軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

599 クマさん、ミアから話を聞く

「話を聞く前に、一ついい?」

「なに?」

わたしは気になっていることを尋ねることにする。

「妹さんたちがいるんだよね?」

「可愛い妹が2人いるわよ」

「両親いないんだよね?」

「行方不明よ」

「それじゃ、妹さんたちは……」

わたしは元の世界にいた自分のことを思い返してしまう。

両親は遊び歩き、家にはほとんどいなく、一人で家にいたことを思い出す。

そのおかげで、大概のことは1人でできるようになった。それと同時に引きこもりのゲーマーになったけど。

「ああ、そのこと。妹たちは、お婆ちゃんが面倒を見てくれているから大丈夫よ」

その言葉で安堵する。

家で、寂しくお姉ちゃんを待っていることはなさそうだ。

食事などの心配をしてしまったけど、大丈夫みたいだ。

「でも、そんなに裕福じゃないし、両親はどこかで倒れているかもしれないし。わたしが妹たちのために頑張らないと」

「ミアお姉ちゃんは、お母さんとお父さんに会えなくて、寂しくないの?」

フィナが少し、思いつめた感じに尋ねる。

もしかして、昔の自分と重ねているのかもしれない。

フィナも父親がいなかったからね。

「小さいときからいなかったからね。だから、わたしを育ててくれたのはお婆ちゃんなのよ。お婆ちゃんも歳だし、お金持ちになって、楽をさせてあげたいのよ」

バカな子かと思ったけど、優しい子だった。

「だから、それにはお金よ!」

ミアはパンを持った拳を突き上げる。

そして、拳を下げるとパンを食べ始める。

「それで、キャロルはどうして、ミアと?」

「キャロルは優しいから、わたしに付いてきてくれたのよ」

「違うよ。どんくさいわたしを、いつも守ってくれたのはミアちゃんでしょう。だから、わたしはミアちゃんの力になりたいの」

「わたしは、イジメは嫌いなだけよ」

どうりで、ミアがナイフ一本でキャロルを守ろうとしたわけか。

「お主たちの目的は分かった。まず、お主たちはどうやって、ここの場所を知ったのじゃ?」

「それは、お爺ちゃんの部屋を掃除していたら、ここのことが書かれているメモを見つけたのよ」

「お爺ちゃん?」

「わたしのお爺ちゃんも冒険家だったのよ」

「つまり、代々冒険家一家ってことか」

「そうよ」

ミアは、ない胸を自慢げに張りながら言う。

「その割には貧乏らしいが」

「うぅ、それは……」

カガリさんの言葉に項垂れるミア。

「ともかく、冒険家だったお爺ちゃんの部屋に売れるものがないか、部屋の掃除をしていたら、ここのことが書かれていたメモを見つけたのよ」

「売れる物がないかって」

「仕方ないでしょう。貧乏なんだから。もしかしたら、お宝が眠っているかもしれないでしょう?」

「確認じゃが、お主の祖父は?」

「数年前に亡くなったわよ」

「すまない」

「気にしなくてもいいわよ。もう、わたしは子供じゃないんだから」

高校生ぐらいな年齢なら微妙なところだ。

でも、自立しているし、同じぐらいの年齢のわたしも、子供と言われると、微妙な気分になる。

「じゃが、ここのことが書かれていたメモがあったってことは、お主の祖父がお宝を見つけた可能性もあるのでは?」

「それは、絶対にないわ」

ミアは力強く言う。

「なぜ、言い切れる?」

「もし、お爺ちゃんがお宝を見つけていたら、絶対に自慢話をするからよ」

「ミアちゃんのお爺ちゃん、お宝を見つけたときの話を何度もしていたからね」

キャロルが懐かしそうに言う。

「お爺ちゃん、お宝を見つけたときの自慢話を何度もするのよ。だから、ここの話を聞いたことがないから、お爺ちゃんは絶対にお宝を手に入れていないわ」

物凄く納得がいく説明だ。

たまにいるよね。過去の栄光を、会うたびに自慢気に何度も言う人。

わたしの親戚にも、会うたびに会社の成功談を何度も話す人がいた。

もう、耳にタコができるほど聞いたよ、と言いたくなる。

「それじゃ、他の者に取られている可能性は?」

「そんなこと、駆け出しの冒険家のわたしが、知るわけがないでしょう」

だから、自慢げに言わないで。

「でも、ミアお姉ちゃんのお爺ちゃんも見つけられなかったってことは、ないってことなのかな?」

フィナが核心をつく。

「でも、あの動く護衛騎士? みなさんは甲冑騎士と呼んでいるんでしたっけ」

「どちらでもいいよ」

「えっと、その甲冑騎士が動いているってことは、何かを守らせていると思うんです。だから、お宝はあると思います」

キャロルがお宝がある可能性を示す。

「たしかに、そうじゃのう。あれは怪しいと妾のカンも言っておる。何かを守っている可能性があるのう」

「すでにお宝を取られているのを知らないで、守っている可能性も」

「……」

「……」

「……」

「……」

わたしの言葉に静まり返る。

「その可能性も否定はできんが、それを言ったらお宝探しはできんぞ」

「それに、ここまで来たんだから、諦めるわけにはいかないわ」

「きっと、何かがあるはずです」

まあ、わたしとしても、このまま帰るつもりはない。

それに、このまま帰ったら気になってしまう。お宝があるにしろ、ないにしろ、確認ぐらいはしたい。

