軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

731 クマさん、ノアたちと和の国にお出かけする その1

昨日は一日中ミリーラの町を探索したわたしたちは、今日はまた違う場所へ行くことにした。

「今日はどこに行くのですか?」

「和の国だよ」

「和の国と言いますと、ミリーラの町と取り引きをしている国の名前ですよね?」

「よく勉強しているね」

わたしはノアの頭を撫でる。

「もちろんです。領主の娘として、自分の親が治める町の勉強はしています」

「それじゃ、何を仕入れているでしょうか?」

勉強していると言うノアに問題を出してみる。

「お米が増えていると聞きました。それから……醤油と味噌。今は、食べ物だけですが、お父様が商業ギルドと話し合って、他の物も仕入れるとは言っていました」

しっかり勉強はしているみたいだ。

クリフの話も聞いている。

「その中に風鈴が入っていました。お父様、気に入ったみたいでした。あの風鈴は和の国で買ってきたものだったんですね」

「昨日、ノアお姉さまに見せていただきましたが、とてもいい音がしました」

ミサには風鈴を買ってあげていなかったことを思い出す。

和の国に行ったら、買ってあげないと。

「扉は置いた場所にしか行くことができないんですよね?」

「そうだよ」

「それじゃ、ユナさんは船に乗って和の国まで行ったってことですか?」

ああ、そう思われてもしかたない。

実際は動く島、タールグイに来ていたときに偶然に和の国の近くを通りかかっただけだ。

「う〜ん、ちょっと違うけど。先にこっちに行ったほうがいいかもね」

「こっちですか?」

わたしはみんなを連れてクマの転移門がある部屋に移動する。

そして、タールグイの島にあるクマの転移門に向けて扉を開ける。

「ここはどこです?」

「和の国ですか?」

タールグイに設置したクマハウスの家の中なので、ここがどこなのか分からない。

来たことがあるフィナとシュリには黙っておくように言う。

「みんなでミリーラの町に旅行に行ったときのことを覚えている?」

「それはもちろん、楽しかったので覚えていますが」

「はい、わたしも」

「そのときに、動く島の話があったのは覚えている?」

「……はい。覚えています」

「漁師の方が言っていました」

「ここが、その動く島だよ」

「そうなんですか!」

ノアとミサは驚く。

「美味しい果物がたくさんあるんだよ」

シュリが食べた果物を思い出したように言う。

「シュリは来たことがあるの?」

「うん。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんと一緒に果物をたくさん採ったよ」

「うぅ、わたしも誘ってほしかったです」

「羨ましいです」

「まあ、とりあえず、和の国に行く前に軽く散歩しようか」

わたしたちはクマハウスから出る。

そして、子熊だったくまゆるとくまきゅうを大きくする。

くまゆるにはノアとミサが乗り、くまきゅうにはフィナとシュリ、そしてわたしの三人が乗る。

「ここが、あの動く島……」

「それで、前にこの島にいたときに、偶然に和の国の近くを通りかかって、あの扉を置くことができたんだよ」

「そうだったんですね」

わたしたちは海岸に出る。

崖になっているので、くまゆるとくまきゅうから降りないように言う。

ノアとミサは海を見る。

「なにも見えません」

「ずっと、海です」

海岸から見える先は地平線。

どこまでも海が続いている。

逆に陸が見えなくてよかったと思う。もし見えていたら、行ってみたいと言い出したかもしれない。

わたしも行きたいと思う。

とはいえ、見えたとしても危険かもしれないところにノアたちを連れて行くことはしないけど。

「風が気持ちいいです」

「ここはどこなんでしょうか?」

「流石のわたしもそれは分からないよ」

クマの地図を広げるが、点があるだけだ。周囲は真っ黒で表示されている。

「島が動くなんて不思議です」

この動く島が伝説のタールグイってことだけは秘密にしておくことにした。

話しても、驚かせるだけなので黙っておく。

そして、ノアとミサの希望もあって、季節に関わらず実っている果物があるので、果物狩りをした。

2人が満足したところで、あらためて和の国に向かうことにする。

「そうだ。最初に言っておくけど、移動した先の家に、カガリさんって子供がいるけど……」

うーん、なんて説明をしたらいいのか?

