軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

880 サタケ、クマとの遭遇 その1

シノブがクマの格好をした少女をスオウ王のところに連れてきた。

クマの姿を見た瞬間、すぐにあのときのクマだということに気づいた。

スオウ王の妹の忘れ形見、サクラ様。

サクラ様には夢で未来を見ることができる力があった。

その力は自分自身のことしか分からず、それほど役に立つ力ではなかった。

でも、サクラ様は国が滅びる夢を見るようになった。

スオウ王が、その原因を調べると大蛇の封印が解けかけていることが判明した。

すぐに対策を考えることになったが、大蛇が封印されている小島には女性しか入ることができず、対応に追われていた。

そんなとき、サクラ様が夢の中に希望の光が現れたと言う。

その希望の光は獣に乗って海からやってくると言う。

そして、サクラ様の夢どおりに海からやってきたのはクマの格好をした少女だった。

その報告を受けたとき、その場にいた全員が心の中で笑い、信じなかった。

俺もその1人だった。

でも、サクラ様の言葉を信じているスオウ王は、そのクマの格好をした少女の力を試すと言い出した。

サクラ様の言うとおりに希望の光なら、国を救ってくれる。

俺たちは話し合い、この国で実力があるジュウベイと戦わせることになった。

少女に本気を出させるため、ちょっとした小芝居をすると言う。

面倒臭い。

そんなことをせずに、ここに呼びつけてジュウベイでなく、俺が戦って、実力を見てやるのにと思った。

だが、国王が決めた以上それに従うまでだ。

クマの格好をした少女が負ければ国王の目も覚めるはずだ。

もし、ジュウベイが手加減をして負けるようだったら、そのときは俺が戦えばいい。

そして、ジュウベイとクマの少女は戦った。

2人の戦いには密偵をつけさせ、報告させた。

どうせ、ジュウベイが勝つと思っていた。

でも、報告は異なるものだった。

ジュウベイを追い詰め、ジュウベイの決め技の3段突きも躱し、魔法を使ったジュウベイにクマの格好をした少女が勝ったと言う。

ジュウベイが手加減をしたのではと脳裏に浮かぶ。

だが、密偵は手加減はしてないと断言する。

密偵に「俺とどっちが強い」と尋ねると口を閉じ言いにくそうな表情をした。

その表情で分かる。

俺よりも強いってことだ。

話を聞けば10代前半の少女。

そんな幼い少女がジュウベイに勝つ。

全ての報告を聞いた俺は乾いた笑いが出たことを覚えている。

戦ってみたい感情が湧き出てくる。

俺はジュウベイに少女について尋ねた。

ジュウベイは一言「優しく強き者」と答えた。

心が優しく、強くなるのは難しい。

難しい理由は、死ぬからだ。

優しい者は、困っている者を見捨てない。危険なところに向かい、戦い続け、命を落とす者が多い。

勝てない相手なら、普通なら逃げる、撤退。言葉はいろいろある。

でも、優しき者は勝てないと分かっていても守るためなら戦う。

ジュウベイの言葉には、そんな内容が含まれているんだと思う。

でも、それが事実だということを証明するには時間は掛からなかった。

大量の魔物が動き出し、俺は部下を率いて魔物と戦っていた。

魔物たちは同じ方向へ進む。

魔物の原因は大蛇が復活したためだった。

この魔物の数と戦いながら、大蛇と戦えない。

人が足らない。

まして、あの小島には男は入れない。

いくら、あのクマの少女が強くても大蛇には勝てない。

……そう思っていた。

でも、魔物の動きが止まり、逃げ出したのだ。

理由はすぐには分からなかったが、しばらくして、大蛇が倒されたと報告を受けた。

すぐにクマの少女のことが頭に浮かぶ。

数日後、倒された大蛇を確認したが、人が倒せる魔物とは思えないほど大きかった。

過去の人たちが倒すことができず、封印した理由も分かった。

封印さえ、大変だったと思う。

でも、その大蛇をクマの少女が倒した。

当時、大蛇が復活した島にいたのは、サクラ様とシノブ、クマの少女と、その封印を管理している巫女のカガリ様だけだった。

箝口令が敷かれているので、クマの少女のことは公式には残されていない。

表向きは大蛇の復活と同時に現れた狐様が倒したことになっている。

サクラ様の夢のことを知っている者なら、違うことは分かる。

俺はスオウ王にクマの少女に会わせてほしいと頼んだが、国から出ていったと言う。

せめて、大蛇との戦いの話だけと思って、話をスオウ王に尋ねたが、クマの少女との約束で話すことはできないの一点張りだった。

