軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

785 クマさん、氷竜と戦う その2

氷竜とわたしたちの戦いが本格的に始まる。

わたしは、もしものことを考えくまゆるとくまきゅうを送還させる。

氷竜はわたしの炎に耐えられると分かったためか、地面に降りてくる。

そして、咆哮して威嚇する。

空気は揺れ、恐怖を掻き立てる。

普通の人なら立ち尽くし、動くことができず、氷竜の攻撃を受けてしまうだろう。

でも、わたしもカガリさんも、普通ではない。

「うるさいのう」

カガリさんは氷竜に炎の魔法を放つ。氷竜の体に命中するが、それだけだ。小さく跡が残るが、すぐに氷の膜のようなものが覆い、皮膚を守る。

常時、体が冷えていることが分かる。

だから、通常の火の魔法では焼け石に水。

本来の言葉とは逆になってしまっている。

海に炎を投げ込めば、焼け石に水だ。

なら、巨大な炎を使う。

魔力を集める。

わたしの前に氷竜を覆うほどの巨大な炎の竜巻が現れる。

炎の竜巻が周囲の氷を溶かす。

一面の氷だった周囲があっという間に水となり、蒸発する。

炎の竜巻は氷竜に向かって移動する。

氷竜の口が開くと、竜巻に向かって冷気を吐き出す。

炎の竜巻と冷気がぶつかり合うと、炎と氷が混ざり合い、赤と白の竜巻が巻き上がる。

放出し続ける冷気に押される。わたしも負けじと、クマの炎を追加で放つ。

吐き出される冷気のほうが強い。

だけど、吐き出す冷気は無限ではない。

氷竜から吐き出される冷気が止まる。

竜巻は炎の竜巻となる。

「わたしの勝ちだね」

吐き出す冷気が止まった氷竜を炎の竜巻が襲う。

ダメージを与えられると思ったが、竜巻の色が変わる。

炎の竜巻は弱まり、赤い炎は消え、氷が舞う竜巻へと変わる。

炎の竜巻が乗っ取られた。

それだけじゃない、氷の竜巻に変えられた。

氷竜が咆哮すると氷の竜巻が動き出す。

今度はわたしのほうへ移動し始める。

冗談でしょう。

わたしの後ろには卵がある。

わたしは卵を土魔法で囲うように守る。

でも、あの竜巻から守り切れるか分からない。

わたしはもう一つ炎の竜巻を作り上げ、どうにか相殺させる。

周辺の地面はえぐれ、嵐が過ぎ去ったように荒れている。卵は無事だ。帰って来た山頂の氷竜と敵対しないですんだ。

「嬢ちゃん、大丈夫か!」

「うん、大丈夫。まさか、炎の竜巻が氷の竜巻になるとは思わなかったよ」

それからも、わたしたちと氷竜の攻防が続く。

クマさん、キック!

わたしの飛び蹴りが氷竜にぶつかる。

氷竜の体が揺らぐ。

流石に、クマキックでも巨体は吹っ飛ばない。

でもバランスを崩すことはできた。

回り込んで炎を当てるが、すぐに凍る。

火力が弱い。

やっぱり、外からの攻撃ではダメージは与えられない。

基本に則り、大型の魔物には口から体内破壊が有効と見る。

氷竜なら炎を口の中に撃ち込めば勝てると思っていた。

ただ、現状の戦いを見ると、倒せるか分からなくなってきた。

体内から常時冷気が溢れ出ている。

それに首が動いて、口の中に魔法を入れることができない。

さらに近寄ると氷竜の手が邪魔をする。

それにずっと口を開いているわけではない。

全てがうまくいかない。

正面からだと難しい。

最終的には喰われる覚悟で口の中に突っ込まないとダメかも知れない。

普通の魔物ならそれでもいいけど、相手は氷竜。

黒虎とは比較できないほどの巨大な口、なんでも噛み砕きそうな口、噛みついたら離さない強靱な顎。

もし、倒せなかった場合、クマ装備ごと、噛まれ、凍る可能性もある。

もちろん、大丈夫の可能性もある。

とりあえず、できることを確かめる。

「カガリさん、援護をお願い!」

わたしは駆け出す。

氷竜は立ち上がり翼を羽ばたかせるだけで、突風が起こり、行動を阻害する。

だけど、クマ装備をしたわたしは突風の中を駆け抜ける。

そして、わたしの右手にはくまゆるナイフが握られている。

左手は魔法が使えるように空けておく。

氷竜の周りを走る。

カガリさんが炎の魔法を放って、わたしが氷竜に近づくのを援護してくれる。

死角から間合いを詰め、魔力を込めたくまゆるナイフで氷竜の体に斬りかかる。

斬った。

だけど、氷竜の体には一本のスジができただけだ。

なら、これなら。

くまゆるナイフに炎を纏わせる。

炎のミスリルナイフ。

本来なら熱くて持てないが、わたしのクマパペットなら熱くない。

真っ赤になったミスリルナイフが氷竜を襲う。

氷竜の皮膚に深く刺さる。氷とともに溶けるように氷竜の体に傷を刻む。

よし!

このまま攻撃をと思った瞬間。

「嬢ちゃん!」

カガリさんの叫びと同時に、わたしは吹っ飛ばされる。

横から殴られた?

