軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

804 クマさん、マーネさんと話す その1

杖の魔石の裏に魔法陣が描かれていると思わなかった。

「それじゃ、指輪やブレスレットにも?」

「ええ、描いてあるわ」

魔石が媒体になっているわけじゃなかったんだね。

「魔法陣によっては直接魔石に描いたりする場合もあるけど、それにも特殊なインクが必要になるわ」

確かに、魔石に描くには特別なインクが必要かもしれない。

ガラスに鉛筆で描けるわけもないし、水性ペンみたいなものでも描けない。描けたとしても、薄かったり、滲んだりする。

本物のダイヤモンドは油性ペンでは書けるけど、偽物は書けないって、どこかで聞いたことがある。

そう考えると魔法陣を描くにしても、描く場所によっては、いろいろなインクが必要なのかもしれない。

「それじゃ、魔法陣が魔力の流れなどの補佐をしているんだね」

「一般的には魔力を制御する魔法陣が描かれていることが多いわ。他には発動速度、魔法の威力を上げる魔法陣もあるわよ」

マーネさんが教えてくれる。

「魔法制御が上手い人は、魔法の速度、威力が上がる杖を使う人もいるわ」

確かに、ゲームでも攻撃力が上がる武器とか器用さが上がる武器があったので、理解できる。

自分の不得意を補ったり、得意部分の威力を上げたり、さまざまだ。

「魔石は?」

「基本は魔法陣と変わらないわよ。魔法陣の効果を上げたり、魔力を集めやすくしたり、発動する魔力量を抑えたりする感じかしら?」

魔力量を抑えて発動する。

これは魔道具の使い勝手に関わっているのかな。

魔法が使えない人でも、魔道具は使える。

魔石があることで、魔力が少ない人でも魔道具を扱えるようにしているのかもしれない。

「ユナちゃんの手袋が、杖の役目をしているのかしら?」

エレローラさんがクマパペットを見る。

「一応」

確認したことはないけど、もしかすると内側とかに、魔法陣が糸とかで縫い込まれている可能性がある。

「でも、魔石はないよね」

エレローラさんがクマパペットを握る。

「柔らかい」

「魔力の籠もった糸で作ることもできるわ。ただし、そんな面倒くさいことは一般的にしないけど」

確かに、マーネさんの言うとおりに魔石でいいものを糸にして手袋にするのは大変な手間だ。

そもそも、神様がどんなつもりでクマにしたなんてわたしが知ることもできない。

絶対に神様の趣味だと思う。

「調べてみたいわね」

マーネさんがジッとクマパペットを見る。

「見せないよ」

そもそも、クマパペットは譲渡不可なので、わたしが手に持って、見せることはできるけど、他人が持つことができない。

マーネさんは残念そうにする。

「それで、この魔蒼花だっけ。どんな効果があるの?」

わたしは押し花に目を向けながら尋ねる。

クマパペットについて聞かれても困るので、話を変える。

「この魔蒼花を使ったインクで魔法陣を描くと、従来使っているインクよりも魔法の発動速度、魔法の威力、魔法の制御の効果が上がるわ」

マーネさんが教えてくれる。

「そんなに変わるものなの?」

「二倍、三倍となるものではないけど。それでも、実験では効果は立証されているわ。誰しもが少しでも魔法速度、魔法の威力、魔法制御をあげたいと思っている。疲労が大きくなれば集中力が落ち、魔法制御、魔法の威力、発動速度も落ちる。それを少しでも補うことができることは大きいわ。それが少しの差でもね」

戦いは、ほんの少しの速さ、威力が勝敗を決めることもある。

ゲームでも、相手の方が、ほんの少し行動が早くて負けたことや、残り体力がミリ単位で残ったことで、負けたことがある。

あと、もう少し速さが、もう少し攻撃力があればと何度も思ったことがある。

逆にギリで勝つと嬉しいんだけどね。

「それと同様の効果として、魔道具にも使えるわ。研究家としては欲しい素材の一つなのよ」

いろいろと用途があるんだね。

話を聞くだけでも、欲しい理由もわかる。

わたしが呼ばれた理由もわかった。緊急性がなかったことも理解できた。だから、すぐに来て欲しいとは言われなかったんだね。

「あなたがこの部屋に来るときに乗ってきた部屋があったでしょう。あれの速度も上げられるし、たくさんの重い物も載せることができるわ。いろいろと活用方法があったのに、動く島ね」

マーネさんは何かを考え込む。

「今度来るのは早くても数年後だと思うよ」

「その辺りは漁師に発見次第、冒険者ギルドに連絡する感じにするしかないわね」

エレローラさんも残念そうに言う。

「でも、一つ問題があるよ。その動く島、海流が激しくて、船が近づくことができないから」

「それじゃ、ユナちゃんはどうやって、その島に行ったの?」

「……それは」

わたしは少し考え、答える。

まあ、ノアもシアも知っていることだし。

「くまゆるとくまきゅうに乗って行ったんだよ」

「なに? そのくまゆるとくまきゅうって?」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは、ユナちゃんの召喚獣のクマの名前ですよ」

