軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

821 クマさん、兄妹と話し合う

わたしたちの上にはクマの光が照らされ、洞窟の中で話し合いが行われる。

そのクマの光を、なんとも言えない表情で見ているゼクトさんとリディアさん 。

そんなにクマの形をした光が珍しいのかな。

「嬢ちゃんは、本当に魔法省で働いているのか?」

マーネさんは見た目が子供なのでゼクトさんは疑うように確認する。

「わたしはハーフエルフ。あなたたちの親より、長く生きているわよ」

マーネさんが耳に掛かっていた髪をどかして、見やすいようにする。可愛らしい少し長い耳が見える。

「そうか。すまない」

「ごめんなさい」

2人はなんとも言えない表情になる。

年下の少女と思っていたマーネさんが、自分の親より年上だったんだから。

「ハーフエルフでも、小さいような」

小さい声だけど、聞こえているよ。

マーネさんも聞こえたはずだけど、説明は面倒なのかスルーしている。

「それじゃ、マーネさんと呼んだほうがいいか?」

「そうね。そうしてくれると助かるわ」

やっぱり、ちゃん付けはダメだったらしい。

マーネさん呼びで正しかったみたいだ。

「ちなみに、あなたは?」

リディアさんが、わたしの方を見ながら尋ねてくる。

「わたしは普通の人間だよ」

その言葉に安堵する。

「あらためて確認だけど。その嬢ちゃん……マーネさんは魔法省の関係者なんだよな?」

「そうよ」

「魔法省では、魔法の研究をしているところって聞いたことがある。そこには薬も含まれているって」

「ええ、魔法、魔法陣、魔道具、そこには薬の研究も含まれるわ」

魔法省と聞くと、魔法だけと思ってしまうが幅が広い。

それも魔力がある薬草とかもあるためかもしれない。

「なら、薬師の知り合いもいるか?」

「それはいるわよ。薬草を使うからね」

ゼクトさんは考え込み、リディアさんを見る。

「兄さん……」

「……王都の魔法省なら、あいつの影響力も」

「でも、この子、マーネさんも……」

「このままじゃ、いいように扱われるだけだ。それに妹だって」

「わかっているよ。でも……」

何か、問題を抱えているみたいだ。

「ああ、もう、はっきり言いなさい。あなたたち、わたしに言いたいことがあるんでしょう!」

はっきりしない2人に対してマーネさんは叫ぶ。

声が洞窟内に響き、コウモリが飛び回る。

「マーネさん、もう少し、静かに」

「だって、この子たちが……」

言いたいことは分かるよ。

尋ねておいて、その理由を言わないんだから。

「その、俺たちと取引をしてくれないか」

「取引?」

「俺たちが採取した薬草を適正価格で買ってほしい。そして、薬師を紹介してほしい。この森で採取できる珍しい薬草が生息している場所も把握しているから、頼まれれば採取してくる。だから」

ゼクトさんは言いたいことを口早に言う。

「ちょっと待って、そんなにいっぺんに言われても分からないわ」

「すまない」

また謝るゼクトさん。

「それで薬草を買い取る件は、横に置いておいて、薬師を紹介?」

「薬の調合とかできる人を探しているんだ」

「薬の調合? まあ、いるけど」

薬ならマーネさん本人が詳しい。

さらに魔法陣も魔道具も作れる。魔法省の偉い人でもある。

「本当か! 紹介してくれ。頼む」

ゼクトさんは頭を下げる。

だから、洞窟内で叫ぶとコウモリが飛び回るからやめて。

コウモリは苦手なんだから。

「落ちつきなさい。まずは理由を教えなさい。紹介するにしても、理由が分からないなら、紹介なんてできないわ。それに得意とする薬は薬師によって変わってくる。あなたの望む薬師がいるかどうかは話を聞いてみないと分からないわ」

