今まで、大きい人や同等ぐらいの人と戦ってきたから、背が低い人と戦うのは勉強になる。

カガリさんほどの剣技を持った幼女が現れるとは思えない。今後、天才剣士の小さい子供と戦うことがあれば、役に立つかもしれない。

カガリさんの鋭い攻撃を受け流す。

踏み込みの足と腕の位置を見て、攻撃を予測する。

木刀の向きが変わる。

でも、躱す。

「どうして、分かった」

「力がこもっていないんだから分かるよ」

すぐに切り返せるように、木刀に力がこもっていなかった。

例えだけど、ボクシングで言えば、ジャブと渾身のストレートとの違い。

野球で言えば、スローボールと渾身のストレートとの違い。

テニスで言えば、ドロップショットと渾身のストレートとの違い。

その違いを判断している。

「そんなに分かりやすいか?」

「う〜ん、どうだろう。なんとなくで判断しているから」

上位プレイヤーなら攻撃を分かりにくくして、相手を翻弄する。

漫画の知識だけど、長袖を着て、筋肉を分かりにくくするとか。同じ軌道と速さだけど、複数の攻撃パターンがあるとか、読んだことがある。

「なんとなくじゃと?」

「考える時間なんてないよ。だから、なんとなくだよ。ああ、力がこもっていないな。的な?」

1秒もない。

力が込められている。

こっちに武器が向けられているとか。

ほんの一瞬で判断している。

ゲームで、多くの対戦をしてきた経験だ。

「お主はどこを見ておる?」

「基本、体全体。あとは感覚的に踏み込む足。目線、腕の動きかな?」

「妾と同じじゃな」

「最終的には、みんなそうなんじゃない?」

「お主の場合は、その判断が一歩速く、体が動いている」

判断はわたしかもしれないけど。体が動くのはクマ装備のおかげだと思う。

クマ装備が無ければ、判断できたとしても体は動かない。

「続けるぞ」

わたしはカガリさんが納得するまで、付き合ってあげることにした。途中でくまゆるが「くぅ〜ん」と鳴き、攻守が代わり、わたしが攻撃してカガリさんは守る感じになる。最後は普通の対戦をしたりした。

「この体は疲れるのう」

わたしたちは風呂に入り、カガリさんはくまゆるに背を預けるように休んでいる。

「ふふ、お疲れ様です」

サクラがお茶を用意する。

「動いたあとに酒が飲みたいのう」

と言いながらお茶を飲むカガリさん。

「今回のことが解決するまで、飲めないのでしょう。諦めてください」

「分かっておる」

「ユナさんもどうぞ」

「ありがとう」

「ユナ様は疲れていないようですね」

クマ装備のおかげで疲れはない。

もし、クマ装備がなければ、ちょっと動いただけで、筋肉痛で動けないと思う。

「じゃが、ユナのおかげで、この体での戦い方が分かってきた」

「ジュウベイと戦うためですか?」

「最悪の場合は、そうなるじゃろう」

数日間、連絡もないし、音沙汰がない。

カガリさんは最悪の状況を考えているみたいだ。

でも、黒男が静かなところも気になるところだ。

すぐに再戦を申し込んでくると思ったけど、こっちも音沙汰がない。

嵐の前の静けさって言葉があるけど、そんなことはないよね。