軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

754 ノア、秘密を共有する

「ふふ、楽しいです」

サクラが満面の笑顔で口にします。

「わたしも楽しいです。みんなと一緒にお話をしたり、おでかけをしたりして」

「みんな、遠く離れた場所に住んでいるのに一緒に遊んでいるなんて信じられません」

「そうですね。サクラちゃんとノア様、ミサ様、それからルイミンさんが一緒にお話をすることがあるなんて、思いもしませんでした」

「わたしも、フィナちゃんだけでなく、ノアちゃんやミサちゃんと知り合えるとは思わなかったよ」

わたしの言葉にミサとフィナ、ルイミンさんが感想を漏らす。

「こんな不思議な経験ができるのもユナさんのおかげですね」

「ユナ様がいなかったら、フィナやシュリ、それからノアとミサ、それからルイミンさんとも知り合うことも、おしゃべりすることもできませんでした」

ルイミンさんとサクラが、わたしたちを見ながら言います。

「でも、一人だけ、不思議な経験をして、あっちこっちに行って、みんなと知り合っていた人がいます」

みんながフィナを見る。

「それは、ユナお姉ちゃんに秘密だって、言われたから」

フィナが困った表情をする。

あまり、からかうのは可哀想です。

「フィナ、冗談です。そんな顔はしないで」

「フィナちゃんは、ユナお姉様の約束を守っただけですから」

「逆にユナさんの秘密を言いふらしていましたら、フィナのことを軽蔑していたかと思います」

「そうですね。ユナ様はフィナのことを信じて、契約魔法は行わずに、秘密を話していますからね」

わたしとミサの言葉に困っていたフィナの顔は、嬉しそうな表情に変わる。

「でも、ユナお姉ちゃんがノア様やミサ様に話さなかったのは、簡単にお話ができなかったんだと思います。移動できる扉は便利です。だから悪用もできると言ってました」

「悪用……。そうですね」

「好きな場所に置くことができれば、いつでも侵入することができます」

「それにお父様に知られましたら、扉を使ってお金儲けのことを考えるかもしれません。もし、そうなれば、商人たちの仕事を奪い、商人を護衛する冒険者も必要がなくなり、乗合馬車もなくなると思います」

