軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

715 クマさん、ブリッツたちと話す

妖精の国から帰ってきた翌日、ブリッツたちは未だに起きてこない。

プリメとローネの話では妖精の眠り粉の効果は切れているらしいので、普通に目覚めるまで待っている。

特にやることはないのでポテトチップスを食べ、果汁を飲み、子熊化したくまゆるとくまきゅうと遊び。だらけモードだ。

昼食は何を食べようかなと考えていると、くまゆるとくまきゅうが「「くぅ〜ん」」と鳴いて、上を見る。

どうやら、起きたみたいだ。

わたしは階段を上がり、2階のブリッツたちが寝ている部屋のドアを開ける。

本来は二つしかベッドがない部屋だったが、ベッドを増設して4つ並んでいる。

そのベッドから起き上がっていたのはローザさんだった。

「ローザさん、おはよう」

「ユナちゃん? わたし、寝ていたの?」

「うん、ぐっすりとね」

まあ、それも妖精の眠り粉のせいだけど。

「……ローザ」

わたしたちの声でブリッツが目を覚ます。

それを皮切りにランとグリモスも目が覚める。

「ここは?」

ブリッツたちは部屋を見回す。

「クリモニアにある、わたしの家だよ」

「わたしたち、戻ってこられたの?」

ランはベッドから下りると窓際に移動する。そのランに続き、ローザさんたちも窓際に移動する。

「本当に?」

「分からないけど」

窓の外を見ただけじゃ、どこかは分からないだろう。

「外に出れば分かるよ。でも、その前にお腹空いていない? そろそろお昼だけど」

ブリッツたちはほぼ丸一日眠っていたから、食事は取っていない。

「そんなに寝ていたのか」

詳しい話は下ですることにして、わたしたちは1階に移動する。

急いで食べかけのポテトチップスなどを片づけて、昼食の準備を始める。

「ユナが運んでくれたのか?」

「くまゆるとくまきゅうだけどね」

「「くぅ〜ん」」

「ありがとうね。くまゆるちゃん、くまきゅうちゃん」

ローザさんとランはくまゆるとくまきゅうを撫でる。

「それで、本当にここはクリモニアなんだな」

「うん」

「そうか、ユナ、ありがとう」

四人は安堵の表情を浮かべる。

戻ってこられて安心したみたいだ。

「それで、どうして、わたしたち寝ていたの?」

「確か、妖精の場所や移動方法は秘密だから目隠して」

「そうしたら、だんだん眠くなって」

「そうだ。耐えようとしたんだが」

「寝ちゃったのよね」

「全員一緒に?」

みんな不思議がっているようだ。

「ごめん。プリメとローネにお願いして、妖精の眠り粉を使って、みんなには眠ってもらったの」

わたしは素直に話して謝罪する。

やっぱり起きたままだと、クマの転移門が見られる可能性もあるし、妖精のこともあるし、眠ってもらったほうが確実だった。

「いや、気にしないでいい。それがプリメたちとの約束だったんだろう」

「そうね。戻ってこられただけでも感謝しないと」

「うぅ、どうやって移動するか、知りたかったのに」

「ユナ、ありがとう」

四人から、それぞれの気持ちの言葉がでる。

若干一名の言葉を聞くと寝かせてよかったと思う。

「それで、プリメちゃんたちは?」

「帰ったよ。みんなにお礼を言っていたよ」

「そう、プリメちゃんたちも無事に戻れたようでよかったわ」

プリメはローネと一緒に妖精の森に帰ってこられ、ブリッツたちもクリモニアに帰ってこられた。わたしは秘密を守れた。ノアも無事にクリフの下へ帰すことができた。

いろいろとあったけど、みんな無事に戻ってこられてよかった。

「それで、ユナ。礼がしたいんだが」

「お礼ならいらないよ。ブリッツたちは約束を守って、ローネを助けるために手伝ってくれたんだから」

ブリッツたちにはローネを助けるために手を貸してもらい、わたしの代わりにベルングを殺させてしまった。

そのことを考えれば、お礼を貰えるようなことではない。

だから、丁重に断った。

でも、ブリッツは「今度、なにか困ったことがあれば言ってくれ。できるかぎり手を貸す」と言ってくれた。

その言葉はありがたくもらうことにして、今回のことは話が終わり、昼食を食べる。

ブリッツたちは昼食を食べ終わり、これからのことを話し合っているとノアがやってきた。ブリッツたちのことが気になって抜け出してきたみたいだ。

「ちゃんと、お父様に許可はもらってきました。少しだけですが」

「ノアールちゃんも、無事に戻ってきていたのね」

「はい。それで、ブリッツさんたちにお願いがあってきました」

「俺たちに?」

「お父様にブリッツさんたちのことを話しましたら、お父様がお話をしたいそうで」

「ノアールちゃんのお父さんって」

「確か、この街の領主様……」

「はい、父はクリフ・フォシュローゼ。この街の領主です」

