軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

585 クマさん、フィナにプレゼントする 和の国編 その1

「お爺ちゃん、探していた物ってあったの?」

タオルで髪を拭きながらルイミンがムムルートさんに尋ねる。

「ああ、あった」

「なんだったの?」

「シアンとクアトからの手紙じゃよ」

ムムルートさんは手紙の束を見せてくれる。

かなりの数がある。もしかすると、ムムルートさんと別れてから、何通も書いていたのかもしれない。

「お爺ちゃんの昔のお友達からの手紙なんだね。でも、もういないんだよね? 悲しいね」

「返事は書けないが、読むことはできる。それが今、生きているわしができることじゃからのう」

それが、悲しいことなのか、嬉しいことなのかは、本人にしか分からないと思う。

でも、今回のシアンさんとクアトさんの手紙は、ムムルートさんの顔を見れば、嬉しかったことが分かる。

階段から上がってきてから、ムムルートさんは満面の笑みを浮かべている。

「手紙って、遠くの未来に届くんですね」

ムムルートさんとルイミンの話を聞いていたフィナが思いふけた表情で言う。

「そうだね。一方通行だけど、生きていれば相手に届くと思うよ」

でも、この世には届かない手紙もある。

まして、日本と違って、流通もしっかりしているわけでもない。魔物や盗賊が現れる世界だ。

だから、今回、ムムルートさんがシアンさんたちの手紙を受け取れたことは嬉しいことだ。

そして、無事にムムルートさんの目的を果たしたわたしたちは、カリーナの家に戻ってくる。カリーナは今回の出来事を両親に話す。

「それは本当なの?」

「はい、ムムルート様にいろいろと教えていただきました。これからは、楽にあの部屋に行けます。それから、隠し部屋もあって、ご先祖様がいろいろと仕舞っていたものがありました」

なんでも、リスティルさんのお父さん、カリーナにとってのお爺ちゃんは、カリーナと同じぐらいの年齢のときに両親を亡くし、そのときに水晶板を引き継いだそうだ。

「お爺様やお婆様はいなかったのでしょうか?」

「病気で亡くなったと聞いているわ」

たぶん、そのときに途切れたのではないかと言っていた。

だから、カリーナのお爺ちゃんは、かなり苦労したと言っていたらしい。

子供の頃に両親を亡くし、何も分からない状態でお役目を引き継いだカリーナのお爺ちゃんは凄いと思う。

情報が途切れたとしても、文句は言えない。現状のことを考えると頑張ったと思う。

「そうだったんですね」

カリーナも初めて聞く話らしく、聞き入っていた。

「だから、わたしにお役目を押し付けると、今まで街に引き篭もっていたうっぷんを晴らすために、旅行に行きだしたのよ」

ああ、そんなこと言っていたっけ。

話に聞くと、まだ戻ってきていないらしい。

「お父さん。戻ってきたら、驚くかもしれないわね」

リスティルさんは、想像したのか、笑みを浮かべる。

「ムムルート様に会えなかったことに残念がるかもしれませんね」

「そうね」

リスティルさんは、改めて、ムムルートさんのほうを見る。

「ムムルート様。この度は、ありがとうございました。おかげで、シアン様やご先祖様の想いを引き継ぐことができます」

「いや、本当なら、わしがもっと早く来ていれば、お主たちが苦労しないで済んだ。すまなかった」

そして、リスティルさんたちのほうを見ていたムムルートさんが、わたしに視線を向ける。

「嬢ちゃんが誘ってくれなかったら、わしはこの地を二度と踏むことはなかったと思う。本当に、ありがとう」

いきなり、ムムルートさんがわたしにお礼を言うので、全員の視線がわたしに集まる。

「わたしは、ムムルートさんにお世話になったから、そのお礼だっただけだよ」

「何を言う。あの件でも、わしはお主に感謝している。わしは嬢ちゃんには返しきれないほどの恩を感じている」

「そうですね。わたしたちも、ユナさんには感謝の言葉もありません」

「初めて見たときは、このクマの格好をした嬢ちゃんはなんだ? と思ったのが懐かしい」

「ムムルート様もですか? わたしも国王陛下からの手紙がなければ、追い返していたかもしれません」

「まあ、可愛いクマの格好ですからね」

ムムルートさん、バーリマさん、リスティルさんの言葉に、この場にいる全員がうなずいている。

わたしだって、こんなクマの格好した女の子が強いとは思わないし、国王の使者とも思わない。だから、反論することもできない。

これも、クマ装備にチート能力を与えた神様が悪い。

そして、リスティルさんたちはムムルートさんから詳しい話を聞くことになり、わたしたちはもう一日残ることになった。

フィナたちは、もう一度カルガモに乗ったり、街を歩き、いろいろと堪能した。

ムムルートさんは、一人で思い出の場所に行ったり、リスティルさんやカリーナの話し相手をしていた。

翌朝、わたしたちは家の前でカリーナたちに見送られる。

「本当に、ここでいいのですか?」

「うん、ここでいいよ。今生の別れじゃないし」

クマの転移門があるから、いつでも来られる。

それに、街の外まで見送られたら、クマの転移門が使えない。

「はい。そうですね。それでは、ユナさん、ムムルート様。本当にありがとうございました。ムムルート様のおかげで、いろいろなことを知ることができ、ご先祖様が大切に守ってきたものを手にすることができました」

