軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

775 クマさん、クマバスを走らせる

クマバスは鉱山に向けて走る。

「この吹雪はドラゴンの仕業のようじゃな」

カガリさんが山頂に目を向ける。

山頂からは溶岩が湧き出すかのように白い霧のようなものが湧き、それが山、街に流れてきている。それが吹雪となっている。

「氷竜だっけ? こんなことができるの?」

「会ったことはないから、詳しいことは知らん」

「それじゃ、見たことがある人から聞いたこととか?」

「引きこもっていた妾が、そんな人物と会話をしていると思うか? 知っていることは前に話した程度だ。そういうお主こそ、知らないのか? 冒険者なのだろう」

異世界歴は短い。

この世界のことは詳しくない。

さらに言えば、

「冒険者と言っても、基本一人で行動だから、話す相手はいないから」

自分で言っておいて悲しくなる。

「使えんのう。お主たちは、氷竜について知っていることはないのか? 過去に氷竜が現れたとか」

カガリさんは後ろを振り向き、リーゼさんたちに尋ねる。

「いえ、今までに氷竜が現れた話は聞いたことがありません」

リーゼさんの言葉に全員頷いている。

吹雪はさらに強くなり、普通の馬車なら馬は動くことはできないほど吹雪いてくる。

これが氷竜の仕業なら、かなり厄介なドラゴンになる。

今は馬を救うため、鉱山に急いで向かう。

「でも、こんなタイミングで吹雪くとは運がない」

「よりによって、全員が街に来ているときなんて」

「せっかく、ユナさんとカガリちゃんが家族に会わせてくれたのに」

後ろから悲観した声が聞こえてくる。

でも、その言葉にカガリさんが後ろを振り向き口を開く。

「お主たち、何を言っておるのじゃ。運がよかったの間違いじゃろう。みんなで、家族に会うことができ、吹雪いたとき、このクマの中だった。さらに言えば、妾たちがいるときじゃ」

「そうだよ。吹雪ぐらいなら、わたしたちが守ってあげるから」

「そうだな。嬢ちゃんたちがいなかったら、家族と会うこともできなかった」

「あとは無事に帰ることができれば」

「帰すよ」

「ああ、言ったが、本当に大丈夫か? いざとなったら、妾が飛んで馬を保護してくるが」

カガリさんが小さい声で、耳打ちをしてくる。

どうやら、わたしと同じことを考えていたみたいだ。

いくらカガリさんでも、この吹雪の中、空を飛ぶのは危険だ。

だから、わたしは安心させるように言う。

「このぐらいの吹雪なら大丈夫だよ」

わたしはクマバスの速度をあげる。

カガリさんは「なにかあれば、すぐに言うのじゃぞ」と言って、優しく見守ってくれる。

年上の大人の対応だけど、見た目が幼女なのでギャップがあるので、微笑ましくなる。

上り坂に入り、進んでいるとクマバスが滑る。

「なんだ!?」

車輪が空回りする。

雪にはまって動かなくなった車のニュースを聞いたことがある。

自分には関係ないことだと思って聞き流していたけど、こういうところで経験不足を実感する。

わたしはクマバスに魔力を流し、スパイク靴のようなトゲの生えたタイヤ、ではなく車輪をイメージする。

あいにく、車に乗れる年齢でもないし、車に詳しくはないので、テレビでよく聞く、スノータイヤとか、チェーンとかは知らない。

なので、ゲームでも登場したスパイクの靴を参考にして、タイヤに付ける。

ちゃんと引っかかる。

「ごめん、雪にタイヤじゃなくて、車輪が滑ったみたい。もう大丈夫だから」

クマバスは進む。

上に上がるに連れて、吹雪が強くなり、視界が悪くなっていく。

テレビでしか見たことがないが、ホワイトアウトって言葉が浮かぶ。

「雪で前が見えないが、方角はあっておるのか? 道も見えないぞ。大丈夫なのか?」

カガリさんが前を見ながら尋ねる。

前は吹雪だ。前のガラスには魔力で動かす、ワイパーだっけ?

