軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

891 クマさん、書物を確認する

書庫室には書物や巻物がたくさん置かれていた。

「こんなにたくさん」

「なので、少し手間取っています」

サクラは奥へ歩き出す。

奥には机があり、書物や巻物が置かれている。

妖刀のことが書かれている書物かもしれない。

「今は妖刀のことが書かれていそうな書物を探しているところです」

わたしは書物を手にする。

表紙には「悪霊に取り憑かれた剣士」と書かれていた。

「読めないですよね。ここには『悪霊に取り憑かれた剣士』って書かれています」

サクラはわたしが持っている書物を見ながら言う。

どうやら、昔の言語で書かれているみたいだけど、わたしには読める。

どうやらスキル異世界言語のおかげみたいだ。

エルフの村に行った時のことを思い出す。

あのときもエルフ語を話すサーニャさんの言葉を理解することができた。

「悪霊、つまり妖刀に取り憑かれた剣士のことだと思います。まだ、内容の確認はしてませんが、なにか分かるかもしれません」

わたしは書物を開く。やっぱり読める。

「どうやら言語解読魔法のおかげで読めるみたい」

「そんな魔法があるのですか?」

ごめん、ないよ。

スキルの説明が面倒だから、今、わたしが適当に考えて作った。

「みんなには内緒にしておいて」

「分かりました。それではユナ様、わたしが書物を探しますので、ユナ様は、書物の確認をお願いします」

サクラなら、書物が置かれている場所も把握しているので、探すのはサクラに任せ、わたしはサクラが探してきた書物の確認をすることになった。

わたしは椅子に座り「悪霊に取り憑かれた剣士」と書かれた書物を開く。

出所が不明な刀を手に入れた剣士が豹変し、悪霊に取り憑かれたように人を斬ったと書かれている。

最終的には殺すことでその事件は収まったが、第二被害が出たと書かれている。

保管してあった刀を手にした者がいた。

刀を手にした者が同様に人を斬りつけ始めた。

その者も最終的には殺すことで、止めることができたが、第三、第四と同様のことが起きる。

「まだ、刀のせいだと分かっていなかったのかな」

妖刀の知識がなければ、刀のせいだとは思いつかなかったのかも知れない。

妖刀や呪いを信じていないなら、なおさらだ。

もし、元の世界で、ナイフで殺人をする人がいても、そのナイフが呪われているとは思わない。

妖刀に取り憑かれたとは思わない。

殺人をした人を疑う。

よく、ニュースでも「優しい人でした」「あんなことをするようには見えなかったです」とか聞く。

だから、和の国でも、刀が原因とは思わなかったんだと思う。

でも、ある人物が刀を手にすると、人を斬りたい衝動に駆られたと言う。

そこで、今までのことが刀のせいだと判明する。

その人物が妖刀に飲み込まれることもなく、抵抗したから分かったことらしい。

そして、刀を折って、封印したと書かれていた。

意志が強くないと取り込まれる。

妖刀の言いなりになるってことだ。

内容はここまでとなり、この刀の名前も、その後、どうなったかも書かれていなかった。

意志が弱いものは取り込まれ、意志が強い者は抵抗できるってことは分かったけど、それはサタケさんたちからも聞かされていたことだ。

「ユナ様、こちらの確認もお願いします」

考え事をしているとサクラが新しい書物を持ってくる。

表紙には『鍛治職人の願い』と書かれている。

「中を軽く確認しましたが、妖刀馬鉄のことが書かれていました」

妖刀馬鉄、今回盗まれた妖刀の一本だ。

わたしはサクラから書物を受け取り、中を確認する。

刀を作るのに命を捧げてきた鍛治職人、馬鉄が最高の一本を作り上げたことが書かれていた。

馬鉄は最高の剣士に手にしてほしいと願い、大会の優勝賞品として下賜されることになった。

そして、馬鉄の願いが叶い、優勝した剣士が刀を手にすることになった。

その刀を握ると強者を求めるようになっていったと書かれている。

今回は無差別に人を殺すような刀ではないみたいだ。

そもそも、強者を求めるのは普通にあることだ。

自分の力を確かめたい。強者と戦って勝ちたい。

そんな気持ちはスポーツをする者なら、少なからずあるはずだ。

優勝したい。

野球ならあのピッチャーからホームランを打ちたい。あのバッターを三振に取りたい。

バスケットなら、あの選手を抜いてシュートを打ちたい。

ゲームだって、あのプレイヤーに勝ちたい。ランキング上位に行きたいって、思う。

そんな勝ちたい気持ちになるのは刀のせいではないんじゃないかと思う。

でも、読み続けると、違和感を感じる。

相手の武器を斬り捨てると立ち去ると書かれている。

相手の武器を斬り捨てる?

