軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

878 クマさん、シノブの話を聞く

「妖刀?」

妖刀って、よく物語やゲームに出てくる刀だよね。

「盗まれたって、もしかして城の地下に保管してあった妖刀ですか?」

「そうっす」

サクラとシノブは分かり合っているけど、わたしには何のことか分からない。

「わたしにも分かるように説明して」

「すまないっす」

「ごめんなさい」

2人は謝罪すると、話し始める。

「ユナ、妖刀って分かるっすか?」

有名どころだと村正とか聞く。

「詳しくは分からないけど、変な力を持った刀?」

ゲームや漫画に出てくる程度の知識しかもっていない。

それだって、ゲームや漫画はアレンジされたり、誇張されたりして事実じゃない可能性もある。

わたしの妖刀の知識は、ほぼないと言ってもいい。

それに、わたしが知っている妖刀とこの世界の妖刀が同じとは限らない。

わたしの知識は漫画や小説、ゲームに登場するものだから、知識としては現実と空想が混合してしまっている。

「そんなもんっす」

どうやら、同じようなものだったらしい。

「つまり、その変な力を持った妖刀が盗まれたってこと?」

「誰に盗まれたのですか?」

サクラの言葉にシノブは顔を横に振る。

「分からないっす。見回りの者が気づいたときには盗まれた後だったっす。わたしはその盗まれた刀を取り返すために情報を集めていたっす。そして、偶然に妖刀を持っている人物を発見して、妖刀を取り戻すために対峙することになったすが……」

「返り討ちにあったと?」

わたしは体に巻かれているシノブの包帯を見る。

「でも、シノブって強いよね。そのシノブがそんな傷を負うなんて」

「買い被りって言うことっすかね、それなりには強いと自分でも思っていたっすが、妖刀の力を甘く見ていたっす」

「そもそも、妖刀の力って存在するの? ただの切れ味がいい刀とか、刀を持っていた持ち主が無差別に人を殺しただけの由来とかじゃないの?」

刀の切れ味がいいから、人が斬りたくなった可能性はある。

日本人だって、拳銃が撃ちたいから海外に行く人もいる。

武器を持ったら、使いたくなる人もいるかもしれない。

ただ、それを人に向けて使うことができるかどうかは、別問題だけど。

漫画や小説の中に出てくる妖刀みたいに人を操ったり、呪われて不幸になるかと言われたら、信じられない部分がある。

「もしくは、刀の持ち主が非業の死を遂げたとか、その刀で多くの人を殺したから妖刀と呼ばれるようになったとか?」

手に持ったからと言って、強くなるとは思えない。

「ユナの気持ちは分かるっす。わたしも妖刀を持っている人と対峙したことなんてないっすから、妖刀の話は眉唾と思っていたっす。でも、対峙してみると、それが間違いだったと気付いたっす。気付いたときには遅かったすけど」

「それで、ミスったと言っていたのですね」

シノブが気を失う前にサクラが言っていたことを思いだす。

それじゃ、本当に不思議な力を持った刀は存在するんだ。

流石、異世界と言うべきか、異世界って言葉だけで納得してしまう。

「それじゃ、本当に妖刀の力って存在するってこと?」

「あると思うっす」

「そうですね。理由もなく、厳重に保管されないと思います」

つまり、危険だから厳重に保管されていたってことか。

サクラの言うとおりに理由もなしに、厳重に保管はしないよね。

「でも、そうなると、妖刀を持った人物が今も野放しになっているってことですね」

「言いにくいっすけど、そうっす」

サクラの言葉にシノブは申し訳なさそうな表情をする。

「それって、危険じゃ」

「そうっす。早く回収しないと被害がでるっす」

『はぁ』

わたしは心の中でため息を吐く。

聞いてから決めると言ったけど、断る選択肢がない。

シノブが怪我をするほどだ。妖刀はかなり厄介と思っていい。

「わたしとどっちが強い?」

「ユナだと思うっすよ。でも、ユナは優しいっす。魔物には手加減なしに攻撃はできるけど、人相手にはできないっすよね。ユナは師匠と戦いになったときも、くまゆるが攻撃されて怒っても、師匠が死ぬようなことはしなかったっす」

