軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

867 クマさん、令嬢2人を迎える

お店のリバーシ体験コーナー及び対戦コーナーは順調だ。

もう様子を見ることもないので、後のことはカリンさんにお任せ中だ。

もしなにか問題が起きたら連絡をして、と伝えてある。

わたしは久しぶりの休みをのんびりと、くまゆるとくまきゅうと家で過ごしている。

ゲームや漫画、アニメがあったら、最高の休日になるけど、そんなものはないので、くまゆるとくまきゅうに癒されることにした。

わたしは行ったことがないけど、休日に猫カフェとかに行く人の気持ちが分かる。

わたしはのんびりと膝の上にのる小さいくまゆるをブラッシングする。

「はい、くまきゅうに交代ね」

「くぅ〜ん」

くまゆるはわたしの膝から下りると、くまきゅうが膝に乗る。

久しぶりの引きこもりだ。

平和だ。

「ユナさ〜ん」

くまきゅうのブラッシングをしていると、外からわたしを呼ぶ声が聞こえてくる。

聞き間違いじゃなければノアの声だ。

「ユナさ〜ん、いますか〜」

わたしは膝からくまきゅうを下ろし、近くの窓を開けて返事をする。

「いるよ」

外には予想通りにノアがいたけど、いつもの服装ではない。

さらには隣には予想外の人物がいる。

「ユナお姉様、お久しぶりです」

「ミサ?」

ミサもいつもの服装ではない。

わたしは2人を家に迎え入れる。

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんもお久しぶりです」

「「くぅ〜ん」」

ミサはくまゆるとくまきゅうを撫でる。

「ミサも、リバーシの大会に参加するために?」

「はい。ノアお姉様から手紙をもらって、参加することにしました」

「誰と来たの? 一人じゃないよね?」

「お祖父様です。暇だから行くって」

本当に隠居したお爺ちゃんだ。

そういえば、ノアのお爺ちゃんとかお婆ちゃんって見たことがない。

クリモニアで見たことがないから、王都にでもいるのかな?

もし、亡くなっていたら、聞くのもあれだ。

「護衛はマリナ?」

「はい、引き受けてくれました」

それとグランさんのお世話をしているルーファさんも一緒らしい。

いつもの感じだ。

「それで、2人はくまゆるとくまきゅうに会いに?」

「はい」

ミサは曇りない笑顔で返事をする。

ノアとミサはくまゆるとくまきゅうに抱きつく。

「それで、2人の格好は?」

2人はいつも着ている服ではない。

なんというか、良家? ちょっとしたお金持ちの家庭が着る服を着ている。

「これですか?」

ノアはくるっと回って、服を見せてくれる。

「これは一般人に紛れ込むためです」

「一般人に紛れ込むため?」

「お父様にリバーシの大会に参加する、って言ったらダメと言われて」

「そうなの? もしかして、勉強をサボっていたから」

「違います。勉強はしっかりしています。お父様が言うには『リバーシの大会は庶民の娯楽だ。それを貴族であるお前が参加したらどうなる?』と言われてしまいました」

確かに、貴族の令嬢が参加でもしたら、一般の人は戸惑ってしまう。

手加減をする可能性もあるし、楽しめない。

「お父様の言いたいことも分かります。でも、わたしだってリバーシの大会に参加したいです」

リバーシの大会が庶民向けなのは否定はできない。

だからと言って、貴族が参加してはいけないルールもない。

でも、一般人が貴族相手に気を使わなくていい、とはならない。

「わたしも貴族と知られて、手加減をされたり、相手が緊張で実力が出せないのは本意ではありません。なので、領主の娘であることを隠す、ってことで了承を得ました。ちなみに、一般人のノアとして参加します」

「わたしも、ノアお姉様のお話を聞いて、ミサとして参加することにしました」

ちなみにノアールだから、ノア。

ミサーナだから、ミサ。

安易過ぎるかと思ったけど、わたしもユーナと偽名を使っていたので、人のことは言えない。

まあ、フルネームじゃなければ大丈夫かな?

「どうですか、貴族の令嬢には見えないですよね」

ノアは楽しそうにスカートの裾を軽く持つ。

綺麗な顔立ち、綺麗な髪、なにより、そのスカートの端を持つ所作。

「良家の令嬢には見えるかも?」

「え〜〜〜〜、どっから見ても一般市民ですよ」

これは、わたしがノアのことを貴族って知っているからかな?