「ユナ様、どうかしたのですか?」

わたしが考え事をしていると書物を持っているサクラが尋ねてくる。

「この書物の内容が、ちょっと気になってね」

「鍛治職人の願いですか?」

「相手の武器を斬り捨てるって書いてあるんだよね。つまり、妖刀馬鉄は強き者を探しているんじゃなくて、強い武器を持っている人を探しているんじゃないかなと思って」

自分の刀が最強と言われるために、強い武器を持っている相手を探している。

「つまり、妖刀馬鉄は自分を持つにふさわしい剣士を探していたのでなく、名刀を持っている人を探していたってことですか?」

「名刀を持っている人って、実力がある人が多いでしょう。だから、強者を求めているように見えたんじゃないかな」

「確かにそうかもしれません」

「あくまで、可能性の1つだけどね。だから名刀を持って歩けば、あっちから寄ってくるかもしれないから、試してみる価値はあるかもね」

でも、勇者の剣じゃ、近寄ってこないよね。

ガザルさんが作ってくれたナイフはどうだろう。

反応してくれるかな?

それからもわたしたちは妖刀に関する書物の確認をしていく。

何冊かには妖刀っぽいことは書かれていた書物があった。

妖刀の名前は書かれてなく、妖刀についての内容が書かれた書物だ。

簡単に言えば、妖刀の多くは魔力に反応すると書かれていた。

「わたしも詳しいことは分からないのですが、鍛冶職人が魔力を込めながら刀を打つことで、妖刀は魔力を持つ者を選ぶと言われています」

「……魔力」

「でも、全ての妖刀が当てはまるわけではありません。本当に技術だけを求める妖刀もあります」

「詳しいね」

「昔に文字の勉強をしているときに、読んだことがあるだけです」

それでも巫女と立場で勉強をしているんだから、偉いと思う。

書物に目を通していき、最後の一冊となる。

「あとはこの本だね」

赤桜のことが書かれた書物だった。

言い伝えでは血を好み、無差別に人を斬り裂く妖刀と伝わっていた。

書物には詳しいことが書かれていた。

特に若い女性の血を好むと書かれている。

なにそれ?

まるで吸血鬼みたいな妖刀だ。

「若い女性の血ですか?」

サクラがなんともいえない表情をしている。

それはそうだ。自分が狙われるかもしれないのだから。

妖刀赤桜は若い女性の血を吸い、強くなっていくと書かれている。

妖刀赤桜を封印したのはカミカグラ・サクラと書かれていた。

妖刀赤桜に刺され、血を流し、それでも封印を行ったらしい。

血も赤く、封印した巫女の名前も赤。ってことで、妖刀の名前はアカサクラと名付けられたと書かれていた。

「……カミカグラ・サクラ」

サクラが名前を呟く。

「わたしと同じ名前です」

「そうだね」

自分の命を犠牲にして封印されたと書かれていた。

「亡くなったのですね」

それしか、止める方法がなかったのかもしれない。

「もう、遅いから、今日のところはこんなもんだね」

日が落ち、暗くなっている。

「それでは手紙を書きますので、少し待ってください」

「手紙?」

「今日、調べたことを伯父様に伝えるのです。少しは役に立つと思います」

スオウ王に伝えれば、自動的にサタケさんにも伝わる。

サクラは手紙を書き終えると、人を呼び、手紙を渡す。

「それではお願いします」

手紙を受け取った女性は「急いで、人を出します」と言って、部屋から出ていく。

「ユナ様は、明日はどうするのですか?」

「う~ん。妖刀馬鉄は名刀を持っていないと現れないし、赤桜は若い女の人の血を欲しがるんだよね。もし、美少女だったら、わたしに寄ってくるかもしれないから、歩いてみようかな思ったけど」

「確かに、ユナ様は綺麗です。妖刀が寄ってくるかもしれません」

「えっと、そこは否定してほしかったんだけど」

「どうしてですか? ユナは綺麗です。可愛らしいです」

サクラは真面目な表情で言う。

サクラの前では冗談も言えない。

「冗談は置いておいて、とりあえず、街を見回ってみようと思うよ。魔力が好きな妖刀もあるみたいだから、魔力を放出しながら歩けば、妖刀がやってくるかもしれないからね」

「魔力の放出ですか?」

「今のところ、わたしにできることは、それぐらいしかないからね」

なにかの妖刀が釣れるかもしれない。

あとは名刀を手に入れて、妖刀馬鉄を探す方法もある。

それはおいおい考えることにする。

「シノブとカガリ様は大丈夫でしょうか」

「2人なら、大丈夫だよ」

シノブは怪我をしたけど、実力はある。

油断しなければ、大丈夫なはずだ。

心配なのは、怪我の状況だ。

どこまでよくなっているのか本人しか分からない。

「いざとなればカガリさんとは連絡は取れるからね」

「離れた場所と話せる魔道具ですか?」

「うん」

「それなら、今回のこともお伝えしたほうがいいのでは?」

「そうだけど。カガリさんには妖刀右京に集中して欲しいから、この2本に関しては、妖刀右京が終わってからにしよう」

「そうですね」

森の妖刀を逃しちゃったから、言いにくいってこともある。

「もし、他の妖刀のことを尋ねられたら、教えてあげて」

「分かりました」

それから、サクラと一緒に食事をとり部屋も貸してくれることになった。