軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

678 クマさん、情報を得る

「ほれ、仕事を持ってきてやったぞ」

騎士はそう言うと、アイテム袋からウルフを近くのテーブルの上に無造作に出す。

「仕事を持ってきてやっているんだから、感謝して解体をするんだな」

騎士たちは笑いながら、次々とウルフをテーブルの上に置いていく。

そのテーブルは魔物の死体を置くテーブルではない。本来なら、冒険者たちが、飲み食いするためのテーブルだ。

魔物を置くテーブルは他にある。もし、わたしが受付嬢だったら殴っている。でも、受付嬢は怒らずに礼を言う。

「いつも、ありがとうございます」

「この街の冒険者は、ウルフを討伐できないらしいからな」

一人の騎士が周りを見ながら笑うと、周りの騎士も一緒になって笑う。

あのわたしの風魔法に気付いた隊長がいないので、諫める者は誰もいない。部下にしてこれだから、隊長もとんでもない人物の可能性は高い。

わたしは気付かれないように覗いているノアの体を引っ張って柱の後ろに隠れる。

わたしは騎士たちが冒険者ギルドから出ていくのをジッと待つ。

しばらくすると笑い声と共に冒険者ギルドから出ていくのを確認すると、柱の後ろからでる。

騎士はいなく、テーブルの上には討伐されたウルフがあり、騎士が出ていったドアに向けて、受付嬢がジェスチャーをしていた。

そのジェスチャーは相手を罵倒するジェスチャーなのは理解できたので、前にいたノアの目を静かに塞いだ。

教育によくない。

受付嬢がジェスチャーを止めるのを確認すると、わたしは受付嬢のところに向かう。

「あら、はしたないところを見せちゃったわね」

わたしたちが見ていたことに気付くと受付嬢は笑って誤魔化す。

「あの騎士は?」

「いけすかない騎士どもよ。冒険者の仕事を奪っておいて、なにが代わりにやっているよ」

「冒険者の仕事を奪うって……」

「言葉通りよ。この街の領主が、自分の騎士に魔物討伐の仕事をさせているから、冒険者の仕事がないのよ」

「そんな、街の領主が冒険者の仕事を奪うなんて信じられないです」

領主の娘であるノアが、この領主のやり方に頬を膨らませる。

「誰も逆らえないのよ。だからほとんどの冒険者は他の街に移動し、残ったのは力がない冒険者だけ」

受付嬢はチラッと、隅にいる冒険者たちに目をやる。

こんな騒ぎがあったというのに、こちらを見ずに無関心を貫いている。

「そして、自分たちが倒した魔物を、冒険者ギルドに押し付けて解体をさせているのよ。でも実際に、その解体の仕事がなかったら、冒険者ギルドの運営なんてできないから、表立って文句は言えないし」

だから、騎士から魔物を受け取ったときはお礼を言い、騎士が帰るとあのジェスチャーをしていたわけか。

「冒険者ギルドとして、訴えることはできないの?」

「街には、その街のルールがあるわ。わたしたちが冒険者ギルドを街に置かせてもらっている身。この街のギルドを封鎖する方法もあるんだけど、うちのギルマスが一人でも冒険者がいるなら、残るべきだと言ってね。それに賛同しているわたしたち数人の職員が残っているのよ」

その割には、わたしが来たときには、お酒を飲んでいたと思うんだけど。でも、それはお酒でも飲んでいないとやっていられないってことかもしれない。

「それに、この街に残っていたら、魔力を奪われてしまうから、魔法使いはすぐに出ていったわ」

「魔力を奪う?」

「あら、近くの村に住んでいるのに知らないの? 結構、有名なことだと思ったんだけど」

「それは……」

「まあ、街に一度も来たことがなければ知らないものかしら? 数年ほど前かしら、魔力を譲渡する命令が街にくだされたの」

魔力を奪うとか、譲渡とか信じられない言葉が出てくる。

「一般人から、冒険者までね。だから魔法使いは街から逃げ、同じパーティーメンバーも一緒に街から出ていったわ。残ったのは魔法が使えない冒険者だけ。そして、冒険者がいなくなったあとの仕事をしているのが、あの妖精騎士たちなのよ」

「妖精騎士?」

「さっきの騎士たちが、そう名乗っているのよ。そして、その騎士が冒険者の仕事を奪っているんだから、文句も言いたくなるわ」

「酷いです」

「でも、誰も逆らえないのよ。逆らうより、他の街に移動すればいいだけ。ギルドも争うこともできない。領主が退去命令を出せば、冒険者ギルドは出ていくしかない。そうなれば、街に残った冒険者の行き場がない」

