軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

796 リーゼ、友達と会う

ユナさんとカガリちゃんが帰って数日が過ぎました。

街は何事もなかったかのように時間は進みますが、やっぱり、おかしいと思いはじめる人もでてきます。

まず、そう思った人は、他の街と交流があった人たちです。

入ってくる物資が届きません。他の街の商人が来ないので、物を買うことも、売ることもできません。

商業ギルドが説明をしたらしいのですが、半信半疑だったそうです。

でも、他の街から船が何日も来ないことや、他の街に行った人たちによって、商業ギルドの関係者たちは信じることができたみたいです。

それが徐々に街に広まっています。

いきなり、3年も凍っていたと言われても、信じるのは難しいみたいです。

他の街との交流の件ですが、物資などは3年前のときと同じように取り引きをするのは難しいそうですが、わたしたちの街の状況を知り、ある程度は融通してくださることになったそうです。

しばらくは取り引きは少なくなりますが、徐々に話し合いをし、これからのことを決めていくそうです。

商業ギルドやお父様は忙しくなりそうです。

次に鉱山ですが、なにも知らずに鉱山に向かった人が氷竜の足跡に驚いたと聞いています。

倉庫も壊されていますので、まずは建て直すそうです。

それから、ユナさんが作ってくれたクマのお風呂ですが、話し合っていた通りに鉱山で働く人が使うことになりました。

最初は外装のクマに驚いたそうですが、内装のお風呂を見て、喜んだと聞いています。

ただ、可愛らしいクマは恥ずかしいので、どうにかならないかと意見が出たそうですが、お父様やベンデお爺ちゃんたちが却下しました。

ユナさんが作ってくれたものです。

大切に残すそうです。

クマと言えば、街の外にある大きなクマです。

ユナさんが氷竜と戦ったときに、氷竜の攻撃から守るために作ったそうです。

ユナさんは片づけるようなことを言っていたのですが、どうやら忘れて帰ってしまったみたいです。

今では、不思議な構造物となっています。

わたしも近くまで見に行きましたが、見に来ている人がたくさんいました。

お父様は、こちらのクマの像も撤去はせず、そのままにすると言っていました。

勝手に決めて、いいのでしょうか。

ユナさんが次に来たとき、怒らないかな。

でも、あのクマの像は街を氷竜から守ってくれました。

街の人達は知らなくても、わたしたちは2人の女の子が街を助けてくれたことを知っています。

わたしも街を救ってくれたことを忘れないためにも、残すのは良いことだと思います。

もし、わたしが結婚して、子供ができたら、当時のことを話してあげたいと思う。

あとでユナさんが片づけに来たら、交渉するとお父様は言っていました。

わたしはお父様の手伝いをして、忙しい日々を過ごしていました。

いえ、忙しいフリをして、大切なことを先延ばしにしていました。

それは大切な友人の2人に会うことです。

わたしには大切な友達が2人います。

フランとイーナ。

小さい頃から一緒に遊び、走り回っていました。

その2人に会う勇気がない。

どんな顔をして会えばいいのか分からない。

2人は成長したわたしを見て、どんな表情をするのか怖かった。

もう、友人として一緒にいられないかもと思うと……怖くて会えなかった。

でも、このまま会わなければ同じこと。

カガリちゃんの言葉が頭に残る。

お母様とお姉ちゃんが、わたしを見たときのことは忘れない。

どうして、わたしだけ成長しちゃったかな。

みんなと一緒に氷漬けになっていれば、こんな気持ちにはならなかった。

お父様やベンデお爺ちゃん、大人にとって3年はさほど変わらない。

でも、わたしは変わった。

身長も伸び、12歳だった幼い顔立ちはなくなり、お姉ちゃんより、大人っぽくなった。

いつまでも逃げ続けるわけにもいかないし、逃げることもできない。

その日はやってきました。

「お嬢様、フラン様とイーナ様がお見えですが」

わたしの世話をしてくれているニアが「どうしますか?」って感じに尋ねてきます。

わたしがいつも、友達に会うことを不安そうにしていることを知っているからです。

「どうしましょうか? お帰りになっていただきますか?」

「…………」

……会うのが怖い。

まだ、心の準備はできていない。

でも、いつまでも会わないわけにはいかないってことは分かっています。

わたしは深呼吸する。

もう、逃げないって決めた。

「……通してください」

「分かりました」

ドアが開き、2人が入ってくる。

3年経っているのに、2人は3年前の12歳のままです。

わたしだけが成長してしまった。

あらためて認識してしまう。

でも、2人を見たら別の感情が湧き出てくる。

懐かしい。

死んだと思っていた友人が生きている。

氷竜が街を凍らせたあのとき、家族、友人を亡くし、泣いていました。

でも……2人は生きている。

わたしが知っている3年前のままの2人です。

「リーゼちゃん!?」

「いきなり泣いて、どうしたの!?」

気づかないうちに泣いていました。

「ううん、なんでもないよ」

ハンカチで涙を拭く。