ノアは丁寧に答える。

「ブリッツ、どうするの?」

「まさか、行くの?」

「…………」

三人がブリッツを見る。

「いや、断れないだろう」

なにか、昔のわたしを思い出す。

わたしもクリフの家に呼ばれて、嫌がったことを思い出す。

だから当時、ギルドマスターに言われたように助け船を出す。

「クリフは、わたしが知っている貴族の中ではまともだから大丈夫だよ」

「ユナさん、まともって……」

わたしの言葉にノアが微妙な表情になる。

まあ、父親をまともと言われても、褒められている感じにはならない。

「いや、ミサの誕生日会で出会ったガマガエルの貴族はとんでもなかったでしょう。それに、シアに自分の息子と結婚させようとした貴族もいたし……」

妖精を捕らえていたとんでもない貴族もいる。

ミサの両親、祖父のグランさんはいい貴族だった。

貴族にも良い貴族、悪い貴族がいる。

「あの貴族たちとお父様を比べないでください」

ノアが少し頬を膨らませる。

「まあ、とんでもない貴族もいるけど、ノアの父親は理不尽なことはしないから大丈夫って意味だよ」

確かにあの貴族とクリフを比べるのは失礼だったかもしれない。

「そうだな。ミリーラでも、悪い話は聞かなかった」

「そうね。町の人も好意的な意見のほうが多かったわね」

少なからず、批判もあったのかもしれない。それは町が騒がしくなり、静かな町がよかったと言う人もいる。全員から好意的に思われるのは難しい。

「アトラさんも、いい人だって言っていたわよ」

「…………」

「行くか」

ブリッツたちはクリフに会うと決めたみたいだ。

「もし、理不尽なことをされそうになったら、わたしの名前を出せばいいよ。クリフには貸しがあるから大丈夫だよ」

「ユナちゃん、領主様を呼び捨てにして……」

「信じられない」

わたしのクリフへの貸しよりも、領主様を呼び捨てしたことに反応する。

ブリッツたちが呆れたような目でわたしを見ている。

たまに、気をつけないとと思っていても、普通に話していると出てしまう。

「お父様をそんなふうに呼ぶのはユナさんだけです。でも、お父様は怒ったことはありませんから、大丈夫ですよ」

「ブリッツたちも呼んでみたら」

「遠慮させてもらう」

「無理ね」

「イヤよ」

「…………」

最後にグリモスも首を横に振る。

やっぱり、貴族であり領主であるクリフを呼び捨てにするのは常識外れみたいだ。とは言っても、今更変えるつもりはないけど。

四人は最後に、わたしにお礼を言って、ノアと一緒に出ていった。

わたしは今日一日はくまゆるとくまきゅうとのんびりと過ごす。

やっぱり、平和が一番だね。

──────

これはクリモニアに帰ってきてから、しばらくした後日談だけど。一度、ローネが捕らえられていた街の様子を見に行った。

街は日常に戻っていた。

薄暗い表情だった住民たちは笑っていて、日常を取り戻しつつあるように見えた。

新しい領主は、遠縁の三男坊で一生懸命に仕事をしているとのことだ。

ギルマス曰く「どうして、三男坊の俺が」と嘆きながら、仕事をしているらしい。

どうやら面倒ごとを押しつけられたようだ。

でも、根が真面目で頑張っているらしい。

それから、ブリッツたちのことは英雄扱いになっていた。

誰しもがブリッツたちを称えている。歌にもなっていた。ブリッツの絵も売られていたので、買ってきた。

それをブリッツに見せたら、破こうとしたり、ローザさんとランが欲しがったりした。なので、グリモスにあげたら、少しだけ嬉しそうにしてアイテム袋に仕舞っていた。

それを見たローザさんとランがズルイとか言って、わたしにお金を払うから買ってきてと頼んだが、丁重にお断りした。

絵がほしいなら、絵描きに描いてもらえばいい。わざわざあの街まで買いに行く必要はない。

あとわたしが領主と戦ったことは住民は誰も知らない。知っているのは冒険者ギルドの関係者たちぐらいだ。

冒険者ギルドに顔を出すと、ギルマス、受付嬢たちが歓迎してくれた。それから隅っこにいた冒険者たちは、わたしのことを知っていた。

そして、冒険者ギルド全員の総意で、あるものが作られていた。

それは、クマの石像だ。

冒険者ギルドの訓練所にクマの石像が置かれていたのだ。

本当の英雄は冒険者ギルドで語り継いでいくと言っていた。

クマの石像を壊そうとも思ったが、クマの石像の上に二人の妖精がいたので、壊すことはできなかった。

この街では妖精は嫌われている。でも、冒険者ギルドから、徐々に妖精が好かれるようになってほしいと思う。

そして、街のことが気になっているだろうノアに話してあげると、嬉しそうにしていた。

ただ、「わたしも連れていってほしかったです」と言われた。

まあ、ノアはクマの転移門のことは知っているし、今度連れていってあげるのもいいかもしれない。