軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

579 クマさん、フィナにプレゼントする デゼルト編 その1

くまゆるとくまきゅうは送還し、わたしはデゼルトの街をイメージしながらクマの転移門の扉を開ける。扉の開いた先は小さな倉庫の中だった。

「せまい」

シュリが呟く。

小さい家だから仕方ない。クマの転移門もぎりぎりだ。

わたしたちは倉庫から居間に移動する。

「この家は?」

「わたしがデゼルトの街で買った家だよ。小さいけど」

といっても、一人暮らしなら十分な広さだ。

それに、クマの転移門を置くためだけに購入した家だ。住むわけではないので、問題はない。

「それじゃ、まずはこの街の領主の家に向かうよ」

デゼルトの街の見学といきたいけど、カリーナとの約束もあるし、早めにムムルートさんを紹介しておきたい。

「クアトとシアンの子孫じゃな」

どのくらいの後の子供か分からないけど、カリーナのご先祖様の名前らしい。

人と長寿のエルフでは寿命が違う。同じ時間を過ごせるのはエルフにとっては短い。ルイミンもフィナとシュリに置いていかれると思うと悲しい気持ちにもなる。

でも、それは仕方ないことだ。

別れが辛いからといって、出会わなければ良かったってことはない。今を楽しみ、未来のことはそのときに考えればいい。止まっては先には進まない。

「フィナたちもいいよね?」

「わたしたちも一緒に行ってもいいんですか?」

「大丈夫だよ。追い出したり、邪険に扱ったりするような人たちじゃないから。それに、フィナと同じぐらいの年齢の女の子もいるから、仲良くなれるんじゃないかな?」

カリーナは平民をバカにするような子ではない。

もし、フィナたちを邪険に扱うようだったら、出ていけばいいだけだ。

わたしたちはドアを開けて家の外に出る。

人の通りが少ない場所の家を買ったので、人通りは少ない。

「ここが、あやつたちが作った街か」

ムムルートさんは周囲を見回す。

「ここはどの辺りじゃ、湖は?」

「湖はあっち、ちょっと離れているけど。バーリマさんの家も湖の近くだから、湖に寄ってから行こうか」

わたしたちは湖に向けて歩き出す。

そして、いつもどおりにわたしは視線を集めるが、気にせずに歩く。

諦めが肝心だ。

ただ、わたしを見る人たちを見て気づく。

「そうだ。街の中は、マントを外しても大丈夫だよ。少し暑いぐらいだから」

フィナたちは周りを見て、マントを外す。

「本当です。さっきの場所より暑くないです」

「湖のおかげで周囲の気温が下がっているみたいだよ」

クマの着ぐるみのおかげで分からなかったけど、そんな話を聞いた。

全員、マントを外し、アイテム袋に仕舞い、あらためて湖に向けて歩き出す。

「だいぶ変わったのう。建物もこんなに建っていなかったし、人もこんなに多くなかった」

まあ、長い月日が経てば建物も人も変わる。それは仕方ないことだ。

そして、街の中心の湖にやってくる。

「だが、ここの景色は変わっていないのう」

ムムルートさんは足を止めて、懐かしそうに湖を見ている。

湖の風景は当時から、変わっていないのかもしれない。そう考えると、あの砂漠の目印の柱同様に感慨深いものがある。

そんな湖をフィナたちも見ていると、シュリが湖のある場所を指差す。

「ユナ姉ちゃん、あれ、なに? 人が乗っているよ」

シュリが指差しているほうを見ると、大きなカルガモが泳いでいた。その大きなカルガモには、子供が乗っている。

名前なんだっけ?

そもそも、聞いたっけ?

勝手に、カルガモの大きいのとか、呼んでいたので、名前を聞いたのかさえ忘れている。

「えっと、前に大きな卵を持ってきたことがあったでしょう。その鳥だよ」

「鳥!」

「もしかして、あの鳥に乗ったら、空を飛べるんですか!?」

今度はルイミンが反応する。

「いや、無理じゃないかな?」

イメージ的に、乗ったら翼を広げられない気がする。

わたしの言葉にフィナも含め、3人は残念そうにする。3人とも空を飛びたかったのかな?

さすがにくまゆるとくまきゅうも空は飛べないから、空の散歩をすることはできない。

スキル、飛行は覚えないのかな?

