軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

791 クマさん、屋敷の片付けをする

わたしたちはクマバスを使って、山を降り、リーゼさんの家に向かう。

氷竜の素材を領主でもあるボラードさんの家で渡すことになった。

全員、クマバスから降り、ボラードさんの家の前に立つ。

「カガリちゃん。申し訳ないけど、門の扉の氷を溶かしてもらえるかな」

リーゼさんに頼まれて、カガリさんは門の前に移動する。

「氷が溶け始めておるのう」

氷竜が消えて、半日ほど経つ。

氷竜がいなくなったことで、氷が溶け始めているみたいだ。

すでに氷が溶けかかっていることもあって、簡単に門の扉は開く。

「扉を開いて、門を通るのは数年ぶりです」

「そうだな」

リーゼさんと父親のボラードさんが懐かしそうに門を通り、そのあとをわたしとカガリさん、お爺ちゃんたちが通る。

屋敷まで来ると、そのままカガリさんはお屋敷の扉の氷を溶かす。

「これで開くじゃろう」

扉が開き、屋敷の中に入ると床が濡れ始めていた。

「これでは、しばらくは住めませんね」

「予想よりも早く氷が溶け始めているな。部屋のいくつかは、今日中に片づければ、みんなが寝るところは確保できるだろう」

氷竜もいなくなり、今後は街で活動することになるので、活動拠点を街に移動することになり、ボラードさんの屋敷にみんなで住むことになっていた。

「寝る場所の確保も必要じゃが、食材はどうする?」

「街も凍っていると思っていたが、嬢ちゃんに貰った食材が傷むぞ」

お爺ちゃんたちがボラードさんに尋ねる。

「冷蔵庫があるが、使えるかどうかは」

「それなら、氷の魔石をいくつか置いていくから、使って」

わたしは氷の魔石をお爺ちゃんたちに渡す。

スノーゴーレムを倒したので、氷の魔石はたくさんある。

それから、わたしたちは手分けをして部屋を片づけることになった。

わたしとカガリさんは手分けをして一階の扉を開くようにするため、扉の氷を溶かしていく。

扉の氷も溶けかかっていて、ほとんどのドアは簡単に氷は溶けて、開いていく。

そして、わたしとリーゼさんは氷竜の素材を出すため一階のフロアに戻ってくる。

「そっちは終わったのか?」

フロアに戻って来ると、カガリさんがいた。

「終わったよ。それで氷竜の素材を出しに来たんだよ」

部屋だと、角が大きすぎて出すと大変なことになるので、広い一階のフロアで出すことになった。

「それじゃ、この辺りにお願いします」

リーゼさんの指示で、わたしはクマボックスから、氷竜の角と鱗をフロアに出す。

ちなみに出した氷竜の角は山頂にいた氷竜が倒した助っ人の氷竜の角のほうだ。

やっぱり、自分で倒したほうの氷竜の角は自分で持っておきたいからね。

ガタ。

「今、上から音がしませんでしたか?」

「確かに上から聞こえたのう」

カガリさんが階段に視線を向ける。

「今、誰か、上にいますか?」

「しばらく、ここにいたが、誰も階段は使っておらん」

「お父様も、ほかのみんなも1階の片付けをしています」

「それじゃ……」

「魔物!?」

リーゼさんが声をあげる。

くまゆるとくまきゅうを召喚しておけばよかった。

わたしは探知スキルを使う。

反応がある。でも、魔物じゃなかった。

「誰かいるよ」

「誰がいると言うのじゃ」

普通に考えれば、誰もいないはず。

「わたしが見てくるよ」

「妾も行こう」

「わたしも行きます」

わたしが一番前を歩き、カガリさん、リーゼさんと続く。

「あの部屋だよ」

わたしは少し離れた場所から指さす。二つ反応がある。

「あの部屋はお母様がいた部屋です」

確かにそうだ。

リーゼさんの母親とお姉さんがいた部屋だ。

ドアを見ていると、ドアが開く。

「……」

「……」

「……」

女性がふらつきながら出てきた。

「お母様……」

リーゼさんが女性に向かってゆっくりと歩き出す。

「お母様!」

女性がこっちを見る。

「お母様!」

リーゼさんは女性に抱きつく。

「えっと、誰かしら?」

「お母様、わたしです。リーゼです」

「リーゼ?」

女性は混乱した表情でリーゼさんを見る。

「本当にリーゼなの?」

「お母様~~~~」

リーゼさんの声は屋敷中に広がる。

その声にボラードさんたちが駆けつけてくる。

「……リンセ」

「あなた?」

ボラードさんはゆっくりと歩き出し、リンセと呼んだ女性にリーゼさんと一緒に抱きつく。

「あなた、いったいなにが起きているの? この子、リーゼに似てますが」

「ああ、間違いなくわたしとおまえの娘のリーゼだ」

「……」

女性は驚いたようにリーゼさんを見る。

「おまえは3年間、凍っていたんだよ」

「3年、凍って……」

女性は意味が分からないって表情をしている。

あらためてリーゼさんの顔を見る。

「本当に?」

もしかすると、凍っていた間の記憶がなく、眠って起きた感じなのかもしれない。

