軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

688 クマさん、もう一人の妖精と会う

「くぅ〜ん」

話をしていると、くまゆるが鳴く。

くまゆるとくまきゅうの顔が向いている方向を見ると、先ほどの騎士が扉から出てきたところだった。

わたしたちは口を閉じて身を潜める。騎士は馬のところに向かい、木に引っ掛けていた手綱を手にすると、馬に乗り、離れていく。

気づかれなかったみたいだ。

「他の場所に行ったんだろう。騎士が定期的に回っているのを何度か見ている」

本当に、いろいろと調べているんだね。

ギルマスたちに、わたしたちが街に来た目的を話してよかったと思う。

情報源は、本当に大切だ。

それから、この場所を調べると言うギルマスと別れ、わたしはノアと一緒に、ギルマスに教わった見張り台を確認しに行った。

もし、魔力を奪う場所なら、場所を知っておいたほうがいい。

騎士には気を付け、全ての見張り台の位置を確認したわたしとノアは宿屋に戻ってくる。

そして、宿屋の人にブリッツたちは仕事が入ったので、帰ってこれないかもと伝えておく。

街の中にいるプリメのお姉さんを探すことになったのに、まさか魔物討伐に行くことになるとはブリッツたちも思っていなかったんだから仕方ない。

ただし、遅くなれば夕食は用意できないことを言われた。

まあ、それはブリッツたちも分かっていることだ。

宿屋の人にブリッツたちのことを伝えたわたしたちは自分たちの部屋に移動する。すると大きな虫が飛びついてきた。

「ユナ! ノア!」

虫ではなくプリメだった。

どうやら、無事に帰ってきていたみたいだ。

「遅いよ。どこに行っていたのよ」

部屋の中には入れなく、部屋の前で待っていたみたいだ。

「プリメが勝手にお屋敷に行ったんでしょう。わたしたち、心配したんだよ」

「ごめん」

「それで、大丈夫でしたか?」

「うん、大丈夫。でも、怖かった」

わたしたちはプリメの話を聞くため、部屋の中に入る。

プリメは再召喚したくまゆるの上に乗って、お屋敷のことを話してくれる。

お屋敷の中に入ったプリメはいろいろな場所を探したこと。そして、一つの立派な扉があったので入ると、そこにはプリメのお姉さんの絵が飾られていたとのこと。

その部屋でお姉さんの手がかりを探していると、男が入ってきて、何かを探し始め、自分のことを探しているんじゃないかと思って、逃げ出してきたとのこと。

「プリメさんのお姉さんの絵があるってことは、あのお屋敷にいるんですね」

「うん、いると思う。それに男がお姉ちゃんの絵を見て、俺のものだって言っていた」

「それじゃ、やっぱり、囚われているのかな?」

漫画などで、妖精が鳥籠の中に閉じ込められているシーンを思い出す。

もし、捕らわれているなら、早く助け出してあげないといけない。

「でも、使用人はいるんですね。領主様の情報源がないと言っていたので、誰もいないと思っていました」

確かにそうだ。

貴族なら、騎士や使用人がいて当たり前だと思っていた。

騎士は領主の言いなりかもしれないが、使用人は?

そのあたりから、情報はないのかな。

ギルマスとカーラさんに聞いてみるのもいいかもしれない。

「それで、ユナたちはどこに行っていたの?」

わたしたちもプリメに説明する。

「よく分からないけど。そんなことしていたんだ」

まあ、プリメからしたら、騎士の行動や街の住民の魔力の優先順位は低いんだろう。

わたしとしたら、プリメのお姉さんの件も大切だけど、領主の件に、騎士の件、魔力の件も同じように気になる。

プリメのお姉さんを見つけたとしても、このままにしていいとは思っていない。

なにより、ギルマスやプリメの話を聞くかぎり、領主は妖精にかなり執心のようだし、プリメのお姉さんを簡単に連れ帰ることができそうもない。

領主や騎士に邪魔をされると考えたほうがいい。情報は少しでも多いほうがいい。

翌日、冒険者ギルドに向かい、ギルマスとカーラさんに会いに行く。

ギルマスは眠そうにしていたが、ちゃんといた。

どうやら、この冒険者ギルドに住んでいるみたいだ。

「領主の屋敷で働く人から、情報は得られないの?」

プリメが得た情報を基に、お屋敷の使用人たちのことを尋ねてみる。

「妖精の話が出た頃、多くの者が暇を出された」

暇を出された。つまり、辞めさせられたってことだ。

「でも、プリメは働いている人を見たって言っているけど」

「最低限いるが、屋敷からはでてこない」

「買い物は? 生きているなら必要でしょう」

「贔屓にしている商人が食材など必要な物を直接、屋敷に運んでいる」

「それじゃ、その商人から情報は?」

「商人にとって、顧客の情報は信用問題だ。知っていたとしても話さないだろう。まして、相手はこの街の領主で商売相手だ。金になることを放棄するわけがない」

商人だって生きていくにはお金が必要だ。まして、領主となれば最高のお得意様だ。街としては最悪の状況かもしれないが、その商人としては最高の状況とも言える。

「そうですね。貴族と契約している商人でしたら、貴族の情報を他人に話したりはしないでしょうね。話したことが知られれば、他の貴族相手に商売することができませんからね。自分たちの情報も話されると思って。それ以前に、他人の情報を話す人は信用されません」

