軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

653 クマさん、表彰式を見る

「3番目にエリザちゃんが終わらせました! 終了です。みなさま、解体を止めてください。採点に入ります」

3人が全ての解体を終えたので、終わりとなる。

全員が手をとめ係員が解体の状態を確認して、採点していく。

やっぱり、あの場にフィナがいないのが少し残念だ。でも、蜘蛛の解体はできないようだから、決勝に残ってもダメだったと思うけど、心のどこかでは決勝に残ったフィナを見たかったのかもしれない。

「お待たせしました。順位が決まりました。一位をデッド君と予想している方も多いでしょうが、その通り、一位はデッド君!」

会場がやっぱりという感じで、盛り上がる。

誰の目から見ても彼が優勝だろう。もし、違ったら、抗議の声が上がると思う。

「優勝おめでとうございます。二連覇達成です」

「ありがとうございます。先輩たちに恥ずかしいところを見せずにすみました」

会場の冒険者たちに向かって手を振る。

パーティーメンバーなんだろう。

「運がとても良かったです」

「運ですか?」

「もう少し、生まれるのが遅かったら、二連覇はできなかったでしょう」

「それはどういうことでしょうか?」

デッド君はサーニャさんの隣にいるフィナを見る。

「僕があの歳の頃は解体なんてできなかった。だから、運が良かった」

成長したフィナには勝てなかったかもしれないと言っているのかもしれない。

「なるほど、それでは最後に一言、お願いします」

「来年は先輩たちに挑戦したいと思いますので、来年も応援をよろしくお願いします」

来年は20歳となり、ベテランたちに挑戦するみたいだ。

優勝したデッド君が、20歳以上のイベントでは、どのくらいの実力になるのか、それはそれで気になるところだ。

「ありがとうございました。それでは二位の発表です。これも予想通り、二位はガルド君!」

これも予想どおりの結果となった。

「来年こそ、一位だ」

「ガルド、よくやったぞ」

彼と同じ冒険者メンバーと思う冒険者が声をあげる。

「来年はライバルのデッド君はいません。来年こそ優勝ですね」

「今まで、上ばかり見てきた。来年は下から追い上げてくる者がいるのが知れてよかった」

チラッと解説席に居るフィナに目を向ける。

もしかして、みんなフィナを意識している?

