軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

849 クマさん、街に戻ってくる

「それで、あなたたちはコルボーの指示でわたしたちを襲ったってことでいいのよね」

「くぅ〜ん」

マーネさんの言葉に合わせるようにくまゆるが口を開ける。

「そうです!」

「コルボー様の指示です!」

「俺たちは、クマの格好した女と子供を脅して、薬を回収すればいいと言われました!」

「それと、金を持っているから、それが追加報酬だと!」

「別に命を奪おうとか思っていない!」

男たちは助かりたいのか、素直に話していく。

どうやら、昨日、コルボーに頼まれて、王都に行くわたしたちを襲う予定だったらしい。

でも、手付金をもらった男たちは酒を飲んで、寝坊してしまい、慌てて馬を走らせて、わたしたちを追いかけてきたってことらしい。

初めに襲ってきた盗賊は、本当に関係がなかったみたいだ。

「それじゃ、確認ね。ここで黙って死ぬ? それともコルボーの悪事を言う。好きな方を選ばせてあげる。ちなみにコルボーの悪事を話してくれれば、情状酌量の余地はあるわよ」

後ろにいる盗賊と同じセリフを男たちにも言う。

「嬢ちゃんは、なんなんだ?」

「あんたたちに言っても分からないと思うけど、王都の魔法省の者よ」

「王都の魔法省ってなんだ」

「俺も詳しくは知らないが、国家権力ってことか?」

「貴族とどっちが偉いんだ」

「知らねえよ」

「でも、こんな子供が……」

男たちの視線がマーネさんに集まる。

「変な格好したクマも一緒だし」

今度はわたしを見る。

まあ、子供とクマの格好した、マーネさんとわたしの言葉じゃ信用はないよね。

でも、マーネさんは引き下がらない。

「少し、考えれば分かるでしょう。わたしはハーフエルフ、あなたたちより年上」

耳を見せる。

でも、ハーフエルフだって、成長するよね。

「……年上」

「なにより、わたしみたいな子供が店の薬を買うお金を持っていると思う? Cランクの冒険者を雇えると思う?」

「Cランク?」

わたしは無言で冒険者ギルドカードを見せる。

男たちはマジマジとわたしのギルドカードを見る。

「……職業クマ」

だから、見る場所が違うでしょう。

どうして、ここの世界の住民は、そこを見るかな。

「今回、たまたま街に寄ったんだけど、コルボーって薬師が作る薬の成分に問題がありそうだから回収して調べることにしたのよ。それに回収したと言っても、お金を払って購入したんだから、文句を言われる筋合いはないわ」

「これが本当なら、俺たちは死刑になるのか」

「でも、コルボー様が守って」

「国王陛下に言おうかしら」

「国王陛下って、あの国王陛下か」

「国王陛下と貴族って」

「国王陛下のほうが偉いに決まっているだろう」

コントに見えてくるのは気のせいだろうか。

「本当に嬢ちゃんに従えば許してくれるのか」

「ええ、今回のことは許してあげるわ」

マーネさんの言葉に安心した表情する男たち。

「マーネさん、いいの?」

「わたしは『今回』と言ったわ。調べて、過去に悪いことをしていたら、知らないわ」

マーネさんは小声で答える。

こんな仕事を引き受ける輩だ。過去にも同様のことをしている可能性は高い。

「でも、男たちの証言は証拠になるの? 尻尾切りになるんじゃ」

コルボーって男が指示を出していないと言えば、終わりだ。

貴族の息子だって言うし、それぐらいの権力はあると思う。

荒くれ男たちと貴族の息子の証言なら、貴族の息子の証言が優先されると思う。

そうなれば、男たちはただの、わたしたちを襲った盗賊扱いになるだけだ。

「ふふ、それなら大丈夫よ」

マーネさんは悪い顔をする。

「それで、俺たちはなにをすればいいんだ」

「あなたたちにやってもらいたいことは……」

マーネさんはこれからのことを説明する。

ああ、それなら証拠になるね。

どうやら、初めから襲われたときのあとのこともちゃんと考えていたみたいだ。

わたしはてっきり、どこかに男たちを突き出して証拠にするつもりとばかり思っていた。

「それじゃ、街に戻るわよ」

「マーネさん、こっちはどうする?」

初めに襲ってきた盗賊に目を向ける。

「自警団に引き渡せばいいでしょう」

普通の盗賊は、わたしたちには不要だ。

必要なのはコルボーの命令で襲ってくる盗賊だ。

「待ってください」

「なに?」

「先ほどから薬の話をしていますよね」

「それが?」

「もしかして、大通りにある大きな薬師の話でしょうか」

「そうだけど」

マーネさんは淡々と答える。

男たちは顔を見合わせる。

「俺たち、その薬師から買うお金が欲しくて」

「……」

わたしとマーネさんは顔を見合わせる。

盗賊の話を聞くと、リディアさん同様に子供や奥さんが病気になり、薬を購入していたけど、薬が高額のため購入できなくなったそうだ。

どうやら、こっちの盗賊はコルボーって薬師の被害者だったみたいだ。

「でも、あなたたちコルボーって名前を知らなかったじゃない」

「先生と呼んでいましたので、名前は知りませんでした」

人によるけど、学校なら体育の先生とか、音楽の先生とか呼んで、名前を知らない感じのやつだ。

病院でも先生とか看護師さんと呼んで、名前を覚えない。

わたしがギルドマスターを名前で呼ばないで、ギルマスと言う感じだ。

クリモニアの冒険者ギルドのギルマスの名前って、なんだっけ?

