軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

78 クマさん、お店を開店する

看板はミレーヌさんが商業ギルドで手配してくれることになった。

そして、お店の名前が『くまさんの憩いの店』ならお店もクマっぽくしようとアイディアがでる。

みんなが言うにはクマハウスみたいな。一目で『くまさんの憩いの店』と分かるようにしてほしいと言われた。

くまさんっぽい店って、どんな店よ。

クマハウスみたいにクマでも店の周りに造ればいいのかな?

いろいろなアイディアも出て、店の名前も制服も決まり、試食会も好評で終わる。

みんなが帰ったあと、お店に残ったわたしは『クマの憩い』っぽくするために行動を起こす。

まず、入り口に土魔法でデフォルメしたクマを2体置く。二頭身キャラだ。

日本にはねんど○いどという二頭身のフィギュアがある。

構想はねんど○いどを参考にして創り上げる。

材料は粘土。

色は単色。

色が欲しいな。

魔術でいろんな種類の色の土を集めて造ってみる。

さすがに綺麗な彩色はできないけど単色よりも可愛く出来上がる。

魔法って便利だね。

さらに2階の目立つところにも造り、屋根の上にも造る。

これで外観はいいかな。

次に庭園に向かう。

カフェテラスにする予定はないけど店の中から見えるので配置していく。

木に寄りかかるクマ、パンチをするクマ、親熊と小熊。寝ているクマ。オブジェならこんなものかな。

次に店の中に入り、各テーブルの中央に二頭身の小クマをいろんなポーズで設置していく。

立ち上がるクマ、戦うクマ、寝るクマ、走るクマ、重なるクマ、踊るクマ、剣を持つクマ、魚を食わえたクマ、テーブルに飾っていく。

テーブルが終わると壁、柱にも適当によじ登るクマ、ぶら下がるクマを造る。

店内のあちらこちらにクマの二頭身フィギュアが飾られる。

こんなものでいいかな。

わたしが満足していると、二階からカリンさんが降りてきた。

「ユナさん、何をしているんですか?」

「クマっぽくしてみたんだけど」

「可愛いですね。こんなクマだったら森で会っても怖くないですね」

カリンさんはテーブルの上のクマを指で突っつく。

「お客さん、来てくれるかな?」

心配そうに尋ねてくる。

知らない土地、新しいお店、新しい食べ物。そんな不安があるのだろう。

「来ると思うよ。宣伝もあっちこっちにお願いをしているし。それにモリンさんのパンにピザ、プリン、ポテトチップスにフライドポテトもあるしね」

「ジャガイモ美味しかったです。芽が毒とは知りませんでした」

試食会のときに出して、好評だったので、店でも販売することになった。

まあ、毒で死ぬことは無い。

問題は流通だけだ。

消費次第ではジャガイモもチーズも在庫が気になる。

「あと、ハンバーガーも美味しかった。お母さんの作ったパンにチーズ、肉、野菜を挟んで食べるとあんなに美味しくなるなんて」

「チーズの在庫が少し不安なんだよね。もしかすると、売れ行き次第で足りなくなりそうなんだよね」

チーズはパン、ピザで使用するため使用量が多い。

「チーズはどこから仕入れているんですか」

「王都に売りに来たお爺ちゃんから買ったんだよ」

「王都に来た? それじゃ」

「大丈夫、村の場所も聞いたから、足りなくなったら買いに行くよ」

「ジャガイモはどうなんですか?」

「来月過ぎに街に届くはずだけど、間に合わなかったらわたしが買いに行くしかないね」

「それだけ、お客様が来るといいですね」

「それはみんなの頑張り次第だね」

お店の開店は看板が完成した2日後に予定している。

予定では看板は3日後に完成する予定だから開店は5日後になる。

制服もモリンさん以外が着る7着は当日までには出来上がるそうだ。

翌日、店の仕事を覚えるためにやってきたティルミナさんとフィナと子供たち。

昨日わたしが造った二頭身のクマを見て固まっている。

「ユナお姉ちゃん。な、な、なんですか。あれは!」

「クマだけど、みんながクマハウスみたいにクマっぽくしてほしいって言うから、造ったんだけど駄目かな?」

「駄目じゃありません。凄く可愛いです」

この世界には二頭身キャラなんてないから新鮮に映るのかな。

わたしが見る限り、石像とかはみんなリアルの八頭身だった。

「可愛いけど、これだと男性客が入りにくいような」

ティルミナさんがクマを見ながら感想を言う。

たしかにそうだ。

ピザとハンバーガーはどっちかと言うと男性客の方が注文は多いはず。

女性はプリン、ポテトチップスだと睨んでいる。

「それじゃ、リアルの本物っぽいクマにする?」

「それだと、女性が入れないよ」

「それじゃ、どうする」

その答えを持つ者はこの場にいなかった。

なので販売経験者がいるところに向かう。

