軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

823 クマさん、リディアさんの力を知る

洞窟を出て地面を見ると、巨大スネイクが這いずったと思われる跡が残っている。

大きなスネイクは、あの一匹だけなのかな。

探知スキルにスネイクの反応があったとしても、区別はつかないのが難点だ。

魔物が近くにいないことを確認したわたしはクマの光を消し、クマの地図を確認する。

洞窟に入ってから、左に曲がっていた。

この方角に出るのか。

洞窟の出入り口が分かれば、洞窟を通らなくても、帰ることができる。

まあ、遠回りになるけど、くまゆるとくまきゅうがいれば、気にしないでいい距離だ。

「それで、これからどうする? ベルトラ草だっけ? 先に採取に行く? それともマーネさんが探している薬草を探しにいく?」

とりあえず、移動先を決めないといけない。

「ベルトラ草の採取に行きましょう。わたしの探している薬草は曖昧だし、あるかどうかも分からない。それなら、先にベルトラ草を手に入れたほうがいいわ」

「そう言えば、マーネさんたちがこの森にいる理由を聞いていなかったけど」

「あなたたちと同じ薬草探しよ」

「ゼクトさんたちは森の薬草の生息地に詳しいんだよね? その薬草のことを聞いてみたら?」

せっかく、この森の薬草について詳しい人がいるんだから、尋ねたほうがいい。

「そうね。あなたたちルレビラの花って知っている?」

そんな名前の花だったんだ。

「ルレビラの花? リディア、知っているか?」

「ううん、知らない」

「木の咲く赤い花よ。どこかに咲いているらしいんだけど。見たことはある?」

「いや、見たことがない。俺たちも、この森のことを全て知っているわけじゃないからな」

「魔物がいる場所は避けて通るから、魔物がいる場所にあるかもしれない」

2人なら知っているかと思ったけど、残念だ。

ゲームなら、情報提供者として登場するのに。現実は、そんなに甘くなかった。

でも、マーネさんが探している薬草って、木に咲く花だったんだ。

上から見れば、見つけることができるかな。

「それじゃ、マーネさん。こっちに乗って。そして、ゼクトさんとリディアさんはくまゆるに乗って」

「わたしたちも、そのクマに乗るの?」

「体力温存だよ。もしもの場合、疲れていたら、動けないからね」

まして、2人は10日間も森の中にいる。本人たちが思っている以上に疲労があると思う。

もし、わたしが森の中をクマ装備なしで歩くことになったら、1日も持たない。

「くまゆる、2人をお願いね。あとで、ちゃんと交代するから」

「くぅ〜ん」

くまゆるは腰を下ろしマーネさんを降ろす。

くまゆるから降りたマーネさんは、わたしが乗るくまきゅうのところにやってくる。

わたしは手を伸ばして、マーネさんの手を掴むとくまきゅうに乗せる。

前にマーネさんが乗り、わたしが後ろだ。

そして、腰を下ろしたくまゆるに、リディアさんが近づく。

「本当にクマに乗っていいの?」

「歩きだと、移動速度が遅くなるからね」

2人を歩かせると、必然的に休憩も多くなる。

くまゆるとくまきゅうには、長時間走り続けられるほどの体力がある。

リディアさんは目を輝かせながらくまゆるに近づく。

リディアさんは洞窟の中を歩いている間、くまゆるとくまきゅうを気にしていた。

やっぱり、乗ってみたかったみたいだ。

リディアさんはくまゆるに触る。

「えっと、くまゆるちゃん、よろしくね」

「くぅ〜ん」

リディアさんはくまゆるの背中に手をかけると、飛び乗る。

「うわぁ、柔らかい。気持ちいい。ほら、兄さんも早く乗って」

「お、おう」

リディアさんと違って、ゼクトさんは恐る恐るくまゆるに近づく。

「噛まないよな」

少し、腰が引けている。

ビビっている。

そんなにくまゆるが怖いのかな?