流石にカガリさんの秘密をわたしが話すわけにはいかない。

「和の国にあるユナさんのお家にカガリさんって子供がいるのですか?」

「和の国で知り合ったんだけど、訳あって一人で暮らしているんだよ」

「子供が一人でですか!」

「そんな、酷い」

「ああ、心配しないで。ちゃんとお世話をしてくれている人がいるから」

「そうなんですね。その子供のことはフィナとシュリは知っているのですか?」

「えっと……はい」

「うん。知っているよ」

フィナとシュリはカガリさんに会ったことがある。だから、心配はないけど、ノアとミサは初めて会う。

ちなみに数日前にカガリさんのお世話をする人がいないか確認するために連絡をしている。

「普通の子供と違うから、気にしないでもらえるかな」

「よく分かりませんが、分かりました」

「はい。わたしも分かりました」

わたしはあらためてクマの転移門の扉を開ける。

その扉の開いた先には座布団の上で正座をして本を読んでいるサクラと、くつろいでいるシノブ。それから、離れた場所でお酒を飲んでいるカガリさんがいた。

「お待ちしていましたユナ様」

「遅いっすよ」

「やっと来たか」

「カガリさんはともかく、どうして、サクラたちが?」

一応、サクラにもクマフォンで連絡はいれておいた。

いきなり行って、驚かれても困るので。

「来るとお聞きしていたので、お待ちしていました」

「昨日から待っていたっすよ」

「シノブ、そんなことは言わないでいいのですよ」

「ごめんなさいっす」

どうやら、わたしが行くと連絡をしたから来てくれたみたいだ。

「ユナさん? その人たちは?」

後ろからノアが声をかけてくる。

ああ、そうだった。

とりあえず、ノアたちにはクマの転移門から移動してもらう。

タールグイにあるクマの転移門はクマハウスの中にある。

全員靴を脱いでいるので、そのまま畳の上に移動する。

「フィナ、シュリ、お久しぶりです。そして、そちらの方がユナ様のご友人の2人ですね。わたしはサクラと申します。よろしくお願いします」

サクラが丁寧に挨拶をする。

「わたしはノアールです」

「ミサーナです」

ノアとミサも自己紹介をする。

「ユナ様より、身分の高い方だとお聞きしています。ノアール様とミサーナ様ですね」

「ユナさん、彼女は? 作法が綺麗ですが」

黙っていても、あとでバレるかもしれないので、話しておく。

「この和の国の国王の姪っ子さんになるのかな」

「そんな方が!?」

「今のわたしは王族とは関係ありません。普通のサクラと扱ってください」

ノアとミサが困ったようにわたしを見る。

相手は一応、王族の血筋だ。それを普通のサクラ個人として扱ってほしいと言われても簡単にはできないと思う。

「フィナとシュリは、なんと呼んでいるのですか?」

「わたしはサクラちゃんって」

「わたしはサクラ姉ちゃんだよ」

「そうなんですね」

ノアはそういうと決めた表情をする。

「わたしのことはノアとお呼びください。わたしもサクラとお呼びしますので」

「それでは、わたしのことはミサとお呼びください。えっと、サクラさんとお呼びさせていただきます」

「はい、それで構いません」

サクラとの自己紹介が終わるとシノブがやってくる。

「わたしはシノブっす。サクラ様の護衛っす。2人ともよろしくっす」

軽い、軽いよ。

まあ、それがシノブだけど。

そして、最後にみんなの視線がお酒を飲んでいるカガリさんに目を向けられる。

「ユナさん。あの女の子が飲んでいるのは、もしかしてお酒ですか? お酒の匂いがしますが。違いますよね?」

未成年のわたしはお酒を飲まないから分からないけど。クリモニアなどだとビールみたいなものとワインみたいなお酒があるのを見たことがある。