キッチンで食材の在庫を調べているモリンさん親子に聞いてみる。

「さあ、こんな変なお店、王都でも見たことがありませんから」

「お店が始まってから考えればいいのでは。現状でどのくらいお客さんが来るかも分からないし」

と二人は言う。

宣伝は昨日から一応している。

商業ギルド、冒険者ギルド、エレナの宿屋、他にもお世話になっている場所にはチラシを貼らせてもらっている。

あと、クリフの知り合いに声をかけてもらっている。

これだけで、開店当日どれだけのお客様が来るか分からない。

「そうね。とりあえず。女性客が来るかも分からないし、男性客が来ないとも限らないし、開店してから考えましょう」

当日……

地獄だった。

人、人、人、人、人、人、人、人、人。

開店の当日、開店前には誰もいなかった。

当日はわたしも裏方で手伝うつもりでいた。

店を開けて、待っていると初めてのお客様は冒険者ギルドのギルドマスター。

「おい、来てやったぞ」

「いらっしゃい」

「それにしても変な店だな」

「やっぱり? 入りにくかった?」

「あのクマか、どうだろうな? 確かに人によって入りにくいかもしれないが、あんな良くできたクマ、逆に気になって中に入るんじゃないか?」

「ありがと、参考にする。それで何を注文する?」

「お勧めはあるか」

「ピザ、ハンバーガーとパンは主食用。ポテト系は摘み系、プリンはおやつ。お腹と相談して」

注文の仕方は奥のカウンターで注文して金を払い、商品と交換するシステムになっている。

ピザだけは焼かないといけないので先に席に座ってもらい、番号札で管理をして後から運ぶことになっている。

「そうか、なら、時間があるならピザがいいと聞いたから頼む」

「あと、飲み物はどう? ピザは脂っこいからサッパリした飲み物がオススメよ」

「それじゃ、飲み物はオレンで頼む」

「了解、焼くのに少し時間がかかるから、この番号札を持って好きな席に座っていて」

ピザはモリンさんが焼いてすぐに子供たちがギルマスに運ぶ。

「これがピザか」

大きさはSサイズほど一人前用。

「では頂くか」

ギルドマスターはピザを一切れ食べ始める。

口に入り、二口、三口と食べる。

ギルドマスターの手は止まらず、全てのピザがあっというまに食べ終わり、最後にオレンの果汁を飲み干す。

「うまいな」

「口にあったみたいで、よかったわ」

「他の食べ物も美味しいのか?」

「それは自分で確かめてとしか言えない。味の好みは人それぞれだから」

「そうか、追加注文する場合はどうしたらいいんだ」

「カウンターに行ってお金を払って購入してもらうしかないね」

「そうか」

ギルドマスターは立ち上がってハンバーガーを注文する。

それも美味しそうに食べ、満足げにお店を出ていく。

時間が経つと、パラパラと人がやってくる。

みんな、初めて見る食べ物を恐る恐る食べるが、帰るときには満足して帰っていく。

でも、まだお客様は少ない。

プリンを無理して300個作ったけど、これなら数日はもちそうだね。

……そう思っていたときがわたしにもありました。

午前中に食べた人たちが広めたのか、昼食時にはクマの像に関係無く、男性も女性もやってくる。

ギルドマスターが薦めたのか、ギルドの関係者、商業ギルドからも見覚えのある人も来ている。

ピザ、ハンバーガー、パン、フライドポテトが売れていく。

全員、休憩も取れずにキッチン、店内を動き回る。

昼食も終わり、落ち着くと思ったら、お客さんが次から次へと入ってくる。

昼過ぎのお客様はプリン、ポテト系がメインになる。

これは油でポテトを揚げるメンバーが苦労する。

プリンは冷蔵庫から取り出すだけだ。

プリンの価格は卵の値段が下がったと言っても、まだ少し高い。なのに女性客が次から次へと買っていく。

用意していたプリン300個が消えた。

パンの在庫も無くなり、夕食前には閉店することになり、途中から来たお客様には帰ってもらうことになったほどだ。

「つかれた~」

「はい、疲れました」

様子を見に来たティルミナさんとフィナを捕まえ、二人にはキッチンを手伝ってもらった。

「どうして、こんなにお客さんが多いのよ?」

「お客さんの話を聞くと、男性客はギルドマスターとヘレンさんから聞いたって言ってました。女性はミレーヌさんの紹介でプリンが高いけど美味しいと聞いたと言ってました」

そして、その食べたお客様が次のお客様を呼んだわけか。

3人には感謝はしても恨むことはできない。

「これは明日はやばいかもしれないよ」

モリンさんが今日の様子を見て答える。

「モリンさん、キッチンの方はどうですか?」

「そうだね。現状だとピザの注文が入ると石窯が足らないね。ポテトは注文が入り次第、揚げるぐらいだから大丈夫かな。ただ、店が終わったあとの仕込が大変だね。かなり、準備をしないと今日みたいになってしまうよ」

