軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

858 クマさん、マーネさんの成長姿を見る

わたしたちはエレベーターに乗り込み、屋上に移動する。

エレベーターを出て、上を見れば青い空が見え、白い雲がゆっくりと流れている。

「ここは?」

「ちょっとした魔道具などの実験を行うときに使う場所よ。ここなら、広いし、他の人に見られることもないわ」

わたしは氷竜の角と鱗を出す。

角は大きく、わたしの身長以上ある。

「本に描いてあった氷竜の角に似ている」

マーネさんが触れる。

「ユナ、もう一度確認だけど、本物?」

「噓を吐く理由はないよ。偽物って思うなら、仕舞うけど」

別に無理して信じてもらう必要はない。

「ごめんなさい、信じるわ。この大きさ、この冷たい魔力。それにこの綺麗な青白い鱗。

氷竜以外ありえない。ユナ、氷竜の角を削らせてもらってもいい? もちろん、お金は払うわ」

「お金はいいよ。貸し、1つでどう?」

「氷竜の角の対価の貸しって、怖いわね」

「お願いごとができたら、頼みたいだけ、ただそのお願いが無理だったら別に断ってもいいよ」

いつものことだけど、お金の必要はない。

前回、解体イベントで売った収入もたくさんある。

もし、お金が必要になれば、売る物はたくさんある。

それよりも薬草や魔法陣、魔道具に詳しいマーネさんに貸しを作ったほうが、今後のためになるかもしれない。

コネは多い方がいいし、先行投資だ。

「それじゃ、少し角を削らせてもらうわね」

マーネさんはアイテム袋から2本のナイフとガラスの小瓶を取り出す。

そして、ナイフを氷竜の角に当てて削ろうとする。

でも、角の上を滑るだけだ。

「やっぱり、普通のナイフじゃ削れないわね」

そう言って、もう一本のナイフを手にして、氷竜の角にナイフを当て、削っていく。

今度はちゃんと削れて、ガラスの小瓶の中に入っていく。

「そのナイフはミスリルナイフ?」

「じゃないと、削れないからね」

「さっきのナイフは?」

「硬さの確認をしたかったから、鉄のナイフを使ってみたのよ。流石に削れなかったわ」

そう言うと、マーネさんは丁寧にゆっくりと氷竜の角を削っていく。

しばらくすると、小瓶に8割ほど削り粉が溜まる。

マーネさんは蓋をしっかり閉める。

「ありがとう」

「それだけでいいの?」

小瓶一つだけだ。

「これだけで十分よ。ああ、でも使い切ったら、またお願いね」

「了解」

「もし売り払うことがあったら、わたしにも少し売ってね」

今のところその予定はない。

この角で武器が作れたりしないかな。

わたしは氷竜の角をしまう。

「次はさっきの鱗も見せてもらうわ」

マーネさんは氷竜の鱗に近づく。

「綺麗」

太陽の光が鱗に反射して、輝いている。

「一枚あげようか?」

「はぁ?」

わたしの言葉に「あなた何を言っているの?」的な表情をしている。

「あなた何を言っているの?」

表情だけでなく、言葉にされた。

「たくさんあるし。一枚ぐらいだったら」

「あなた、本当に倒していないのよね」

「氷竜の巣から、貰ってきただけだよ」

「角も?」

「それは折って」

「……それ以上は聞かないことにするわ」

そう言って、氷竜の鱗に目を移す。

「ユナ、簡単に譲るとか言っちゃダメよ。足元を見られるわよ。わたしはあなたが、どんな経緯で手に入れたか分からない。でも、簡単に手に入れられないことだけは分かっている。巣から手に入れたと言っているけど、氷竜の巣を見つけるだけでも大変なことよ。氷竜が住む場所は遠く、雪や氷に覆われた場所。人が簡単に行ける場所じゃない」

