軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

797 クマさん、フィナに会いに行く

わたしとカガリさんは和の国に帰ってきた。

「いろいろとあったのう」

「ちょっとした散歩のつもりだったんだけど」

はじめはタールグイから見えた陸地が気になって、少しだけ寄るつもりだった。

それが、こんなことになるとは思いもしなかった。

「お主は面倒ごとの神に愛されているんじゃろう」

やめて、そんな神様、お断りだよ。

でも、わたしを連れてきた神様のことを考えると、ありえない話じゃないだけに困る。

この世界に来て、いろいろなことに巻き込まれている。

のんびり、まったりがわたしのモットーなのに

「それじゃ、わたしも帰るね」

「なにかあれば、連絡をせよ。暇じゃったら、付き合ってやるから」

カガリさんは大蛇を倒してから暇なのかな。

ようは暇つぶしに付き合うってことかもしれない。

断るようなことではないので、その言葉はありがたく受け取っておく。

「そのときはお願いね」

わたしはクマの転移門の扉を一度閉じると、クリモニアに向けてクマの転移門の扉を開く。わたしとくまゆるとくまきゅうはクリモニアに帰ってくる。

わたしは、そのまま自室に戻ると、ベッドに倒れる。

やっぱり、クリモニアの家が落ち着くね。

翌朝、フィナに会いに孤児院に向かう。

朝早くなら、ティルミナさんの仕事を手伝って、孤児院にいることが多い。

孤児院に到着すると、鳥小屋の方へ向かう。

子供たちの元気な声が聞こえてくる。鳥を移動させるとか、掃除をするとか。

鳥小屋の中に入ると、子供たちの声が聞こえてきたとおりに鳥を移動させたり、掃除をしている。

わたしが小屋に入ってきたことに、一人の子供が気づく。

「ユナお姉ちゃん!」

一人の声で、全員が振り向く。

「みんな、ちゃんと仕事をして、偉いね」

歩み寄ってきた女の子の頭を撫でてあげる。

すると、次々とわたしのところに集まってくる。

どうやら、みんなも頭を撫でて欲しいみたいだ。

わたしは全員の頭を撫でてあげる。

「ほら、ユナさんがやってきて嬉しいのは分かるけど、鳥さんの世話もしっかりしないとダメだよ」

リズさんがやってきて、子供たちに注意する。

わたしは子供たちに向かって微笑む。

「仕事、頑張ってね」

「うん」

子供たちは仕事に戻っていく。

「相変わらず、ユナさんが来ると、集まってくるんだから」

「最近、顔を出していなかったからね」

いろいろとあったから仕方ない。

「フィナはいますか?」

「ティルミナさんと一緒に、卵を数えていると思うわよ」

わたしはリズさんと別れ、ティルミナさんがいる小屋に向かう。

この小屋では卵の管理を行っている。

小屋の中に入ると、ティルミナさんとフィナ、それからシュリが卵を数えていた。

「フィナ、商業ギルド用は大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「お店のほうの卵も大丈夫ね。シュリ、ひび割れた卵と、あまりはどのくらい?」