「ユナお姉様、わたしはどうですか? ノアお姉様に言われて、わたしも着てみたんですが?」

ミサの場合は令嬢って雰囲気が内から滲み出ている。

優雅っていうか、佇まいというか、品位、気品がノア以上にある。

なにより、所作や口調が優雅だ。

「まず、ノア以上にお嬢様だね」

「ユナさん、酷いです。わたしがお嬢様に見えないってことですか?」

「ノアは、どっちに見られたいの?」

「それは、乙女心の問題です」

わたしには乙女心を理解するのは難しかった。

「2人とも、普通の一般人にはほど遠いかな。よくて商家の令嬢ってところかな。まあ、とりあえず一般の人はお姉様とか言わないかな」

「確かにそうですね。ミサ、わたしのことはノアお姉ちゃんと呼んでください」

「ノ、ノアお姉ちゃん……」

ミサは少し恥ずかしそうに言う。

「なにか、新鮮です」

その気持ちは少し分かるような気がする。

わたしのことをお姉様と呼ぶのはミサだけだ。

ミサに初めてユナお姉様と呼ばれたとき、むず痒い? 新鮮な気分になった。

恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい気持ちだ。

「うぅ、恥ずかしいです」

ミサにお姉ちゃん呼びはハードルが高かったみたいだ。

「まあ、人前や大きな声で呼ばなければ、大丈夫だと思うよ」

「一般人になるのは難しいです」

育った環境が違うなら、別の環境のことを知らなくてもしかたない。

口調だって、生まれ育った環境が違うなら変わってくる。

ノアたちは幼いときから、丁寧に話すように教育を受けているはずだ。

母親をお母様、父親はお父様と、一般家庭では呼ばない呼称だ。

教育でそう呼ぶように学んだはずだ。

「あと、2人とも動きが綺麗だからね」

「動きが綺麗?」

「家族以外に初めて言われました」

ノアとミサは少し驚いた表情をする。

「ノアとミサは気にしていないと思うけど、2人とも姿勢が綺麗なんだと思うよ」

背筋が伸びている。

食事をしているときも思っていたけど、食べ方が綺麗だ。

ノアたち貴族にとっては普通かもしれないけど、一般人から見たら、綺麗で優雅になる。

「確かに幼いときから、椅子の座り方、食事の仕方、歩き方、姿勢には気をつけるように言われていました」

「今では、それが普通になっていましたので」

「一般の子供は多少は気をつけるように言われるかもしれないけど、強くは言われないからね」

よほど変な姿勢でなければ注意はされない。

女の子としてはしたない格好でなければ、注意はされないと思う。

そもそも、貴族には所作の教育があるかもしれないけど、一般人には、そんなものはない。

「それでは、大会の参加は難しいでしょうか」

「まあ、貴族だって気づかれなければ大丈夫だと思うよ。良家の令嬢ぐらいなら、相手もあまり気にしないと思うし」

貴族の令嬢とお金持ちの令嬢では、埋めることができない差がある。

「それで、2人ともリバーシの腕前のほうは?」

「わたしは、時間が空いているララたちに相手をしてもらっています。連勝の連勝です」

それって、手加減されているんじゃないかな。

雇い主の家の令嬢相手に勝って、不興を買いたくないからわざと負けている可能性もある。まあ、それは可能性の1つだ。実際にノアが強い可能性もある。

前回、ノアが言っていたとおりに、この世界ではリバーシはノアが先駆者だ。

「ミサのほうは?」

「わたしは本格的に練習を始めたのは、ノアお姉様から手紙を貰ってからですが、ちゃんと練習はしています。結果は、勝ったり、負けたりです」

リバーシはミサの誕生日パーティーのときに、フィナたちと遊んで、楽しそうにしていたので、そのままプレゼントした。

そのリバーシで練習してくれたみたいだ。

「でも、参加するからには頑張ります」

「わたしも負けません」

昼過ぎまで、くまゆるとくまきゅうを堪能したノアとミサを連れて、昼食を食べにくまの憩いの店に向かう。

2人とも初めから、そのつもりだったらしく、ちゃんとララさんには伝えてから、家を出てきたそうだ。

「お腹が空きました」

「クマパン、楽しみです」

くまの憩いの店にやってくると、ミサは店の入り口にある大きなクマに触る。

「このクマさんも久しぶりです」

わたしたちは店の中に入る。

そして、パンを購入して席に座る。

2人が買ったパンは相変わらずクマパンと果汁だ。

「美味しいです」

それはなによりだ。

「やっぱり、クリモニアに来ましたら、これを食べませんと」

まるで、クマパンをクリモニアの名物みたいに言う。

まあ、クマパンはパンの中では売り上げ上位だ。とくに子供たちからの人気が高い。

なぜ知っているかと言うと、店ではパンの販売個数の統計を取っている。

その統計を基に、どのパンをどれだけ焼くか決めている。

多少の誤差はあるけど、統計は噓を吐かない。

エレナさんも、どの種類のケーキが売れているか統計をとって、ケーキを作っているそうだ。

それなら、大量に余ることも足らなくなることもない。

2人はパンを食べ終わると、プリンとケーキを食べる。

「家でも食べているんじゃないの?」

「太るからと言って、あまり作ってくれません」

そういえば、プリンやショートケーキの作り方を教えるときに、ミサの家の料理人のボッツさんに食べ過ぎは太るから、あまり作らないように言ったっけ。

2人がケーキを食べていると、カリンさんがテーブルの上にリバーシを置いていく。

それと一緒にポップも。

「カリンはなにをしているのでしょうか?」

ノアがカリンさんを見ながら尋ねてくる。

「あれは、リバーシ対戦コーナーって言うのかな? 初心者から経験者まで自由に遊ぶ場所だよ」

「そんなものがあったのですか?」

「リバーシの大会が始まるまでね」

予定はリバーシの大会が始まるまでとなっている。