軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

645 クマさん、フィナを見守る 三回戦採点

同時に解体を終えたフィナたち四人の採点も行われる。

うぅ、緊張する。

「お姉ちゃん、大丈夫かな……」

隣では、シュリが不安そうにしている。

「フィナちゃんなら、大丈夫よ。それに、もしもの場合はサーニャがギルドマスターの力を使って、勝たせてくれるわよ」

シュリの言葉にエレローラさんは優しく答える。

「本当?」

「本当よ」

シュリを心配させないように言っているんだと思うけど。それはアウトだからね。

ティルミナさんもシュリの教育によくないので、エレローラさんの言葉に困った表情をしている。

「えっと、エレローラ様。娘にそういうことは、あまり言わないでいただけると」

貴族であるエレローラさんに強く言えないティルミナさんは遠慮がちに言う。

なので、ここは代わりに、わたしがハッキリと言ってあげることにする。

「エレローラさん。シュリに悪影響だから、悪いことを教えないで。それにフィナもサーニャさんの力で三回戦突破しても、嬉しくないと思うよ」

不正合格みたいなものだ。

フィナは努力をして、三回戦まで来た。その努力を不正の上に作ってはいけない。不正合格で喜ぶのは、うちの両親みたいに努力もしないで、楽をして、上に行きたい人だけだ。

「うぅ、ユナちゃん、冗談よ。フィナちゃんなら、自分の力で勝つから問題はないわよ」

「エレローラさんが言うと、冗談に聞こえないから」

「はい。お母様が言うと、本気だと」

実の娘にまで言われる。

貴族であるエレローラさんが言うと、本当にありえそうだから、冗談には聞こえないから、仕方ない。

それに、サーニャさんも同じようなことを言っていたし。

「シアまで酷い!」

エレローラさんは泣き真似をするけど、無視をすることにする。

そんなとき、会場に少しだけ、動きがある。

「おっと、採点をした係員が参加者数名を呼んでいます」

その中にはフィナの姿もある。

「ちょっと、行ってみましょう」

進行役の男性は集まっている係員のところに向かう。

「この解体処理が減点、ここがしっかり切れていません。この解体処理の仕方が間違っています」

「どうやら、解体の採点についての説明をしているようです」

「それに引き換え、彼と彼女はしっかりできています。なので、このように採点をつけさせてもらいましたが、何かありますか」

進行役の男性が持つマイクから、採点をした係員の声が漏れてくる。

「なるほど、三回戦突破の順位がギリギリだった人たちが呼ばれたみたいです。ここにいると、順位が分かってしまうので、離れることにします」

進行役の男性は元の場所に戻ってくる。

そして、集められた人たちの説明が終わったようで、進行役の男性のところに、採点表が書かれた紙が渡される。

「お待たせしました。結果が出たようです。4回戦に行けるのは40名中、20名。すでに5人が辞退しましたので、35名の戦いとなりました。一番緊張しているのは、20番前後に解体を終わらせた人たちでしょうか」

その中にはフィナもいる。

「それでは順位の発表をします。泣いても笑っても、三回戦突破できるのは20名です。一位はデッド君、二位はガルド君。ここは定位置になっていますね」

デッド君はホッとした表情をすると、小さくガッツポーズをする。ガルド君は悔しそうにしている。

解体処理の綺麗さに差がなければ、必然的に解体速度が順位のままになる。

あの解体速度で、綺麗に解体をしているなら凄いと思う。

そして、二人に続き、次々と順位と名前が呼ばれていく。

一桁台ぐらいまでの、メンバーは余裕な顔をしている。一位、二位の2人に及ばなくても、それなりの解体技術を持っている。一回戦から、前後はあっても、顔ぶれは変わらない。

「13位、エリザちゃん! 解体を終えた順位は15番でしたが、2ランクアップして、13位だ。解体の丁寧さから評価点が高く出たようです」

「丁寧に解体するのは、ギルド職員としては当たり前よ。もし、速度を優先して、解体をないがしろにするようなら、二度と参加させないわ」

イベントを行なっている主催者側の参加者が適当な解体はできない。皆の見本とならないといけないのだから、厳しいかもしれないけど、サーニャさんの言葉は正しい。

「速度より、丁寧さ。ギルド職員はちゃんと教育をされているってことですね。それでは、次、14位、……。15位、……。16位、……。17位、……」

次々と順位と名前が呼ばれていく。

だけど、フィナの名前はない。

「皆さんが、気になっているのは、解体を20番同時だった4人の順位でしょう。なんと、その4人同時に終えた中に、18位になった人がいます。それは、フィナちゃんです!」

「お姉ちゃんだ!」

「やった!」

シュリ、シアが席を立って喜ぶ。

周りからも驚きの声が上がる。

「4人の中で一歩抜きん出て、2人を抜いて18位だ。審査員によると、最後のほうは、みんな慌てるように解体をして、雑になっている者が多い中、フィナちゃんは最後まで丁寧に解体をしていたそうです。そして、19位には20番に同時に手を挙げた、ドリー君。そして、20位も同じく同時に手を挙げたルリラナさんだ! もう一人のロート君は僅差の21位でした。ちなみに18番、19番に終えた、ガイ君とファット君は雑な解体になって、4人に抜かれることになり、22位、23位で敗退となります。お二人とも、何か言いたいことはありますか?」

二人は首を横に振る。

どうやら、発表される前に説明を受けていて、納得しているようだ。

採点後に騒がれるより、前もって、点数の低さを納得していれば騒ぐこともない。

これも、長年やってきた経験からなのかな。

「皆が、解体を終えていくから、焦ったのね。でも、最後まで丁寧に解体をした4人は素晴らしいと思うわ。特に、21位だったロートは残念だったけど、今の気持ちを忘れずに、今後も頑張ってほしいわ」

