軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

805 クマさん、マーネさんと話す その2

「あのルトゥムは性格が悪くても、それなりに強かったはずよ」

まあ、クマの格好している女の子が騎士団長に勝つとは思えないのだろう。

「普通は信じられませんよね。さらに言えば、少し前に冒険者ギルド主催の魔物解体のイベントがあったでしょう。そのときに出されたコカトリスとワイバーンは彼女が討伐してきた魔物だったんですよ」

エレローラさんは、わたしの秘密を次々と話していく。

「ちょっと待って。コカトリスとワイバーンと戦ったと言うの? しかも倒したと……。それこそありえないわ」

「まあ、わたしも初めて話を聞いた時は信じられませんでしたが……ユナちゃんですから」

その「ユナちゃんですから」ってなに?

その一言は納得させる魔法の言葉じゃないよ。

「信じられないと思いますが、本当のことですよ」

なぜか、エレローラさんが自分のことのように自慢気に話す。

「あのコカトリスとワイバーンの素材は、わたしの研究室にも分けてもらったわ」

そうなの?

「あのときの素材って、冒険者ギルドで管理していたんじゃ」

「ええ、でも買うのは自由でしょう。城でも貴重な素材は買い取らせてもらったのよ」

確かに売買は自由だ。

「なにか作ったの?」

「コカトリスの羽で羽ペンを作ったわ」

「羽ペン?」

わたしが尋ねると、マーネさんは椅子から立ち上がり、奥の本が大量に積まれている机に向かう。

そして、なにかを探していると思うと、「あった」と言う声がすると戻ってくる。

「コカトリスの羽?」

コカトリスと戦ったときに、わたしに向けて放ってきた羽だ。

「この羽ペンには、僅かだけどコカトリスの魔力が残っているわ」

マーネさんは羽ペンと一緒に持ってきた紙に何かを書き始める。

「……書けない?」

マーネさんが紙に何かを書いているが、インクが出ていないのか、何も書かれない。

マーネさんが微笑むと、いきなり赤い線が引かれる。さらに赤い線が緑に変わり、青に変化して最後は黒くなる。

「色が変わっている」

「魔力を流す量を変えると色が変わるのよ。面白いでしょう」

自慢げに言う。

でも、本当に凄いと思う。

「これにも特殊なインクが使われているのよ」

「コカトリスの羽を使う意味は?」

「魔力の通しやすさね。普通のペンだとインクに魔力が流れにくいし、伝わりにくいわ。微妙な魔力調整も難しい。その点、コカトリスの羽は魔力の流れもいいし、調整も簡単なのよ。やってみる?」

マーネさんが羽ペンを渡してくるので、受け取る。

そして、紙に書いてみる。

なにも書けない。

少し魔力を流すと赤い線が出る。

おお。

しかも、魔力調整すると、薄い赤、濃い赤と調整ができる。

さらに魔力を入れると緑に変わり、青になる。

最終的には黒になる。

「凄い」

わたしが感心すると、マーネさんは嬉しそうにする。

「でも、どういうときに使うの?」

「これも契約書に使えないかと思って作ったのよ。書いているときに、色が変わったら、複製するのは難しいでしょう」

モノクロを複製するのと、カラーを複製するのはどっちが難しいと言われたら、カラーだ。

しかも、ランダム要素もある。

「複製は難しいけど。流石に契約書には使えないですね」

「ええ、だから、却下されたわ」

確かに、契約書にカラフルペンが使えないのは、わたしでも理解できる。

「しかも、インクを作る素材も高いから、量産に適していなくて、販売はできないし、失敗作よ」

「わたしは失敗とは思わないよ、失敗から得られることもあるし、多少高くても絵描きとか欲しがるんじゃない?」

契約書には使えないと思う。

でも、使い道はいろいろとあると思う。

「そうね。ユナちゃん。それだったら、絵本で使ってみたら?」

「絵本?」

マーネさんの頭に「?」マークが浮かぶ。

「えっと、こんな感じの絵本ですよ」

エレローラさんはどこからともなく、わたしが描いた絵本を出す。

なんで、持っているの? と思うわたしは言葉を飲み込む。

マーネさんは絵本を受け取ると、パラパラと捲る。

「あなた、こんなクマの絵本まで描いているの?」

「えっと、フローラ様のために」

「ユナちゃんは、冒険者でもあり、料理人でもあり、絵本作家でもあるんですよ」

別に料理人でもないし、絵本作家でもない。さらに言えば、冒険者もサボり気味だから、名乗っていいのか疑問だ。最近、あっちこっちに行っているから、冒険家って言葉が一番しっくりくるかもしれない。

「そうね。それじゃ、このペンはあなたにあげるわ」

マーネさんはコカトリスの羽ペンを差し出す。

「いいの?」

「ええ、現状では使い道がないし。もし、今後、使い道があれば作ればいいだけよ。設計図とインクの材料、作り方の手順などは、ちゃんと書き留めて、資料にして保管してあるから、いつでも作れるわ」

