軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

860 クマさん、まったりする

マーネさんの成長を確認し、大猿やゴブリンキング、双頭スネイクなどの死体をマーネさんに渡したわたしはクリモニアに帰ってきた。

お金の方は後払いになったけど、ゴブリンキング、大猿、双頭スネイク。かなりの金額になりそうだ。

なにか買おうかな。

元の世界ならゲームとか漫画とかたくさんあったけど。この世界だと欲しいものは思いつかない。

新しいパソコンもゲーム機もない。

これが貴族だったら、高級ドレスや宝石を買ったりするんだろうけど、欲しいとは思わない。

「う〜ん」

お金の使い道がない。

それにしても双頭スネイクの魔石にあんな効果があるとは思わなかった。

それじゃ、和の国で倒した大蛇の魔石を使えば、もっと遠くの人と会話ができるようになるのかな。

しかも、大きい魔石が5個だ。5箇所同時通話も可能かもしれない。

問題としてはどこまでの距離の相手と会話ができるかだね。

クマフォンみたいに距離に関係無く会話できたら凄いけど。

今度王都に行ったら、マーネさんに聞いてみようかな。

そんなことを考えながら、わたしはベッドの上で子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱きながらゴロゴロしている。

朝寝坊をしても誰も怒らない。

布団から出なくても怒られない。

最近は朝が早かったから、朝のゴロゴロは幸せのひとときだ。

白クマのおかげで肉体的な疲れは取れても、心の休息も必要だ。

たまに思う。この白クマ装備の効果って、わたしの疲れをとって、馬車馬のように働かせるためなのではないだろうか。

だからといって、効果がないほうがいいかと言われたら、ないと困る効果だ。

そんなことを考えながらベッドの上でゴロゴロしていたら、結局、太陽が頭上にきていた。

朝食も食べずにゴロゴロしていたので、お腹が空いてきた。

クマボックスに食べ物は入っているけど、店の様子見と昼食を兼ねて、くまさんの憩いの店で食事をすることにした。

フィナに帰って来たことを伝えていないし、食べたらフィナに会いに行こう。

くまゆるとくまきゅうを送還し、店にやってきた。

昼時ということもあって、店の中は混んでいる。

「ユナお姉ちゃん!」

クマの制服を着た女の子が、小走りで近寄ってくる。

10日ぶりぐらいだけど、いろいろとあったから久しぶりに感じる。

「席、空いている? 無ければ奥の部屋でもいいけど」

奥には従業員の為の休憩部屋がある。そこで交代しながら休むようになっている。

女の子はぐるっと周りを見る。

すると、壁際の近くで別の女の子が手を振っている。

「あそこが空いているみたいです」

わたしの手を引っ張って、空いている席に連れてきてくれる。

「2人ともありがとうね。あと、ついでにいつものパンと果汁をお願い」

「うん」

「すぐに持ってくる」

普通はパンが並んでいる場所でパンを選んで購入。そして好きな席で食べる。

でも、パン売り場は混んでいるので、女の子たちに頼んだ。

女の子たちが焼きたてのパンと、オレンの果汁を裏から持ってきてくれる。

「ありがとう」

お礼を言うと、2人は嬉しそうに仕事に戻っていく。

店内を見ながらパンをかじる。

美味しい。

平和だ。

クマの格好した子供たちが店内を動き回り、お客さんはパンやピザ、ケーキ、プリンを美味しそうに食べている。

最近は氷竜と戦ったり、大猿と戦ったり、殺伐としていた。

平和な世界を見ると落ちつくね。

人には心を休める時間が必要だ。

パンを食べながら周囲を見ていると、近くのポスターが目に入る。

壁にA4用紙ほどの大きさのポスター? チラシが貼ってあった。

その内容に目がいく。

『リバーシ大会参加者募集中』

リバーシ大会?

日付と時間、それから申し込みは商業ギルドまでと書いてある。

「ユナさんいらっしゃい。仕事は終わったんですか?」

ポスターを見ていると、カリンさんがやってきた。

「終わったよ」

「もう、ユナさんはお店のオーナーなんだから、危険な冒険者の仕事はしなくてもいいと思うんだけど」

冒険者の仕事はしなくても、それなりに裕福な暮らしをしていけるぐらいのお金はある。

まあ、それはこの世界に来た当初からなんだけど。

冒険者は暇つぶしみたいなものだ。

それに、当時は身分証が必要だったしね。

「今回はちょっと断れなかったんだよ」

断れたかもしれなかったけど、今回は引き受けてよかったと思う。あとでマーネさんが行方不明、と知らされでもしたら悔やんでいたかもしれない。

そんな気持ちになるのも、マーネさんと親しくなったからだと思う。

「お母さんとエレナさんにも、ユナさんが帰ってきたことを伝えてきますね」

「その前に、ちょっといい? これってなに?」

わたしは『リバーシ大会参加者募集中』のポスターを指さす。

「あれ? もしかしてユナさん、知りませんでした? しばらく前から貼ってありましたよ」

いろいろと忙しかったから、貼ってあるのに気づかなかった。

「そのポスターはリアナさんに頼まれたんです。リバーシの大会をするから、ポスターを貼らせてほしいって」

リアナさんが?

