軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

862 クマさん、アドバイスをする その2

フィナが賞品に、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを加えてはどうか、と言い出した。

「リバーシとぬいぐるみは関係ないと思うけど」

「それを言ったら、お店の食べ放題も関係ないと思うよ」

確かに。

そう言われると反論ができない。

「でも、なんでぬいぐるみ?」

「くまゆるとくまきゅうは子供達に人気があるから、参加する人が増えるかと思って」

「確かにいいアイディアね。ユナさんのお店の影響で、クリモニアではクマ人気がありますからね」

フィナのアイディアにリアナさんが頷く。

2人の言うとおり、クリモニア限定だけどクマは人気がある。

わたしの店に飾ってあるクマを、欲しがる人がたくさんいると聞いた。

子供達が着ているクマの制服も好評だ。

クリモニア限定だけど、街の中をくまゆるとくまきゅうを連れて歩くと、子供達が集まってくることがある。

「だから、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを賞品にしたら、たくさんの子供達が参加すると思います」

「そうね。子供がいる大人も、子供のために頑張って手に入れようとする人もいるかもしれないわね」

「絶対にいると思います」

リアナさんの言葉にフィナは力強く言う。

くまゆるとくまきゅうぬいぐるみの販売の話があったけど、許可は出していない。

理由としては、もし店にたくさんのくまゆるとくまきゅうぬいぐるみが売れ残ったら、わたしが悲しい。

さらに言えば、どちらか片方だけ売れるようなことがあったら、くまゆるとくまきゅうが可哀想だ。

くまゆるだけ売れて、くまきゅうが売れなかったら、わたしは悲しくなる。もちろんその逆もだ。

セット販売する方法もあるけど、売り場で「こっちいらない」って言葉が聞こえたら涙が出る。それに絶対に片方でいいから、半額にしてほしいとか言う人はいる。

精神的なダメージを受けるので、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみの販売は許可はしてない。

