軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

877 クマさん、連絡を受ける

わたしはスプーンでハチミツを掬い、子熊化したくまゆるの口の中に入れる。くまゆるは美味しそうに食べる。

もう一度、ハチミツを掬い、今度は子熊化したくまきゅうの口の中に入れる。くまきゅうも美味しそうに食べる。

仕事もなく、久しぶりのまったりモードだ。

くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみは大人気だった。

ミレーヌさんが販売しようと言っていたのは、自分が欲しかっただけだったのかもしれない。

だからと言って販売すると、片方が売れ残る可能性のことも考えると、販売する気にはなれない。

この子たちの片方が売れ残るのは見たくないからね。

わたしはスプーンでハチミツを掬い、それぞれの口の中に入れる。

それにしても平和だ。

マーネさん、元気かな。

巨大なスネイクの魔石を使った魔道具は完成したのかな。

薬のほうはどうなのかな。

そんなことを考えてまったりしていると。

「くぅ〜ん、くぅ〜ん」

白クマパペットから聞こえてくる。

クマフォンだと気づき、クマボックスからクマフォンを取り出す。

「もしもし、誰?」

「ユナ様、シノブを助けてください」

クマフォンからサクラの悲痛な助けを求める声が聞こえてくる。

「サクラ? どうかしたの!? シノブになにがあったの?」

「シノブが大怪我をして、目を覚まさなくて」

シノブが?

シノブは忍者みたいな格好をしていて、強い女の子だ。

そのシノブが大怪我?

「すぐに向かうから、サクラの家でいいの?」

「はい」

わたしはクマフォンを切ると、ハチミツをクマボックスにしまい、くまゆるとくまきゅうに声をかける。

「くまゆる、くまきゅう、和の国に行くよ」

「「くぅ〜ん」」

わたしとくまゆるとくまきゅうは倉庫にあるクマの転移門を使って、和の国に転移する。

クマの転移門は和の国の温泉がある大きな屋敷に繋がっている。

この大きな屋敷は小さい女の子、カガリさんが管理してくれている。

まずはカガリさんに会いにいく。

わたしは部屋を出て、いつもカガリさんがいる部屋に向かう。

襖を開けて、部屋の中に入る。

「カガリさん!」

いない。

部屋の片隅に酒だるが置いてある。

窓際に座布団が置かれ、いつもならその上でカガリさんが外を見ながらお酒を飲んでいる。

でも、いない。

お風呂? トイレ?

居場所を確認するため、探知スキルを使う。

反応がない。

つまり、周囲にはカガリさんどころか、誰もいない。

どうなっているの?

カガリさんが外出?

カガリさんは座敷童子じゃないから、出かけることもあると思うけど。

「こんなときにいないなんて」

わたしは外に出るとくまゆるを元の大きさに戻し、子熊化したくまきゅうを抱えるとくまゆるに乗る。

「くまゆる、街までお願い」

「くぅ〜ん」

わたしとくまきゅうを乗せたくまゆるは走り出す。

最高速度で走ったくまゆるは、あっという間に街に到着し、街の門番は、くまゆるとわたしの格好に驚く。

でも、わたしのことを知っている門番だったらしく、和の国の国王から貰ったカードを見せると、すんなりと街の中に入れてくれた。

くまゆるとくまきゅうを送還し、わたしはサクラの屋敷まで走る。

すれ違う人が驚くが、気にしている場合ではない。

街の中を駆け抜け、サクラの屋敷までやってくる。

屋敷の入り口には人が立っている。

わたしが現れると驚く表情をするけど、すぐに落ちついた表情になる。

「ユナ殿、お待ちしていました。サクラ様がお待ちです。お入りください」

サクラから伝えられていたのか、すぐに屋敷の中に通され、サクラがいるところに案内される。

「サクラ!」

「ユナ様」

「なにがあったの?」

サクラの前にシノブが寝かされている。

顔色が悪く、うめき声が漏れる。

「シノブが……」

サクラは心配そうにシノブを見る。

今は理由を聞いている場合ではない。

「診るから」

「よろしくお願いします。人払いはしてあります」

どうやら、気を使ってくれたみたいだ。

その気持ちに感謝。

わたしはシノブに近寄る。

下着姿のシノブが布団の上に寝かされている。

わたしはシノブの前に膝をつき、シノブの状態を確認する。

下着以外の部分には包帯が巻かれており、あちらこちらから血が滲み出ている。

とくに酷いのが右側腹部。包帯が血で滲んでいる。

それも、包帯越しでも酷いと分かる。

なにがあったの?

魔物に襲われたの?

シノブなら、大怪我をする前に逃げられたはずだ。

それだけの実力はある。

逃げられないほどの相手?

前回、怪我を負わせたワイバーンを思い出される。

いろいろと考えても答えはでない。

とりあえず、今は治療だ。余計なことは考えない。

わたしはシノブの右側腹部にクマパペットを近づける。

傷が塞がるイメージ。

クマの治療魔法を使う。

クマパペットが光り、シノブの傷を包み込む。

シノブの苦しそうな表情が和らいでいく。

「これで、大丈夫かな」

「治ったのですか?」

「傷を塞いだだけだよ。でも、これ以上は血は流れないから、大丈夫だと思うよ」

「あ、ありがとうございます」

サクラはシノブの手を握る。

シノブは、さきほどまで苦しそうだったけど、落ち着いている。

「他の箇所も治しちゃうから」

わたしは血が滲み出ている腕や足にも包帯の上から治療魔法を使う。

これで細かい傷も治ったはずだ。

「それで、なにがあったの?」

「申し訳ありません。わたしも分からないのです。昨夜、傷付いたシノブがやってきたんです。傷が深く、動かすわけにもいかず、お医者様を呼んだのですが、これ以上の対処はできず。どうしたらいいか考えて、以前にユナ様がシノブの怪我を治してくださったことを思いだして」

