軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

739 クマさん、和の国の服を着る

それぞれが和服を選び、その着替えをサクラ、スズランさんの2人が手伝ってくれる。

「着るのが難しいですね」

「そんなことはありませんよ。慣れれば簡単です。それを言いましたら、ノアたちの服の方が難しそうです」

ノアはサクラに、ミサはスズランさんに着付けてもらっている。

フィナとシュリは一度着ているので、ノアとミサに先を譲っていた。

わたし? 最後でいいよ。

「ここを紐で縛って、できあがりです」

綺麗な花の模様が施された鮮やかな着物だ。

ノアの金色の髪と相まって、華やかさがある。

ミサのほうもスズランさんの手によって、着替えは終わっている。

こちらも花模様の着物に銀色の髪が引き立ち、わたしやフィナとはまた違う、なんとも言えない美しさを創り出されている。

「ノア様、ミサ様。凄く綺麗です」

「ありがとう」

「少し、恥ずかしいです」

ノアとミサは頬を赤くする。

「サクラ様、このままでもいいと思いますが、せっかくですので髪型も変えましょう」

「そうですね」

サクラはスズランの言葉に頷く。

「髪ですか?」

「はい、整えますので、少しお待ちください」

サクラとスズランさんは櫛でノアとミサの髪をとかし始める。

「ノア姉ちゃんとミサ姉ちゃん、髪が長くていいな」

シュリが自分の髪を触る。

フィナもシュリも髪は短い。

「わたしもシュリも最近は切らずに伸ばしているんです」

「そうなの?」

「ユナお姉ちゃんみたいに長くしようと思って……」

フィナは恥ずかしそうに言う。

前に、わたしみたいに髪を長くしたいとは言っていたけど、本当にしているとは思わなかった。

でも、わたしくらいまで髪が長くなるのは、当分先になりそうだ。

フィナとシュリと話している間もノアとミサの髪は整えられていく。

「はい、完成です」

「こちらもできました」

ノアとミサの髪が完成する。

頭の後ろにまとめられて、かんざしが着けられている。

その姿は、別人のように見える。

「こちらに鏡がありますので、確認してください」

姿見が部屋の端に置いてある。

ノアとミサは移動して、自分たちの姿を見る。

「……自分じゃないみたいです」

「はい。服と髪型が変わっただけなのに……」

ノアとミサは姿見の前で恥ずかしそうにしているが、顔は笑顔だ。

「サクラ、ありがとう」

「スズランさんも、ありがとうございます」

「喜んでもらえたようで、わたしも嬉しいです」

「それでは、次にフィナとシュリ、ユナ様の三人の着付けをしましょう」

「着る服は決まったっすか?」

「わたし、シノブ姉ちゃんみたいな服を着てみたい」

シュリがシノブを見ながら言う。

「わたしの服っすか?」

シノブが自分の服を見る。

「うん!」

「シュリが着られそうな服、あったっすかね。わたしの家を探せば? でも、今からじゃ」

「ありますよ。シノブがわたしに着させようとしたことを覚えていないのですか?」

「ああ、そんなこともあったすね」

2人がなにかを思いだしたようだ。

「……確か、こちらの奥のほうに」

サクラは葛籠の奥の方を探し始める。

「酷いっす、そんな奥にしまうなんて」

「着ない服なんですから仕方ないです。そもそも、シノブもわたしに渡したことを忘れていたでしょう」

シノブの言葉を両断する。

そして、サクラはシノブが着ているような服を見つける。

確かに、シノブっぽい服だ。

「それじゃ、シュリの着替えはわたしがするっすね」

「それでは、わたしは彼女を着替えさせますね」

スズランさんがフィナの肩に手を置く。

「お、お願いします」

フィナは頭を下げる。

「それでは、わたしはユナ様を」

サクラがわたしのほうを見る。

流石にサクラから逃げるわけにはいかない。

わたしは諦めて、着替えることにする。

それなら、前回と違った服を選ぶことにした。

ああ、もちろん、念のために子熊化したくまゆるとくまきゅうは召喚しておくよ。

スズランさんには驚かれたが、「可愛いです」と言って、頭を撫でていた。

「ふふ、また、ユナ様と楽しい時間が過ごせるなんて、幸せです」

クマの着ぐるみを脱いだわたしに着付けをしながらサクラは言う。

「小さい幸せだね」

「そんなことはないです。ユナ様とは会いたくても、わたしから会いに行くことはできません。ですので……和の国に来たときは顔を出してくださると嬉しいです」

「……うん、和の国に来たら会いにくるよ」

「本当ですか? 約束ですよ」

そして、わたしたちの着付けも終わる。

「ユナさん、綺麗です」

「フィナちゃんも可愛いです」

「シュリは……」

「なんすか、シュリも可愛いっすよ。シュリ、これを持つっす」

シノブはシュリに何かを持たせる。

「こう構えるっす」

シノブはシュリにクナイを持たせて、ポーズを取らせる。

「カッコいいっす」

「シノブ、シュリに危ないものを持たせてはいけません」

「うぅ、ごめんなさいっす」

サクラに叱られて、シノブはシュリからクナイを返してもらおうとするが、シュリは気に入ってしまったのか、返そうとしない。

「これ、カッコいい。欲しい」

シュリはキラキラした目でクナイを見ている。

「一つぐらいなら、いいっすけど……」

シノブがサクラとわたしを確認するように目を向ける。

「ユナ姉ちゃん」

シュリがねだるような目で見る。

「とりあえず、わたしが預かるってことなら」