リアナさんは、ミレーヌさんがいないときや忙しいときに、わたしの対応をしてくれる商業ギルドの職員の女性だ。

ハチミツの件やトランプの作成を手伝ってくれた。

そのあとにリバーシも作ってもらい、普通に売ってもいいか尋ねられたので了承したことがあった。

もちろん、利益の一部がわたしに入ってくることになっている。特許みたいなものがあるらしい。

なので、どこかで同じようなものが作られ、利益がでたらわたしの懐が潤うことになる。

「どうして、商業ギルドのリアナさんがそんな頼みを? それに大会って?」

「わたしも詳しくは知らないんだけど。リアナさんが考えたみたいです。それで、参加者を募集するポスターを頼まれたんです。詳しいことはティルミナさんが知っていると思いますよ」

わたしが知らないところで、そんなイベントが開催されようとしていたんだね。

最近、クリモニアにいなかったから、知らないのも仕方ないけど。

「ちょうど、ティルミナさんが来たみたいですよ」

店の入り口を見るとティルミナさん、フィナ、シュリの3人が店に入ってきたところだった。

「ああ、ユナお姉ちゃん!」

「本当だ」

シュリが走り出そうとするのをフィナが腕を掴んで止める。

「店の中を走っちゃダメだよ」

「うぅ、ごめんなさい」

フィナとシュリ、それからティルミナさんの3人がやってくる。

「ティルミナさん、食事ですか?」

「ええ、店の様子の確認を兼ねてね」

どうやら、わたしと同じみたいだ。

「それじゃ、わたしは仕事に戻ります。ティルミナさんたちはゆっくりしていってください」

とカリンさんは言うと仕事に戻っていく。

「ユナお姉ちゃん、お帰りなさい」

会いに行こうと思っていたフィナのほうからやってきてくれた。

「ただいま」

「ユナちゃん、帰ってきていたのね」

「昨日、帰ってきて、さっきまでベッドの上でゴロゴロしていました」

「それで、お腹が空いて、店に来たわけね」

パンが置かれているテーブルを見ながら言う。

名探偵はここにいた。

「それもあるけど、しばらく店に来ていなかったから様子を見にくるのもかねてね。その後にフィナに会いに行こうと思っていたんだよ」

「ふふ、それじゃ、タイミングがよかったわね。それで仕事は大変だったの?」

「ユナ姉ちゃん、今回はどこに行ったの?」

「怪我はしてない?」

ティルミナさん、シュリ、フィナが、それぞれ尋ねてくる。

「それじゃ、食事をしながら、ユナちゃんの話を聞きましょうか」

ティルミナさんは勝手に決める。

「わたし、パンを取ってくるね」

「わたしも!」

「待ちなさい。お金を持っていないでしょう」

ティルミナさんはフィナとシュリの後を追う。

そして、パンを買ってきたフィナたちはわたしの近くの椅子に座る。

「それで、今回はエレローラ様に呼ばれて王都に行ったんだよね」

「うん、なんでも魔法省のマーネさんって人が、わたしに会いたがっていたらしくてね」

マーネさんのことを簡単に説明する。

魔法省で働くマーネさんのため王都から離れた森深くまで薬草を採りに行ったこと。

冒険者と出会ったこと。

魔物と戦ったことなど。

流石に魔法陣のことは話していない。

「大猿!?」

「とても強かったよ」

「まさか、フィナに解体を?」

「ううん、そのマーネさんって人に譲ったよ」

「ユナ姉ちゃん、大猿ってどのくらい大きいの?」

「シュリを一口で食べられちゃうぐらい大きいよ」

わたしは大きく口を開いて、シュリを食べるマネをする。

「ユナ姉ちゃんの口は小さいよ」

怖がらせるためにやったけど、怖がってくれなかった。

逆に笑われてしまった。

「そういえばティルミナさん、リバーシ大会って」

わたしは壁に貼ってある『リバーシ大会参加者募集中』のポスターに目を向ける。

「ああ、それ? ユナちゃん、知らなかったの? てっきり、フィナが伝えているものだとばかり思っていたわ」

「わたしはお母さんが伝えているって思っていた」

お互いに伝えていると思っていたみたいだ。

「でも、リバーシの大会なんてするんだ」

「リバーシの売り上げがいいから、大会をして更に盛り上げようとしているらしいわ」

リバーシ、売れているんだ。

流石、元の世界でもたくさん売れた玩具だ。

この世界でも人気があるみたいだ。

「でも、思っていたよりも参加者が集まっていないみたいなの」

「そうなの? 売れているんじゃないの?」

「ええ、売れているから、それなりの参加者が集まると思っていたみたいなんだけど」

集まっていないんだ。

わたしが考えた玩具じゃないけど、それはそれで悲しい。

一応、この世界では、わたしが発案者となっている。

「それで、リアナさんがユナちゃんに相談したいと言っていたわよ」

「わたしも、リアナさんにユナお姉ちゃんがいつ戻ってくるか、聞かれたよ。ユナお姉ちゃんに伝えようかと思ったんだけど。リアナさんが急ぎじゃないから、大丈夫だって」

だから、クマフォンで連絡はしなかったわけか。

でも、連絡をもらったからといって、戻ってくることはできなかったから、同じことだ。