「そのようなことになったら、仕事を失う人が増えるでしょう」

お父様があの扉のことを知ったからと言って、そんなことに使うとは思えませんが、分かりません。

「ノア様、ミサ様。二人のお父さんは、そんなことはしないと思いますよ」

わたしとミサが不安そうにしていたのかフィナが元気づけるように言います。

「……フィナ、ありがとうございます」

「そう言っていただけると、嬉しいです」

お父様はクリモニアに住む住民たちのことを考えて、領主の仕事をしています。

ユナさんの扉を知ったからと言って、住民の仕事を奪うことはしないと思います。

「二人とも、子供なのに凄いっすね」

わたしたちの話を聞いていたシノブさんが感心した表情をしています。

「あと、大人の立場から言わせてもらえれば、緊急事態の時、逃げることができるっす」

「そうですね。わたしも危険が迫ったとき、ユナさんにあの扉を使って逃げるように言われました」

ユナさんがプリメさんのお姉さんを捕らえていた人と戦うことになり、わたしは扉を使って、クリモニアにあるユナさんの家に逃げていました。

シノブさんの言うとおりに、遠くに逃げれば、危険を回避することができます。

「あと、他の国と戦争になった場合。船を使わずに、兵士を送ることができるっす。あの扉は良いことにも悪いことにも使えるっす」

それは、わたしも思っていました。

プリメさんのお姉さんを探すため、お屋敷の奥深くまで入ったとき、ブリッツさんたち冒険者を連れていけると思いました。

「だからユナさんは信じられる人だけに教えていたんだと思います」

「出会ったばかりの、わたしたちに簡単に話すことができなかったんですね」

ユナさんは子供であるサクラとも契約魔法をしている。

それだけ、簡単に話せないことだと思う。 契約魔法をしなくても大丈夫と信じてくれたユナさんの気持ちに応えるため、わたしは黙っていなければいけませんね。

初めは気軽に、どこにでも行けるからいいなぐらいに思っていましたが、良いこともあれば、悪いことにもなります。

簡単に、他の人にお話できることではないことが再確認できました。

「一番初めに教えられたフィナちゃんは、ユナお姉様から一番信用されているってことですね」

悔しいですが、ミサの言うとおりです。

ユナさんは、いつもフィナを大切にしています。

「わたし2番!」

シュリが手を上げて嬉しそうにする。

話を聞く限りだと、確かにシュリが2番目に知ったみたいです。

「そもそも、知っているのがわたしたちだけとは限らないかも」

ルイミンさんが、そう口にします。

「わたし、ノアちゃんとミサちゃんが扉のことを知っていることを今日、知りましたから」

「わたしは、最近知ったばかりです」

妖精の件がなかったら、教えてくれなかったと思います。

「わたしも、数日前に知ったばかりです」

ミサは、さらにあとです。

「フィナ、そのあたりはどうなんですか?」

一番詳しいと思う、フィナに尋ねます。

「えっと、わたしが知っているのは、ここにいる皆さんぐらいです」

「そうなんですね」

「あとは、聞いたかどうか分かりませんが、伯父様は知っています。それで、あの屋敷を自由に使えるようにユナ様にくださいました」

遠くに離れた場所なら、出入りしても怪しまれませんね。

「他に、あの扉のことを知っている人が居るのかはわかりません」

フィナがそう言ったとき、シュリが手を挙げます。

「シア姉ちゃん!」

「お姉様ですか!? お姉さま、知っているんですか!?」

まさか、わたしよりも前に知っていたとはショックです。

「ああ、えっと、シア様は扉の存在こそは知っていますが、その扉で遠くに行けるという事は知らないです」

フィナがシュリの言葉を修正します。

お姉様が扉のことを知っている理由と、遠くに行ける扉だという事を知らない理由を説明してくれます。

それはフィナや孤児院の子供たちと一緒にミリーラの町に遊びに行ったときのことらしいです。

そこでフィナやお姉様が小島に行ったとき、魔物に襲われたことを話してくれました。そのときに扉を使って、お姉様を遠くの場所に逃がしたそうです。

あのときに、そんなことが起きていたんですね。

わたしたちに心配をかけないため、言わなかったそうです。

「シア様は、隣にある頑丈な部屋だと思っています」

「でも、実は遠く離れた場所だったと。という事は、お姉様は、あの扉を見たことがあり、なおかつ使ったこともありますが、実際は他の場所に移動していたという事は知らないわけなのですね」

「はい」

それからも、わたしたちはいろいろなお話をしました。そして、わたしは決めました。

「サクラ、ルイミンさん、少しいいですか?」

「なんでしょうか」

「はい」

「これを友好の証としてプレゼントします」

わたしはサクラとルイミンさんにカードを差し出す。

「これは?」

「クマさんを愛する証明書です」

「クマさんファンクラブだよ」

シュリがわたしが説明するより先に答えます。

わたしが言いたかったのに。

「会員番号0008」

「わたしは0009です」

サクラが8番で、ルイミンさんが9番です。

「会員番号1番は、会長であるわたしです。そして、2番は副会長であるフィナ」

「わたしが3番です」

「わたし、4番!」

みんなが会員証を見せます。

ちゃんと持ち歩いているんですね。

偉いです。

「ちなみに会員番号5番はサクラの部屋にあったくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみを作ってくれた女の子のシェリーって子で、6番はわたしのお姉様で、7番はお母様です」

「まだ、それだけなんですね。一万人を目指すと言っていたので、たくさんいるのかと思っていました」

フィナが尋ねてきます。

「わたしも、最初はユナさんやくまゆるちゃんやくまきゅうちゃんを慕う人にあげようとしました。ですが、それだと、ユナさんに知られてしまう可能性があります」

「まだ、黙っておくつもりなんですね」

「非公認ですから」

「もう、気づかれているんじゃないかな」

フィナの言葉は聞き流します。

「それに、今回のことで、わたしたちでは共有できる情報でも、他の人には共有できない情報もあると思いました」

「そうですね。今回のことは特に」

「なので、ユナさんの秘密を知っている人を会員にすることにしました」

「それだと、一万人にいきませんが、いいのですか?」

「初めはクマさんの輪を広げようとしましたが、話せないこともでてきます。それはクマさんファンクラブ会長として、差別をすることになります。それではダメなような気がします。それなら、ユナさんの秘密を知っている人だけで、ファンクラブを作ることにします」

「シェリーちゃんやシア様、それからエレローラ様は知りませんが……」

「今は、そのことは横においておきます。仮としておいてください」

お姉様、お母様ごめんなさい。

心の中で謝ります。

「ありがとうございます。大切にします」

「もし、誰かが和の国に行くことがあれば、会報もお渡ししますので」

今回のことも会報にしないといけませんね。

でも、誰かに見られましたら、困りますから、ちゃんと考えないといけませんね。

「あのう、わたしのはないっすか?」

シノブさんがクマさんファンクラブ会員カードを見ながら尋ねてきます。

「えっと、シノブさんはユナさんの敵? ライバルで、クマさんを好きではないので……」

これはクマさんファンクラブって名称ですが、ユナさんファンクラブでもあります。

「そんなことはないっすよ。クマ大好きっすよ」

シノブさんはくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに抱きつきます。

「「くぅ~ん」」

くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが首を振って否定します。

「酷いっす。クマ、好きっす。愛してるっす」

わたしたちの意見は一致して、シノブさんにクマさんファンクラブ会員証は渡しませんでした。

ユナさんが言っていましたが、シノブさんは胡散臭いです。