あくまで、くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみは関係者用だ。

ちなみにプレゼントするときは、かならずセットでプレゼントするようにしている。

もし、今回くまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを賞品にするなら、セットにするつもりだ。

とりあえず、フィナのアイディアを取り入れることにした。

「それじゃ、ぬいぐるみに興味がない子もいるだろうから、無料チケットを一枚追加しよう」

男の子とかはぬいぐるみより、食べ物だと思う。

リアナさんから「それだと金額が増えますよ」と言われたけど、気にしないでおく。

「賞品はこんなもんだね」

「さっそくチラシを作り直しますね」

「待って」

立ち上がろうとするリアナさんを止める。

ポスターは目立ってこそポスターだ。

「興味がない人は、ポスターを見てもスルーすると思うよ」

「ユナさんが言いたいことは分かりますが、だからと言って、どうやって興味をもってもらったらいいのか」

興味がない人はポスターを見ても気にもしない、足も止めない。

その人の足を、ポスターの前に止めることを考えないといけない。

元の世界じゃ当たり前だけど、ポスターには有名人の写真が入ったポスターが多い。

好きな有名人なら足を止めて見るだろうし、可愛いイラストが入ったポスターでも、足を止めることもある。

経験者のわたしが言うのだから間違いない。

「ポスターに絵を入れたらどうかな」

「絵ですか?」

わたしはクマボックスから紙とペンを取り出すと、簡単にラフを描く。

小さい男の子と女の子がリバーシをやっている感じだ。

「そういえば、ユナさんは絵が描けるんですよね」

前に描いたミレーヌさんの絵を知っているのかもしれない。

「絵があると、気になって足を止めるでしょう」

「劇などのポスターには役者の絵が描かれていますね。それに絵があると、リバーシがなんとなく分かります」

まだラフだけど、分かってくれたみたいだ。

「でも、今から絵描きを手配するとなると時間が……」

「わたしが描くよ」

「本当ですか?」

乗り掛かった船だ。

少しでもリバーシの大会が成功するために力を貸すことにする。

「これで人が集まればいいんですが」

こればかりはやってみないと分からない。

「フィナもなにかアイディアがあったら言って」

「えっと、どこかで体験できる場所があるといいかも」

「体験?」

「興味があっても、買わないとできないよね」

リバーシがなければやることができない。

「友達や知り合いが持っていれば、できるけど。いなければ……」

フィナの言うとおりだ。

わたしみたいに、友達がいない人もいるかもしれない。

やりたくてもできない人もいるはずだ。

リバーシは1人じゃできない。

元引きこもりとして、失格だ。

おひとり様のことは分かっていたけど、フィナやノアたちを誘えば来てくれるので、おひとり様の気持ちのことを忘れていた。

「それに、買えない人もいると思う」

「そうだけど、買えない人にあげたら」

「だから、どこかで貸し出せる場所があったらいいかなと思ったの」

つまり、対戦スペースってことか。

わたしは入ったことがないけど、カードゲームショップには対戦するテーブルがあり、自由に対戦ができるらしい。

リバーシを貸し出せば、テーブルさえあれば対戦はできる。

「少しでも興味を持ってくれる人がいれば」

確かに、フィナの言うとおりだ。

興味を持った人のうち、参加してくれる人が1割でもいい。

10人中1人。

100人中10人。

分母が増えれば、人数は増える。

参加してくれる人が2割になれば2倍になる。

興味を持つ人が増えれば、今度はその人の口から広まるかもしれない。

少しでも興味の輪を広げていけばいい。

「いいアイディアだね」

「わたしもいいアイディアだと思います。ですが、貸し出しするには場所と人が必要になります。つまりお金がかかります」

だから「ムリです」とリアナさんは言う。

リアナさんの言い分も分かる。

「それなら、うちの店でやればいいよ」

「ユナさんのお店ですか?」

わたしの店だったら場所はある。

「ですが、店の回転率が悪くなるのでは?」

「お昼時は混むけど、それ以外の時間帯なら大丈夫だと思うよ。そのあたりは、ティルミナさんやカリンさんと相談してからになるけど」

昼食後はまったりとケーキやプリンなどを食べに来る女性や子連れのお客さんが多い。

紅茶を飲みに来るお客さんもいる。

その片手間にリバーシをやってもらえればと思う。

それに昼食どきは、仕事の空いた時間に食べに来る人が多いので、リバーシなんてやっている時間はないと思う。

あとの問題点は、リバーシを教える人と対戦相手。

店で仕事をしている子供たちに頼むのは流石に無理だ。

仕事に支障が出る。

できるのは貸し出し業務ぐらいだ。

そもそも、リバーシの一回の時間って10分ぐらい?

ポンポン置いていけばそんなもんだと思うけど、長考する人もいるよね。

問題点が、また出てきた。

「リアナさん、時間制限ってあるの? 長考する人はいるよね」

「細かい時間は決めていませんが、時間をかける人がいましたら、注意するぐらいでしょうか」

「それもチラシに書いたほうがいいね」

将棋とか囲碁のプロは何十手先も読むから、長考するって聞いたことがあるけど。流石に素人はそんなことはしないはずだ。

わたしがしないだけで、みんなはするとか?

「フィナって、リバーシをやるとき何手先も考えている?」

「何手先って?」

「自分がここに置いたら、相手がここに置くから、次にここに置いて、そしたら相手がここに置いてとか、数手先を考えることかな?」

「えっ、リバーシってそんなことを考えてやるものなんですか? 相手がどこに置くなんて分からないから、あまり深く考えていないよ。考えているのは、端と角を相手に取られないようにして、自分が取れるように考えているぐらいだよ」

そうだよね。素人はそんなもんだよね。

プロなら定石があって、考えた場所に石を置いてくれるかもしれないけど。

そもそも、この世界にリバーシのプロなんて存在しないんだ。それについて深く考えるのはやめて、次に対戦相手のことを考える。

振り出しに戻る。

考えているとフィナと目が合う。

目の前にいた。

「フィナ、孤児院の子供たちはリバーシはしているんだよね」

「うん、わたしもたまに一緒にやるよ」

「それじゃ、朝の鳥のお世話が終わったら、店に来てお客さんとリバーシをするのはどうかな」

「子供たちとですか?」

「前からやっているなら、他の人よりは上手だと思うんだよね。それにちょっとしたアドバイスもできるかと」

角や端を取ると有利になるとか。

わたしも、それぐらいしか知らないし。

もしかすると、わたしより詳しい可能性のほうが高い。

「子供たちの中で、上手な子、そこそこの子、まだ慣れてない子って分けて、お客さんの練習相手をしてもらえば」

初心者な人には慣れていない子を相手にしてもらって、そこそこ上手になったら、そこそこの子を当てる。上手になってきたら、上手の子を当てる。

「確かに子供達が相手をしてくれるなら、助かりますが」

「まあ、これも孤児院の子供たち次第だから、わたしの一存じゃ決められないね。お店の件と一緒に確認してみるよ」

「お願いします」

話し合いも終わり、方向性も決まった。

あとは動くだけだ。

「ユナさん、ありがとうございます。頑張って宣伝しますね」

「わたしも、ティルミナさんとカリンさんに店でできるかどうかの確認と、孤児院の子供たちに聞いてくるよ」

わたしとフィナは商業ギルドを出る。