軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

847 クマさん、襲われる

「ユナ、終わった?」

「終わったよ」

棚の半分が空っぽだ。

効果があるかどうか怪しいけど、本当に欲しい人がいたら困るので、各種、半分は残しておいた。

「マーネさん、この男はどうする? 魔法を解かないと」

わたしは土魔法で縛られて、床に転がっている男を見る。

わたしの魔法だ。簡単には解くことはできないと思う。

失敗したら、半永久的ってこともある。

だからといって、魔法を解けば、襲ってくるかもしれない。

「そうね。それなら……」

マーネさんは少し考え、アイテム袋から液体が入った小瓶を出す。

「それは?」

マーネさんは、わたしの言葉に無言で微笑むと、床に転がっている男に近づく。

「近寄るな」

マーネさんは男の言葉を無視して、小瓶を男に近づける。

「あなた、わたしを襲おうとしたわよね。それって犯罪だってことは分かっている?」

わたしが押さえなければ、マーネさんは殴られていたかもしれない。

「本当なら、魔法を解いて帰りたいんだけど。でも、魔法を解いたら、あなた、また襲ってくるかもしれないわ。そんなことになったら、わたし、怖いわ」

マーネさんが怖がる少女のフリをする。

マーネさんの本性を知っている、わたしからしたら。

「マーネさん、気持ちわるいよ」

「うるさいわよ」

怒られた。

「まあ、とにかく、あなたが襲いかかってこないように対処させてもらうわ」

マーネさんは小瓶を男の口に近づける。

「それは、なんだ!」

「飲めば分かるわ」

「やめろ!」

床に転がっている男が逃げようとするが、身動きはとれない。

マーネさんは無理矢理に男の口の中に小瓶に入っていた液体を流し込む。

「な、なにを飲ませたんだ」

「だから、すぐに分かるわよ。ユナ、魔法を解いてあげて」

「いいの?」

魔法を解いたら、すぐにも襲いかかってきそうな雰囲気だ。

「そうね。あと10秒待って」

男の様子を見ながら言う。

「9、8、7、6、5、4」

カウントダウンを始めると男は顔を歪めて苦しみ始める。

「毒!」

女性客が騒ぐ。

その瞬間、男の体から液体が流れ出す。

正確には下半身のある部分から……

「利尿剤よ。これで、追いかけてくることはできないでしょう。ユナ、解いてあげて」

「……うん」

かわいそうになって、縛っていた土魔法を解くと、男は逃げるように店の奥に入っていった。

男がいた床には水溜まりが残る。

人がいる前でお漏らしなんて、考えただけでも恐ろしい。

自分だったらと考えたら、自殺もんかもしれない。

少し、男の人に同情してしまった。

でも、マーネさんに襲いかかってきた行為は許されることではない。

「それじゃ、帰りましょう」

マーネさんはなにもなかったように店を出るので、わたしも追いかけるように店を出る。

「やっぱり、これが効果覿面ね」

確かに、あれでは追いかけて来ることはできない。

「わたしが教師をしていたとき、わたしのことをバカにした生徒がいたのよね。それで、授業中に飲ませてやったわ」

「もしかして、それって、ギルドマスターとか言わないよね」

「よく、分かったわね。縛り付けて、薬を飲ませて、授業が終わるまで放置したわ」

想像しただけで、涙が出てくる。

トラウマものだ。

だから、ギルドマスターはマーネさんに逆らえなかったんだね。

「薬の効果も証明できた授業だったし。それ以降、生徒たちは真面目に授業を受けるようになったのよ。何事も最初が肝心よね」

そんな場面を見たら、誰も逆らえないよ。

いつ、自分がされるかと思うだけでも、恐怖しかない。

「それが代々、生徒間で伝わっているのか、最近は大人しい生徒ばかりだから、使う機会はなくなったわね」

マーネさんは少し残念そうに言う。

いや、使わないでいいよ。

今後、マーネさんを怒らせるのはやめよう。

「でも、わざわざ出発する時間を教える必要があったの?」

マーネさんは、王都に出発する時間を男に教えていた。

「それにまだ昼だし、今から出発しても」

あの男がコルボーって人に連絡をすれば、なにを仕掛けてくるかわからない。

「それじゃ、準備ができないでしょう」

「準備? もしかしてマーネさん」

あることが頭に浮かぶ。

「あら、分かった?」

わたしも性格が悪いのでマーネさんがしようとすることが分かった。

マーネさんは完全に薬師としての息の根を止めるみたいだ。

「ユナ、頼りにしているからね」

わたしはため息を吐くと「了解」と答えた。

薬師の店を出たわたしたちは商業ギルドに行くと、受付嬢にギルマスへの伝言を頼む。

「明日の朝、街を出ると伝えておいて」

それだけ言うと、商業ギルドを出る。

「もし、あの男が伝えなくても、コルボーの耳に入るでしょう」

商業ギルドの誰かとコルボーって人が繋がっていれば、確実に情報が伝わる。あの、お漏らし男は、お漏らししたことを話したくないから、コルボーに話さない可能性もあるので、少しでも確実性をもたせるために言ったみたいだ。

