軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

598 クマさん、町の外にでる

わたしたちは、ミアたちの話を聞きながら、町の壁の近くまでやってくる。わたしたちが入ってきた崩れた壁とは逆方向の位置になる。

壁の周囲は建物もなく、木が生えている。周囲を見ながら歩いているとフィナが声をあげる。

「馬さんです」

フィナの視線の先に、一頭の馬が木にロープを掛けられていた。

ミアは馬に近づくと首を優しく撫でる。

「ただいま」

ミアに撫でられた馬は嬉しそうにする。

「馬が入ってこられる場所があるの?」

「すぐそこに、穴があるわよ。外に出ましょう」

ミアは馬を連れて歩き出すので、わたしたちも付いていく。

確かにミアが言う通りに、くまゆるとくまきゅうがどうにか通れるほどの穴が壁に空いていた。

「こんなところに穴があったのじゃな」

反対側にあったので、カガリさんが確認した場所からでは見えなかったんだと思う。

「あなたたちは、どこから入ってきたの?」

「反対側の壁が崩れた場所からだよ」

「ああ、あったわね。わたしたちも入ろうと思ったけど、この子を壁の外に置いていくのは可哀想だったから、他の場所から入れる場所を探したのよ」

ミアは優しい目で馬を見る。

「壁際を歩いていたら、この穴を見つけたんです」

ミアの言葉にキャロルが説明を付け足す。

わたしたちは穴を通る。くまゆるとくまきゅうもギリギリ通ることができた。

壁の穴を通り抜けた、わたしたちは、魔道具が使える場所まで移動する。

「どこまで行くの?」

「この先に川があるわ。そこで休む予定」

ミアの言う通りに、少し歩くと川が流れていた。

ミアは馬に水を飲ませ、アイテム袋から馬の餌を出す。

「それじゃ、わたしたちも食事にしましょう」

ミアとキャロルはアイテム袋から、食べ物らしきものを出す。干し肉と固そうなパンだ。

遠出をするなら仕方ないのかな。

「それじゃ、わたしたちも食べようか」

わたしはフィナとカガリさんに手を洗うように言い、その間に地面にシートを敷き、パンに温かいスープ、それから果物を並べる。

それを見たミアとキャロルが驚いている。

「美味しそうね」

ミアが物凄く、食べたそうにパンを見ている。

「えっと、2人も食べる?」

流石に、2人が固そうなパンを食べている中、自分たちだけ美味しいモリンさんのパンを食べるのは気が引けるので、尋ねる。

「いいの!?」

ミアが満面の笑みを浮かべる。

でも、すぐに疑うような表情に変わる。

「あとで、請求とか」

疑い深いな。

でも、人を騙す人もいるので、会ったばかりの相手には、そのぐらい慎重であってもいいかもしれない。

まして、相手はクマだし。

「しないよ」

わたしは2人が食べる分もあるから大丈夫なことを示すために、シートの上に新しくパンを並べる。

「フィナとカガリさんも食べて」

「それじゃ、いただくとするかのう」

「はい」

カガリさんとフィナはシートの上に座ると、パンを手にすると食べ始める。それを見た、ミアとキャロルもシートに座る。

「本当に食べても、いいのよね?」

「たくさんあるから、お腹いっぱいに食べていいよ」

「それじゃ、いただきます」

ミアとキャロルは、パンを手にして、口に入れる。

「なに、このパン、美味しい」

それは、そうだ。モリンさんが作ったパンだ。

自分が褒められているようで、嬉しい。

飲み物もコップに注いであげる。

「果物もいい?」

「好きなものを自由に食べていいよ」

ミアとキャロルはお礼を言うと、本当に美味しそうに食べていく。

「ユナ。おにぎりはないのか?」

カガリさんがシートの上に並んでいる食べ物を見て尋ねる。

どうやら、カガリさんはパンより、おにぎりが食べたいらしい。

「あるよ」

わたしはカガリさんにおにぎりを出してあげる。

「妾はこっちがいいのう」

カガリさんは美味しそうにおにぎりを食べる。

「なに、それ! わたしにもちょうだい」

カガリさんが美味しそうに食べるおにぎりを見て、ミアがおにぎりを手にする。

「あっ、待って」

わたしの制止の声も間に合わず、ミアはおにぎりを口の中に入れる。

ミアの表情が変わる。

わたしは水が入ったコップを差し出すと、ミアは一気に飲み干す。

「す、すっぱい!」

「だから、待ってって、言ったのに。このおにぎりの中には梅干しっていって、酸っぱいものが入っているんだよ」

「こんなの食べられないわよ」

「そんなことはないよ。カガリさんとわたしには美味しいものだよ」

わたしは証明するために、梅干し入りのおにぎりを食べる。

うん、酸っぱくて美味しい。

でも、食べ慣れていない人には無理みたいだ。フィナも梅干しは苦手だ。

「こっちは、美味しいと思うよ」

味付けがしている肉や、炊き込みご飯で作ったおにぎりだ。

ミアは恐る恐る手にして口に運ぶ。

「確かに、こっちは美味しい」

「フィナもおにぎり食べる?」

フィナが楽しそうに見ていたので、おにぎりを差し出す。

「はい。食べます」