分かる。

魔物に対しては手加減なしに攻撃をして倒すことができる。

でも、人に対しては悪人でも殺すってことはできない。

それは優しさではなく、平和な日本で暮らしていたからもある。

関わりたくないと思ったことはあっても、人を殺したいと思ったことはない。

温室育ちのわたしが人を殺すことには抵抗はある。

百歩譲って、半殺しだ。

それも、もしもの場合は治療魔法があるからって気持ちもある。

「だから、ユナが妖刀を持っている相手に、どう戦うかによると思うっす」

つまり、殺す覚悟で戦いに挑めば、わたしが勝つ。

でも、相手を殺さないように戦えば、どうなるか分からないというのが、シノブの考えらしい。

「回収する役目はシノブだけなの?」

「正確な人数は分からないっすけど、わたしだけじゃないっすよ」

「もしかして、ジュウベイさんとかも?」

「いるっすよ」

「だからジュウベイから連絡がなかったのですね」

サクラは納得した表情をする。

サクラはシノブが怪我をしたことをジュウベイさんに伝えるために人を向かわせたことを話す。

「それは申し訳ないことをしたっす。師匠はいないっすから、連絡は伝わっていないと思うっす」

ジュウベイさんに伝わっていなかったら、国王にも伝わっていないことになる。

ジュウベイさんも参加しているならクマの手は不要かな。

わたしはクマさんパペットを見る。

「それで、シノブ。確認なのですが、妖刀は何本盗まれたのですか? 一つではありませんよね?」

何本?

「調べているところっす。少なくとも3本以上は盗まれたみたいっす」

「何本もあるの?」

「わたしも詳しい数は分からないっすが、それなりの数はあるっすよ」

たくさん、あるんだ。

そうだよね。一本なわけがないよね。

でも、盗まれた妖刀が一本だけじゃないと話が変わってくる。

「シノブ、確認ですが、あなたが対峙した人物は妖刀は何本持っていたのですか?」

「持っていたのは一本だけだったっす。どこかに隠し持っているのか、仲間がいて別の人物が持っているのか、現状ではなにも分かっていないっす」

仲間がいて、全員が妖刀使いだったら、面倒臭いことになる。

盗まれた妖刀が一本なら、ジュウベイさんに任せてわたしは手伝わないでもいいかなと思うけど。複数となれば、話は変わってくる。

違う場所に現れたら、ジュウベイさんも対処はできない。

「ユナ、どうしたっすか?」

「ジュウベイさんぐらい強い人は他にもいるんだよね?」

「いるっすけど、参加するかどうかは別問題っす。それぞれの領主の元にいるっすからね。簡単に参加することはできないっす」

和の国には城がある島以外にも島が3つある。

島と言っても大きい。

その島には管理する領主がそれぞれいて、そこにはジュウベイさんほどかはわからないが、強い人もいるということだ。

簡単に呼び寄せられるものではないと言う。

確かに、地方で守っている人を呼べば、もしもの場合に対処ができなくなる。

警察官でも、その地域の部署ってものがある。

この島で起きたことは、この島の管轄ってことなんだろう。

「ちなみに、わたしが手伝うことになっても問題はないの?」

「国王様に許可を貰えば、大丈夫っすよ。国王様もユナが手伝うと言えば、感謝しても、断ることはないと思うっす」

人によっては、身内だけで片付けたいと思う人もいる。

でも、あのスオウ王なら身内の恥を隠すより、国民を守るために動く。

それに時間が経てば、シノブのような犠牲者が出る。

「分かった。わたしも手伝うよ」

「ほら、わたしが言ったとおりになったっす。ユナは優しいから、話を聞いたら、首を突っ込むって」

「だから、別に優しくなんてないから」

話を聞いたら、聞かなかったことにして帰ることなんてできない。

「シノブが手も足も出ないようだから手伝ってあげるだけだよ」

「油断をしただけっす」

「つまり、相手の実力も見抜けない人間ってことになるけど」

「うぅ、それは」

「冗談だよ。ただ、次に来たときに、シノブが死んでいたら悲しいからね」

「ユナ!」

シノブはわたしに抱きつこうとするが、痛みで動きが止まる。

「それで、これからどうするの?」

「まずは、国王様にユナの許可をもらうっす。そうしないと、情報の共有ができないっすから」

「それでは、馬車の用意をさせますね」

「それなら、わたしがするっすよ」

「シノブは休んでいてください。ユナ様が治してくださったと言っても、動くと痛いのでしょう。それに、そんな格好では部屋から出られないでしょう」

シノブの格好は下着姿に包帯が巻かれているだけだ。

確かに、この格好じゃ動き回れない。

「わたしが準備させますので、シノブは着替えてください」

「サクラ様、ユナを呼んでくれて助かったっす。ありがとうっす」

「もう、危険なことはしないでくださいね」

「了解っす。全て、ユナに任せるっす」

自分から言い出したことだけど、押し付けられるのは嫌なんだけど。

わたしの性格も捻じ曲がっているからね。