わたし自身でもなくても、くまゆるとくまきゅうには覚えてほしいものだ。

わたしたちは湖を見ながらバーリマさんの家に向かう。

そして、何度も「クマ」と指を差されながらも、無事にバーリマさんの家に到着する。

この街の領主の家ということもあって、大きい。

門の外から覗くと、メイドさんがいたので、声を掛けようとしたら、偶然にこちらを見て、目があった。わたしを見たメイドさんは驚いた表情をする。

「ユナ様?」

驚いた理由は、わたしのクマの格好ではなく、わたしの登場に驚いたみたいだ。

「ラサさん、久しぶりです。遊びに来ました」

ラサさんはこのお屋敷で働くメイドさんだ。前に来たときに、カレーを教わったりした。

驚いた表情が嬉しそうな表情に変わり、ラサさんはわたしたちのほうに駆け寄ってくる。

「ユナ様、いらっしゃいませ。遠くから、来てくださいましてありがとうございます。カリーナ様も旦那様もお喜びになります」

ラサさんは、いきなりの訪問なのに、笑顔で対応してくれる。

まあ、連絡も難しいから、いきなりの訪問になるのは仕方ない。

わたしたちはラサさんの案内で家の中に入り、部屋に通される。

「それでは、旦那様とカリーナ様にお伝えしてきますので、少々お待ちください」

ラサさんは頭を下げると、部屋から出ていく。

シュリが部屋の中を動き回ろうとするのを、無言でフィナが手を握って止めている。

「椅子に座って、待っていよう」

シュリが動き回らないように椅子に座る。

そして、ラサさんが出て、しばらくすると、廊下を駆けてくる音がする。そして、ドアが開く。

「ユナさんが来ているって本当ですか!?」

赤みのかかった髪をした女の子が部屋の中に入ってきた。

「カリーナ、久しぶり」

「本当にユナさんです。来てくださったんですね」

わたしを見た瞬間、満面の笑顔に変わると駆け寄ってくる。そして、わたしのクマさんパペットを握りしめる。

「また、来るって約束したでしょう」

「はい。でも、簡単に来られるとは思っていなかったので」

「くまゆるとくまきゅうがいるから、来られるよ」

慣れたように口から嘘がでる。

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんにも会いたいですが、ユナさんと一緒にいる人たちは?」

カリーナがフィナたちを見ながら尋ねる。

「バーリマさんが来たら、紹介するよ」

と言っていると、ドアが開き、バーリマさんが部屋に入ってきた。

「ユナさん、久しぶりです」

「街に来たから寄らせてもらいました」

「ユナさんなら大歓迎です。街に来ましたら、いつでもお立ち寄りください。カリーナも喜びますから。それで今日はお一人ではないのですね」

カリーナと同様に、フィナたちを見る。

まあ、知らない人がいたら気になるよね。

わたしは右隣に座っている二人に目を向ける。

「こっちの二人は、わたしが住んでいるクリモニアの街でお世話になっている子で、フィナとシュリ」

「フィナです」

「シュリです」

フィナとシュリが椅子から立って、挨拶をする。

次にわたしは、左隣に座っている二人に目を向ける。

「そんでもって、こっちが、伝説の冒険者のムムルートさんとその孫娘のルイミン」

わたしの紹介にバーリマさんたちは驚きの表情をする。

「嬢ちゃん、伝説の冒険者って?」

わたしの紹介説明に、ムムルートさんは恥ずかしそうにする。

「だって、ムムルートさんの名前は言い伝えられているみたいだよ」

十分に伝説だ。

「ムムルート様って、わたしたちのご先祖様と一緒に、この街を作ったムムルート様ですか?」

カリーナが信じられないようにムムルートさんを見る。

「前に、同じ名前のエルフの知り合いがいるって言ったでしょう。それで、確認したら、本人だと言うから連れてきたんだよ」

「嬢ちゃんに話を聞いて、懐かしくなって連れてきてもらった。ご迷惑ではなかったら、街を見学させてほしい」

「それじゃ、本当に? 感激です。生きてムムルート様に会えるなんて」

「もちろんです。自由に街を見ていってください」

カリーナとバーリマさんはアイドルに会ったような対応をする。

「わしは途中まで手伝ったに過ぎない。わしたちが立ち去った後、街を発展させたのは、クアトとシアンの二人じゃ。苦労もあったと思う。でも、あやつらは街を大きくし、その子供たちもこの街を守ってきた。わしこそ感謝だ。あやつたちが作った街を、長い間、守ってきてくれてありがとう」

ムムルートさんは頭を下げる。

「わたしたちは自分たちの役目を守ってきただけです。そして、その役目が果たせなくなりそうだったのを、ユナさんに救ってもらいました」

バーリマさんがわたしのほうを見る。

「それに、この街を支えているのは、わたしたちだけではありません。この街に住む住民のおかげです」

人がいなければ、街は存在することはできない。でも、管理する人がいなければ、無法地帯になってしまう。

どっちも、いなければならないものだ。

「それで、滞在はどのくらいで?」

「嬢ちゃん、どのくらい、いるつもりなんじゃ?」

バーリマさんの質問に、ムムルートさんがわたしのほうを確認するように見る。

「特に決めていないけど、長くいるとフィナたちの親が心配すると思うから、長くても数日かな?」

実際に、滞在日数は決めていない。でも、決めていないと、カリーナに引き止められそうなので、フィナたちを理由にして、曖昧にしておく。

「そうですか。それでは、その間は家に泊まっていってください」

「泊まる家なら、自分の家があるから大丈夫だよ」

「みんなで泊まるとなるとユナさんの家では狭いでしょう。それに、わたしたちにおもてなしをさせてください」

「ムムルートさん、どうします?」

「せっかくだから、お言葉に甘えるとするかのう」

ムムルートさんの一言で、バーリマさんの家にお世話になることになった。