「やった!」

解体用のナイフをプレゼントしたわたしが言うセリフじゃないけど、ティルミナさんに確認案件だね。

とりあえず、クナイはクマボックスの中にしまう。

着替えたわたしたちは姿見の前で確認するが、やっぱり、気恥ずかしい。

クマの着ぐるみを着るよりも恥ずかしいと思うのは、普通に考えればおかしいと分かっているのに。

姿見の前で自分の姿を見ていると、鏡の中に映ったサクラがなにかを見ていることに気付いた。

後ろを振り向きサクラを見るとノアとミサが脱いだ服を見ている。

「もしかして、ノアの服に興味があるの?」

「そうなのですか?」

わたしの言葉にノアが反応する。

「いえ、そういうことでは……ただ、ノアたちがわたしたちの服を珍しいと言ってくださるように、わたしもノアたちの服が珍しいなと思ったので」

「確かにそうっすね。そちらの国とは流通があるから普通の大人の格好なら見かけることはあるっす。でも、ノアたちの年齢の子がこの国に来ることは珍しいっす。フィナやシュリみたいな服はまだ見かけることはあっても、ノアとミサのような服を着ている子供は見たことがないっす」

まあ、商人の子供や何かしらの理由で一般の子供が和の国にやってくることはあるかもしれないが、異国の貴族令嬢などが来ることはそうそうないと思う。

「それでは、わたしの服を着てみますか?」

背格好が同じぐらいなので、着ることはできる。

「いいのですか?」

「もちろんです」

今度はサクラの着替えが始まる。

ノアは手際よくサクラを着替えさせる。

「ノア、着替えできたんだね」

「ユナさん。もしかして、わたしのことをバカにしてますか?」

「別にバカにしているわけじゃなくて、貴族様って、着替えとかメイドさんが手伝ってくれるイメージがあるから」

『お嬢様、今日はこちらの服にしましょう』とかメイドさんが用意して、着替えるイメージがある。

「なんですか、その変なイメージは。確かにパーティーなどで着飾るときは手伝ってもらいますが、普段は自分で着替えます。そもそも、一緒にお出かけしたときも、自分で着替えていたでしょう」

言われれば確かにそうだ。

初めてフィナとノアと王都に行ったときも、一人で着替えていたし、シアの交流会のときも妖精のときも、一人で着替えをしていた。

「いや、忘れていたわけじゃないけど、貴族ってイメージで……」

悪い先入観が出てしまったみたいだ。

「もちろん、わたしも一人で着替えはしますよ」

わたしがチラッとミサに目を向けたら、即答された。

そんなこんなで、サクラの着替えは終わる。

「なにか、恥ずかしいです」

ノアの服を着たサクラは自分の格好を見て、恥ずかしそうにする。

「なにか、新鮮な感じだね」

「サクラ様に見えないっす」

シノブがノアの服を着たサクラにそんな感想を漏らす。

「似合っていますよ」

「はい、お似合いです」

「ノアより、似合っているんじゃない?」

「ユナさん、それは酷いです」

「冗談だよ。二人とも似合っているから」

「でも、服装一つで、みんな変わりますね」

フィナがみんなを見る。

「わたしもそう思います。とくに、ユナさん」

みんなの視線がわたしに集まる。

「そうですね。いつもクマさんの服ですから」

それを言ったら、みんなも同じ服だよね。

心の中で思っても口にしない。

「なんすかこれ。動かないっす。重いっす」

突然シノブが騒ぎだすので、声がする方を見てみると、わたしが脱いだクマ服をシノブが持ち上げようとしていた。

「なにをしているの?」

「いや、ここにあったら邪魔かと思って、ノアたちの服と同じところに運ぼうと思ったっす。でもこれ、全然動かないっす」

そのことを聞いて、ノアたちもわたしの服を動かそうとするが、びくともしない。

「本当です。全然動きません」

「重いです」

「鍛え方が足りないんじゃない?」

わたしはみんなにどいてもらい、軽々とクマの服を持ち上げる。

「嘘、信じられないっす」

「ユナさん、凄いです」

別に凄くもなんともない。

ただ、クマ装備は譲渡不可なので、わたし以外は持ち運ぶことすらできないのだ。

例外として、くまゆるとくまきゅうは可能だ。

もっとも、くまゆるとくまきゅうは装備できないけどね。

「まさか、ユナがこんな修行をしていたとは思わなかったっす」

「修行?」

なにを言っているのかな?

「重いものを体に着ける修行っす。わたしもよくやるっすよ」

「そんな修行があるのですか?」

「体に重いものを付けて、訓練をするっす。それに慣れてくると、重い物を外したとき、体が軽くなって、通常よりも速く動けるようになるっす」

ああ、漫画などの修行シーンで、見たことがある。

実際に、重いウェイトバンドを足首や腕に付けて練習するらしい。

よくは知らないけど。

「ユナは常時、こんな重い服を着て修行していたんっすね。ユナの強さの秘密が少しだけ分かった気がするっす」

いや、全然分かっていないからね。

「だから、ユナさん。いつもクマの服を着ていたんですね」

違うから。

クマ装備がないと最弱になるからだよ。

「だから、あんなに強かったんですね」

まあ、クマ装備のおかげで強いのは確かだけど、ミサが思っていることと違うから。

「ユナ姉ちゃん、凄い!」

凄くないから。

「その日々の積み重ねで、強くなったんですね」

いやしてないから。

「悔しいっす。わたしも、もっと重いのを体につけるっす」

そもそもクマの服は重くないから。むしろ軽いぐらいだから。

そんなバカな話はやめて、わたしはクマボックスの中にクマ服をしまう。