「わたしたちを見て泣くのが、なんでもないわけがないでしょう」

2人が心配そうに近くにやってきます。

そして、わたしの隣に座ってくれます。

「それで、どうして泣いたの?」

「フランの顔が怖かったの?」

「イーナ!」

フランが怒った顔をします。

そのやりとりをみて、思わず笑みがこぼれてしまいます。

懐かしい。昔からのやりとりです。

「2人に会うのが怖かったの。でも、それ以上に2人が生きているってことが嬉しくなって。二度と会えないと思っていたから」

変な目で見られても、2人が生きているってことが嬉しい。会えて嬉しい。

「そうだったね。わたしたち3年間、氷漬けになっていたんだよね」

「リーゼからしたら、わたしたちは死んだと思っていたんだよね」

お母様やお姉ちゃんだけなく、フランとイーナも死んだと思っていた。

「でも、リーゼを見ると、本当に3年経っているんだね」

「大きい」

わたしも2人を見て、あらためて再認識する。

2人は、わたしの記憶に残っているままだ。

「なにか、変だね」

「本当に、わたしたち3年間も凍っていたんだね」

「信じているの?」

「わたしたちの家は商家でしょう。お父さんが商業ギルドから聞かされたの」

お二人の家はかなり大きな商家です。

お父様の仕事関係で幼いときに知り合い、同い年だったこともあって友達になりました。

「初めはお父さんも信じられないって言っていたんだけど。もちろん、わたしもね」

「でも、他の街の船が一隻もこない」

「なにかがあったと感じ始めたわけ」

「それで船に乗って、イーナのお父さんとわたしのお父さんが取り引きの街に行ったんだけど。ギルドマスターが言っていたとおりだったって、お父さんが。それも大問題なんだけど、全ての取り引きが無くなったことにお父さんは頭を抱えていたわ」

「うちも同じようなものね。取り引きしていた商品が入ってこないんだから」

「一応、こちらの事情も知っていてくれたから、3年前どおりとはいかなかったけど、一応再開はできたって言っていた」

「でも、今までの半分以下って、お父さんは言っていたわ」

お父様も同じようなことを言っていました。

「それで、リーゼのことも聞いたの」

「リーゼが3年間も凍った街を見守ってきたって」

見守ってきたわけではない。

どうすることもできずに3年間、いただけだ。

「その話を聞いて、胸が締め付けられるような気持ちになったの」

「想像しただけでも、辛かった」

「だから、イーナと相談して、あなたに会いに来たの」

2人がわたしの手を握る。

「実はわたし、2人に会うか悩んでいたの。ううん、違う。怖かったの」

「さっきも言っていたけど、どうして怖いの」

「成長したわたしを見て、どんなふうに見られるかと思うと」

「そうだね。リーゼ、美人になった」

「うん、綺麗」

「そんなことないよ。3年間、手入れがちゃんとできなかったから、髪もボサボサだったし、ほら、手も荒れているよ」

髪はお母様がトリートメントを色々と用意してくれて、綺麗になってきたけど、手はそう簡単には治らない。

わたしは笑いながら、手を見せる。

2人はそんな、わたしの手を掴む。

「わたし、知っているよ。この手は一生懸命に働いた手だよ」

「この手を見れば、どんなに大変だったか分かるよ。ううん、たぶん、わたしが思っている以上に大変で辛かったと思う」

「もし、バカにする人がいたら、わたしが怒ってあげるよ」

お母様とお姉ちゃんと同じこと言ってくれる。

それがとても嬉しい

また、涙が出てくる。

2人とも変わっていない。優しい、わたしの友達だ。

「でも、わたしだけ、成長しちゃったね。2人と一緒に大きくなりたかった。2人と一緒に大人になりたかった」

感情が止められない。

言うつもりはなかった。

言えば、2人を困らせることを分かっているから。

「身体は大きいのに、中身は変わっていないね」

「安心しちゃった」

「そんなことないよ。わたし、ちゃんと中身も成長しているよ」

魚だって捌けるようになったし、薪で火も起こせるようになったし、みんなのお手伝いだってしてきた。

「わたし、もうお姉さんだよ」

「ふふ」

「あはは」

2人が笑い出す。

「フラン? イーナ?」

「たった3年でしょう。すぐに追いつくわよ」

「早く大きくなって、リーゼと並ぶわ」

「リーゼは、もう成長しないけど、わたしたちは大きくなるんだから」

「わ、わたしだって、もっと大きくなるもん」

まだ、15歳、まだ成長するはずだ。

ただ、お医者様に診てもらったけど、栄養が偏っていて成長はしないかもと言われてしまった。

2人よりは大きいけど、15歳としては少し小さい。

3年後には身長が追い抜かれているかもしれない。

でも、食べれば、きっと大きくなれるはず。

「それに大きくなれば、3歳の差なんてないのと同じよ」

「そうね。30歳と33歳なんて、変わらないでしょう」

「60歳と63歳なんて、同じ年齢でしょう」

そう言われると、変わらない気がしてきます。

「だから、待っていて」

「すぐに追いつくから」

「うん。待っている。すぐに追いついてね」

「一緒にお婆ちゃんになろうね」

「うん、なろうね」

わたしの大切な友達。

これからも一緒です。