それで、わたしに助けを求めて連絡をしてきたのか。

「ただ、シノブはミスったって言っていました」

「ミスった?」

「そのあとすぐに気を失ってしまって、一度も目が覚めていません」

それじゃ、本人から聞くしかないか。

「ユナ様、あらためてお礼を。シノブを助けてくださり、ありがとうございます」

正座をしたサクラが深々と頭を下げる。

「頭は上げて。わたしもシノブが死んだら、悲しいからね」

「はい」

サクラは顔を上げ、微笑む。

やっと笑顔を見ることができた。

でも、本当に、シノブはなにと戦ったんだろうか。

シノブの傷を見れば分かったかもしれないけど。包帯の上から治療してしまったので、どんな傷か分からない。

「ユナ様、お茶を淹れました」

「ありがとう」

わたしはサクラが淹れてくれたお茶を飲む。

「そういえばジュウベイさんや国王には伝えたの?」

「連絡の者は向かわせましたが、返事はありません。夜も遅かったので、連絡が伝わっていないのかもしれません」

話によると連絡に向かわせた人は国王陛下に直接は会えないので、サクラから預かった手紙をジュウベイさんに渡してほしいと頼んだそうだ。ジュウベイさんに伝われば国王陛下へ伝わるはずだと言う。

そのときに城の医者の手配を頼んだそうだけど連絡がなく、それでわたしを呼んだみたいだ。

ジュウベイさんと国王陛下から連絡がないのはおかしい。

あの2人は、そんなに薄情な人ではない。

なにかあったのかもしれない。

それとも、シノブの怪我も関係している?

サクラが淹れてくれたお茶を飲んでいるとサクラは眠そうにしている。

サクラはシノブに付き添って寝ていないそうだ。

シノブの怪我も治り、安堵したのか、船を漕いでいる。

部屋で寝るように言ったけど、シノブが目を覚ますまで傍にいると言う。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚して、無理矢理にでも休ませることにした。

サクラはくまゆるとくまきゅうに抱かれると、静かに寝息をたてる。

窓から気持ちいい風が入ってくる。

静かな時間だけが過ぎていく。

窓際でシノブとサクラを見ているとシノブの目が開く。

「うぅ、ここは」

シノブが体を起こす。

「無理をしないほうがいいよ」

「ユ、ユナ?」

「体のほうは大丈夫?」

シノブは思いだしたように自分の体を見る。

「ユナが治療してくれたっすか?」

「サクラに連絡をもらってね」

「サクラ様が……」

「ずっとシノブを看病していたから、後ろで寝ているよ」

わたしの言葉で後ろを振り向く。

「迷惑をかけたっすね」

「ちゃんとお礼を言うんだよ」

そう言った瞬間、眠っていたサクラが目を覚まし、シノブを見る。

どうやら、わたしたちの話し声で起こしてしまったみたいだ。

「シノブ、気づいたのですね」

サクラは起き上がり、シノブに近寄る。

そして、目に涙を浮かべる。

「よかったです。もう、目を覚まさないかと思いました」

「心配をかけたっす」

シノブはサクラの頭に手を置く。

「うぅ」

顔を少し歪ませる。

「一応傷は塞いだけど、前回同様に、動けば痛いはずだよ」

シノブは前にワイバーンに肩を掴まれて、大怪我をしたことがあった。治療はしたけど、動かすと痛みはあったとのことだ。

「痛いっすが、動かせないほどじゃないっす」

シノブは体を少し動かすと顔を歪める。

「お水です。飲めますか?」

サクラは用意していた水が入ったコップをシノブに差し出す。

「ありがとうっす」

シノブはサクラからコップを受け取り、水を飲む。

「それで、なにがあったの?」

「それは」

「話せないことなの?」

「ユナは優しいっすから、話を聞いたら首を突っ込むことになるっすよ」

わたしが優しいかは別として、シノブが困っているなら、首を突っ込むかもしれない。

「それは聞いてから判断するよ。次来たら、シノブの墓参りなんてしたくないからね」

「それは否定できないっすね」

シノブはそう言って、怪我をしていた右側腹部を触る。

「話す前に傷の確認と包帯の交換をいいっすか。血が気持ち悪いっす」

別に急いでるわけじゃない。

「手伝います」

シノブはお腹の血まみれの包帯を取る。

「相変わらず、ユナの魔法は凄いっすね。斬られた場所が消えているっす」

斬られた?

「でも、押すと痛いっす」

シノブは自分の横腹を軽く押して、怪我の確認をする。

「前にも言ったけど、流した血は元に戻っていないから、ちゃんと食べて休息を取るんだよ」

「ユナ、お母さんみたいっす」

「そこはお医者さんみたいだと思うけど」

シノブは笑い、お腹を押さえる。

相変わらず体が引き締まって、綺麗な体をしている。

わたしのぷよぷよの体とは違う。

「シノブ、怪我はしてないようですが、包帯はどうしますか?」

包帯を持っているサクラが尋ねる。

「念のため巻いておくっす」

シノブがサクラの手を借りて、包帯を巻く。

包帯の交換が終わる。

「それでなにがあったの?」

「……妖刀が盗まれたっす」