「だから、わたしも部屋も水浸しになって」

リーゼさんの母親の服は濡れている。

「体のほうは大丈夫なのか?」

「ええ、少し、だるいくらい」

だるいだけって、3年間も氷漬けになっていたのに、体の影響は少ないみたいだ。

もし、3年間も寝たきりだったら、筋力などが落ちて、歩くこともままならない。リハビリが必要だ。

それ以前に、凍漬けになれば生きていられない。

「お母様。お父様とリーゼが帰ってきたのですか?」

リーゼさんの母親が出てきた部屋から女の子がでてくる。

「お姉ちゃん!」

リーゼさんは自分より小さい女の子に抱きつく。

女の子はリーゼさんに似ている。

「えっ、誰?」

「お姉ちゃん~~~~~~」

「えっ、リーゼ?」

「お姉ちゃん~~~~~~」

「本当に、リーゼなの?」

「うん、リーゼだよ」

さきほどからリーゼさんたちの様子を窺っていたお爺ちゃんたちが話しかけてくる。

「これはどういうことだ」

「ボラードさんの奥さんや娘さんが生きているってことは……」

「もしかしたら、凍っていただけで、死んでいなかったのか?」

「それじゃ、俺たちの家族も?」

お爺ちゃんたちや漁師のバランさんたち夫婦が動き出す。

あらためて探知スキルを確認すると、あちこちに人の反応がある。

つまり、冷凍保存されていたけど、生きていたってこと?

普通に考えればありえないことだ。

氷竜の魔力が籠もった氷だったから、生きていた?

「ルーアは体調は大丈夫か?」

「えっと、お腹が空いているかな」

リーゼさんのお姉さんはお腹を触りながら言う。

「でも、3年も凍っていたなんて、信じられないけど」

リンセさんは、そう言いながらリーゼさんを見る。

「間違いなくリーゼね。あなたは少し老けたようだし。老けたというより、やつれた感じかしら?」

「3年も鉱山暮らしをしていたからな」

「本当なのね」

そこまで話すと、この屋敷で働いていると思われる使用人たちがやってくる。

「ボラード様、この状況は?」

「氷と水浸しは」

ボラードさんは入り口のフロアに人を集め、この3年間、なにがあったのか話し始める。

氷竜が現れ、山頂に卵を産み、棲みついたこと。

氷竜が山頂に棲み着いたことで街や人が凍ったこと。

それから3年経ったこと。

卵から赤ちゃんが産まれ、氷竜が立ち去ったこと。

そのことで、街の氷が溶けたこと。

「ボラード様、玄関にあった物は?」

「氷竜の角と鱗だ」

話を聞いたみんなは、信じられない表情をするが、成長したリーゼさんや氷竜の素材を見て、半信半疑ではあるものの納得する。

そして、くしゃみをする人が現れ、濡れた服を着ていることに気付いたボラードさんは、着替えの指示を出す。

でも、ほとんどの服は氷漬けになっていたので濡れていた。

わたしは風魔法と火魔法を使って、簡単な乾燥機を作り、全員の服を乾かしてあげる。

ボラードさんは細かい説明はあとですると言って、水浸しになった屋敷の片付けや食事の準備をするように指示をだす。

「すまない。わたしは街の様子を見てくる。詳しいことはリーゼから聞いてくれ」

ボラードさんは妻であるリンセさんに申し訳なさそうに言う。

本当なら奥さんや娘さんと一緒にいたいはずだ。

でも、街の領主であるボラードさんは街を確認しないといけない。

「ユナさん、カガリさん。申し訳ありませんが、もう少し、屋敷に滞在していてください」

そう言うと、ボラードさんは家から出て行く。

「えっと、あなたたちは?」

あらためて、リンセさんはわたしとカガリさんを見る。

「クマの格好しているのがユナさんで、小さい女の子はカガリちゃん。わたしたちを救ってくれたんだよ」

わたしの代わりにリーゼさんが答える。

「そうなのね。娘のリーゼを助けていただきありがとうございます。わたしはリーゼの母親のリンセと言います」

「わたしはルーア。リーゼの姉よ」

3年間、成長していなかったので、逆に見える。

とりあえず、片付けは使用人さんたちに任せ、リーゼさんはわたしたちを2階の客室に案内してくれる。

「うぅ、ここも濡れています」

「部屋の全てが凍って、同じ状況みたいだし」

「みんなが片づけてくれているけど」

時間がかかる。

リーゼさんが困っていると、カガリさんが話しかける。

「なら妾がどうにかしよう」

「カガリちゃんが?」

「完全とはいかなくても、多少はよくなるはずじゃ」

カガリさんは手を広げる仕草をすると、床、壁、天井、ソファ、いろいろな場所から大小の水の玉が浮かび上がってくる。

「すまぬが、窓を開けてくれ」

「は、はい」

なんともいえない不思議な光景を見ていたリーゼさんが慌てて窓を開ける。

その開いた窓から、カガリさんは水の玉を放り出す。

「多少湿っ気は残っているが、大丈夫じゃろう」

「小さいのに凄い」

ルーアがカガリさんに抱きつく。

「よさぬか。抱きつくでない」

カガリさんはルーアを突き放し、わたしたちは座れるようになった椅子に座る。