わたしの代わりにエレローラさんが説明する。

「クマの召喚獣……見たい」

わたしは周りを見渡す。

本や植物、鉱石、魔道具らしきものが、転がっている。

「ちょっと、ここで召喚するには狭いかな」

子熊バージョンを出してもいいんだけど、それだと乗って島に行った説明ができない。

「片付けるわよ」

マーネさんのその一言で部屋を片付けることになった。

三人がかりで、くまゆるとくまきゅうが召喚できるスペースが出来上がる。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん、久しぶりね」

「「くぅ~ん」」

エレローラさんはくまゆるとくまきゅうに抱きつく。

「本当にクマ……」

マーネさんはくまゆるとくまきゅうを不思議そうにみる。

「このくまゆるとくまきゅうに乗って、激しい海流も越えて、島に行ったんだよ」

実際にクマは泳げるし、海の上を走れることを言う必要はないので、黙っておく。

「クマの召喚獣に、クマの格好。あなたはクマが好きなのね」

この質問は、いつも困る。

嫌いじゃないけど、どっちかというとくまゆるとくまきゅうもいるからクマは好きだ。

でも、クマ好きだからと言って、クマの格好をしているわけではない。と言いたい。

「まあ、渦潮ぐらい、魔法使いがいれば対処ぐらいできるでしょう」

できるのかな。

渦潮の流れを一時期的にでも、抑えることができれば、上陸はできると思う。

動き出したら、どうなるか分からないけど。

「だけど、動く島ね。そんな島があるのね。世界中を動いていたら、見たことがない植物があるのかも知れない。興味をそそられるわね」

幼い顔でも研究家としての顔になる。

「そのあたりのことは後で考えましょう」

クマの転移門を使えば行けるので、少しばかり、罪悪感がでる。

まあ、命に関わる花ではなかったので、自力で手に入れてもらおう。

あと、問題があるとしたら、動く島がタールグイってことだけど。わたしの島ってわけではないし、今度来るのは数年後だ。そのときに考えればいい。

「それでエレローラ。あの件はどうなった?」

あの件?

「やっぱり、個人の理由で騎士や宮廷の魔法使いを動かすのは難しいです」

あの件って言葉だけでエレローラさんには伝わったみたいで答える。

「やっぱり、今回も冒険者に頼むしかないわね」

マーネさんはため息を吐く。

そんなマーネさんを見て、エレローラさんとわたしの目が合う。

エレローラさんの顔がなにかを閃いた表情をなる。

「ユナちゃんに依頼をしたら、どうかしら? ユナちゃんは優秀な冒険者だから、きっとマーネ様の護衛をしてくださいますよ」

「あなたが、優秀?」

エレローラさんの言葉にマーネさんは驚いた表情をする。

わたしもいきなりのことに驚く。

「こんな可愛らしいクマの格好をしてますが、ユナちゃんは優秀な冒険者なんですよ」

エレローラさんの言葉を疑うようにわたしを見る。

「確かに、不思議なクマの召喚獣を持っていたわね」

「ユナちゃん本人も強いですよ。あのルトゥム卿にも勝ってます」

「ルトゥム卿に!?」

エレローラさんの言葉に、さらにマーネさんは驚いた表情をする。

それ以前にルトゥム卿って誰?

どこかで聞き覚えがあるけど。

「確か、女の子の生徒と試合をして負け、騎士団長を辞めさせられたって、聞いたけど」

「そのときに試合をした女子学生がユナちゃんです」

「それは本当なの?」

マーネさんの顔がさらに驚いた表情で、わたしを見る。

「えっと、ルトゥム卿って誰?」

「ユナちゃんが学園祭のときに、試合をした騎士団長よ」

「…………あっ」

思いだした。

「確か、シアを自分の息子と結婚させようとした」

「ええ、その男がルトゥム卿よ」

そんなこともあったね。

学園祭のとき、2人の騎士と試合をしたことがあった。

騎士の一人には少し前に、シアとマリクスの剣の試合に付き合ったときにお城で会っている。

そして、もう一人が貴族で、騎士団長だった。

そのときの貴族の男の名前がルトゥムとか言う名前だったと思う。

「本当のことなの?」

「まあ、一応」

思いだしたので、間違いない。

「噓ではなかったのね。あの生意気なガキが学生に負けて、騎士団長を辞めさせられたと聞いたときは、冗談かと思ったけど。実際問題、その女子学生の存在は見つけられなかったと聞いていたから、その話は噓だと思っていたけど」

マーネさんからしたら、年下だと思うけど。あのおじさんをガキって。

「国王陛下から箝口令が敷かれ、さらに言えばユナちゃんは学生ではなかったので、誰も調べることはできなかったんですよ」

「こんな、クマの格好をしていれば、隠すには無理でしょう」

「試合をしたときは学園の制服を着ていたんです。だから、誰も同一人物とは思っていないかと」

確かに、あのときの女生徒がわたしだと思わないよね。

わたしのことを知っているのはシアたちぐらいだ。