軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

737 クマさん、ノアたちと城下町を見回る

「それじゃ、次はどこに行きましょうか?」

ノアはお城に目を向ける。

「わたしたちと一緒なら入れると思いますが、伯父様に迷惑がかかるかもしれません。あとで連絡をいれますので」

「いえ、そんなつもりでは……」

ノアは申し訳なさそうにする。

「気にしないでください」

サクラは微笑む。

「悪いが妾はスズランのところに顔を出してくる」

スズラン……たしか、カガリさんのお世話をしている人だっけ。

わたしはまだ、会ったことないんだよね。

クマフォンで確認することがあるから、名前だけは知っている。

「それでは、みんなで一度家に戻りますか?」

「気にしないでいい。妾一人で行く。お主たちは楽しんでくれ」

「ですが、お一人で」

「妾を子供扱いするではない。家ぐらい一人で行ける」

カガリさんはそう言うと一人で歩き出す。

「シノブ」

サクラがシノブに目配せをする。

「ダメっすよ。たしかにカガリ様も重要な方っすが、サクラ様も重要な人っす。それに、カガリ様なら、もしものことがあっても大丈夫っす」

まあ、カガリさんとサクラのことをよく知る人なら、普通に考えれば護衛が必要なのはサクラのほうだ。

カガリさんなら、シノブの言うとおりに自分で対処できる。

2人が話をしているうちに、カガリさんは角を曲がって見えなくなってしまった。

「本当に、カガリさんをお一人で行かせて大丈夫なのですか?」

「普通の子供ではないのですよね」

「カガリさんの立場は分かりませんが、重要な方だと」

「大丈夫っすよ。カガリ様をどうにかできる人はいないっす」

「重要な方なのは確かですが、シノブの言うとおりに、強いお方なので」

サクラの言葉に対して不思議そうにするが、前もって、カガリさんのことは尋ねないように言っておいたので、皆それ以上は聞いてこなかった。

わたしたちはカガリさんのことは気にせずに城下街を歩く。ノアたちも楽しそうにし始める。

「あれはなんでしょうか?」

「ノアお姉さま。あれは?」

「ミサ、あっちに行きましょう」

ノアとミサはシュリ以上に興奮している。

まあ、シュリはフィナに手を繋がれているから、駆け出すことはできない。

「2人とも、約束は覚えているよね」

「も、もちろんです」

「は、はい」

二人はわたしたちのところに戻ってくる。

そして、仲良く、見回る。

「あれはなんでしょうか?」

「クルクル回っています」

「かざぐるま?」

赤、青、緑、いろいろな花のようなものがクルクルと回っている。

「風で回るんだよ」

ノアとミサ、それから、フィナとシュリもかざぐるまが並んでいる店に近づく。

かざぐるまは風が吹くとクルクルと回る。

久しぶりに見たけど、懐かしくなる。

「フィナたちの国には売っていないのですか?」

「はい。売ってません」

「初めて見ました」

「なのに、ユナは知っているんっすね」

「まあね」

幼いときに折り紙で作ったことがある。

わたしだって、純粋で幼いときくらいはあったよ。

生まれたときから、今みたいな性格じゃないよ。

と、誰に言うまでもなく、心の中で言う。

「買っていこうか?」

「いえ、いいです」

「どうして?」

ノアたちは周りを見る。

「持っているのは小さい子供ですので」

周りを見てみると、かざぐるまを持っているのはノアたちより小さい子供たちだ。

それを持つのは、どうやら恥ずかしいらしい。

わたしとしたら、気にしないでいいと思うんだけど。

かざぐるまを見ていると、どこからともなく、ちりーん、ちりーんと音が聞こえてくる。

「この音は!?」

ノアが反応する。

「あそこっすね」

耳が良い、シノブが指さす。

そこには風鈴が売っていた。

この騒がしい中、音が聞こえる方向が分かるなんて、流石だ。

これじゃ、かくれんぼをしてもすぐに見つけられるわけだ。

よく、地面に耳を当てて音を聞いて、方角と距離を確認するシーンがあるけど。それ以上に精度が高そうだ。

わたしたちは風鈴の店にやってくる。

「おお、いつぞやのクマの嬢ちゃん」

「うん? もしかして、前に買ったときのおじさん? よく、わたしのことを覚えているね」

「いや、嬢ちゃん。流石に嬢ちゃんの格好は忘れたくても忘れられないだろう」

おじさんの言葉に、全員頷いている。

「それにあのときの嬢ちゃんたちも」

おじさんはフィナとシュリのことも覚えていたみたいだ。

「なんだ。また買ってくれるのか?」

「うん。ミサ、プレゼントするから好きなのを選んでいいよ」

「いいのですか?」

「ノアやフィナたちには買ってあげたからね。ミサには買ってあげられなかったから」

忘れていたとは言えない。

「ありがとうございます」

「ミサ、よかったですね」

「はい」

ミサはどれを買うか選び始める。

その横ではノア、フィナ、シュリが「これがいいのでは」「こっちは?」「これがいいよ〜」とか一緒に選んでいる。

わたし、サクラ、シノブはそんなフィナたちを微笑ましく見る。

「ユナお姉さま、ありがとうございます。大切にします」

ミサが選んだのは、花柄でも綺麗な蝶でも鳥でもなかった。

最近人気の狐と熊の絵柄だった。

「少し前に、大きな魔物が現れた。そのときに狐と熊が倒してくれたって話があるんだ」

「狐と熊ですか?」

「ああ、討伐された魔物の一部は見たが、大きかった」

「その狐と熊は?」

「遠くから見た者こそはいるが、間近で見た者はいない。でも、昔から狐様の言い伝えはあった。そして、魔物が討伐されたところには熊の岩もあったそうだ。それで、魔物を討伐してくれたのは狐と熊となった」