「それと蜘蛛の解体ではおくれをとったが、来年は俺が勝つ!」

今度はエリザさんを見ながら、宣言をする。

蜘蛛の解体ではエリザさんに負けたと思っているのかもしれない。

1位、2位が発表されたが、予想通りの結果となった。ただ、3位は当初誰しもが予想していなかった人物だった。

「そして、三位は蜘蛛の解体で一気に順位を上げたエリザちゃん!」

会場から大きな、どよめきが起きる

最後の追い上げは凄かった。

まさか、3番手に終わらせるとは誰も思わなかったはずだ。そして一回戦から四回戦まで解体をしてきた通りに丁寧な解体であったため、減点もなく、そのまま3位となった。

「エリザちゃん、残念でしたね。もしもの話ですが、決勝が蜘蛛だけでしたらエリザちゃんが優勝していました」

「確かに残念ですが。たまたま偶然に得意な魔物が決勝にきて、それで優勝しても嬉しくないです。もし、それで勝っても、誰もわたしが優勝者とは認めてくれないと思います」

確かに、運が良かったと言われるだけだ。

エリザさんの解体は上手だけど、全ての解体で一度も一位を取ったことはない。誰の目からみてもデッド君とガルド君の二人が優勝者として見るだろう。

そう考えると、一回戦から四回戦までの全ての魔物を解体するのはトータルの実力を測ることができ、公平なのかもしれない。

ただ、シークレットの蜘蛛の解体がエリザさんを有利にさせたのは間違いない。

「ですが、決勝ではなく、四回戦に蜘蛛が出ていましたら、デッドさんやガルドさんに一矢報いることできたと思うと残念です」

そうなれば、デッド君とガルド君の全ての解体で一位と二位を取ることはできなかった。

そう考えると二人はルールに救われたことになる。

でも、四回戦に蜘蛛が出てきていたらフィナは挑戦することもできず、辞退していたかもしれない。フィナのことを考えると、蜘蛛の解体は決勝でよかった。

戦わず負けるより、戦って負けたほうが、自分にも納得ができるはずだ。

もちろん、負けたことが悔しいことには変わりないと思うけど。

「そんなエリザちゃんに質問です。きっと会場にいる皆さんが気になっていると思うのですが、蜘蛛の解体は得意なのでしょうか?」

「ええ、子供のときから蜘蛛の解体は何度も見てきましたので」

ふふ、と笑うエリザさん。

ちょっと笑みが怖い。

「えっと、子供のときからですか?」

「年に何度か、森の奥からはぐれた蜘蛛が住んでいた村の近くに現れることがあったので」

「危険な村ですね」

「一匹や二匹ですよ」

「だからと言って、蜘蛛の解体が得意になるとは思わないのですが」

「あと小さい頃から虫と遊んでいたこともあって、虫は苦手じゃないので」

「大きさが違うと思いますが……」

進行役の男性は解体されずに残っている蜘蛛を見る。

わたしも進行役の男性に同意だ。絶対に大きい虫なんて無理だ。

「そんなに気持ち悪くないですよ。それに、解体のお手伝いをするとお金を貰えたので手伝っていました」

たぶん、会場にいた全員が顔が引き攣っていたと思う。

きっとエリザさんとは友達にはなれない。

趣味が合わないのは仕方ないけど、もし苦手なものを押しつけられたら、逃げる。

でも、18歳ぐらいの年齢で、ここまで解体が上手で、心が強いのだと思う。

だからこそ冒険者ギルドに入ったときに、解体の仕事もさせてほしいと頼むことができたのかもしれない。

エリザさんもフィナ同様に苦労してきたんだと思う。

尊敬する。

そして、10位まで順位が表彰され、19歳以下で行われる解体のイベントは終わった。

「終わったね」

「そうね」

終わったと思い、席から立ち上がろうとしたとき、進行役の男性が言葉を続ける。

「それでは、最後に敢闘賞の発表をします」

「敢闘賞?」

「ああ、そんなものもあったわね」

エレローラさんが思い出したように口をする。

「今回、一番頑張った人に贈られるものね」

そんなものがあるんだね。

誰だろう。女性で一番だったエリザさんかな?

だけど、進行役の男性はサーニャさんのほうを見る。

「敢闘賞には審査員全員一致でフィナちゃんに決定だ!」

「わ、わたし?」

フィナの声をサーニャさんのマイクが拾う。

いきなり、自分の名前を呼ばれて、フィナが戸惑っている。

「フィナちゃん。こちらにお越しください」

進行役の男性が、自分の横に来るように手を横に出す。

「えっと」

「フィナちゃん、行ってらっしゃい」

隣にいるサーニャさんが優しく声をかけると、戸惑いながらも席から立ち上がり、進行役の男性のところにゆっくりと歩いていく。

「フィナちゃんは、イベントを盛り上げてくださいました。何より、この幼い年齢で四回戦までいくという快挙です。誰からも文句がでませんでした」

「わたしですか? でも、それなら決勝まで行って、3位になったエリザさんのほうが凄いと思います」

フィナはエリザさんを見る。

「フィナちゃん、ありがとう。でも、わたしは二年前にもらっているから、今回は貰えないの」

「はい、一度貰っている人は、残念ながらもらえません。敢闘賞は過去に入賞したこともなく、敢闘賞を貰っていない人に贈られます。その理由は、これをプレゼントされるからです」

進行役の男性が、横にあったテーブルに載せられていた布をとる。

なんだろう。

ここからではよく見えない。

「これは?」

「ベテラン職人が作った解体道具一式です。これを使って、これからも精進してほしいと願いを込められて贈られます」

解体イベントらしい賞品だ。

フィナは困ったようにキョロキョロと周りを見る。

「フィナちゃん、受け取って。審査員のみんなの目を疑うの?」

サーニャさんが審査員が並んでいるほうを見ながら言う。

「そうだ。俺たち全員一致して選んだ。誰一人、反対した奴はいなかった。だから受け取ってくれ」

一人の審査員が言うと、周りの審査員も「そうだ、受け取ってくれ」「俺たちの目を疑うのか」と言い出す。

「フィナちゃん。今回、参加した者も、異論はないわ。だから、受け取って」

エリザさんが、周りに確認するように言う。周りの参加者からも頷く声が聞こえてくる。

フィナは再度、周りを見て、わたしたちを見る。

わたしやティルミナさんは頷く。フィナは決心したのか、進行役の男性を見る。

「その、ありがとうございます。大切にします」

フィナが解体道具を受け取ると、周りから拍手が送られる。わたしたちも拍手する。

ただ、クマさんパペットをしていたせいで、拍手にならなかった。

「それでは、これで本日のイベントは終わらせていただきます。明日は20歳以上の者たちによる解体が始まりますので、明日もよろしくお願いします」

今度こそ終わった。

それぞれが動き出す。

フィナは、また解体に参加した人たちに囲まれている。おめでとうの言葉をかけられているみたいだ。それに対してフィナは満面の笑みで答えている。

何か、フィナが一気に成長したみたいで寂しい。

フィナが離れていく感じだ。

「まだ、子供だと思っていたのに、どんどん成長していくわね。少し寂しいわね」

隣では、ティルミナさんがわたしが感じていたことを口にする。

もしかして、親心だった?

「ティルミナさん。子供なんてそんなものですよ。うちのシアもわたしの知らないところで、いろいろと学び、成長していますから」

エレローラさんは言いながらシアの頭を撫でる。そんな母親の行動に恥ずかしそうにするシア。

「ノアも、少し見ない間に成長しちゃうし。……あの子は、あまり変わらないかしら?」

それは可哀想だよ。

ノアだって、日々成長しているよ。しているよね?

でも「くまさん!」と、いつも叫んでいるノアしか、思い出すことができない。

おかしい。