「これからも苦労があると思うが、シアンたちが作りあげた街を守ってほしい」

「はい、任せてください」

それから、ムムルートさんはバーリマさんとリスティルさんに別れの挨拶をする。

カリーナはフィナ、シュリ、ルイミンと別れを惜しむ。

「フィナちゃん、シュリちゃん、ルイミンさん、会えて嬉しかったです」

「はい、わたしもです」

「うん、わたしも~」

「わたしも、お爺ちゃんの昔の話が聞けて、楽しかったです」

「また、来てくださいね」

「はい」

「うん」

「ユナさんに頼んでみます」

まあ、クマの転移門のことを知っていれば、そうなるよね。

そして、カリーナの家の前で別れると、デゼルトの街にある、わたしの家に帰ってくる。

「それじゃ、和の国に行こうか」

「なんじゃろうな。このなんとも言えない気持ちは」

「はい。カリーナちゃんと別れたしんみりした気持ちと、サクラちゃんに会える嬉しい気持ち。複雑です」

ムムルートさんの言葉にルイミンたちも同様の気持ちなのか、同意している。

普通は帰り道とかで、ゆっくりと別れを受け止め、新しいことをする。

でも、クマの転移門を使えば、一瞬で移動できるんだから、仕方ないよ。

それに、サクラたちに会えば、しんみりした気持ちも変わると思う。

わたしはクマの転移門の前に立ち、和の国に向けてクマの転移門を開く。

扉の先は和の国の温泉付きの大きな家の一室。

扉を開くと、和装の格好をした女の子が立っていた。

「お待ちしていました。ユナ様」

「サクラ?」

「わたしもいるっすよ」

サクラだけではなく、シノブも部屋にいた。

「どうして、ここに?」

「昨日、連絡をもらいましたので、出迎えに来ました」

昨日、いきなり会いに行っても迷惑になると思って、クマフォンを使ってサクラに連絡をしておいた。

でも、時間などは教えていなかったので、出迎えてくれるとは思わなかった。

「大変だったっすよ。いきなり、サクラ様がユナを出迎えに行くって言うっすから」

「ユナ様が来るなら、出迎えは必要です!」

「いや、必要はないよ」

毎回、出迎えられたら、来ることを連絡できなくなる。

「それから、フィナちゃん、シュリちゃんにムムルート様にルイミンさん。お久しぶりです。また会えて嬉しいです」

「うん、わたしもだよ」

「はい」

「うん」

四人は嬉しそうに再会を喜ぶ。

「なんじゃ、騒がしいと思ったら、ムムルートの奴が来たのか?」

わたしたちが久しぶりに再会を楽しんでいると、部屋の入り口から、ぶかぶかの服を着た金髪幼女が現れる。

「カガリ様、ムムルート様が来るので、ちゃんと服を着てくださいとお願いしたはずですが」

やってきたのは、頭にキツネの耳を生やしたカガリさんだった。

「別にいいじゃろう。子供用はキツくていかん」

「大人のときは大人用の服を着ていたから変わらないでしょう」

「お主はうるさいのう。昔は小さくて、あんなに可愛かったのに」

「今はカガリ様のほうが小さいです」

わたしからしたら、二人とも小さくて可愛いよ。

「でも、まだ、元に戻れないんだね」

「いや、戻れるが、疲れるだけじゃ」

カガリさんはそう言うと、幼女だった体が大きくなり、初めて会った大人バージョンのカガリさんになる。

「カガリちゃん、スゴイ」

シュリが目を輝かせながら、カガリさんを見ている。

「おお、そうか、そうか。まあ、妾はスゴイからのう」

「わたしもできる?」

「お主もか? それは無理じゃのう。妾は特別だからできるんじゃよ」

「そうなんだ。残念」

シュリ、そんなに大人になりたかったのかな。

「大人になれば、お母さんのお手伝いがもっとできるのに」

どうやら、ティルミナさんのお手伝いをしたかったみたいだ。

「シュリは十分にティルミナさんのお手伝いをしているよ」

「うん、そうだよ。いつも、お母さん、シュリが手伝ってくれるから喜んでいるよ」

シュリがティルミナさんのお手伝いを一生懸命にしていることは、わたしもフィナも、ティルミナさんも知っている。

「それに、これは大人の姿で長くいると疲れる」

カガリさんはそう言うと、元の幼女に戻ってしまう。

「それって、魔力的に?」

「精神的なものかもしれぬ。それはそうと、お主たちはこれから、サクラと出かけるんじゃよな?」

「そのつもりだけど」

せっかく、和の国に来たんだ。久しぶりに散策するつもりだ。

「ムムルートもか?」

「わしは、久しぶりにお主と話をしようと思った」

「なんじゃ、愛の告白か?」

「違うわ。ちょっと、懐かしいことがあってのう。生きているうちにと思っただけじゃ」

「それなら、ちょうどいい。お主の村でゆっくりと話をするかのう」

カガリさんの言葉に、全員が驚く。