衝撃を受けた瞬間、微かに見えたのは氷竜の尻尾だった。

死角からの攻撃に気づけなかった。

わたしの軽い体は地面を転がる。

吹っ飛ばされた場所が悪かったのか、坂を転げ落ちる。

「嬢ちゃん!」

カガリさんが飛んでくる。

「だ、大丈夫だよ」

「じゃが、お主は氷竜の尻尾に……」

やっぱり、喰らったのは尻尾だったみたいだ。

わたしは大丈夫なことを証明するため立ち上がる。

それを見たカガリさんは安堵の表情をする。

「あまり、年寄りに心配かけさせるでない」

自分で年寄りって言っているよ。

それだけ、心配をかけたってことだ。

「それで、どうするのじゃ?」

どうしよう。

クマの炎は効かない。

ミスリルナイフは斬ることができるけど、思った以上のダメージはない。

効かないって言うよりは外からの攻撃が効かない。

やっぱり、体内攻撃しかない。

「カガリさん。どうにかして、口の中へ攻撃をしてみるよ」

「危険じゃ!」

「それしか倒す方法はないよ」

「……約束してくれ。無理はしないと」

「うん。わたしだって、命は大切だからね」

思ったよりも氷竜の動きは速い。

口の中は相手の攻撃の中心部に飛び込むようなものだ。

でも、口の中は弱点でもある。

虎穴に入らずんば虎子を得ずって言葉もある。

多少の危険を冒さないと、倒すことはできない。

まずは、冷気を吐き出せてからだ。

あの冷気が一番危険だ。

吐き出したタイミングなら、口も開いている。

わたしとカガリさんは坂を駆け下りていく。

上だと卵がある。卵を気にしながら戦えるような相手ではない。

また、タイミング悪く、吐き出す冷気の先に卵があってはたまらない。

卵を守りながら勝てる相手ではない。

わたしとカガリさんは氷竜を引きつけるように坂を下っていく。

林の中を駆け抜け、木々を死角にして攻撃をする。

木々は氷竜から姿を隠してくれるが、氷竜が動くと木々が倒れる。尻尾を振れば無数の木々が吹っ飛んでくる。

それと雪が邪魔をする。

ただ、分かったことがある。クマの靴は水の上を歩くように雪の上も歩いてくれることに。

雪の中を移動するときは、いつもくまゆるとくまきゅうに乗っていたから、そんな効果があるのに気づかなかった。

雪の上を走る。

山から降り、平地が広がる場所までくる。

やっぱり、坂より平地だ。

山頂付近にも平地部分はあったけど、狭いので戦いにくかった。

それで、尻尾にぶつかって山から落ちることになった。

わたしは歩き出し、氷竜の正面に立つ。

氷竜はいらついているのか、唸り、口の隙間からは冷気を漏らしている。

攻撃のタイミングは冷気を吐き出さてからだ。

口に突っ込んだ瞬間、冷気を吐き出されでもしたら、どうなるか分からない。

「カガリさん、氷竜が冷気を放出したら、突っ込むから援護をお願い」

「……分かった」

わたしとカガリさんは駆け出す。

わたしは氷竜の周りを走る。カガリさんは飛ぶ。

氷竜の閉じた口から冷気が漏れる。

わたしはタイミングを計る。

氷竜もタイミングを計っているのが分かる。

氷竜の目が動く。

目に向けて攻撃を仕掛けるが、腕に弾かれる。

氷竜の厄介なところは吐き出す冷気に強靱な皮膚。死角から攻撃を仕掛けてくる尻尾、顔を守る強靱な腕。風を巻き起こす翼。その翼さえ攻撃の邪魔をしてくる。

自分は地上でも勝てると示すように空から攻撃を仕掛けない。

もしかすると逃がさないため、確実に殺すために降りてきたのかもしれない。

それは甘いと言いたいところだけど、それを実行する力を氷竜は持っている。

わたしは氷竜の周りを走る。後ろに回り、尻尾を躱し、上に跳び上がる。

後ろに目があるかのように、氷竜の翼が動く。

跳んだわたしに翼が当たる。

ダメージはないが、地面に転がる。

立ち上がって、氷竜を見た瞬間、氷竜の口が開いていた。

避けて、攻撃をする。

そう思った瞬間、自分の場所を把握する。後ろに街があった。距離はあるが、冷気が届くかもしれない。

いくら死んだ街でも、リーゼさんたちの街だ。

避けるわけにはいかない。

わたしは氷竜の口に放つために溜めていた魔力を放出する。

わたしの前に三体の大きなクマの土の壁が現れる。

間に合った。

氷竜が冷気を放出する。

どこかでカガリさんが叫ぶ声が聞こえてくる。

わたしはクマの土に魔力を注ぎ続ける。

冷気は土のクマの防壁に阻まれる。

冷気が収まる。

土のクマは凍っていた。

でも、街を守った。そして、氷竜は冷気を吐き出した。冷気を吐き出したので、今は口を開いているはず。

最短距離。

わたしは凍った土のクマの一部を消すと同時に氷竜に向かって駆け出す。

口が開いている。チャンスだ。

氷竜の口に向かって跳ぶ。

わたしの手には魔力が込められている。

魔力をクマの炎に変化させる。

クマの炎がわたしの前に現れる。

このまま口の中に突っ込ませる。

氷竜の口に冷気が集まりだす。

連射!?

真正面。

至近距離。

避けることはできない。

「嬢ちゃん!」

カガリさんが、横からわたしを吹っ飛ばす。

まるでスローモーションのような光景が流れる。

わたしがいた場所にカガリさんが残る。

その残った場所に氷竜の冷気が吐き出される。

命の危険を察すると、世界がスローモーションになると聞いたことがあるけど。

まるで、世界が止まったかのように見えた。

カガリさんが、わたしの代わりに氷竜の冷気に包まれた。