軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

888 クマさん、カガリさんと試合をする

カガリさんはくまゆるから下りると大きな扉の近くに移動する。

そして、手を上に伸ばし、扉の中央にある魔石に触れる。

すると魔石が反応して扉が開いていく。

「中に入るぞ」

カガリさんを先頭にわたしたちは建物の中に入る。

建物の中は広く、高い位置にある窓からは光が入ってくる。

周囲を見ながら歩いていると、奥の方に祭壇っぽいものがある。

近づいてみると、祭壇にはクマと狐の置物が置いてあった。

わたしはカガリさんを見る。

「妾も同じ気持ちだから、なにも言うんじゃないぞ」

カガリさんはそう言って、祭壇の奥へ向かう。

まだ、なにも言っていないけど、カガリさんの気持ちはわたしも分かるので、なにも言わないことにする。

せめてもの救いは動物のクマと狐であり、わたしたちの銅像ではないことだ。

これがわたしの銅像だったら、迷わず壊している。

カガリさんの後を付いていくと、奥に扉があり、扉にある魔石に触れると扉が開く。

扉の先には下に向かう階段がある。

カガリさんが手を伸ばして壁にある魔石に触れると、灯りが点く。

「この下じゃ」

そう言って、カガリさんは階段を下りていく。

そのあとをわたし、くまゆる、くまきゅうと続く。

階段の先には、いくつか扉があり、その1つの扉の前に移動し、扉についている魔石に触れると扉が開く。

結構厳重だ。

「ここは?」

部屋の広さはノアの部屋ぐらいあり、広い。

その部屋にはいろいろな物が置かれている。

「物置?」

「妾がこの島に住んでいた時の私物が置かれておる。処分してもよかったのじゃが、スオウの奴が処分ならいつでもできるからと言って、仕舞っておいてくれたのじゃ」

なんでも、建物が崩れたとき、大丈夫だったものが保管されているのことだ。

「でも、こんな地下に?」

「もしも、魔物に襲われて建物が崩れてもここなら大丈夫と思ったのじゃろう」

確かに、建物が崩れても床がしっかりしておけば地下は守られる。

壁を壊されて、魔物に入られることもない。

それだけスオウ王はカガリさんの存在を大切に思っているってことだろう。

カガリさんは部屋の中を見渡す。

「どこに仕舞ったかのう」

ここで、ボケた? とでも言えば、シノブみたいに叩かれるので、言わない。

部屋の中には葛籠などが置かれている。

「酒樽なんていらんじゃろう」

カガリさんは樽を見ながら言う。

「もしかして、狐様が飲んだ酒樽ってことで保管しているんじゃない?」

他の物も祀るためだったりして。

「今度、処分してやる」

カガリさんは、そう言いながら刀を探す。

「必要な物があれば、今住んでいる場所に持って行ってもいいよ」

部屋ならたくさんある。

「大人に戻れたら、服は持ってくるつもりじゃったが」

未だに幼女のままだ。

「それに、スオウの奴が必要な物は新しく買えばいいと言っておる」

まあ、カガリさんは国を救った1人だ。それぐらいだったら、新しいものを買ってくれると思う。

カガリさんは、そんなことを言いながら葛籠の中を開けて確認する。

「ユナも手伝ってくれ。細い木箱に入っているはずじゃ」

わたしとくまゆるとくまきゅうも手伝って、木箱を探す。

「くぅ~ん」

しばらくすると、くまゆるが鳴き、葛籠の中を覗いている。

「あったのか?」

カガリさんはくまゆるが見ていた葛籠の中を覗く。

「おお、これじゃ」

カガリさんは葛籠の中から細長い木箱を取り出す。

綺麗な木箱だ。

カガリさんは木箱を床に置くと蓋を開ける。

わたし、くまゆる、くまきゅうが覗き込む。

木箱の中には一本の刀が入っていた。

「それがカガリさんの刀?」

「そうじゃ」

カガリさんは刀を手にする。

黒い鞘に入った刀。

「久しぶりじゃのう」

カガリさんは大切な相棒に声をかけるように刀に話しかける。

「上に戻って確かめるぞ」

もう、この部屋には用がないようで、カガリさんは部屋をでて、クマと狐が祀られている祭壇まで戻ってくる。

カガリさんは広い場所にでると鞘から刀を抜く。

窓から入ってくる光が刀身を輝かせる。

「綺麗」

黒い鞘も綺麗だけど、刀身も綺麗だ。

それにしても身長が低いのに上手に抜くものだ。

カガリさんは鞘をくまゆるに渡し、刀を振るう。

綺麗な剣筋だ。

「やっぱり、この姿だと持ち難いのう」

カガリさんは自分の手を見る。

幼女なので、手は小さい。

「もう少し、小さいほうが握りやすいじゃろう」

カガリさんがそう言うと、刀の握る部分が小さくなったように見えた。

気のせい?