「えっと34個」

シュリはすぐに答える。

計算もできるようになっている。

ひび割れた卵は店で使ったり、孤児院で食べるようになっている。

プリンなどを作る程度なら、少しくらいのひび割れであれば、問題はない。

「それじゃ、院長先生のところに運んでおいて」

「うん、分かった」

シュリが卵を持って、ドアのほうに目を向ける。

わたしはシュリと目が合う。

「ユナ姉ちゃん!」

その声にフィナとティルミナさんもわたしのほうを見る。

「あら、ユナちゃん、いたの? 声をかけてくれたらよかったのに」

「仕事中だったから」

「ユナお姉ちゃん、お帰り」

「ただいま」

「いつ帰って来たの?」

「昨日だよ」

フィナに帰ってきた報告をしていると、卵を引き取りに来た商業ギルドの人がやってくる。

ティルミナさんは卵の数を確認してもらうとサインをもらう。

個数に問題がないことを確認すると、ギルド職員は卵を運び出し、小屋の外にある馬車に積み込む。

フィナとシュリも手伝い、商業ギルドに引き渡す卵以外にも、お店に運ぶ卵を積む。

商業ギルドのほうで、お店で使う卵も一緒に運んでもらっている。

ミレーヌさんからのありがたい申し出があったので、その申し出を受けた。

「通り道だから、気にしないで」

とのことだ。

わたしも卵を馬車に運ぶのを手伝い、全ての卵が馬車に積み終わる。

「よろしくお願いします」

「お願いします」

フィナとシュリがギルド職員の見送りをする。

馬車が動き出す。

これで、ティルミナさんたちの仕事は終わりだ。

ティルミナさんが院長先生に顔を出すと言うので、一緒についていく。

院長先生に会いに行くと、院長先生とニーフさんが幼い子どもたちに囲まれている。

ニーフさんが来てくれてから、子供の世話が楽になったと院長先生が言っていた。

リズさんが年長組。ニーフさんは幼年組をお世話しているって感じだ。

院長先生に簡単な挨拶をする。

ティルミナさんは仕事を終わったことを院長先生に伝え、シュリと一緒に買い物に行くと言うので別れ、わたしはフィナと一緒に歩き出す。

「それで、どこに行っていたの? 寒いところって言っていたけど」

フィナには一度、リーゼさんの防寒具を買うときに、少しだけ話してある。

わたしは補足するように、タールグイにカガリさんと一緒に行ったこと。

陸が見えて、行ってみることにしたこと。

氷竜によって、街と人が凍っていたこと。

残っていた6人のこと。

その6人の中に女の子がいて、防寒具をプレゼントしたこと。

そして、カガリさんと一緒に氷竜と戦ったこと。

最後には氷竜が立ち去ったこと。

話をするたびに、フィナの表情はころころと変わる。

「それで、どうなったの?」

「氷竜が立ち去ったあとは、街の氷も溶けて、凍っていた人たちは動き出したんだよ」

「生きていたの? よかった」

フィナは自分のことのように安堵する。

「でも、不思議です。3年間凍っていた人が動き出すなんて」

それには同意だ。

氷竜の氷は普通の氷と違うのかもしれない。

まあ、人が死ぬよりは生きているほうがいい。

リーゼさんたちも3年間苦しんできた。そのぶん、幸せになってほしい。

「わたしもお店の冷凍庫で凍っても、大丈夫なのかな?」

「危ないから、やめてね」

冗談半分でもやってはいけないことだ。

あくまで氷竜の魔力のこもった冷気で凍ったからであって、普通に凍ったら死ぬと思う。

だから、本気で止める。

フィナも分かったようで「しないよ」と言ってくれた。

「それじゃ、氷竜は倒したわけじゃないんだね」

「もしかして、解体したかった? それなら、頑張って倒してくるけど」

「そんなこと思っていないよ」

仕事に熱心なフィナ。

氷竜を解体してみたかったのかと思ったけど、違ったみたいだ。

「そもそも氷竜が普段どこにいるのかも分からないし、倒しに行くすらも無理だけどね」

「うぅ、ユナお姉ちゃん、意地悪です」

フィナは頬を膨らませる。

「ごめん。でも、氷竜の鱗とかあるけど、よかったら見てみる?」

「えっと、見てみたいです……」

恥ずかしそうに答える。

解体の仕事をしているフィナ。氷竜の素材が気になるのかもしれない。

氷竜の鱗を見せるため、わたしとフィナはクマハウスに向かう。

流石に、歩きながら見せるわけにはいかないからね。

クマハウスに帰ってきたわたしは、さっそく氷竜の鱗を出してあげる。

「……青白くて、綺麗です」

フィナは両手で鱗を持つ。

「あげようか?」

「い、いらないです」

「たくさんあるから、一枚ぐらいなら大丈夫だよ」

あの時たくさん拾った。

リーゼさんたちにも分けたけど、まだ残っているから、フィナにあげても問題はない。

「そうじゃなくて、氷竜の鱗を持ち帰ったら、お母さんとお父さんが驚いちゃいます」

「見られても、氷竜の鱗だって、バレないよ」

そもそも見たことがないだろうし。

「こんな綺麗な鱗を見たら、どうしたのかを聞かれるよ」

「そこは適当に」

「それに、氷竜の鱗が、どれほどの価値があるか分かっているの?」

「やっぱり、価値がある?」

「氷竜の鱗だよ。欲しくても手に入らないよ。そもそも氷竜と戦おうとする人なんて、ユナお姉ちゃんぐらいだよ」

ひどい。

「もし冒険者ギルドにでも、話が広まったりしたら大騒ぎになるよ」

やっぱり、そうなるよね。

黙っておこう。

お金に困ったら、売ろう。

そんなときが来るか分からないけど。

王都でやった解体のイベントのときに売ったお金もあるし、クリモニアとミリーラを繋ぐトンネルの通行料のお金も入ってきているし、お金はどんどん貯まる一方だ。

もしかして、お城とか買えるかな。

買えるとしても、買わないけど。

そもそも掃除が面倒そうだし、管理も面倒そう。

使用人? 他人と一緒の生活なんて嫌だし。

そもそも、わたしにお城暮らしなんて合わない

「それじゃ、氷竜の角なんて見せたら、大変なことになるね」

「角もあるの?」

「卵の殻もあるよ」

その辺りの経緯も話してあげる。

流石に角は大きいので見せてあげられないけど、卵の殻は部屋の中でも出せるので、見せてあげる。

「大きい」

フィナは割れた氷竜の卵の殻を見る。

「この中に、氷竜の赤ちゃんが。まさか、氷竜の赤ちゃんを倒したりは……」

「わたしのことをなんだと思っているの? さっきも話したけど、氷竜の赤ちゃんが産まれたら、立ち去るって約束をしたから、なにもしてないよ」

「ユナお姉ちゃんなら、戦いそうだから」

いや、わたしにだって、一応、そのぐらいの分別はあるよ。

「これは氷竜が立ち去ったあとに、拾ったものだよ」

それから、フィナにいろいろと氷竜の話を聞かれた。

やっぱり、解体がしたかったのかな?