でも、カガリさんが飲んでいるのは日本酒っぽいお酒だと思う。

「カガリ様、だから、お酒はやめてくださいって」

サクラはカガリさんのところに向かうとお酒を取り上げる。

「なにをする」

「伯父様からも控えるように言われているでしょう」

わたしが聞いたときは子供の体で飲むなって言っていたけど、諦めたのかな。

「別に誰もみていないところなら、いいと言ったぞ」

「ユナ様のお客様が見ています」

カガリさんがノアたちを見る。

「しかたないのう」

カガリさんは渋々とサクラの言葉に従い、お酒を飲むのをやめる。

「ユナさん、あの方がカガリさん? カガリ様? あの女の子も身分が高い方なのですか?」

「う〜ん、そうだね。身分があるような、ないような。ただ、国王やいろいろな人が大切にしている人だよ」

「カガリ様は、この国の大切なお方です」

「そうっす。こんなちびっ子っすが、とても凄い人っすよ」

「そんな説明はしなくてもいい」

カガリさんは立ち上がると、わたしたちのところにやってくる。

「妾はカガリじゃ。好きなように呼ぶがいいが、カガリちゃんだけはダメだ」

誰かにカガリちゃん呼びをされたのかな。

まあ、実際はここにいる誰よりも年上の女性だ。

だからと言って、お婆ちゃんと呼べば怒ると思う。

「ユナ。お主、変なことを考えていないか」

するどい。

「考えていないよ」

「えっと、それではユナさんと同じカガリさんとお呼びさせていただきます」

ノアは当たり障りがない呼び方にしたみたいだ。

ミサもそれに従う。

自分たちより、見た目が年下に「さん」付けは違和感があるけど。こればかりはしかたない。

「くまきゅう様、くまゆる様、お久しぶりです。お会いできて嬉しいです」

サクラはくまきゅうとくまゆるの頭を撫でる。

「「くぅ〜ん」」

「それで、サクラたちは出迎えてくれるために待ってくれてたの?」

「はい。連絡をいただき、向かいました」

「このあたりに行くかも、としか伝えていないよね」

「待っていたのはわたしの勝手なので、気にしないでください」

いや、気にするよ。

待ち合わせに一日以上待たせたことになるんだから。

せめてタールグイに寄ってこなければ、そんなに待たせることもなかった。

「それに、カガリ様の様子も伺いたかったので」

「スズランのやつがたまに来ているから大丈夫だと言っているじゃろう」

それにしてもカガリさん、まだ元の姿に戻っていないんだね。

一生、このままなのかもしれない。

カガリさんが頭脳は大人、体は子供ってことは秘密なので、ノアたちの前で尋ねるわけにもいかない。

「それでユナ様。これからどうしますか。街に行きますか?」

「温泉に入りたいし、今日はここで休むよ」

「温泉があるのですか?」

ノアが尋ねてくる。

口ぶりからして、ノアは温泉を知っているみたいだ。

あっちにも、どこかにあるのかな。

「はい。天然温泉があります。好きなときに入れますよ」

わたしの代わりにサクラが答える。

「えっと、その前にここはどこなんでしょうか。窓の外に湖が見えるのですが」

「ここは、わたしたちが住む街から少し離れた場所にある建物です」

「ちなみに、この屋敷はユナが国王様に貰ったものっすよ」

「お屋敷?」

「貰った?」

ノアとミサは驚く。

「ユナさん、わたし湖に行ってみたいです」

「この建物中も見てみたいです」

「今日はここで休むから、遊んで来ていいよ。でも、くまゆる、くまきゅうから離れちゃダメだよ」

「シュリ、フィナ。来たことがあるんですよね。案内をお願いします」

「はい!」

「うん! こっちだよ」

ノアたちは部屋から駆け出すように出ていく。