「すまない。俺には、リディア以外にも1人妹がいる」

つまり、3兄妹ってことか。

「その……妹は病気なんだ」

「つまり、その病気を治す薬がほしいってこと? 別にわたしに頼まなくても街にも薬師ならいるでしょう」

「街にも薬師はいる。でも、俺たちの足元を見て高額なお金を要求してくる」

悪徳薬師かな。

でも、妹さんの病気が重く、本当に薬が高額の可能性もある。

ゼクトさんの話だけではなんとも言えない。

「薬の材料が高いんじゃ」

手に入りにくい材料があれば、必然的に高額になるのは仕方ない。

「薬師も、そう言っていた。でも、薬になる材料は俺たちが採取して、持って行っている」

「それと、他に採取してきた薬草もタダ同然で引き取られています」

2人は悔しそうに話してくれる。

材料費がタダなら、あとは薬師が調合して薬にするだけだ。

それが、どのくらいの値段になるかは、わたしには判断できない。

「妹さんの病気は、どんな病気なの?」

「体、全身に赤いボツボツができて顔も酷く……」

「たまに熱が出たり、咳もしています」

2人は説明してくれる。

「赤いボツボツと咳ね。……薬は?」

「詳しいことは分からない。ただ薬師が言うにはベルトラ草が必要だと」

「確かに、ベルトラ草には咳を止める効果があるわね」

薬草の名前を聞いただけで、効果が分かるなんて、流石マーネさんだ。

「咳は一時的には止まるのですが、赤いボツボツは治らないんです。薬師は飲み続ければ治るって言うけど」

「あまり、効果はでていない」

「う~ん、見てみないと分からないけど。別々の病気かもしれないわね。合併症の可能性もあるし」

「ちなみに高額のお金って言っているけど、薬の金額は?」

人によって、金銭感覚は異なる。

貴族やお金を持っている人にとっては大した金額ではなくても、一般市民、孤児院などの子供たちにとっては大金になる。

ゼクトさんは少し言いにくそうにしたけど、金額を教えてくれる。

「ベルトラ草も安くはないけど。通常の10倍以上ね」

……10倍。

ティルミナさんの一ヶ月のお給金ぐらいの金額だった。

つまり、ティルミナさんの一ヶ月のお給金全てが薬となって消えるってことだ。

これじゃ、生活費がない。

人が生きていくには衣食住が必要だ。

「薬師が言うのは調合する代金も含まれているって」

「薬を作るには知識は必要」

料理と同じだ。

食材、水、油、火加減、調味料。適した分量を使わないと美味しくならない。

薬だって同じだ。

ゲームと違う。薬草が手に入ったからといって、ワンクリックで調合ができるわけじゃない。

薬草のどの部分を使用するのか、どのくらいの分量を使用するのか、ちゃんとした知識がないと作れない。

逆に薬が毒になる可能性だってある。

ゲームみたいに、AとBを調合して、完成とはいかない

「薬師が材料費に技術料を上乗せするのは普通のことよ。調合が難しくなればなるほど、高くなるわ」

「ちなみに、そのベルトラ草を使った薬の調合って難しいの?」

「薬師によるけど、一般的には中級に相当する薬ね」

「それって、難しいの? 簡単なの?」

素人のわたしが分かるように説明をして。

「さっきも言ったけど、薬師によって得意、不得意があるから、説明なんてできないわよ。あくまで一般的な薬師の話」

「それじゃ、他の薬師に頼めばいいだけじゃない?」

それで価格が分かる。

薬師は一人だけではないはずだ。

比べれば分かることだ。

同じ金額なら、適正価格になる。

違うなら、悪徳薬師の可能性が高い。

「ダメなんです。その薬師は街では力を持った薬師なので、誰もその薬師に逆らえないんです」

「薬師として最低ね」

「しかも、その薬師が薬を作る代わりに、他の薬草も安く買い取られている」

「はぁ、本当にクソね」

マーネさんの見た目でクソとか言わないでほしい。

フィナやノアが「クソ」とか言ったら、ショックを受ける。

「でも、街の薬師がダメなら、王都の薬師から購入すればいいんじゃない?」

マーネさんに頼むぐらいだ。

王都の薬師から購入すればいい。

「病気の妹を王都に連れていけない。だから、薬を頼めない」

確かに症状が分からなくては、薬は出せない。

「だから、一度、薬師に街に来てもらいたい」

「分かったわ。わたしの目的が終わったら、帰りに街に寄って、妹さんを見てあげる。そして、このマーネ様が、薬を作ってあげるわ」

「…………」

2人がマーネさんの言葉に驚き、開いた口が開いたままだ。

だから、わたしが補足する感じに説明してあげる。

「マーネさんは魔法省でも偉い人で、魔法陣、魔道具、そして薬草にも詳しいんだよ」

「本当か?」

信じられない目でマーネさんを見る。

この場合、わたしが作れると言うのと、マーネさんが作れると言うのは、どっちが信憑性があるのかな。

見た目が子供が作る薬。

クマの格好した女の子が作る薬。

どっちも、信頼性は低そうだ。

「わたしが、効果抜群の薬を作ってあげるわ。ベルトラ草を持ち込みなら、価格も安くしてあげるわ」

「本当に作れるのですか?」

「信じるのも信じないのも、あなたたちの自由よ。わたしが信じられないなら、他の薬師も紹介できるけど」

「いえ、お願いします。どうか薬を作ってください」

「それと、薬師の名前を教えなさい。わたしがとっちめてあげるわ」

小さいのに、頼もしい言葉だった。

エレローラさんさえも、敬称呼びだ。

わたしが思っている以上に凄い人なのかもしれない。

「あと薬草を適正価格で買い取ってほしいと言っていたわね。王都の商業ギルドに手配させておくわ。王都に来たら、商業ギルドを訪ねなさい」

「感謝する」

「ありがとう」

ゼクトさんとリディアさんは何度もお礼を言う。