わたしは、おにぎりを食べながら、ミアたちに尋ねる。

「ミアたちは、ここには長いの?」

「ここに来たのは三日前よ」

この日数を短いか長いか判断に困るところだ。

「それで、いろいろと調べていたら、今日あなたたちを見かけたわけ」

「ユナさんでしたよね。近くに村とかあるんですか?」

キャロルが遠慮がちに尋ねてくる。

「……」

わたしは返答に困り、フィナとカガリさんに目を向ける。

「妾たちの村は人知れずにある隠れ里じゃ、教えることはできぬ」

わたしが返答に困っていると、カガリさんが代わりに答えてくれる。

「そうなんですね。実は、食料のことを考えると、あまり長くいることができそうもないんです。それで、ユナさんたちの村が近くにあれば、食料を調達できればと思ったんですが」

キャロルは残念そうにする。

村はカガリさんの噓だから、食事調達はできないんだよ。

少し、後ろめたい気持ちになる。

「お主たちこそ、どこから来たのじゃ?」

「ここから、南に行ったガレッタの街よ」

「「「……」」」

尋ねたのはいいものの、知らない街の名前で反応ができない。

「もしかして、知らないの? どんだけ辺境の村に住んでいるのよ」

ミアは呆れるように言う。

「ミアちゃん、そんな言い方はダメだよ。人によっては村から出たこともない人だっているよ。わたしたちの知り合いだって、自分たちの街から出たことがない人だっているんだから」

「そうだけど、名前ぐらい知っていてもいいんじゃない?」

「すまぬのう。見てのとおり、まだ幼いのでのう」

カガリさんが逃げた。

「あなた、さっき、年上とか言っていなかった?」

「聞き間違いじゃろう」

「まあ、子供が知らないのは仕方ないわね。でも、あなたぐらいなら、知っていてもいいんじゃない? 冒険者なんでしょう」

わたしに飛び火してきた。

流石に知らないとは言えないので、曖昧に頷く。

「ああ、うん、知っているよ。ガレッタね。それよりも、一緒に行動することになったんだから、情報を共有しましょう」

これ以上、街のことを尋ねられても困るので、秘技、話逸らしを発動する。

「わたしたちが一方的に話すことになりそうなんだけど。話を聞いたら、わたしたちが用済みってことになることは」

「どうすれば、信用してくれるのじゃ?」

「そうね。それじゃ、食料を分けてくれると助かるわ。村を教えてくれないなら、そのぐらいいいでしょう?」

「それで、いいならいいけど。パンでいい?」

「ええ、それでいいわ」

わたしは大量に持っているパンの一部を取り出す。

「こんなにいいの?」

「まだ、たくさんあるから大丈夫だよ。ウルフの肉や鳥の肉もあるから、渡してあげようか? 冷凍してあるから、解凍して焼けば食べられるよ」

「そんなの溶けちゃうでしょう」

わたしはクーラーボックスを取り出す。

「この中に入れておけば、大丈夫だよ」

中は氷の魔石が付いている。まあ、簡単に言えば、小型の冷凍庫みたいなものだ。

「これもあげるから。あっ、アイテム袋に入る? 入らないなら、アイテム袋をあげようか?」

「ちょ、ちょっと待って」

わたしがクマボックスに入っているアイテム袋を出そうとすると、ミアが止める。

「なに?」

「そんなに、もらえないわよ」

「別に気にしないでいいよ。使っていないものだし、今のわたしには不要なものだし。まだ、在庫はあるし。必要になれば、作ればいいだけだし」

「……」

「えっと、あなたは何者?」

「冒険者だよ」

わたしの返答がダメだったのか、ミアとキャロルはカガリさんとフィナを見る。

「こ奴は、非常識の塊じゃ、気にしても仕方ないぞ」

「ユナお姉ちゃんは、凄い人だから」

ミアとキャロルは顔を見合わせる。

「パンだけでいいわ。そこまでしてもらったら、寝ているときや、後ろから、奪い返されそうで怖いわ」

「そんなことしないよ」

「そんな気持ちになるってことよ」

「ミアちゃん、そんなに優しくしてもらったことがないから」

「いや、今日、会ったばかりの人に、そんなに親切にしてもらったら疑うでしょう? もし、ユナが男だったら、絶対にわたしの体目当てだと思うわよ」

男の優しさには理由があるって、話を聞いたことがある。

ゲンツさんだって、ティルミナさんのことが好きだったから、フィナを見守っていたわけだし。

「もしかして、ユナ。男とか?」

「女よ!」

いくら、胸がないからといって、男ではない。それに、胸はクマの着ぐるみのせいで、大きさの判断はできない。

「だって、行動が男前だし、可愛い格好した男の子って可能性もあるかなと思って」

「そんな可能性は0だよ。これ以上、変なことを言うと、食料をあげないよ。わたしが欲しいのは、情報とミアとキャロルの信用よ」

「ユナ、セリフが臭いぞ」

「自分で言っていて、そう思ったよ。それで、どうする?」

「分かった。これ以上疑うのはやめる。どっちにしても、ユナに襲われたら、わたしとキャロルじゃ勝てないし。それなら、信じるしかないからね」

取引成立だ。

ミアとキャロルはパンを布袋に入れてアイテム袋に仕舞う。