いや、氷竜が普通の山に住み着いて、赤ちゃんが生まれたから、立ち去っただけだよ。

棚から牡丹餅って感じだ。

まあ、それまでに苦労はあったけど。

「あなたに確認するけど、今回の依頼、上乗せ請求するつもりはないのでしょう」

「ないけど」

「はぁ、あれだけのことがあったのに。とりあえず、今回支払うはずだった依頼料の2倍は払わせてもらうわ」

「別にいいよ」

「ダメよ。それともなに? わたしの命がそんなに安いと言いたいの?」

「そんなつもりはないよ」

「自分の命の価値は、わたしが付ける。危険な魔物から守ってくれた。毒に侵されたときも治してくれた。はっきり言って、2倍でも安いくらいよ」

「自分の仕事をしただけだよ」

「その優しさがユナのいいところだけど、自分の価値を下げているわね」

「そんなことはないと思うけど」

神様から貰った力で、自分の力だと思っていないから、そのあたりが緩くなっているのかもしれない。

これが、何年も修行して、自分で得た力なら、安売りはしてないかもしれない。

「でも、くれると言うなら、貰ってもいいわよ」

マーネさんは嬉しそうに鱗を撫でている。

とってもいいことを言っていたのに台無しだ。

「マーネさん、その一言で、台無しだよ」

「さっきまでは年上からの忠告よ。でも、欲しいかいらないかは別の話よ。欲しいに決まっているでしょう」

さっき、一瞬でもマーネさんのことを尊敬した自分が悲しい。

「断ったら、二度と手に入らないわよ。竜の魔力が籠った鱗を使った薬だって作れるし」

わたしは氷竜の鱗を一枚譲ることにした。

ただし、条件を付けて。

「誰かに話したり、売ったりしないでね」

「約束するわ。薬、魔道具、いろいろとしてみたいことがあるわ」

子供が楽しい事に興味を持ったように目を輝かせている。

わたしたちはマーネさんの仕事場に戻り、依頼達成のサインとお金をもらう。

依頼達成の紙を冒険者ギルドに持っていけば、依頼達成となり、評価が上がる。

「それじゃ、さっそく薬を作ってみようかしら」

「さっき、素材が足らないって」

「ええ、足らないわよ。でも、現状の効果は確認しておきたいのよ」

「そんな中途半端で効果がでるの?」

「現状の薬で多少の成長の効果は出ているわ。でも、効果が切れると元に戻るのよ。だけど、今回2つの素材を手に入れることができたから、成長具合と時間を知りたいのよ」

どこかの見た目は子供、頭脳は大人の作品にでてくる薬に似ているような。

そんなわたしの気持ちに関係なく、マーネさんは薬の調合を始める。

なんとなく帰るタイミングを逃したわたしは、ソファーの上に座り、子熊化したくまゆるとくまきゅうを召喚して、まったり過ごす。

それから国王から娘のフローラ様に会ってほしいと言われていたことを思い出し、マーネさんに「ちょっとフローラ様に会ってくるね」と声をかけて、部屋を出る。

フローラ様と遊び、再び、マーネさんの研究所に戻ってくる。

わたしが鍵をかけずに出たから、そのまま部屋に入ることができた。

不用心だ。

研究資料を盗まれでもしたらどうするの? と思いつつ、マーネさんに「戻ったよ」と声をかける。

でも、マーネさんから返事はなく、未だに調合をしている。

わたしはソファーの上でくまゆるとくまきゅうとまったりしていると、マーネさんが声をあげる。

「これで、よし」

「うん? できたの?」

眠りそうになったわたしは尋ねる。

「ユナ、居たの?」

どうやら、この数時間、わたしの存在に気付いていなかったみたいだ。

しかも、出かけてたことも、帰ってきたことも把握してなかったみたいだ。

それだけ集中して薬を作っていたってことだ。

「薬の効果が気になって」

「まあ、いいわ。それじゃ、ユナ、時間の計測をお願いしてもいい?」

「いいよ」

了承すると、マーネさんは服を脱ぎ出す。

「どうして、いきなり服を脱ぐの?」

「成長したらキツイでしょう。下手したら、服が破けちゃうわよ」

どれほど成長するかわからないけど、子供服を大人が着ることはできない。

「以前、服を脱ぐ前に薬を飲んだら、大変だったのよ。締め付けられるように苦しかったわ」

マーネさんは服を脱ぎ、用意していたバスタオルを体に巻く。

「それじゃ、薬を飲むから、大きくなり始めたら、計測をお願いね」

マーネさんは置き時計をテーブルの上に置き、隅っこに置いてある姿見に移動する。

わたしは置き時計とマーネさんが見える位置に移動する。

「いつでもいいよ」

マーネさんは小瓶に入った液体を飲む。

反応はない。

でも、背が伸びている気がする。

「ユナ、どう?」

鏡の前に立っていたマーネさんが振り返る。

可愛い女の子が美少女になった。

「凄い」

小学校高学年ぐらいの女の子が中学生ぐらいの女の子になった。

「成長しているけど、成功なの? もっと成長するの?」

マーネさんの年齢は人間換算ではお婆ちゃんだ。

でも、ハーフエルフ的には、どうなんだろう。

「前回も、このぐらいの姿ね。これが本来の姿なのか、サーニャみたいになるかは分からないわ。薬が完成に近づけば、本来の姿が分かるんじゃないかしら? でも、できれば、徐々に成長して行くのが理想なんだけどね。わたしだって、ユナぐらいの年齢を体験したいからね」

マーネさんは嬉しそうに姿見の前に立つ。

「う〜ん、やっぱり、今ある素材だけじゃ成長具合が悪いわ。薬の効果がないのかしら」

「わたしには、ちゃんと成長しているように見えるけど」

「ユナ、あなたの目は節穴なの? しっかり見なさいよ」

マーネさんが、わたしの近くまで来て、仁王立ちする。

あの10歳ぐらいだった女の子が、背も脚も腕も伸びている。

「やっぱり、ちゃんと成長していると思うけど」

「「くぅ~ん」」

隣にいるくまゆるとくまきゅうもわたしに同意する。

「ここよ。ここ」

マーネさんが胸を突き出してくる。

「もしかして、胸のことを言っているの?」

バスタオルを巻いているから分かるけど、膨らみがない。

「そうよ。薬が成功していたら、大きくなるはずでしょう」

「いや、それは人それぞれだから」

「最低でもユナよりは大きいはずよ」

「もしかして、喧嘩、売っている? 売っているなら買うよ」

こればかりはマーネさんでも許せない。

「ちょ、冗談よ。本気にしないでよ」

わたしが睨みつけるとマーネさんは後退りする。

「それで、薬の効果は、どんな感じなの?」

「前回は30分ほどだったわ。今回、手に入れた素材の効果次第だと思うけど」

結果は倍の一時間だった。

「流石に、1日は無理だったわね。だけど時間は倍で身長も前回より1cmも伸びていたし、このまま薬の素材を集めて完成品が出来れば治る可能性も期待出来るわ」

少しでも成長に繋がったなら、よかった。

でも、胸が成長しないからと言って、薬のせいにはしないで欲しいものだ。