軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

660 クマさん、冒険者ギルドに行く

サーニャさんは、まだ仕事があるそうなので戻っていった。

「それじゃ、わたしたちも帰りましょうか」

わたしたちもここに残る理由はないので、帰りもエレローラさんに甘え、クマハウスまで馬車で送ってもらう。

馬車はコトコトと揺れながら進む。

三人掛けの椅子にフィナ、ティルミナさん、シュリが座り、向かい側の席にわたし、エレローラさん、シアの三人が座っている。

そんなわたしたちにエレローラさんが話しかけてくる。

「昨日話したフィナちゃんのお疲れさま会だけど、明日でいいかしら」

「明日ですか?」

フィナが少しだけ驚く。

後日って話で、日にちは特に決めていなかったけど、いきなりだ。

「フィナちゃんたち、クリモニアに戻るのよね?」

解体のイベントも終わったので、帰ることになる。

「そうね。夫も待っているし、あまり帰りが遅くなるのもダメよね」

ティルミナさんがエレローラさんの言葉に独り言のように呟く。

ゲンツさんをいつまでも一人にさせておくのは可哀想だ。

「ふふ、だから、明日にしましょう。準備のほうは、わたしのほうでしておくわ。夕方頃に家に迎えにいくから、お腹は空かせておいてね」

断る理由もなかったし、フィナもお祝いでなく、お疲れさま会ならと了承しているので、断ることもしなかった。

明日の夜は、フィナのお疲れさま会をすることになった。

そして、今日の話をしていると馬車がクマハウスの前に止まる。

「エレローラさん、ありがとう」

「それじゃ、明日ね」

エレローラさんとシアを乗せた馬車は去っていき、馬車を見送ったわたしたちはクマハウスの中に入る。

そして、今日もティルミナさんが食事を作ってくれ、わたしはのんびりと夜まで過ごす。

翌日、フィナの依頼料及び、イベントで解体した魔物のお金を貰うため、冒険者ギルドにやってきた。

相変わらず冒険者ギルドは混み合っている。ティルミナさんはキョロキョロと周りを見るシュリが離れないように手を握りしめながら歩いている。

初めはわたしとフィナだけで来るつもりだったけど、ティルミナさんが保護者として「一緒に行ったほうがいいかしら」と尋ねてきた。すると、フィナが「来てほしい」と言ったので、一緒に行くことになった。

わたしたちは複数ある受付の中で、空いている受付に向かう。

受付の前にやってくると、受付嬢が少し驚いたようにわたしたちを見る。

しかも、驚いたのはわたしを見てではなく、フィナを見てだ。

「あら、フィナちゃん?」

「えっと、エリザさん!?」

フィナが受付嬢の名前を言って、思い出す。

解体イベントに参加して、決勝まで残ったエリザさんだ。冒険者ギルドで受付嬢をしながら、解体の仕事もしているとは聞いていたけど、会うとは思わなかった。

「二日ぶりね。今日は先日の解体のイベントの報酬の件かしら?」

「はい。サーニャさんに来るように言われて」

「本当は、ここでイベントで解体した魔物の解体料を渡すことになっているんだけど。フィナちゃんと……えっと、ユナさんですよね」

エリザさんは、わたしを見ながら、確認するように尋ねる。

「うん、そうだけど」

「ギルマスに2人が来ましたら、皆さんを部屋に案内するように言われています」

「なんだろう?」

「詳しいことは聞いていませんが、自分で報酬を渡したいと言っていました」

エリザさんは立ち上がると、わたしたちをギルドマスターの部屋に案内してくれる。

「でも、フィナちゃんが、ユナさんと知り合いだと思わなかったわ」

少し前を歩くエリザさんが話しかけてくる。

「わたしのことを知っているの?」

「このギルドで働いている受付の者なら、全員知っていると思いますよ。クマの格好した女の子が来たら、失礼がないように接するようにとギルマスからのお達しがありましたので、なので少なくとも服装と名前は知っているかと」

