軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

687 クマさん、騎士の後を追う

プリメが一人で屋敷に行ってしまい、わたしとノアは宿屋に戻ろうとしたとき、ノアが小さい声で話しかけてくる。

「ユナさん、小屋のほうから騎士が一人出てきました」

屋敷のほうを見ると、敷地内にある小屋の中から馬に乗った騎士一人が門に向かっていた。

そして、門の前にいる騎士に一言二言話しかけると、そのまま馬に乗って屋敷から離れていく。

「魔物討伐に行くのでしょうか?」

「一人では行かないと思うけど」

騎士が戦うところを見たが、数人で戦っていた。

あの、わたしの魔法に気づいた隊長ならまだしも、一人で魔物討伐に向かうとは考えられない。

「それじゃ、普通に買い物とかですかね」

その線もあり得るけど、馬に乗って移動する?

街は広いから、それも否定はできないけど、街の外に出る可能性もある。

う~ん、どうする。後をつける?

ここにいても、新しい情報は得られない。

プリメの後を追いかけて、屋敷の中に入るわけにもいかないし、プリメが帰ってくるのを待つにしても、いつ戻ってくるのか分からない。

わたしは決める。

「ちょっと後をつけてみるよ。ノアは……」

宿屋に一人で待っていてもらうか、冒険者ギルドでカーラさんのところにいてもらうか、それとも、クマの転移門を使って、安全な場所にいてもらうか。

どうしようかと考えていると。

「邪魔じゃなければ、わたしも一緒に行きます」

ノアは少し遠慮がちに言う。

どうする?

ノアがジッと見ている。

「もし、危ないと思ったら、あの扉の中に入ってもらうからね」

「はい!」

ノアは嬉しそうに返事をする。

わたしとノアは騎士の後をつけることにしたが、わたしの格好は目立つので、距離を取らないと気付かれる。

わたしの格好が尾行には向いていないのは、和の国でジュウベイさんを尾行したときに証明されている。

「ユナさん、見えなくなってしまいますよ」

「今、出ると、気付かれるから、もう少し離れたら移動するよ」

「ですが、このままだと見失って……」

「大丈夫だよ」

すでに、わたしは探知スキルを使いマーキングしている。とは言っても目視マーキングだ。

残念ながら、探知スキルは人の反応は分かるが、誰の反応かは分からない。マーキングする便利な機能もない。なので、探知スキルで目視でマーキングして、騎士の反応を見逃さないように目で追いながら、本人を追う感じになる。

マーキング機能がほしくなるが、そんなことができたらストーカースキルになってしまう。「今、ここにいるね」「仕事が終わって家に帰ってきたのね」「もしかして、別の女の所に」とか。離れた場所でもストーカーができてしまう。

もっとも、そんなマーキング機能が追加されたとしても、そんなことには使わないけど、尾行するときには便利だよね。

騎士が離れるのを確認すると、わたしたちは尾行を開始する。

「ノア、行くよ」

わたしとノアは離れた位置から騎士を追いかける。馬には乗っているが、走っているわけではないので、小走りすれば追いかけることはできる。

「ユナさん、見えてませんが、分かるんですか?」

騎士が見えていないのに、ちゃんと進んでいるわたしに尋ねてくる。

「うん、まあ」

探知スキルを見ながら言う。

「ユナさん。さっきから、どこを見ているんですか?」

ノアには見えない、探知スキルがある場所に目を向ける。

たぶん、ノアにはなにも無い空間を見ているように見えているはずだ。

これは、前にフィナで確認済みだ。探知スキルの表示は、わたしにしか見えていない。

「えっと、魔法で、あの騎士の場所が分かるんだよ」

「魔法で、そんなこともできるんですね」

わたしの説明にノアは疑うこともせずに、納得してくれる。

これはスキルなので、魔法とは違うけど、スキルの説明はできないので仕方ない。

騎士はゆっくりと進んでいく。

それでも、人が歩くよりは速い。ずっと、小走りを続けるわけにはいかない。

ノアは少しだけ、息を荒くしている。それに小走りするクマも目立つ。

わたしは人通りがない裏路地に移動する。

「ノア、少し抱き抱えるよ」

わたしはそう言うと、くまきゅうを抱いているノアをお姫様抱っこする。

「ユナさん!」

ノアは驚くが、気にせずに抱える。

「くまゆるは背中に乗って」

「くぅ〜ん」

くまゆるはわたしの背中に飛び乗る。

「しっかり掴まっていてね」

わたしは人目につかない裏路地を走り、人目につかないように移動する。

あっちの方角だね。

探知スキルで騎士の反応を見逃さないようにする。

騎士の反応は建物が密集する街の中心から離れ、端の方へ移動し始める。

端は街の壁があり、その一部が円柱になっている箇所がある。

上を見ると、見張り台っぽい。

その円柱の下には扉があり、ここから中に入り、上に行けるみたいだ。

わたしはノアたちを下ろし、騎士の様子を窺う。

騎士は近くの木に手綱を引っ掛け、鍵を使って扉の中に入っていく。

「見張りの交代かな?」

後を付けたけど、時間の無駄だったみたいだ。

「ユナさん、どうしますか?」

「一度帰ろうか」

「「くぅ~ん」」

帰ることにすると、くまゆるとくまきゅうが鳴く。

緊急の鳴き方ではなく、呼びかけるような鳴き声だ。

「どうしたの?」

「くぅ~ん」

くまゆるが後ろを見る。

わたしは探知スキルを使う。

人の反応がある。

誰?