「はぁ」

マーネさんは話を聞いて、大きなため息を吐く。

「面倒だけど、乗り掛かった船よ。全部、わたしが見てあげるわ」

マーネさんは胸を張る。

小さいけど、頼りになる大人だ。

わたしたちは街に戻るため、来た道を引き返す。

男たちを縛っていた土魔法は解き、それぞれが乗ってきた馬車と馬に乗る。

その横にわたしたちが乗るくまゆるとくまきゅうが歩きながら、男たちから病気の症状を聞く。

「症状は同じね」

馬車に乗る男の話を聞くと、エストさんと同じ症状みたいだ。

「どうやら、同じ方法でお金を稼いでいるみたいね」

「でも、そんなことをして、大騒ぎにならないの?」

「お金をむしり取ったら、治せばいいのよ。赤いボツボツが出る症状が出る薬を飲ませるのを止めるだけでいいわ」

確かにそうだ。

成分を変更するだけでいいだけだ。

「完治すれば、悪い評判は流れないし、逆に良い評判が流れることになるわ。感謝することはあっても、恨むことはないでしょう」

何ヶ月も苦しんできた病気が治れば、確かに感謝するね。

「しかも、巧妙に複数の病気を起こしているみたいね」

一人は頭痛がするらしい。

薬を飲むと一時的に治るけど、時間が経つと、頭痛が再発するとのことだ。

「そんなことができるんだね」

「調整することは可能ね。初めは頭痛を抑える薬、次に頭痛がする薬」

そう考えると、意外と腕がいい薬師かもって思ってしまう。

それからわたしたちは、情報を共有しながら街に戻ってくる。

街に戻って来たわたしを見て、門番が驚いていたけど、気にしないでおく。

ちなみにくまゆるとくまきゅうは送還して、わたしたちも馬車に乗っている。

街に入ったわたしたちはひとまず冒険者ギルドへ向かう。

どこか、話し合える場所をと考え、冒険者ギルドを選んだ。

「わたしが中に入って呼んでくるわ。ユナは、逃げないように見張っていて」

まだ、完全に男たちを信用するわけにはいかない。

「了解」

マーネさんは馬車から降り、冒険者ギルドに入る。

「逃げたら、分かっていると思うけど」

「分かっています!」

「逃げません!」

コルボーに指示された男たちは素直にいう。

街に戻ってくる途中で、男たちに「もし、逃げたら」と尋ねられたので、バンジージャンプの体験をさせてあげた。

空高く飛び、地面に落ちる経験をした。

「逃げたら空に飛ばすから、もちろん、受け止めたりはしないよ」

体験では地面に落ちる前に、ちゃんと風魔法で受け止めてあげた。

バンジージャンプの体験をした男たちが素直になったのは言うまでもない。

冒険者ギルドに入ったマーネさんが受付嬢と一緒に戻ってくる。

受付嬢は、わたしたちの対応をしてくれた女性だった。

受付嬢は馬車の中を覗くと、裏に回ってと言う。

馬車は冒険者ギルドの裏に移動し、裏口から冒険者ギルドの中に入る。

「この部屋を使ってください」

受付嬢が1つの部屋を貸してくれる。

「ありがとう。あの件は早急にお願いね」

「すぐに手配します。それと出入りは裏口を使ってください」

受付嬢は注意事項を言うと仕事に戻っていく。

「ユナ、男たちからカードを回収して」

わたしは言われるまま、男たちのギルドカード、市民カードを回収する。

逃げさせないために街に入ったら、預かると伝えてあるので、男たちは素直に差し出してくる。

裏切り対策の1つだ。

「次に薬を出して」

わたしは言われるままに、コルボーの店で購入した薬を男たちに渡す

かなりの数があったけど、男たちが持っていたアイテム袋に入った。

コルボーって男から借りたのかな?

そして、マーネさんがある物を渡す。

「頼むわよ」

「嬢ちゃんも、約束は守ってくれよ」

ギブアンドテイクだ。

そして、細かい打ち合わせをすると、コルボーに雇われた男たちは部屋からでていく。

「それじゃ、次はあなたたちね」

家族が病気のため、薬を買うお金が無く、わたしたちを襲ってきた男たちだ。

「本当に嬢ちゃんが治してくれるのか?」

「病気を絶対に治すとは言えない。でも、コルボーが治すつもりがあったなら、問題ないわ」

不治の病。この世には治せない病気もある。

安請け合いはできない。

でも、マーネさんでも治せなかったら、わたしの出番かな。

わたしたちは病気を診るためにそれぞれの家に向かう。

「ここです」

マーネさんは患者を診て、今まで飲んでいた薬を回収し、持っている薬で治る場合は渡し、持っていない場合は、エストさんの薬を作った薬師の店に突撃し、無理矢理に薬草や機材を借りて、薬を作った。

「ふふ、これで証拠が増えたわ」

マーネさんが悪い顔をしていたのは内緒だ。