軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

810 クマさん、西の森に向けて出発する

マーネさんがわたしを見ている。

わたしが魔物一万を討伐したことは伏せられている。

知っているのはごく僅かな人だけだ。

わたしが把握している限りでは、国王、宰相、エレローラさん、クリフにサーニャさん。他にも知っている人がいるかもしれないけど、広まっている様子はない。

マーネさんが知らないのも、ちゃんと箝口令が敷かれているってことだ。

「マーネさんは、どこまで知っているの?」

「わたしの知らないうちに騒ぎが起きて、知らないうちに騒ぎは収まっていたから、ハッキリ言えば、なにも知らないわ」

「それが、一般的な認識なのよね。実際に魔物の群れを見たわけではないし、誰も襲われていない。城の一部の騎士と冒険者が、騒いだぐらいね」

サーニャさんが冒険者を引き連れて魔物がいる場所に向かったけど、見たのはわたしが倒したゴブリンの死体だけだ。

「その魔物一万の件にユナが関わっているの? 冒険者だから?」

「それもそうなんだけど……」

サーニャさんが、確認するようにわたしを見る。

「マーネさん、口は堅い?」

「国王陛下から箝口令が敷かれていることなら、言いふらさないわよ」

「えっと、その魔物一万を倒したのは……わたしなの」

「…………はぁ?」

マーネさんの口から、変な声が漏れる。

「えっと、それは魔物の一部と戦ったってこと?」

「違うわ。魔物一万と戦い、倒したのよ」

サーニャさんがフォローする感じに、わたしの説明に付け加える。

「その口止めをするために、当時のわたしはAランク冒険者が討伐したことにしたり、国王陛下に謁見を申し込んで交渉したりと、大変だったのよ」

あのときは、サーニャさんとクリフに、わたしが討伐したことを知られないように頼んだ。

そのおかげもあって、わたしが討伐したことは広まっていない。

「そのときの報酬として、国王陛下の信頼を受け、エルファニカ王国の刻印が押されているわ。ユナちゃん、ギルドカードをいいかしら」

わたしはギルドカードをサーニャさんに渡す。

サーニャさんは机の上にある水晶板にギルドカードを乗せると、何かを操作する。

「こっちに来て」

マーネさんとわたしはサーニャさんの後ろに移動する。

そこにはわたしのギルドカードの情報があった。

「本当に、エルファニカ王国の刻印があるわ」

「上位の権限を持った者しか見ることができないけど、国王陛下の信頼の証よ」

「…………」

「その他にも、エルフの村に現れたコカトリスを討伐したのもユナちゃんなのよ」

「エレローラから聞いたけど、本当なのね」

「だから、ユナちゃんの実力は、わたしも認めているし、国王陛下も認めているわ。だから、ユナちゃんのことは信用していいわよ。もっとも、クマの格好を除けばだけど」

マーネさんはわたしに目を向ける。

「ユナ、あらためてお願いするわ。わたしの護衛をお願い」

「うん、初めから、そのつもりだよ」

「ありがとう」

マーネさんが安心できたことで、わたしたちは西の森に行くことになった。

「それで、西の森って、どこにあるの?」

わたしの質問にサーニャさんは立ち上がると、棚から巻物のように丸まった紙を持ってくると、テーブルに広げる。

王都周辺の地図だ。

「王都の西の門から出て、進むとあるわ。ただ、道は途中で森を避けるように続いてるの。道通りに進んでも行けないから、途中で街道を外れて進むことになるけど」

サーニャさんは道を指でなぞりながら説明する。

王都から続く道は途中で曲がり、街に続いている。

その道から逸れた先に森らしき絵が描かれている。

「この森まで、馬で4日ほどかかるわ」

馬で4日ならくまゆるとくまきゅうなら、半分以下の時間で着くかな。

それも、移動速度によるけど。

一般的に言う馬の速度は、馬がトコトコと歩く速度のことだ。走ったりする場合は早馬とか言うらしい。

くまゆるとくまきゅうも歩けば、馬と速度は変わりない。

馬と違うところは、くまゆるとくまきゅうは長い距離を走り続けることができる。

「この道が曲がり始めるところを2日ほど直進すれば西の森に行けるわ」

分かりやすくていい。

「それじゃ、わたしたちは行くわ」