くまゆるとくまきゅうの鳴き声は緊急性ではない。

「ユナさん、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんはなんて」

わたしがくまゆるとくまきゅうの言葉を理解している感じでノアが尋ねてくる。

「誰かがこっちに近づいてきているみたい」

「騎士でしょうか。ユナさん、魔法では分からないのですか?」

「ごめん、そこまで分からないんだ」

そういうと、ノアは目を瞑る。

「魔力の繋がりは感じないので、騎士ではないと思います」

「そんなこと分かるの?」

「今までは、魔力がいろいろな所から感じて、分からなかったので、混乱していましたが。騎士を見て、理由が分かったので、なんとなく分かるようになりました」

この街の騎士の探知に関してはノアのほうが優秀かもしれない。

そんな話していると、人の反応は近づいてくる。

わたしたちは身を隠し、様子を窺う。隠れるようにやってきたのは、ギルマスだった。

どうして、ギルマスが?

ギルマスは見張り台の様子を窺っている。

何かを調べている?

わたしは話を聞くため、ギルマスの前に姿を現す。

「嬢ちゃんたち!?」

ギルマスは驚いた表情をする。

わたしだって、驚いているよ。

「どうして、ここに嬢ちゃんたちが……」

「わたしたちは、騎士の後をつけていたら、ここに来ただけだよ。そういうギルマスは?」

「嬢ちゃんたちだけに仕事をさせるわけにはいかないからな、俺も仕事をしようと思って、調べに来たんだよ」

「ここに、なにかあるの? ただの見張り台じゃないの?」

「見張り台だよ」

「それじゃ、なんで?」

「前までは兵士などが、言い方が悪ければ、下っ端がやるような仕事だった。それが、領主様が代わったあと、騎士が出入りするようになり、今まで見張りをしていたものは、街の警備に回された」

言われてみて納得する。

言い方が悪ければ、見張りって、騎士がするような仕事ではない。

あくびをしながら、暇そうにしているイメージがある。

「それじゃ、ギルマスは見張り台になにかあると思っているのですか?」

「嬢ちゃんは、鋭いな」

褒められて、少し嬉しそうにするノア。

「とは言っても、ある程度は予想はついている。ここには街の住民から魔力を奪う、何かがある」

「魔法陣?」

普通に考えれば、住民から魔力を奪うなら、街を囲うように作る。

「ああ、同じような見張り台が、いくつもある」

ギルマスは木の枝を拾うと、地面に簡単な街の絵を描き、見張り台の位置を○を付けていく。

6ヶ所。

「何度か、魔力が奪われない場所がないか、探してみたんだが、一部の街の壁際が奪われることがなかった」

それって、魔法陣の外ってこと?

「一人で調べていたのですか?」

「見つかったときの、言い訳の場合。一人の方がいいからな」

それはそうだけど。人が多ければ、怪しまれる可能性は高くなる。でも、人数が少なければ、見つけるのは時間がかかる。

カーラさんや冒険者ギルドを巻き込みたくなく、一人で頑張っていたのかもしれない。

冒険者ギルドを残すために、嫌う騎士たちに頭を下げ、騎士たちが討伐した魔物の解体を引き受け、冒険者ギルドを守ってきたんだと思う。

初めはノアの体に入ったプリメのお姉さんのハンカチを頼りにすれば、簡単に見つけて、連れて帰ることができると思っていた。

でも今は、領主に騎士、冒険者ギルドに街の住民。

プリメのお姉さんは、いろいろな人を巻き込み、いろいろな人に迷惑をかけている。

これがプリメのお姉さんの意志ではないことを祈るだけだ。

「それで、何を調べに来たの?」

「中に入れないかと思ってな」

それは流石に無謀だ。

「危険です」

ノアもわたしと同じことを思ったみたいだ。

「分かっている。俺だって危険なことはしないさ。妖精に調べてもらえないかと思ってな。下調べさ。そういえば、妖精はいないのか? 俺には見えないだけか?」

わたしは簡単にプリメのことを説明する。

「見えないとはいえ、無謀なことをするな。あの妖精のお姉ちゃんのことは見えている可能性はあるんだ。もし、見つかれば、どうなるか」

「わたしも、思ったけど。飛び出しちゃったから。でも、姉妹だからって、同じ人間が見えるってことはないらしいし」

「そうだが、嬢ちゃんたちが連れてきた妖精は、この街の未来を握っている」

「その割には、この中を調べてもらおうとしていたみたいだけど」

「俺も、行き詰まっているんだよ。調べたくても、なかなか調べることができなかったからな」

まあ、一人では限界はある。仲間がいるとしても、大きくは動けないと思うし。失敗すれば、終わりだ。

だから、よそ者のわたしやブリッツたちに打ち明けてくれたのかもしれない。

よそ者なら、簡単に尻尾を切れるから。と考えるのは、わたしの性格が悪いからかな。

ここは、わたしの性格が悪いのではなく、漫画や小説を読んで影響されたと思うことにしよう。