軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

863 クマさん、確認を取る その1

商業ギルドを出たわたしとフィナは、店に戻ることになった。

まずはカリンさんに確認だ。

「ユナお姉ちゃん、いろいろと思いついて凄いね」

別に凄いことはなにもない。

元の世界のイベントを思いだしながら、できる範囲で意見を出しただけだ。

専門家なら、もっといいアイディアが出ているはずだ。

わたしは基本的なことしか言っていない。

「フィナだって、リバーシの体験ができる場所があると良いって言ってたでしょう。とってもいいアイディアだと思うよ」

対戦コーナー。

カードショップとか入ったことがあれば、思いついたかもしれないけど。

経験がなかったので、そこまで考えがいかなかった。

フィナは、カードショップのことを知らないのに思いついたのは凄いことだと思う。

なんでもそうだけど、はじめに思いついた人は凄いと思う。

ぬいぐるみのこともそうだ。

周囲をちゃんと見ているってことだ。

お店に戻ってくる。

昼どきは過ぎ、店内は落ちついた感じだ。

「カリンさん」

店内の様子を見ているカリンさんに声をかける。

「ユナさん、どうしたんですか? もうお腹が空いたんですか?」

わたしは腹ペコキャラじゃないよ。

「店内担当のカリンさんに確認? 相談? があって」

「わたしにですか?」

わたしたちは邪魔にならないように奥の部屋に移動する。

「それで、相談ってなんですか?」

わたしは商業ギルドでリアナさんと話したことをカリンさんに話す。

「そうですね。できるか、できないかと言われたら、できますよ。店内を見て分かるように空いている席もあります。子供たちも手が空いていますから、貸し出しぐらいはできるかと。でも対戦のためだけなら、一部のテーブルの上にリバーシを置いておけばいいんじゃないですか? そうしたら、やりたい人は勝手に座ってやると思いますし。興味があれば座るかと」