「…………」

「…………」

ノアの言葉にギルマスとカーラさんが驚いた表情で見ている。

「ノアールちゃん、本当に村の子?」

「えっと、その、もちろんです。どこにでもいる普通の村の子供です」

ノアは誤魔化すように微笑む。

その誤魔化し笑顔が、違うと言っているようなものだ。

今更だけど、貴族の令嬢として育てられてきたノアに、村の子供役は難しかったかもしれない。

会話をしなければ、ちょっと綺麗な女の子でしかないが、会話をすれば知識の量が村の子供と違う。誤魔化しきれない。

「まあ、それはともかく、嬢ちゃんの言う通りに、商人から情報を得るのは難しいだろうな」

だけど、噓がバレバレのノアの返答に対して、ギルマスとカーラさんは追及はしてこなかった。

「それにしても、妖精の絵か」

「プリメちゃんの、お姉ちゃんがいるのは間違いないみたいね」

「うん、絶対にいると思う」

「でも、見つからなかったのね」

「怖くて、逃げちゃったから」

「それでいいと思うよ。もし、捕まるようなことがあれば、大変だったからね」

もし、プリメが帰ってこなかったら、これからの行動に支障がでていたと思う。

捕らわれた場所を探すのも難しいだろうし。

下手をしたら、人質になっていたかもしれない。

無事に帰ってきてくれただけで、十分だ。

それからギルマスから一つ頼まれごとをされる。

昨日の話だ。

プリメに見張り台の内部を探ってほしいのこと。

ただし、無理はしなくていいこと。

プリメは引き受けてくれた。

「それじゃ、この上を見てくればいいのね」

「うん、ギルマスも言っていたけど、無理なことはしないでね」

「分かっているわよ」

プリメは、そう言うと飛び上がっていく。

やっぱり、空を飛べるのはいいね。

わたしも見張り台まで、跳び上がることはできるが、そんなことをすれば気づかれるし、『クマが空を飛んでいる!』とか言われそうだ。

しばらく、ノアと一緒に待つことにする。

「ユナさん、ごめんなさい」

「うん? なんのこと?」

「わたし、村の女の子になりきれていなくて」

「そんなこと、気にしていたの? 別に大丈夫だよ。ノアはノアらしくしてくれれば」

「でも」

「貴族しか知らない情報? 貴族の行動って言うのかな。それは、わたしたちには分からないことだよ。わたしたちの中では、貴族であるノアにしか分からないことだよ」

「ユナさん……」

「それに、ギルマスとカーラさんも気づいているみたいだけど、深くは追及してくる気はないみたいだし。だから、ノアもなにか気づいたことがあれば、どんどん言っていいからね」

「はい!」

ノアは嬉しそうに返事をする。

「プリメさん、大丈夫でしょうか」

「危ないと思ったら、逃げてくるよ」

わたしたちはプリメが向かった上を見る。お姉さんがいるかもしれないお屋敷からも、ちゃんと戻ってきている。その辺りの判断はできると思う。

もしもの場合は突入して、プリメを奪還すればいい。その場合は、今後の行動がしにくくなるので、何事もなく戻ってきてほしいものだ。

しばらく、待ってると、プリメが無事に戻ってくる。

プリメの報告によると魔法陣の有無は分からないが、大量の魔石が器に載せられていたとのこと。

普通に考えれば、見張り台に大量の魔石は必要ない。

ギルマスが言っていた魔力を奪うことに使われているのは間違いなさそうだ。

そのことをギルマスに報告し、わたしたちは宿屋に戻ってくる。

その日の寝静まり返った夜、誰かの声がする。

静かにしてよ。

「プリメ、起きなさい」

「うう、誰?」

「いいから、起きなさい」

「お、お姉ちゃん!」

「プリメ、久しぶりね」

プリメの叫び声で、半分寝ていた脳が起きる。

プリメのお姉ちゃんがいるの?

わたしは状況を把握するため、寝たフリを続ける。

「お姉ちゃん、どうしてここに。わたしお姉ちゃんを捜しにきたんだよ」

「ええ、知っているわ。先日、お屋敷に来たのでしょう」

「知っていたの? それじゃ、どうして出てきてくれなかったの。ううん、それはどうでもいい。お姉ちゃん、帰ろう」

「今日は、あなたに伝えに来たの。わたしは帰らないから、一人で妖精の森に帰りなさいって」

「お姉ちゃん!」

プリメが叫ぶ。

これ以上は黙って聞いていられない。

「それは、どういうこと?」

わたしは起き上がる。

そこにはプリメの他に妖精が一人いた。

プリメのお姉さん……。