軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

596 クマさん、三度目助ける

「それじゃ、わたしたちは行くわよ。その、助けてくれて、ありがとう」

「こっちも情報ありがとうね」

ミアは歩き出すと振り返る。

「あっ、そうだ。この場所については広めないでもらえると助かるわ」

「言わないよ」

そもそも、言う相手がいない。

それに知り合いに話したとしても、ここがどこにあるのか分からないから来ることができない。

「約束だからね。キャロル、今度は慎重に行くわよ」

「うん、本当にありがとうございました」

キャロルはわたしたちに頭を下げると、歩き出すミアを追いかけていく。

「それでは、妾たちも行くか」

「目指すは、甲冑騎士がいる場所だね」

「そうじゃのう。魔道具を作る技術者が甲冑騎士を作ったなら、お宝を守らせてる可能性もあるからのう」

わたしとカガリさんが盛り上がる中、フィナだけが静かだ。

「フィナ、どうしたの?」

「動く鎧とかあるし、わたし、一緒にいていいのかなと思って? わたし、ユナお姉ちゃんみたいに、強くないし。カガリお姉ちゃんみたいに、空を飛べないし。一緒にいたら、迷惑かなと思って」

静かだと思ったら、そんなことを考えていたんだね。

「そうだね。ちょっと危ないかも」

「それじゃ」

フィナが少しだけ寂しそうな表情をする。

確かにフィナの言う通りに危険があるかもしれない。

でも、ここでフィナ1人だけ帰して、カガリさんと宝探しを楽しむのは気が引ける。

わたしは、フィナに近づき、クマさんパペットをフィナの頭の上に乗せる。

「でも、あの甲冑騎士なら、簡単に倒せるから、大丈夫だよ。わたしが守ってあげるから。それに、ここまで一緒に来たんだから、一緒にお宝探しをしよう」

「……ユナお姉ちゃん」

「まあ、妾も守ってやるから安心せよ」

「「くぅ〜ん」」

「くまゆるとくまきゅうも守ってくれるって」

「……カガリお姉ちゃん、くまゆる、くまきゅう。ありがとう」

フィナは嬉しそうに微笑む。

それに帰るなら、みんな一緒だ。

「それじゃ、改めて、妾たちも出発するかのう」

「どこから探すの?」

「どの辺りに甲冑騎士があるか、小娘たちに聞いておけばよかったのう」

「流石に聞いても、教えてくれないと思うよ」

ミアたちも甲冑騎士がある場所にはお宝があると考えている。甲冑騎士を倒すことができるわたしたちに教えてくれるとは思えない。その情報こそが、ミアたちのアドバンテージだ。