「マーネ、ユナちゃん、珍しいものが手に入ったら、冒険者ギルドによろしくね」

わたしとマーネさんは部屋から出る。

周りを見渡す。

ウラガンとバカレッドの姿はない。

冒険者ギルドを出て、王都を出るために門を目指して歩く。

その度にクマって言葉があっちこっちから聞こえてくる。

そして同時に視線も。

「サーニャが言っていた意味を、今理解したわ。さっさと王都を出るわよ」

マーネさんが恥ずかしそうに歩く。

わたしも黙ってついていく。

そして、王都の外までやってきたわたしは、くまゆるとくまきゅうを召喚する。

わたしはくまゆるに乗り、マーネさんがくまきゅうに乗る。

そして、まずは道に沿って出発する。

くまゆるとくまきゅうは、わたしたちを乗せて走る。

「乗ってみて、あらためてサーニャの言葉が分かるわね。馬より、乗り心地はいいし、柔らかいし、背中は広いから、寝そべることもできるわ」

マーネさんはくまきゅうを抱きかかえるように寝そべっている。

「馬や馬車じゃ腰が痛くなるし」

「落ちないから、寝てても大丈夫ですよ」

「昨日、遅くまで仕事を片づけていたから、気持ちよくて眠くなってくるわ」

「なにかあれば起こしますから、寝てます?」

「いいの?」

わたしが了承すると、本当に眠かったのか寝てしまった。

「それじゃ、くまゆる、くまきゅう、行こうか」

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうは走る。

街道はどこまでも続く。馬車を追い抜いたりすれ違うたびに驚かれる。

本来なら、馬車などに気付いたら街道を外れるようにしているんだけど、今回はマーネさんが寝ているので、街道を外れないように走っている。

整備されていないところを走れば、流石に揺れて、起こしてしまう。

なので、なるべく街道を走るようにする。

しばらく走ると、マーネさんが起き上がる。

「よく寝られた?」

「ええ、気持ちよく寝られたわ」

マーネさんは上を見る。

「かなり、日が高いわね。もしかして、この子たち、ずっと走り続けていたの?」

マーネさんはくまきゅうを触りながら尋ねる。

「うん、そろそろ、くまゆるとくまきゅうも休ませてあげたいし、お昼にしようか」

街道から少し離れた場所に大きめな木があったので、木の下で、わたしたちは昼食を兼ねた休憩を取ることにした。

木の下にシートを敷き、モリンさんが焼いてくれたパンと果汁を出す。

「もしかして、用意してくれたの?」

「美味しいから、食べて」

マーネさんはパンを手に取ると、口に入れる。

「柔らかい。それに美味しいわ」

口に合ったようでよかった。

まあ、モリンさんのパンが口に合わない人は少ないと思う。

「もしかして、数日分の食糧も?」

「数日っていうか、数ヶ月分はあると思うよ」

「…………!?」

マーネさんは、わたしの言葉に驚く。

「わたしも用意してきたけど、これを食べたら、わたしが持ってきた保存食は食べられないわね」

「マーネさんも用意してきたの?」

「一応、あなたの分も用意してきたけど」

そういえば、昨日はクマハウスのことや食糧の話はしなかった。

「これは焼きたてみたいだけど、朝、買ったのかしら?」

クマボックスのことを説明すると、面倒になりそうなので、黙っておく。

「でも、数ヶ月分の食糧って、凄いアイテム袋なのね」

これでクマハウスを出したら、驚かれるかもね。

昼食を終えたわたしたちは、再び出発する。

「マーネさん、今度はくまゆるに乗って」

「くまゆるって、黒いクマ?」

「この子たち、片方に乗り続けると、いじけちゃうから」

わたしの言葉を聞いて、マーネさんはくまゆるとくまきゅうに近づく。

「そうね。ご主人様を乗せたいと思うわよね。くまきゅうだったわね。ここまで乗せてくれてありがとうね」

「くぅ〜ん」

マーネさんはくまきゅうの体を撫でるとくまゆるに近づく。

「ご主人様じゃないけど、よろしくね」

「くぅ〜ん」

くまゆるは乗ってと言う感じに、マーネさんの前で腰を下ろす。

「ありがとう」

マーネさんはくまゆるに乗り、わたしはくまきゅうに乗る。

わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは西の森に向けて走り出す。