「ギルドマスターから、お褒めの言葉がでました。ロート君、恥ずかしがっているぞ。ギルドマスターは綺麗で美人だけど、君のお婆ちゃん以上の年齢だということを忘れずに!」

進行役の男性の言葉に会場から、笑いが起こる。

「ユナ姉ちゃん。サーニャ姉ちゃんから、また黒いものが」

シュリはサーニャさんを指差す。

「見ちゃダメだよ」

わたしはそっと、シュリの視線をサーニャさんから外す。

あの進行役の男性、生きて会場を出られるといいな。

考えるよりも先に、言葉が出るタイプなのかもしれない。

翌日、行方不明になったりしないことを祈るばかりだ。

「それでは、三回戦を突破しました皆様、残りは四回戦と最終戦を残すのみとなりました。ぜひ、最終戦に残れるように頑張ってください。それでは、四回戦の準備に入りますので、短いですが、休憩を取ってください」

進行役の男性の言葉で動きだす。解体されたゲーターも係員によって片付けられていく。

フィナはいつもどおりにサーニャさんと一緒に戻ってくる。

サーニャさんから、黒いモヤは消えている。

よかった。

でも、あれはわたしとシュリしか見えていないのかな?

謎だ。

「フィナ、お疲れ様」

「お姉ちゃん、凄い」

ティルミナさんはうれしそうに声をかけ、シュリはフィナに抱きつく。

「フィナ、ゲーターなんて解体できたんだね。一度も頼んだことがなかったから、ゲーターが出たとき、解体はできないと思ったよ」

「冒険者ギルドで仕事をさせてもらっていたとき、ゲーターの解体をするところを見たり、二度ほど、解体をしたことがあったから」

「二回? たったそれだけなの?」

フィナの言葉に全員驚く。

剣の扱い、魔法の扱い、料理を作る。剣を作る。なんでもそうだけど、回数を重ねて、人は上達する。回数が少なくて、上手にできるのは天才だ。わたしだって、ゲームの中で、何度も剣を振ったし、魔法を使って覚えていった。

そして、今のわたしがある。

「観察力や物覚えが凄いってことね」

エレローラさんが感心しながら言う。

確かに、観察することは大切なことだ。魔物や剣士、魔法使いなどの相手と戦うことでも言えることだ。相手のことをよく見て次にくる行動パターンを予測したりすれば、勝つ確率も上がる。

ゲームでも、何度も同じ攻撃を受けるプレイヤーがいたけど、ちゃんと相手を見ているのか疑問に思うことがあった。

「そんなことはないです。わたし、物覚えは悪い方です。だから、教わったことを紙に書いたりして、寝る前に見たりして、一生懸命に覚えたんです」

フィナはエレローラさんの言葉を否定する。

誰かが、努力ができるのも才能だと言っていた。その言葉はフィナのためにあるような言葉だと思う。

「それに、解体ができなかったら、お仕事がもらえなかったから」

わたしと出会う前のフィナは、たまにゲンツさんの伝でギルドの解体の仕事をさせてもらっていた。

できなかったら、仕事がもらえなかったかもしれない。

どの仕事でもそうだけど、仕事ができない者には頼まない。これがギルド職員なら教育があったかもしれない。でも、フィナはギルド職員ではない。

使えないと判断されたら、ゲンツさんの伝でも、仕事をもらえなかったかもしれない。

それだけ、フィナは頑張ってきたってことだ。

わたしは、フィナの頭の上に、優しくクマさんパペットを置いて、撫でる。

「うちのギルド職員でも、物覚えが悪いのはいるのよ。フィナちゃんを見習ってほしいわ」

「つまりフィナちゃんの勤勉さが、今回の結果となったわけね」

「わたしの自慢の娘ね」

「自慢のお姉ちゃん」

「わたしの自慢のパートナーだね」

「うぅ」

フィナはみんなに褒められて、顔を真っ赤にする。

「うぅ、娘自慢で負けそう。でも、フィナちゃんは、立派だし」

「別に競うこともないし、フィナもノアもシアも自慢の娘でいいと思うよ」

「そうね。優劣なんて付ける必要はないわね」

「それに、それぞれ自慢するところも違うし」

「ユナちゃん、大人の考えするわね。シアと同い年とは思えないわね」

「お母様、ユナさんと比べないでください。ユナさんに勝てることなんて、ないんだから」

「そんなことはないよ。わたしと違って、シアは性格がいいし、美人だし、人当たりもいいし」

「うぅ、ユナさん。それは嫌味ですか。ユナさんのほうが綺麗で美人だし、困っている人を見つければ、人助けをするし。どんな危険なことでも、逃げずに戦って守る。そんな善人なユナさんに、自分より性格が良いと言われても」

「わたしが綺麗? 美人? 善人? 性格が良い? それって、笑うところ?」

綺麗で美人なら、モテているし、悪人とは言わないけど、善人ではない。性格なんて、自分で言うのもあれだけど、ねじ曲がっていると思う。

「わたし、自分勝手で、我が儘で、自分の思い通りに行動する。他人の迷惑なんて気にしない。面倒くさい仕事は他人に押し付ける。やりたくないことは絶対にしない性格だよ」

あらためて思っても、性格が悪い。

まあ、元引きこもりゲーマーに、善人を求められても困るけど。

でも、わたしの言葉に、みんなは呆れた表情をしている。

いや、ティルミナさんだけは「確かに」と小さい声で言っているのが聞こえた。

なんだろう。納得されるのも、なんとも言えない気持ちになる。