「小娘たちの後をつけるのもなんじゃし、どうするかのう?」

「とりあえず、同じ方向に行ってみて、分かれ道があったら、別方向に行けばいいんじゃないかな?」

「そうするか」

他に案もなかったので、わたしたちは距離をとりながら、2人の後をつけることにした。

「それにしても、この町が廃墟になった理由を、あやつたちも知らぬとは思わなかったわ」

「まあ、キャロルが言うには、一般人はこの町については知らないっぽいし、あまり、有名じゃなかったんじゃない?」

「そうかもしれぬのう。じゃが、甲冑騎士まで置いて、何を守らせておるんじゃろうな」

「まあ、あったとしても、昔に作られた魔道具だから、あまり、大した物じゃないかもよ」

歴史的に価値があっても、魔道具の性能的には使えないってこともありえる。

昔の茶器や有名人が使ったものと同様で、価値があったとしても、わたしのような現実主義者にとっては価値が無いに等しい。そんなものなら、個人的には不要だ。

まして、異世界の偉人なんて誰一人知らないし。

「その可能性はあるのう。まあ、別に妾はお金が欲しいわけじゃない。宝探しを楽しむだけじゃ」

それには同意だ。

「じゃが、そう考えると、あの動く甲冑騎士のほうが価値があるかもしれぬのう」

「持って帰っても、襲ってくるだけだよ」

「家の玄関に置いて、守らせるのも良いかと思ったんじゃが。サクラが来たときに襲いかかりでもしたら大変じゃから、諦めるしかないのう」

カガリさんは少し残念そうにする。

そんな会話をしながら、わたしたちは、ミアたちに気付かれないようにしながら、後を追う。

意外と建物の中は入り組んでいる。しかも、どこも似たような構造になっているので、どこも同じように見える。

くまゆるとくまきゅうが角を曲がると、「うわっ」とフィナが叫び声をあげる。

「どうしたの!?」

「さっきの鎧が!」

角を曲がった先に甲冑騎士が立っていた。

「動かないみたいじゃのう」

「それに、あの2人が先に通っているから、大丈夫だよ」

「じゃが、これがいきなり動くかもしれぬと思うと、少し驚くのう」

「でも、動かないところを見ると、ミアたちが言っていたのは本当みたいだね」

稀に動く甲冑騎士がいるのには気をつけよう。

甲冑騎士はくまゆるとくまきゅうでも分からないみたいだし。

「それじゃ、この先に何かがあるのかのう? ほれ、クマたち、2人のあとを追いかけるぞ」

「「くぅ〜ん」」

カガリさんの号令で、歩みを止めていたくまゆるとくまきゅうは歩き出す。

「部屋があるけど、見ないの?」

通り過ぎる部屋を見て、フィナが尋ねる。

「あの2人が見なかったってことは、なにもないんじゃないかな?」

「もしくは、調べ終わっている可能性もあるのう」

とりあえず、ミアたちの後をついていくことにする。

先に進むと、聞き慣れたガシャンという音がした。

「ユナお姉ちゃん!?」

ガシャ、ガシャ、と鉄が動くような音が大きくなる。それと同じように、ミアたちの声も聞こえてくる。

「ミアちゃんのバカ〜」

「叫んでいないで、走りなさい!」

「走っているよ〜」

どうやら、また甲冑騎士に追いかけられているみたいだ。

見捨てるわけにはいかないよね。

「はぁ、ちょっと行ってくるね」

「フィナのことは任せておけ」

「くまゆるとくまきゅうもお願いね」

「「くぅ〜ん」」

みんなを残して先に進むと、ミアとキャロルがわたしのほうへ走ってくる姿がある。その後ろには2体の甲冑騎士が2人を追いかけるように走っている。

「きゃ!」

キャロルが転んだ。

「キャロル!」

「ミアちゃん、逃げて」

「そんなことできるわけがないでしょう!」

ミアがキャロルの前に立ち、長めのナイフを取り出して、甲冑騎士からキャロルを守ろうとする。

勇気と無謀は違う。

「早く立ち上がって、走って!」

「ミアちゃん!」

「こっちよ!」

ミアは甲冑騎士を引き付けようと声をあげる。

甲冑騎士1体は引き付けることができたが、もう1体がキャロルを襲う。

わたしは加速し、キャロルの前に立つ。

そして、左右のクマさんパペットに魔力を集め、魔力を電撃へと変化させ、甲冑騎士に触れる。

クマさんパペットが触れた甲冑騎士は崩れ落ちる。

わたしは、その足で、ミアのところにいる甲冑騎士にも電撃を纏っているクマさんパペットで触れる。

ミアの前にいた甲冑騎士も、何もできずに崩れ落ちていく。

狭い建物の中じゃ大技は使えないから、小技が効く電撃魔法は便利だ。

アイアンゴーレム対策で覚えた電撃魔法様々だ。

「大丈夫?」

呆けているミアに声をかける。

ミアはわたしと崩れた甲冑騎士を見ている。

「あ、ありがとう」

ミアが我に返り、お礼を言う。

「本当に、本当にありがとうございます」

キャロルも立ち上がって、反復運動をするかのように、何度も何度も頭を下げる。

「でも、なんであなたがここにいるの?」

「偶然、近くにいたら、音が聞こえたから助けに来たんだよ」

嘘です。

流石に後をつけていたとは言えない。

まあ、そのおかげで助かったんだから、いいよね。

「それで、ミアがまたなにかしたの?」

秘技、話逸らしをする。

「そうなんです。わたしはダメって言ったのに、魔石に触れて」

キャロルが頬を膨らませて怒る。

「触れてみないと、どうなるか分からないでしょう」

「そうだけど。でも、もう少し、調べてからでも」

どうやら、何かの魔石に触れたことで、甲冑騎士が動き出したみたいだ。

「小娘たちは大丈夫か?」

後ろから、くまきゅうに乗ったカガリさんとフィナがやってくる。

「幼女に小娘とか言われた」

まあ、その気持ちは分かる。

カガリさんが、うん百年生きて、自分たちより年上とは思わないだろう。

「小娘呼ばわりをやめてほしかったら、もう少し実力をつけるんじゃな。そもそも、お主たちの実力では、この廃墟探索は危険じゃから帰ったほうがいいと思うぞ。せめて、冒険家とはいえ、自分の身を守れる程度の実力を付けなければ危険じゃ。もっと、お主たちの実力にあった場所を探索をすることを勧めるぞ」

「わたしに力がないことは分かっているわ。でも、お金が必要なのよ」

「お金、お金と言うが、命は大切にしないとダメじゃぞ」

お金がいくらあっても死んでは意味がない。

生きていても怪我でもしたら、一生ベッドの上の生活だってありえる。

カガリさんがミアに諭しているとキャロルが口を開く。

「ミアちゃんには、幼い妹たちがいるから」

「両親は?」

「えっと、それは」

「行方不明よ。だから、長女であるわたしが頑張って、お金を稼がないといけないのよ」

「……」

「同情なんていらないんだから、立派な冒険家になって、お金をいっぱい稼いで、妹たちを幸せにするんだから」

「でも、ミアちゃん。これ以上進むのは危険だよ。ユナさんが助けてくれなかったら、危なかったんだよ」

「でも、この先にお宝が」

「だけど、ミアちゃんになにかあったら、マリンちゃんとシオンちゃんが悲しむんだよ」

「……でも、進まないと」

フィナと出会ってから、この手の話に弱い。

頑張っている子は嫌いじゃない。

それに、真面目にお宝探しをしていたミアたちと比べ、わたしたちは、お遊び気分でお宝探しをしていたことに引け目を感じてしまう。

「……ユナお姉ちゃん」

フィナがどうするの? って感じにわたしを見てくる。

カガリさんは、「お主に任せる」的な表情で視線を送ってくる。

わたしは小さくため息を吐く。

「それなら、わたしたちが一緒に行ってあげるよ」

わたしの言葉にフィナは嬉しそうにし、カガリさんが小さく頷く。