でも、カガリさんは刀を握ると何度も確かめるように刀を振るう。

「これでいいじゃろう」

「ちょっと待って、今、小さくなった?」

カガリさんに近寄って、刀が握られている手をみる。

「柄の部分は魔力を流すと自分の手に合った大きさに変えることができる」

「そんなことができるの?」

「流石に刀身の部分は無理じゃがな」

それでも凄い。

服のサイズが自由に調整ができるようなものだ。

柄の部分が小さくなり扱いやすくなったようで、カガリさんの刀の動きは洗練される。

何度も刀を振り、感覚を取り戻そうとしている。

しばらく、いろいろな動作をしていたカガリさんの動きが止まり、わたしを見る。

「ユナ、悪いが、ちょっと手合わせしてくれ。久しぶりだから、勘を取り戻したい」

カガリさんは刀を持ち上げながら言う。

確かに、本格的に戦う前に練習は必要だ。

「いいよ」

わたしは勇者の剣を出す。

「お主、本当にそれで戦うつもりなのか。斬っても文句は言うなよ」

まあ、わたしだって、勇者の剣って言っているけど、ただの木の棒ってことは分かっている。

でも、魔力で強化すればいい。

土魔法で薄くコーティング。

「まずは、攻撃を仕掛ける。お主は躱したり防いだりしてくれ」

「了解」

カガリさんがゆっくりと間合いを詰めてくる。

間合いに違和感を感じる。

その理由を考える暇もなく、カガリさんが攻撃を仕掛けてくる。

横に薙ぎ払う。

一歩下がり躱す。

「!?」

躱しづらい。

カガリさんは、確かめるように次々と攻撃をしてくる。

刀の軌道は見えている。

ジュウベイさんより速くはない。

奇襲で、変な攻撃を仕掛けてくるわけでもない。

でも、どうしてか躱し難い。

「やっぱり、鈍っているのう」

「それで?」

「まだまだじゃよ」

そう言って、攻撃を仕掛けてくる。

勘を取り戻してきたのか、徐々に動きが鋭くなってくる。

それと同時に避けにくくなってくる。

下から刀が向かってくる。

どうにか弾く。

次も下。

……分かった。

どうして、避け難いのか。

「ちょ、ちょっと待って」

わたしの声にカガリさんが動きを止める。

「なんじゃ?」

あらためてカガリさんを見る。

小さい。

わたしは、今まで、自分より大きい人、もしくは同じぐらいの人たちと戦ってきた。

攻撃もわたしの目線と同じか、高かった。

それはゲームの世界でもそうだった。

でも、逆だ。

わたしが見下ろしている。

あらゆる感覚が違う。

武器の位置が低いから戦い難いんだ。

今までに経験をしてこなかった武器の軌道。

そこから繰り出される攻撃が、今までの感覚を狂わされていた。

「本当にどうしたのじゃ?」

わたしの動きが止まっているので、怪訝そうな顔で尋ねてくる。

「カガリさんの攻撃が躱しにくい理由を考えていただけだよ」

「躱しにくい? ちゃんと躱しておったじゃろう」

「ギリギリだよ」

「それで、理由が分かったのか?」

「今まで、カガリさんみたいな小さい子と戦ったことがなかったから、軌道が読めなかったみたい。まして、カガリさんは実力があるでしょう。だから余計に、感じたみたい」

目線を下げ、剣筋も下からくる。

全ての軌道が下からくる。

今までの経験が役に立たなかった。

孤児院の子供たちとは遊びの名目で武器の使いを教えたことがあったけど、カガリさんとでは実力が違う。

「なるほど、大きい体のほうが有利かと思っていたが、小さくてもそれなりに利があるんじゃな」

それは実力があるからだ。

普通の子供では、カガリさんの領域に達することは不可能だ。

サクラやフィナが刀を握っても脅威にもならない。

実力があるカガリさんだから脅威になる。

小さくても一流剣士なんて、漫画や小説の世界だけだ。

「身長が低くなっているのに、戦えるんだね」

「初めは違和感があったが、意外と扱えるものじゃのう」

カガリさんは刀を振るう。

「悪いが、もう少し付き合ってくれ」

わたしも実力がある小さい相手は初めてだ。

役に立つかどうか分からないけど、練習するにはちょうどいい。

そして、わたしとカガリさんの練習はしばらく続いた。

「流石に疲れたのう」

「そうだね」

「そう言うわりには、疲れた感じはしてないぞ」

クマ装備のおかげで肉体的には、それほど疲れていない。

でも、精神的にはかなり疲れている。

カガリさんの攻撃を躱すのに神経を使った。

下からくる突き上げ、足元を狙われる横薙ぎ。それも連続で来るから大変だった。

何度も魔法を使いたくなる衝動になった。

わたしはアンズさんが作ってくれた3色おにぎりとお茶を出す。

おにぎりとパンは常時、クマボックスに入っている。

カガリさんはおにぎりを食べる。

「それで、妖刀右京って、どんな刀なの?」

「説明したじゃろう」

「いや、カガリさんとの関係? なんとなくそんなふうに感じたから。危険でも他の人に任せてもいいと思うし」

「そんなことか。話したと思うが、あの妖刀は過去の持ち主だった剣技を使える。その妖刀と戦って、生きているのは妾だけじゃ。妖刀がどんな技を使ってくるか、どんな攻撃を仕掛けてくるか、知っておる。知らん者が戦えば、負けるじゃろう」

「ジュウベイさんでも?」

「楽には勝てんじゃろう。負けたときのことを考えたら、大変なことになる。それにあの妖刀には因縁があるからのう。他の者には任せられん」

因縁。

もしかしたら、大切な人を殺されたのかもしれない。