確かに、テーブルの上にリバーシを置いておけば、貸し出しの手間は省ける。

「昼食が終わったあとに、テーブルの上に置くだけならそれほど手間はかからないし」

話し合った結果、2人用のテーブルを対戦スペースにすることになった。

もちろん、リバーシをしながら食事をするのも有りだ。

プリンやケーキを食べながらでもいいし、パンやピザ、ポテトを食べながらでもOKにした。

リバーシの石が汚れるかもしれないけど、店の閉店後に洗えばいいって話になった。

カリンさんの許可をもらったので、一応厨房でパンを焼くモリンさんに伝える。

「店内のことはカリンに任せているから。カリンがいいって言うなら、わたしはそれでいいよ」

ってことで、モリンさんからも許可をもらった。

次にティルミナさんに会うためにフィナの家に向かう。

ティルミナさんとシュリは買い物から帰っていた。

そして、リアナさんが話した内容を話し、カリンさんと話し合ったことも話す。

「わたしもやりたい!」

孤児院の子供たちに、対戦相手になってもらう話を聞いたシュリが手をあげる。

「ティルミナさんがいいって言ったらね」

「お母さん。わたしもやりたい!」

わたしに言った台詞を、今度は母親のティルミナさんに向かって言う。

「ふふ、いいわよ」

ティルミナさんの言葉にシュリは嬉しそうにする。

「でも、その前に院長先生やリズさんたちから許可が貰えて、子供達がやりたいって言ってくれたらになるかしら?」

院長先生やリズさんが、ダメと言ったらすることはできない。

子供達がやりたくないと言えば、無理強いはできない。

シュリ1人だけにやらせるわけにはいかない。

「ティルミナさん、もし他にアイディアがあったら言って」

「そうね」

ティルミナさんは少し考える。

「体験してくれた人に紙を配布したらどうかしら?」

「紙?」

「うん、ちゃんとしたリバーシじゃなくて、マス目が書かれた紙をあげるの。そうしたら、家でも練習ができるでしょう」

仕事を終えた父親、母親、兄妹と一緒に家でもできる。

つまり、興味を持った人が家でも練習ができるってことだ。

「石は一回り小さい紙を用意すればいいわ。もちろん、片面は黒くしたものね」

それを家に帰ってから各自切り取ってもらえば、簡易的な石のできあがり。

風がある場所でやらなければ、紙でも十分に遊ぶことができる。

「家で練習すれば、大会にも出ようって気持ちになるかもしれないし、本格的にリバーシを買ってくれるかもしれないわ」

なるほど、サンプルみたいなものか。

わたしはティルミナさんの案を採用する。

ポスターの絵を描いて、リアナさんに渡すときに伝えよう。

わたしは遅くなる前に孤児院に向かう。

フィナは夕食の準備を手伝うらしいので別れた。

孤児院に到着すると、こちらも夕食の準備中だったらしく、リズさんとニーフさんが食事の準備をしている。その周りにはお手伝いをしている子供たちもいる。

「ユナさん、こんな時間にどうかしたのですか?」

食堂で幼い子と一緒にいる院長先生が、わたしに気づき声をかけてくる。

「ちょっと相談っていうか、お願いがあって」

「わたしにですか?」

「院長先生やリズさん、それとみんなもかな」

「それでは、一緒に夕食をいただきながら話を聞きましょう」

夕食の準備を邪魔するわけにはいかないので、院長先生の近くに座る。

料理を手伝っている子もいれば、幼い子の面倒を見ている子もいる。

前からそうだけど、本当にここにいる子供達はよく働く。

「年長組の子たちが幼い子どもたちの面倒をみるようになってから、わたしに休むようにと言い出したんですよ」

院長先生が、わたしの後ろにいる子供たちを見る。

「ニーフお姉ちゃんが来てくれたけど、それでも院長先生とリズお姉ちゃんが大変だってことは知っているから」

「うん、だから自分たちができることはしようって、みんなで話し合ったの」

手伝うところを見ていたけど、そんなことを言い出すとは。

院長先生は、その言葉を聞いて泣きそうになる。

「院長先生、また泣いている」

「歳を取ると涙脆くなって。ほんとダメね」

そんないい話を聞いていると『くまの憩いの店』で働いていた子供たちが帰ってきた。

「おかえり」

「あれ、ユナお姉ちゃん?」

「どうして、ユナお姉ちゃんがいるの?」

「みんなにお話があって」

「なになに」

どんどんわたしに集まってくる。

「ユナさんのお話は食事のときにしますから、準備をしなさい」

「はーい」

クマの憩いの店で働いていた子供たちは、持っていた袋をテーブルの上に置く。

袋からはパンの匂いがする。

どうやら、店で売れ残ったパンみたいだ。

店で売れ残ったパンは孤児院の食事に出される。

ちなみに、パンが売り切れた場合はカリンさんと店の子供たちが夕食と翌朝の朝食用に新しくパンを焼いている。

パン作りはカリンさんや子供たちの練習になるとのこと。

練習で作ったパンも無駄にならないし、一石二鳥だ。

ちなみに、モリンさんは見守っているらしい。

今日はどっちのパンかな。

夕食の準備も終わり、みんなも集まって食事となる。

わたしも一緒にいただく。

このパンは子供たちが作ったパンかな。

モリンさんのパンと比べると、物足りなさかがある。

でも、美味しいのは間違いない。

「それでユナさん。お話とは?」

「美味しい食べ物の話?」

「ごめん、食べ物じゃないんだ。みんなに相談? お願い? があって」

「相談?」

「お願い?」

わたしは説明する。リーバシの大会があること。みんなには憩いの店でお客さんにルールを教えたり、ゲームの相手をしてほしいこと。

「みんなリバーシはできるんだよね」

「僕、一番上手いよ」

「嘘を吐くなよ。この前俺に負けただろう」

「一回だけだよ」

「それなら、わたしだって勝ったことがあるよ」

「落ちつきなさい」

院長先生が声を上げると、静かになる。

「ユナさんが困っているでしょう。喧嘩をするようなら、やらせませんよ」

「ごめんなさい」

「先生、ごめんなさい」

みんな院長先生に謝り、部屋は静かになる。

「でも、鳥のお世話をした後に店でリバーシの相手ですか?」

「全員はあれだから、交代でお願いできればと思っているけど、やってくれる子いる?」

「わたしやる〜」

「僕も」

「わたしは下手だから」

「僕もあまりやらないから」

もちろん無理強いはしない。

人によってやりたい子もいれば、やりたくない子もいる。

わたしは、どっちかというとやりたくないほうだ。

「院長先生、リズさん、ニーフさん、どうかな。やりたい子だけでいいんだけど」

子供たちの気持ちも大切だけど、子供たちのお世話をしている3人の許可が必要だ。

「そうですね。迷惑をおかけしないなら、わたしはいいと思います。人と関わるのはいい勉強になります」

と院長先生。

「そうですね。全員じゃなければいいかと。鳥のお世話以外にもやることがありますから」

とリズさん。

「わたしも2人と同じです。ここで働く子供たちは、お店の子たちと違って、他人と関わることが少ないのが気になっていたので」

人との関わりが少ないと、わたしみたいになっちゃうからね。

「あと気になるのは、店で働く子供たちが不愉快にならないかと。自分たちが働いているのに友達は遊んでいることになりますから」

確かに言われてみればそうだ。

店で働く子たちは忙しいから、鳥のお世話をする子たちに、リバーシで遊ぶように言っているようなものだ。

「僕もリバーシをやりたい」

「わたしも」

店で働く子たちからもやりたいって声があがる。

そうだよね。

自分たちは働いているのに、友達はリバーシで遊んでいる。

だからといって、仕事をやらないわけにはいかない。

でも、店で働く子供達の気持ちも分かる。

「それじゃ、交代でどうかな」

「交代?」

「リバーシの時間帯は、混み合っていないでしょう。だから、2人ぐらいなら大丈夫じゃないかな」

「本当!」

わたしの話を聞いて、店で働く子供たちは喜ぶ。

「あくまでわたしの考えだよ。そのあたりは、モリンさんとカリンさんと話し合ってからだよ。2人が許可を出さなかったらダメだから」

もう一度、カリンさんとモリンさんに相談だね。

とりあえず孤児院にいる子たちから、毎日交代で4人から6人ほどが派遣されることになった。

その交代の順番を決めるのは、リズさんに任せることになった。