「兄さん、怖がっていないで」

「こ、怖がってなんていない」

いや、怖がっているように見えるよ。

それでも、周りに気付かれないようにゼクトさんはくまゆるに触れる。

「それじゃ、乗せてもらうな」

ゼクトさんはリディアさんの後ろに乗る。

そして、2人が乗るのを確認するとくまゆるが腰を上げる。

「それじゃ、案内お願い」

「くまゆるちゃん、あっちに進んで」

「くぅ〜ん」

わたしたちはリディアさんの案内で進む。

「えっと、ユナちゃん」

くまゆるとくまきゅうが歩き出すと、リディアさんが話しかけてくる。

「ん? なに?」

「あの巨大スネイクと戦ったことがあるの? 戦い慣れていたけど」

「スネイクとはないけど、似たような大きな魔物とは戦ったことはあるよ」

ブラックバイパーとか大蛇とか。その他もろもろ。

「冗談だろう。あんな大きい魔物と遭遇することなんて、普通はないぞ」

わたしの返答にゼクトさんが信じられないような表情を向ける。

この世界に来て、何度も大きい魔物と出会っているけど。

「まして、戦うことなんてないわ」

「普通は逃げるからな」

村のために頑張る少年のために、ブラックバイパーと。

王都を襲うことになっていたワームとワイバーン。

エルフの村を襲ったコカトリス。

家族のために頑張る少女のために、巨大スコルピオンと。

国を守るために頑張る少女のために、大蛇と。

凍った街で生きる人たちのために、氷竜と。

そして、海鮮料理とお米のために、クラーケンと。

うん? 最後のちょっと違うような……。

食べる物に苦しむ住民のために、クラーケンと。

そう、わたしが大型の魔物と戦ったのは、その場所に住む人たちのためだ。

逃げ出すわけにはいかなかった。

「どうやったら、そんな大きな魔物と出会って、戦うことになるんだ? 俺はあの巨大スネイクにも初めて出くわしたってのに」

「他の冒険者からも、あまり聞いたことがないわね」

「そんなに大きな魔物って珍しいの?」

「元々、竜のように大きい魔物はいるわ。でも、通常の大きさの魔物で、大きい個体は特殊ね」

巨大魔物、大蛇とクラーケン、氷竜は別枠だったらしい。

「スネイクは本来、そんなに大きくはない。それがあんなに大きくなるのは稀よ。そんな魔物と出会うことは、そうそうないことよ」

元々は同じスネイク。

だから、探知スキルの反応もスネイク。

それは、他の魔物でも同様だった。

何度「キング」とか「ジャンボ」とか名前に付けてほしいと思ったことか。

「ユナちゃんは、王都の冒険者なの?」

「王都でも仕事をするけど、正確にはクリモニアの冒険者だよ」

「……クリモニアって、かなり離れているよな」

「そんな遠いところから来たの?」

「この子たちがいるから、移動は楽だよ」

わたしはくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

まあ、実際はクマの転移門で移動するんだけど。

「この子たち凄いのね」

リディアさんはくまゆるを撫でる。

そして、他愛のない話をしながら進む。

ときおり、探知スキルで確認するが、ウルフやゴブリンの反応が離れた場所にあるぐらいで、こちらに近寄ってくる様子はない。

ただ、奥に行けば行くほど魔物の数が多い。

「この先にアメトラ草があるけど、マーネさん。どうします?」

アメトラ草?