さらにはサクラ様にもシノブ、カガリ様から聞くことも禁止された。

俺以外の者たちも同様に国王にクマの少女との謁見を頼んだそうだが、断られたと聞く。

なにより驚いたのが、クマの少女は名誉はもちろん、金銭的な要求もしてこなかったそうだ。

しかも、大蛇の魔石を無償で国王に譲ったことを聞かされたときは驚いた。

大蛇の魔石は大きく、どれほどの価値があるか、想像もできない。

価値なんてつけられないだろう。

それから、どこからともなくクマの少女が城に来ていたそうだったが、会うことはできなかった。

そのときも国王から、大切な客人だから、声をかけることも近寄ることも禁止されていたそうだ。

その会いたいと思っていたクマの少女が目の前にいる。

武人として手合わせしたい。

ジュウベイに勝ち、大蛇を倒した実力を見たい。

この幼い年齢で、どれほどの実力を身につけているのか知りたい。

この場を逃せば、二度と戦えない。

だから、妖刀をダシにして試合を申し込んだ。

俺は先頭を歩き、訓練場に向かう。

見た目はふざけた格好をした少女。

強いとは、到底思えない。

でも、俺が試合を申し込んだとき、恐れも、恐怖の感情も見えなかった。

言葉どおりに本当に面倒くさそうな表情だった。

普通、俺が試合を申し込めば、恐れたり、怖がったりするものだ。勝てないから、断る。

でも、少女は違った。面倒だから試合をしたくないだけだった。

つまり、俺に勝てると思っている。

自分が負けることなんて、微塵も考えていない。

そんなことを考えながら、訓練場にやってくる。

「この時間は使われていないから、誰かに見られることはないだろう」

訓練場には誰もいない。

クマの少女のことは機密扱いになっている。

誰かに見られていたら、クマの少女は本気を出さないかもしれない。

だから人がいない、ここを選んだ。

「つまり、あなたが負けるところを部下に見られることがないってことだね」

それもある。

俺には隊長としての立場がある。クマの格好した少女に負けるところを見られでもしたら、威厳がなくなる。

ジュウベイに勝ち、大蛇を倒したのが本当なら、俺は勝てないだろう。

だからと言って、簡単に負けるつもりはない。

「いや、俺が幼い少女を虐めているところを見られないようにするためだ」

俺は強気に言ってやる。クマの少女のことを知らない者が見れば、試合をすれば虐めているように見えるのは間違いではない。

「練習試合だ。武器はここにある練習用の武器を使ってくれ」

壁の端に練習用の武器が置かれている。

刀、短刀、槍、木で作られた練習用の武器だ。

クマの少女は武器を見る。

報告によるとジュウベイと戦ったときは短刀を使っていたと聞いた。

でも、クマの少女が手にしたのは普通の刀だった。

「それを使うのか? 短刀って聞いていたが」

「そっちを使い始めたのは最近だから、こっちがメインだよ」

最近、使い始めた武器でジュウベイに勝ったのか?

冗談だろう。

でも、嬉しくもある。

つまり、手加減されないってことだ。

俺も同じような刀を手にする。

「それじゃ、先に2本とった方が勝ちでいい?」

クマの少女がルールを決める。

「構わない。だが、どうして2本にしたか聞いてもいいか?」

「だって、すぐにわたしに負けたら、もう一本とか言うでしょう。こんなに強いとは思わなかったから手加減したとか。だから、2本にしておけば、そんな言い訳はできないでしょう」

「そうだな」

少女は何度も経験をしているってことだろう。

見た目で騙され、なにもできずに負けた対戦者を。

俺も、その対戦者たちと同じと思われているのだろう。

初めからジュウベイよりも強い、化け物と思って戦うつもりだ。

「魔法は?」

少女が尋ねてくる。

少女は魔法を使うが、密偵の話では剣技だけでもジュウベイに引けをとらなかったと聞いた。

「なら、1本目は魔法なし、2本目は魔法ありで」

「3本目は?」

「2本目が終わったときに決めればいいだろう」

1本目は俺が勝つ。魔法なしなら負けるわけにはいかない。

2本目は互角、もしくは俺のほうが不利。

今は3本目のことは考えない。

少女は一言「了解」と言い、俺の提案を受け入れる。

「いいのか? 魔法がなくても」

魔法を封じられるってことは、その強みを封じられるってことだ。

少女の強みは魔法と剣技との混合のはずだ。

でも、少女は「問題ないよ」と言う。

それだけ、俺は甘く見られているってことだ。