「その冒険者たちも他の街に行くことは、できないのですか?」

「慣れ親しんだ街を離れたくない人もいるわ。この街で生まれ、育ち、家族がいる。その人たちのためにも我慢するしかないの」

なんとも言えない。

ただ、気になる単語がある。妖精騎士。この街に妖精であるプリメのお姉さんがいる。無関係とは思えない。

「お話はここまでね。ごめんなさい。解体をしなくちゃいけないから」

わたしが妖精騎士について、尋ねようとしたが、受付嬢はわたしたちとの話を打ち切り、周りにいる冒険者たちに声をかける。

冒険者たちは動きだし、テーブルのウルフを運び始める。

彼らに仕事をさせるみたいだ。

妖精騎士について聞きたかったが、仕事の邪魔もできないので、冒険者ギルドを出ることにする。

「ユナさん、妖精騎士って」

やっぱり、ノアも気になったみたいだ。

「プリメのお姉さんと関わりがある可能性があるかもね」

「お姉ちゃんが、あんなやつらの仲間って言うの!」

ノアのポシェットからプリメが叫ぶ。ノアは慌ててポシェットを押さえる。誰もプリメに気付いた人はいない。

「とりあえず情報不足だから情報集めだね。今日のところは宿屋を見つけてから、今後のことを考えよう」

ノアからも反対はなく、プリメも渋々だけど、納得してくれる。

わたしたちは、門の入り口で教わった複数のうちの宿屋の中で冒険者ギルドから一番近い宿屋にやってくる。

くまゆるとくまきゅうがいると泊まれない可能性があったので、一時的に送還してから、宿屋に入る。

中に入ると、ノアと同じぐらいの女の子が家のお手伝いをしている。

「いらっしゃいませ」

宿屋に入ってきたわたしたちに気付くと声をかける。

でもすぐに、わたしの格好を見ると、驚きの表情をする。

「クマさん?」

「二人だけど、泊まれる?」

わたしは女の子の反応をスルーして、尋ねる。

「あ、はい。大丈夫です。お、お母さん、2人、お客さんが来たよ!」

女の子が奥に向かって声をかけると、母親だと思う女性がやってくる。

「いらっしゃいませ。今、部屋に案内させて……」

声をかけながら、やってきた女性は、わたしの格好を見て、固まる。

わたしは再度、反応をスルーして、声をかける。

「部屋の案内をお願いします」

「あっ、はい。お二人だけですか? お父さんやお母さんは?」

やっぱり、尋ねられるよね。

「二人だけです。お金ならあります。お父さんの代わりに村から来て」

怪しまれないように丁寧に答え、お金を差し出すと、女性は納得したようで部屋に案内してくれる。

「お父さんの代わりに、偉いわね。それじゃ、なにかあったら呼んでね」

女性は不思議そうに、わたしの格好を見ていたが、深くは尋ねてはこなかった。

女性が部屋から出ていくのを確認すると、プリメがノアのポシェットから出てくる。

「みんな、ユナの格好に驚くのね」

「ユナさんみたいな格好をしている人はいませんから」

どこかに、みんなが着ぐるみを着た夢の国の街があるかもしれないよ。

自分で、夢の国とか言っている時点で、夢物語のようなことだけど。

わたしは、これからの話をする前に、防犯のためにくまゆるとくまきゅうを再召喚しておく。くまゆるとくまきゅうはわたしの横で丸くなる。

「それじゃ、本格的にプリメのお姉さん探しをしたいと思うけど。ノア、お姉さんの場所、分かる?」

わたしが尋ねると、ノアは目を閉じて集中し始める。

いつもなら、すぐに「あっちです」とか言うのに、今回は少し時間がかかる。首を傾げたり、悩んでいるようにも見える。

「分からないの?」

「その、なんと言うか。いろいろな場所から感じるんです」

「いろいろな場所?」

「そこらじゅうから感じます」

「どういうこと?」

「説明するのが難しいのですが、今までは方角は分かったのですが、今はこの街全体から感じられるんです」

「それじゃ、お姉ちゃんの居場所は分からないの?」

「その、今は分かりませんが、近くになれば分かるかもしれません。あとですが……」

「まだ、なにかあるの」

「プリメさんのお姉さんが、魔力を使ったときかもしれませんが、一瞬だけ強く感じたことがありました。もしかすると、プリメさんのお姉さんが魔力を使えば、居場所が分かるかもしれません」

魔力を使ったときに、魔力を強く感じる可能性は十分にあり得る。

「それなら、今日は遅いから明日から情報収集だね。明日は、もう一度冒険者ギルドに行って話を聞いてみるのがいいかもね。あの妖精騎士についても気になるし」

「そうですね。妖精騎士とプリメさんのお姉さんと関わり合いがあるかもしれませんからね」

妖精と妖精騎士、無関係とは思えない。

「やっぱり2人ともお姉ちゃんが、あんな性格が悪い人間と一緒にいるって思っているの?」

「人は名前を付けるときは意味があることが多いからね。だから、可能性の一つだよ」

無意味な名前はもちろんある。

くまゆる、くまきゅう。「くま」は熊からきているのはもちろんだけど、「ゆる」と「きゅう」に特に意味はない。

でも、騎士に妖精と名前を付けるなら、妖精と関わっていると考えるのが普通だ。プリメには悪いが、この街にプリメのお姉さんがいるなら、十分にあり得る。

わたしたちは、宿屋で簡単な食事をいただくと、明日に備えて眠ることにした。

翌朝、眠そうにするノアを起こして、遅めの朝食を食べると冒険者ギルドに向かう。

人がいないところで、子熊化したくまゆるとくまきゅうを抱いて歩いている。

防衛対策だ。もし、ノアがわたしと離れたとしても、くまゆるとくまきゅうが守ってくれる。

そして、相変わらず、わたしが歩くとチラチラと見られる。わたしはクマさんフードを深く被りながら、前を向いて歩く。

そのとき、

「ユ、ユナちゃん!」

わたしの名前を叫びながら、誰かが抱きついてきた。

「なに!」

振り払おうとしたが、抱きついてきたのは見知った顔だった。

「ああ、ユナちゃんだ。本物だ」

「ローザさん?」

抱きついてきたのは、ミリーラの町がクラーケンに襲われていたとき、一緒に盗賊討伐をしたローザさんだった。

その後ろには、イケメンハーレム男のブリッツに、ランとグリモスもいた。