それから、リディアさんの家に行き、明日の朝、街を出ることを伝える。

「あの薬師の件は気にしないで大丈夫だから」

「なにかしたんですか?」

「これからするのが正しいのかしら?」

それから、エストさんの様子を見て、順調なのを確認したわたしたちは宿屋に戻った。

「襲ってくるかな」

マーネさんはコルボーに襲わせて、確実に潰すみたいだ。

「わたしたちを見なさい」

「子供とクマ」

「子供って言われるとムカつくけど、実際にそうだから反論はしないわ。それにユナの見た目は強く見えないでしょう」

だから、知らない場所に行くと絡まれる。

「もし、襲ってこなくても、薬の成分を調べたり、コルボーが行ってきたことを調べることはできるわ。とことん追い詰めて、薬師の資格を剥奪させてやるわ」

どっちに転んでも、コルボーって薬師の運命は終わっている。

マーネさんを襲えば、エレローラさんが黙っていないだろうし、マーネさん本人も力を持っている。

捕まれば、貴族の息子だとしても終わりだと思う。

可能性の一つは、薬が本当に素晴らしく、患者に優しく、品行方正な薬師の可能性だ。

もし、そうだったら、処罰することはできない。

でも、リディアさんの妹に飲ませた薬もあるから可能性は低いと思う。

「くまゆる、くまきゅう、怪しい人が近づいてきたら起こしてね」

「「くぅ~ん」」

見張りはくまゆるとくまきゅうに任せ、眠りに就く。

そして、何事もなく、朝を迎えた。

「襲って来なかったね」

「流石に宿屋に襲ってこないわよ。向こうだって、大ごとにしたくないはずだからね。多分、街道のどこかで待ち伏せしているはずよ。そのときはお願いね」

それがわたしの仕事だ。

宿を出たわたしたちは、真っ直ぐに街を出る。

街を出たわたしたちは、くまゆるとくまきゅうに乗って、ゆっくりと進む。

どこかで待ち伏せしているなら、ゆっくりと進まないと襲撃を受けることができない。

くまゆるとくまきゅうが走ったら、通り過ぎてしまう可能性が高い。

なので、ゆっくりと進むことになる。

そして、襲ってくると分かっていれば、事前に把握することができる。

「「くぅ~ん」」

「この子たち、なんだって。魔物?」

探知スキルを確認する。

「人が複数人、立ち止まっているって」

「休憩しているのか、それとも待ち伏せってことね」

あとは馬車が故障とかもあり得るけど。

どっちにしても警戒をしないわけにはいかない。

ゆっくりと進む。

「馬車が止まっているわね」

その近くに男性が一人いる。

でも、人の反応は4つ。

馬車のタイプは幌馬車。中に人がいるか、後ろに隠れているかになる。

その1人が手を振って、止まってくれと言っている。

「怪しいね」

「ええ、怪しいわ」

警戒しながら、わたしたちは馬車に近づく。

「クマ!」

手を振っていた男がクマに驚く。

どっちのクマで驚いたのか、気になるところだ。

「どうしたの?」

「ツレが、体調をくずして」

馬車の近くにうずくまっている男性が1人いる。

わたしとマーネさんはくまゆるとくまきゅうから降りる。

「あなたたち2人だけ?」

「はい」

男は迷いなく答える。

はい、嘘決定。幌馬車の中に2人います。

このまま、捕まえてもいいんだけど、それだと捕まえたとしても無罪になってしまう。

襲ってくれないと、わたしたちが悪人になる。

少し油断しないとダメかな。

薬師が襲わせた証拠が必要だ。

マーネさんも分かっているようで、疑うそぶりは見せない。

「すまないが薬を持っていないか」

マーネさんとわたしの目が合う。

「わたしが持っているわ。症状を見せて」

「助かる」

マーネさんとわたしは、うずくまっている男に近寄る。

男は後ろから一緒に付いてくる。

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうが大きく鳴く。

うずくまっていた男が立ち上がる。

わたしはすでに動いている。

男がマーネさんに襲いかかろうとする。

わたしはクマパンチで殴り飛ばす。

後ろにいる男に対処しようと振り返ると、くまゆるが抑え込んでいた。

「で、出てこい」

男が叫ぶと馬車の中から、ナイフを持った男が2人降りてくる。

「なんだ。このクマは」

どっちのクマで驚いたの? と思いつつ土魔法を発動。

地面から土が縄のように現れ、男たちの足首に巻き付き、男たちは地面に倒れる。

はい、完了。