「アメトラ草は城の薬草園にあるからいいわ」

「やっぱり、お城の薬草園にもたくさん薬草があるの?」

「種類はそれなりにあるわね。でも、実験用だったり、王族が使う薬を調合するだけだから、量は多くないわね」

基本的に王族が使う薬は、薬草園から採取されたものを使うらしい。万が一、外部で購入した薬が毒って可能性もあるからだそうだ。

「それでは、ポポンパの花は?」

「それは欲しいわね」

マーネさんの言葉で、そのポポンパって花を採取しに行くことになった。

タンポポに似た名前だね。

薬草の生息地に向かい、ポポンパの花を採取する。

黄色の花だった。

「マーネさん、その薬草の効果は?」

「日焼け止めね。女性冒険者に売れるわ」

「えっ、これがそうなるの? わたしも買おうと思ったんですが、高くて」

「知らなかったの?」

「薬師には見つけたら採取するように言われただけで効果までは……」

「作り方を教えようか? 作るのは簡単だから」

「いいの?」

「自分で使用するだけなら、問題はないわ」

周囲の警備はわたしとくまゆるとくまきゅうに任せてもらい、リディアさんとマーネさんは花の採取を始める。

ゼクトさんはリディアさんが採取した花を丁寧に袋に仕舞っていく。

わたしも日焼け止めを塗った方がいいのかな。

日焼けは将来、シミになるっていうし。

「本当に、この森は薬草の宝庫ね」

わたしには雑草や普通の花にしか見えないけど、薬草に詳しいマーネさんからしたら、宝に見えるみたいだ。

マーネさんが楽しそうなら、よかった。

ポポンパの花の採取も終わり、先に進む。順調に進んでいたが、進む先にウルフがいる。

くまゆるとくまきゅうがどうするの? って感じにわたしを見る。

このまま進めば、ウルフ3体と遭遇する。

わたしにとっては雑魚でも、流石に黙って進むわけにはいかない。

「待って」

「止まって」

わたしの言葉と、リディアさんの言葉が重なる。

「もしかして、魔物に気付いたの?」

「ユナちゃんも?」

「うん、まあ」

「なに? 魔物がいるの?」

わたしたちの反応にマーネさんが尋ねてくる。

「うん、この先にウルフがいる」

リディアさんは、魔物まで当てた。

わたしは探知スキルで分かるけど、リディアさんは見えていないはずだ。

「そんなことまで分かるの?」

「草木がこすれる音、ウルフの唸る声も聞こえたわ」

ちょっと、耳が良すぎない?

「耳がいいだけよ」

わたしの反応を見て答える。

「違うわね」

マーネさんがリディアさんを見ながら口を開く。

「違うって?」

「あなた、魔法を使っているでしょう」

マーネさんはリディアさんを見ながら言う。

「魔法? 使っていないです」

「それじゃ、無意識ね」

「マーネさん、リディアさんが魔法を使っているって、どういうこと?」

「風魔法ね。周辺に風を漂わせて、自分に音を集めているのね」

もしかして、妖精事件のときに、わたしが離れた場所にいた騎士の会話を聞こうとしたときに使った風魔法と同じこと?

「わたし、そんなことしてません」

「だから、無意識にしているのよ」

「無意識に……」

「街の中じゃ、遠くの声は聞こえないんじゃない?」

「どうしてそれを」

「魔物を探るため無意識に周囲に風魔法を使っていたのよ。街の中じゃ、危険じゃないから、発動してないだけ」

「…………」

「あと、街では魔法は使えるけど、森に来ると魔法が使えなくなるんじゃ」

「それは……」

リディアさんの表情を見ると、思い当たる節があるのか、驚いた表情をする。

「だから、魔力があっても、大した魔法が使えないのね。現在進行形で魔力を少しずつ消耗しているんだから」

「わたしは本番になると実力が発揮できないんだと思っていました」

この世には本番では実力を発揮できない人がいる。

「魔力を使っていたのね。でも、そのおかげで魔物の場所が分かり、危険な目に遭うこともなく、生きてこられてたのよ」

「そうですね。てっきり目と耳がいいだけかと思っていました」

まあ、無意識なら、そう思っても仕方ない。

もしかすると身を守るため本能的に行っていたのかもしれない。

そして、近寄ってきたウルフはサクッと倒しておいた。