そう言って、わたしの格好を見る。

「それとわたしは、ユナさんのことは、お見かけしたこともあります」

エリザさんは受付嬢だ。冒険者ギルドには何度か来ているから、そのときに見られていてもおかしくはない。

「それじゃ、そのときにフィナのことも?」

「ごめんなさい。小さい女の子と一緒にいた記憶はあるけど、ユナさんの格好が、あまりにも衝撃的でフィナちゃんのことは覚えていないの」

ゆるキャラと他の一名がいた場合、ゆるキャラは覚えていても、他の一名のことは覚えていないのと同じことだろう。

「2人が一緒のところは会場で見ていたから」

ああ、フィナは一戦が終わるたびに、わたしたちのところに戻ってきていた。同じイベントに参加していたエリザさんに、一緒のところを見られていてもおかしくはない。

そんな話をしていると、ギルマスの部屋の前に到着する。

エリザさんはドアをノックして、わたしたちを連れてきたことを伝える。すると、すぐに部屋の中から返事が返ってくる。

「入ってもらって」

わたしたちは部屋の中に入る。

サーニャさんは一番奥の窓際の椅子に座って、仕事をしていた。

エリザさんが頭を下げると、仕事に戻っていく。

フィナは話したそうにしていたけど、エリザさんは仕事だから仕方ない。

「待っていたわ。座ってちょうだい」

部屋にはちょっとしたテーブルと椅子が置かれている。わたしたちは、その椅子に座る。

「フィナちゃん、改めてお礼を言うわ。本当に今回はありがとうね」

「いえ。その、わたしも参加できてよかったです。凄く勉強になりました」

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」

フィナはお礼を言われて少し恥ずかしそうにする。

サーニャさんは立ち上がると、小さい布袋を持って、フィナのところにやってくる。

「今回の依頼料とフィナちゃんが解体した魔物のお金」

「ありがとうございます」

フィナは少し嬉しそうに小さい布袋を受け取る。

「中を確認して、問題がないようならサインをお願いね」

サーニャさんは一枚の紙をフィナの前に置く。

「はい」

フィナは返事をすると布袋を開ける。すると驚いた表情をする。

「こんなに?」

フィナが驚くと隣にいたティルミナさんも確認するように布袋を覗き込む。

「本当に多いわね」

「今回はフィナちゃんのおかげで盛り上がったから、少し多めにさせてもらったわ。それとフィナちゃんの解体した魔物が綺麗だったから、高く引き取ってもらえたのよ」

解体が汚いと取引価格が下がる。ボロボロのウルフの毛皮より、綺麗なウルフの毛皮のほうが、高く取引されるのは明白だ。

「でも、こんなに」

「正当な報酬よ。フィナちゃんはそれだけの仕事をしたのよ。だから、受け取って」

フィナが母親であるティルミナさんを見る。ティルミナさんは小さく頷いて「受け取りなさい」と言う。その言葉にフィナは小さく頷く。

「ありがとうございます」

フィナはサーニャさんにお礼を言うと、金額を確認し、問題がなかったようで、紙にサインする。

「そして、次はユナちゃんの件だけど」

「昨日も言ったけど、別に急いでいないから大丈夫だよ」

「大丈夫よ。用意したから」

「もう? 昨日の今日で?」

「ええ、まずは、保管庫の方へいいかしら。それと申し訳ないですが、ティルミナさんたちは、こちらでお待ちください。お茶とお菓子を持ってこさせますので」

サーニャさんが机の上の魔石に触れると、部屋のドアがノックされ、ギルド職員が入ってくる。

「3人にお茶とお菓子をお願い」

「はい」

ギルド職員は返事をすると、部屋を出ていく。

「それじゃ、わたしたちは行きましょう」

フィナたちを残して、わたしとサーニャさんは、前回、魔物を渡した地下の倉庫にやってくる。そして、サーニャさんは地下倉庫にある頑丈そうな扉の前に移動し、鍵を使って扉を開ける。

「ユナちゃんは、そこで待っていて。ここは権限を持った人しか入れない部屋だから」

そう言って、部屋の中に入る。サーニャさんが部屋の中に入る瞬間、部屋の中に大型金庫のような扉が見えた。

大切なものを保管しているのかな。

そして、サーニャさんは部屋に入って、1、2分ぐらいで扉から出てくる。

「お待たせ」

手にはアイテム袋がある。

「まずは、約束していた魔物の解体した部位の確認をお願い」

サーニャさんはそう言うと、アイテム袋から、今回わたしが提供した魔物の素材を出してくれる。巨大なスコルピオンやコカトリスの部位。

サーニャさんの話ではどれも価値があるみたいだ。

スコルピオンの甲殻はジェイドさんたちも喜ぶほどだ。コカトリスの素材は、今後次第ってところかな。

「それと、これが魔石ね」

巨大なスコルピオンの魔石は無色透明で、コカトリスは緑っぽい色の魔石だった。

大きさは巨大スコルピオンのほうが大きく、コカトリスのほうが一回り小さいって、感じだ。

わたしは確認すると、クマボックスに仕舞う。

「あとお金だけど、大金だから気を付けてね」

近くにあった机に金貨を並べてくれ、素材の取り引き金額が書かれた紙を渡される。

相場は、ハッキリ言って分からないので、サーニャさんのことを信用して、紙に書かれている金額と、渡された金額が同じことを確認すると、紙にサインして、金貨をクマボックスに仕舞う。

「でも、昨日の今日で、よく用意ができたね」

「素材を少しばかり引き取ってもらったのよ。それで、一括でお金が入ってね。あとは冒険者ギルドと商業ギルドのお金の予備費から出した感じね」

わたしとしては、何度も来ることがなくて助かったけど。

「それで、ユナちゃんには悪いんだけど、素材を引き取った人に会ってもらいたいんだけど」

「えっ、どうして? そんなの面倒臭いからヤダよ」

それならお金は後日でもいい。

「気持ちは分かるけど、相手が国王陛下だから、断れないのよ」

「国王陛下?」

「スコルピオンのこと、国王陛下は知っていたんでしょう?」

「うん、見せたから知っているよ」

砂漠の依頼を終えて、国王に報告したときにスコルピオンを見せている。

「それで、今回のことが国王陛下の耳に入って」

わたしに会いたいと。

うぅ、面倒くさい。

でも、行かないと、今後の問題がある。

フローラ様やティリアに会うこともある。

そのときに、国王が出てくるのは間違いない。

わたしはため息を吐く。

「分かったよ。会いに行ってくるよ」

「ユナちゃん。ありがとうね」

サーニャさんはホッとした表情をする。

まあ、怒られるようなことではないはずだから、大丈夫だろう。