風鈴のおじさんが説明してくれた。

「狐は分かりませんが、クマって……」

ノアがわたしのことを見る。

無理に隠すことではないので、話す。

「そうだよ。わたしのことだよ。でも、知っているのは、ほんの一部の人だけだから、話しちゃダメだよ」

「ああ、だからお礼として、あのお屋敷をいただいたのですね」

「納得しました」

「そのことを知っている数少ない人っていうのが、サクラとシノブなんだよ」

「そうだったんですね」

「そのお話、詳しく聞きたいです」

「それは、また今度ね。誰かに聞かれたら、困るから」

人通りのあるところで、誰かに聞かれたら困る。

もっとも、わたしが大蛇を倒したと言いふらしても、誰も信じてくれないと思うけど。

それから、城下町を見回ると、ところどころで熊と狐、それから大蛇の絵が描かれたものが売られていることに気づく。

サクラとシノブが言うには大蛇を倒したのが狐様と熊様となっているので、人気があると教えてくれた。

「欲しいのがたくさんあります」

今回のことで、注意事項を追加させてもらった。

クマの転移門は離れた場所に行ける。クリモニアや王都では手に入らないものもある。

それを持っていたら、怪しまれる。

なので、珍しいものの購入は禁止にした。

その代わりに食べ物などはOKだ。

「服を買いたかったです」

「あの女の人が着ている服とか、よかったです」

「お父様やお母様に見せたかったです」

「和の国とミリーラの町で交易が始まっているから、服ぐらいなら」

「それなら、試しに、わたしが持っている服を着てみますか? わたしと背丈もそれほど変わりませんので、大丈夫だと思いますので」

「いいのですか?」

「前回フィナとシュリが来たときも、着たんですよ」

「それじゃ、お願いします」

またファッションショーが始まりそうだ。

わたしが着るのは抵抗があるけど、ノアとミサの和装は見てみたいかも。

サクラと約束したノアたちは嬉しそうにし、街の探索を開始した。

主に、珍しい食べ物に目が行く。

団子、あんみつ、おしるこ、おせんべいを食べたりした。

おしるこは少し甘かったみたいだった。

おせんべいは硬くて驚いていた。

「お腹がいっぱいです」

「もう、入りません」

「お姉ちゃん、苦しいよ」

「だから、やめたほうがいいよって言ったでしょう」

「だって、ノア姉ちゃんとミサ姉ちゃんが……」

フィナは初めこそ一緒に注文をしていたけど、途中からシュリが食べられないと予想していたので、自分は注文はせず、シュリが残したものを食べていた。

「でも、本当にお金はいいのですか?」

お金の支払いは全てシノブがした。

「構わないっすよ。ユナとのかくれんぼの約束っすから」

かくれんぼの勝負で、わたしが勝ったら奢ってもらうことになっていた。

朝食だけでなく、その後の食べ物も全て払ってくれた。

ただ、ミサの風鈴だけは、わたしがお金を出すことにした。

みんなの風鈴は、わたしが買ってあげたのに、シノブがお金を出したら、シノブがミサに買ってあげたようになってしまう。

それは違うと思ったので、わたしがお金を出した。

「少し休憩するっす」

「それでは、わたしの家に行きましょう。ここから、それほど離れていませんので。それに先ほどの服の約束もありますので」

「カガリ様もいると思うっす」

わたしたちはサクラの家に向かう。

歩くことで食べたものが消化されてきたのか、次第にノアたちは周りを見る余裕もでてくる。

「長い壁が続きますね」

わたしたちの横を塀が続く。

「この中がサクラ様の家っす」

「そうなのですか?」

「大きいです」

いや、ノアとミサの家も大きいからね。

そして、壁が続くと前のほうで、人が立っているのが見えてくる。

あそこが門であり、入り口だ。

「お疲れさまです」

「サクラ様、無事に戻られてよかったです」

サクラが門に立つ男性に挨拶をすると男性は言葉を返す。

「シノブがいますから、大丈夫ですよ。それで、なにかありましたか?」

「先ほど、幼い女の子がやってきましたので、お通ししました」

「カガリ様っすね」

ちゃんと家に来れたみたいだ。

まあ、見た目は幼女だけど、れっきとした大人だ。

「それでは、わたしたちも入りましょう」

「確認ですが、後ろの方たちは? そのクマの格好した女の子と、そちらの姉妹は前に来たことがあると思いますが」

そう言って、ノアとミサに目を向ける。

和の国では見慣れない服装だ。

わたしのクマの格好も目立つが、ノアたちの服装も、和の国では目立つ。

「わたしの客人ですので、大丈夫ですよ」

「分かりました。どうぞ、お通りください」

男性は一歩、横にずれ、わたしたちを通してくれる。

わたしたちは軽く頭を下げて、男の人の横を通り、門をくぐる。