確かに。

用意した食材はほぼ無くなった。

モリンさんのパンもプリンも。

パン生地が間に合わなかった。

「そうね。店を開く時間を昼食からにしましょう。午前中に準備に自分たちの昼食。夕飯の前には閉店」

「夕飯時が稼ぎ時だと思うけど」

ティルミナさんが疑問を問いかける。

「ぶっちゃけ、この店で儲けるつもりはないからいいよ」

「そうなの?」

「赤字さえ出なければいいよ。現状だって十分に利益は出ているから。それに卵、チーズ、ジャガイモの在庫も気になるし」

「確かにそうね。卵も限りがあるからね」

「時間帯を増やすなら、材料も従業員も増やさないといけないし」

「売れ過ぎて困ることもあるのね。知らなかったわ」

「とりあえず、ティルミナさん。リズさんと相談して鳥のお世話に支障が出ない程度にお店を手伝ってくれる子を何人か集めてください」

「分かったわ」

「それからティルミナさん、昼食からこっちで働くことはできますか? もちろんお給金は出しますから」

「そうね、卵の取引は午前中で終わるから大丈夫だけど。でも、いきなり、時間帯変えて大丈夫かしら、今日のお客様の様子を見ると、朝から来るんじゃないかしら?」

確かにそうだ。

材料が無く、断ったお客様もいる。

朝から、多くのお客様が来る可能性もある。

「モリンさん、明日だけ、午前中から開店できますか?」

「今からやれば・・・なんとか。でもね」

モリンさんは子供たちを見る。

子供たちは椅子の上で船を漕いでいる。

初めての接客業で疲れたのだろう。

この世界では子供も働く。

でも、どの世界でも子供は子供だ。

奴隷じゃないんだから、休ませてあげないと。

うーん、どうしたもんか。

少し考え、お客様よりも子供たちのことを考える。

「やっぱり、明日は午後からにしましょう」

「いいの?」

「とりあえず、やれることはやりましょう。ティルミナさんにはチラシを貼っているお店には時間の訂正をお願いします」

「でも、朝一で来たお客様はどうするの?」

「昼時に来てもらいます」

「怒らないかしら」

「それはなんとかします」

「なんとかって・・・」

不安そうにするティルミナさん。

「あと、週一で休みを入れます」

「休み?」

この世界の人たちは余程のことがない限り休まない。

食堂も宿も、休んでいるところを見たことが無い。

その分、仕事の間に自由な時間を作り、いろんなことをしている。

でも、この店には自由な時間が無い。

開店中はお客様の相手、終われば片付け、仕込み、やることがたくさんある。

「お店をやらない日です。買い物をするのも良し、寝るのも良し。1週間、元気に仕事をするために休む日です」

「休みなんていいの? 売り上げが下がるわよ」

「本当は交代で休みたいけど、人がいないからね。それにこのままじゃ卵が足りなくなりそうだから。今日は数日の卵を用意したけど、1日に産まれる卵の数は決まっているから、今日以上用意するのは」

「たしかに、商業ギルドに卸す数をこれ以上減らすわけにはいかないからね」

店を開くために商業ギルドに卸している卵の量を減らしてもらっている。

「だから、現状だと無理に店を開く必要はないのよ」

「卵の量を増やすのは今後の課題ね」

卵から孵すか。またはコケッコウを捕獲しにいくか二択。

卵から孵すと食べる卵が減ってしまう。

コケッコウを捕獲だとわたしが行くしかないし。

それだと、面倒だし。

保留かな。

「チラシの時間変更をするとき、休日の記入も一緒にお願いしますね」

「分かったわ」

「次に店内だけど、何か困ったことある?」

「お客様がくまさんをお持ち帰りしそうでした」

確かに、テーブルから取ろうとしたお客がいるのは見た。

でも、テーブルに固定して取れないようにしてある。

「あと、譲ってほしいと言ってくるお客様もいました」

「非売品の張り紙を貼るかな。あとはなにかある?」

店内組に聞いてみる。

「あとはカウンターに並ぶ人が」

「時間がかかってイラついている人もいました」

「明日はもう一つカウンターを増やしましょう。あとプリンだけのお客様も結構いたから、プリンの入った冷蔵庫はカウンターの側に置いて時間短縮をしてください」

そんな感じで開店1日目が終わった。

モリンさんと子供たちは明日の準備をするためにこれからも仕事らしい。

パン生地とプリンは今から作らないと間に合わない。

あとはプロの方に任せてわたしは帰ることにする。

石窯だけは朝一で必要になるので作っておいた。