だから、皆と同じようにお宝探しはするつもりだ。

「それで、あの甲冑騎士について知っていることは?」

「先ほども話しましたが、動く甲冑騎士と動かない甲冑騎士があり、動く甲冑騎士は行動範囲が決まっています。その範囲外に出ると襲われないです」

キャロルが説明してくれる。

「その範囲内に入ると襲われるの?」

「近くまで近づかないと動かないみたいです」

「だから、離れた位置からだと、動く甲冑騎士と、動かない甲冑騎士の区別がつかないから困るのよ」

確かにそれは厄介だ。

でも、対応策ならある。

「それなら、全部壊せばいいだけだね」

「……」

わたしの案に皆が呆れるようにわたしを見る。

「まあ、確かにユナの言うとおりじゃな。動く動かない、関係なく、破壊すれば、危険はなかろう」

「うぅ、たしかに、簡単に甲冑騎士を倒すことができるユナならできるかも」

甲冑騎士については、見つけたら、動くにしろ動かないにしろ壊す方向で、意見が纏まる。

「そういえば、お主が見つけたお爺さんのメモには、ここについては何も書かれていなかったのか?」

カガリさんの質問にミアとキャロルは困ったような表情をする。

「なんじゃ、話せないことなのか?」

「そうじゃないけど。読めないよ」

「読めない?」

「お爺ちゃんの字が汚くて、ここの場所を知るのが精一杯だったのよ」

「見せてみろ」

「読めるなら、読んでみなさいよ」

ミアは薄汚れた紙をカガリさんに差し出す。

紙を受け取ったカガリさんは紙を見る。フィナも興味があるのか、横から覗き込む。

「なんじゃ、これは?」

「読めないです」

「でしょう。お爺ちゃん、昔から字が汚くて読めなかったのよ。自分さえ読めればいいって。ここの場所は地図が描いてあったから、どうにか分かったけど。それでも、町の名前を読むだけでも苦労したのよ」

わたしは読むのを諦めたカガリさんから、紙を受け取る。

うぅ、たしかに、汚い。

でも、読めなくはなさそうだ。

『わたしはついにヘシュラーグの町を見つけた』

「ちょ、あなた読めるの?」

異世界言語のスキルのおかげか、普通に日本語で読むことができる。ちゃんと、文字として認識しているみたいだ。ただ、字が汚いところまで、表現されている。

でも、日本語に変換されているためか、どうにか読むことができる。

「えっと、どうにか?」

わたしは曖昧に答え、続きを読むことにする。

『どうにか、ヘシュラーグの町を見つけることができた。すぐに探索を開始したが、町の中では魔道具が使えないことが判明した。これは探索が大変なことになりそうだ』

「魔道具が使えないことが書かれていたのね」

『とりあえず、町の中を探索する。だが、建物は崩れ、めぼしいものは何もない。でも、ここまで来たのに、何も得ずに帰ることはできない。初孫が近々生まれる。孫のために見つけたい』

「孫って、もしかしてわたし?」

「親戚に従姉や従兄がいなければ、そうなるんじゃ」

「わたしが知る限り、いないと思う」

『とある場所には甲冑騎士がいる。怪しい。きっと、この先に何かあるはずだ。だが、近づくと甲冑騎士が襲ってくる。戦う手段を持たないわたしには、逃げることしかできない』

「お爺ちゃん、わたしと同じで戦えないから」

「いや、戦うことができないのに、無事に帰ってきているなら、凄いことじゃと思うぞ」

「そうだね。ユナがいなかったら、わたし死んでいたかもしれないんだよね」

ミアはしみじみと言う。

わたしは続きを読むことにする。

『甲冑騎士は決まった場所に集まっていることが分かった。一つは大きな建物』

「ミアたちが襲われた場所だね」

「残りはどこじゃ?」

「それなら、分かるよ。地図があったから」

ミアの言う通りに簡単だけど、町の地図が描かれ、地図の上に〇が書かれ、甲冑と書かれていた。

「それ、甲冑って書いてあったのね。とりあえず、〇が書いてあったから、行ってみたら、甲冑騎士がいたのよ」

どうやら、甲冑騎士と書かれていた文字も読めなかったらしい。

「そこには、何かあった?」

ミアは首を横に振る。

「詳しくは調べていないわ。それに、大した建物じゃなかったし。それに、なにかあるなら、ユナたちに助けてもらった建物のほうがありそうでしょう?」

「たしかに、あの建物が怪しいが、その場所に甲冑騎士がおるのは怪しいのう。甲冑騎士を置くには理由があるはずじゃ」

「お爺ちゃんの紙には、なにか書いていないの?」

わたしは紙を見る。

『もう、無理だ。危険だ。諦める。孫の顔を見る前に死ぬことはできない。息子に言えば、行くだろう。だが、息子もわたし同様に甲冑騎士をどうにかすることはできないだろう。子供も生まれる。危険なことはさせたくはない。だから、教えるつもりはない。ここの場所は墓の中まで持っていく』

「お爺ちゃん……」

本当に墓の中まで持っていっちゃったよ。

でも、甲冑騎士のことを考えると、息子さんにも教えにくかったのかもしれない。

「お爺ちゃんの気持ちに関係なく、お父さんとお母さんは家に帰らずにどこかに行ってるよ」

「……ミアちゃん」

「大丈夫よ。ユナ、読んでくれてありがとう。少しだけど、お爺ちゃんのことが分かって、嬉しかった」

ミアは紙を受け取ると嬉しそうにする。

少しは役に立てたようでよかった。