「そう言うことなら、ありがたく貰うね」

わたしは羽ペンを受け取る。

少し、嬉しいかも。

「作ったインクもあげるわ」

マーネさんは再度、本が山積みになった机に向かうと、インクが入った小瓶を持ってくる。

「透明なんだね」

「魔力を込めれば色が変わるわよ」

わたしはクマボックスの中に羽ペンとインクが入った小瓶を仕舞う。

そして、話は戻る。

「それで、本当にあなたみたいな女の子がコカトリスやワイバーンを倒したの?」

「信じられないようだったら、サーニャに確認したらいいですよ」

エレローラさんや冒険者ギルドのギルドマスターのサーニャさんは知っていることだ。

エルフ繋がりで、知っていてもおかしくはない。

「本当に……」

マーネさんはわたしを見てから、くまゆるとくまきゅうを見る。

「エレローラの言葉を信じるわ。エレローラが、わたしにたいして危険なことをさせるわけがないしね」

エレローラさんのことを信じているみたいだ。

マーネさんは今度はエレローラさんを見てから、わたしを見る。

「ユナ、わたしの護衛をお願いできる? もちろん、護衛料は支払うわ」

「その前に、護衛って、そんなに危険な場所なの?」

もし、危険なら簡単に引き受けるわけにはいかない。

わたしだけなら、なんとでもなる。

でも、守りながらとなれば話は別だ。

「とある素材を探しているんだけど。最近になって、王都から西にある森で見つかったの。でも、その森は深く、危険なところなの。冒険者ギルドに護衛の依頼こそ出しているんだけど、わたしみたいな子供の護衛はしたくないと断られるのよ。わたしは子供じゃないのに失礼よね」

それは仕方ないかと、見た目は子供だし。

「それだけの理由ではありませんよ。危険な森に連れて行くだけでもリスクがありますから、護衛するには困難だと判断したんでしょうね」

護衛有りと、護衛無しとは、難易度は変わる。

ゲームでも、一般人の護衛ってイベントがあったけど、わたしが戦っている間に、護衛対象が何度死んだことか。

「それなら、一緒に行かずに採取を他の人に頼めば」

「採取方法が特殊で、他の人には任せられないのよ。わたしが自分で採りにいかないとダメなの」

「それに似たような物もあるし、間違う可能性もあるわ」

確かに、似たような花はある。

花びらが一枚多いとか。葉の形が微妙に違うとか。

もし、わたしが頼まれても、素人のわたしでは区別ができない。

「それで、護衛が見つからなかったから、エレローラに城にいる騎士や魔法使いに頼むよう言ったのよ。でも……」

マーネさんがエレローラを見る。

「許可が下りなかったのよ」

「どうして? マーネさんは、ここ魔法省で働いているんでしょう。研究で素材が欲しいなら、許可ぐらい下りても」

「その素材採取は個人的なことなのよ。個人的なことに城の騎士や魔法使いを使うことはできないわ」

「でも、エレローラさんなら、盗賊討伐のときに」

初めて王都にやってきたとき、盗賊討伐に騎士を動かしてくれた。

「あれは、王都に向かう人の安全のためだから。でも、今回はマーネ様の個人的なことだから」

でも、護衛ぐらいしてあげてよとは思うけど。もし、個人が危険な山に行くから、警察官を護衛に使ったら、叩かれると思う。

「その個人的なものって? 危険を冒してまで、採りに行くものなの?」

「それは……」

マーネさんは、少し言いよどむ。

「えっと、ユナちゃんに護衛をしてもらうなら、話してもいいかと思いますよ」

マーネさんはわたしを見て、いろいろと考えているみたいだ。

「わたしを最初見たとき、おかしいと思ったわよね」

わたしはあらためてマーネさんを見る。

「えっと、いくらなんでも幼いかと」

エルフとはいえ、幼い。

ルイミンだって、成長している。

エルフのサーニャさんと同じぐらいの年齢と仮定したら、おかしい。

「ハーフエルフって、成長しないってことは……」

「ないわよ」

だよね。

「わたしが成長していないのには理由があるの。わたしの母親は薬草学を研究する人物だった。その中で、植物に詳しいエルフの父親と出会い、2人は親密となり、わたしが生まれたわ。母は薬草学を、父は珍しい植物を持って帰ってきては、それを母が研究していたわ。わたしは物心が付く頃から母の研究室で遊んでいたの。でも、あるときを境にわたしは成長してないことに気づいたの。他の子は大きくなっていくのに、わたしだけ小さい。母と父も気にしてなかったけど、何年経っても成長しないわたしを見て、いくらハーフエルフでもおかしいと思い始めたの。それで調べたんだけど。幼い頃のわたしは何でも口に入れる癖があったの。それで、母の考えでは研究室にあった薬草などを口にしていたことが原因だったのでは? となったわ」

「そんなことが?」

「体内の魔力に異変があったわ。でも、それがなにに影響されているか、その時は分からなかった。どの薬草を口にしたのか、どのくらいの分量を口にしたのか、口にしてから、どのくらいの時間で、他のものを同時に口にしたのか。ハッキリ言って、そんなこと覚えていないわ」

確かに、1年前に何を口にしたなんて、聞かれても覚えていない。

しかも、量とか順番とか言われても、分からないと言うしかない。