それに似たようなものを付けて、雪を弾いている。

「大丈夫だよ」

クマの地図。

通った場所だけ、表示される地図。

つまり、街に向かったときに通った道を、そのままなぞるように引き返せば、鉱山に帰れる。

クマバスは鉱山へ向かう坂を上っていく。

もうすぐだ。

順調に進んでいると思っていたが、順調には進まない。

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうが鳴く。この鳴き方は。

クマの探知スキルを使う。

魔物反応、アイスゴーレムと表示される。

クマの地図と反応位置を比べる。

鉱山の入り口付近。

「どうしたのじゃ。クマは何を言っておる」

「魔物が、この先、鉱山の入り口辺りにいるみたい」

わたしの言葉に後ろにいたリーゼさんたちが驚く。

「そんな」

「どうするんだ」

「ここまで戻ってこれたのに」

「街に戻るしか……」

「だが、馬が……」

「分かっている。でも、このまま魔物がいるところに向かうには危険だ」

「それに、馬が襲われるとは決まっていない。無事を祈ろう」

後ろでは引き返す案で決まりつつある。

誰だって、魔物と遭遇はしたくない。

でも、みんな悲しそうにしている。

みんな、馬が心配なんだと思う。

わたしと同じようにくまゆるとくまきゅうを大切に思っているなら、馬を守ってあげたい。

それに、ゴーレムごときに、わたしが進む道を塞ぐことはできない。

「みんなの大切な馬を守るよ。少し揺れるから、しっかり掴まっていて」

わたしの言葉に驚くが、もう馬を助けると決めた。

わたしはクマバスに魔力を流す。

クマバスに乗っているから、みんなは分からないけど、クマバスに足が生えた。

その足で歩き出す。

そして、足を曲げて、足を伸ばす。

クマバスは方向を変え、道ではなく崖のほうを向く。

「まて、お主、どこを通るつもりじゃ」

カガリさんが尋ねると同時にクマバスは後ろに傾く。

後ろでは叫び声が上がる。

「最短距離で向かうよ」

クマバスは崖を駆け上がっていく。

クマバスは鉱山の入り口に向けて最短距離で向かう。

確実に一歩、一歩進み、クマバスは崖を駆け上がり、鉱山の入り口までやってくる。

「お主、無茶をするな」

「ごめん。でも、到着したよ」

「それで、魔物はどこにおる!」

「もう、囲まれているよ」

クマバスからアイスゴーレムが見える。

「氷のゴーレムか……」

「それじゃ、倒しに行ってくるから、カガリさんはくまゆるとくまきゅうと一緒に、みんなをお願い」

「「くぅ〜ん」」

くまゆるとくまきゅうは任せてと鳴くが、カガリさんからは違う返答がくる。

「妾も行こう」

「カガリちゃん、危ないよ。わたしたちと一緒に待ちましょう」

よく、戦いに行くと、わたしが引き止められるけど、今回はカガリさんが引き止められる。

やっぱり、わたしより小さい子のほうを心配するよね。

「妾の心配は不要じゃ。あの程度の氷のゴーレム、妾の相手にならん」

「でも」

「心配は感謝する。じゃが、妾とユナを信用してくれ」

「……カガリちゃん」

リーゼさんたちのことはくまゆるとくまきゅうに任せ、わたしとカガリさんはクマバスを下る。

「いるのう」

周りには氷の体を持つゴーレムがいる。

「それじゃ、さっさと倒してしまうぞ」

カガリさんはそう言ったあと「篝火」と言うと、アイスゴーレムに炎を放つ。

炎はアイスゴーレムの体を包み、アイスゴーレムは溶けて、崩れ落ちる。

やっぱり、氷には炎が有効だね。

わたしも負けずに炎をアイスゴーレムに放っていく。

アイスゴーレムは氷を飛ばしてくるが、それほど脅威ではない。ミスリル鉱山のときは狭くて戦い難かったけど、ここは広い。簡単に避けることができる。

わたしとカガリさんは次々とアイスゴーレムを倒していく。アイスゴーレムを確実に倒しているのに、なにか違和感を感じる。そう思っていると、カガリさんがやってくる。

「なにか、おかしくないか」

わたしも思っていた。

数が多い。

探知スキルで確認したとき、10体ほどだった。

でも、すでに10体以上倒している。

探知スキルを使う。

周辺に3体と少し離れた場所に5体。計8体。

探知スキルを見ていると、周辺にいたゴーレムがいきなり4体に増えた。

いきなり、ポンと現れた感じだ。

探知スキル外から、現れたのではなく、今、生まれたかのように現れた。

「カガリさん! ゴーレムがこの場所で湧いている」

「なんじゃと!」

アイスゴーレムに炎を放ちながら、カガリさんが声をあげる。

「ユナさん! 倒したゴーレムが復活しています」

クマバスの入り口から、リーゼさんが叫んでいる。

わたしは先ほど倒したアイスゴーレムの場所に目を向ける。

溶けたはずのアイスゴーレムが周りの雪を集め、元の姿に戻る。

鉱山にゴーレムが湧いたときにジェイドさんたちが教えてくれた。ゴーレムを倒すには魔石を破壊するか、魔石の魔力がなくなるまでダメージを与えること。

アイスゴーレムはわたしとカガリさんの炎の攻撃でダメージを与えられ、体を維持することができず倒れていた。

「カガリさん!」

カガリさんのほうを見ると、雪に触れている。

「そうか。氷だけじゃなく、この雪に魔力が込められておる。それで、ゴーレムが復活したみたいじゃな」

つまり、この吹雪が魔力を補充する充電器の役割ってこと?

「理由が分かれば、倒すのは簡単じゃな」

「そうだね」

魔石を壊す、もしくはアイテムボックスに回収すればいいだけだ。

でも、壊すのはもったいないので、回収することにする。

「カガリさん、魔石を回収するから、こっちに放り投げて」

「壊すのではないのか?」

カガリさんは壊す方法だったみたいだ。

「もったいないからね」

「まあ、そういうことなら、妾が倒すから、魔石はお主が回収せよ」

カガリさんはそう言うとアイスゴーレムに向かって駆け出すと巨大な炎の魔法をアイスゴーレムに放つ。

わたしはアイスゴーレムが溶け落ちた魔石を拾ってはクマボックスに回収していく。

探知スキルでアイスゴーレムの居場所をカガリさんに教え、確実に数を減らしていく。

そして、20個ぐらい魔石を拾う頃にはアイスゴーレムは消え去った。