軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

577 クマさん、フィナにプレゼントする ルドニークの街に行く

お城から王都を見物をした翌日、わたしたちはドワーフの街、ルドニークにやってくる。

久しぶりのルドニークの街だ。

家を購入してから、一度も来ていない。

だって、忙しかったんだから仕方ない。

和の国で蛇退治、ユーファリアの街でバカ退治と忙しかった。

「本当に、ルドニークの街じゃな」

家から出ると、ムムルートさんが不思議そうに街の風景を見る。

「わたしは知り合いに手紙を届けに行くけど、ムムルートさんとルイミンはどうします?」

「そうじゃな、せっかくだから、ルイミンと街を見回ろうかのう」

「知り合いに挨拶をするみたいなので、村長の孫として、挨拶をすることになったんです」

ルイミンが面倒くさそうにするが、長女があれで、長男が幼いから、ルイミンが頑張らないといけないけど、不安に思うのはわたしだけだろうか。

まあ、人はいろいろと経験をして成長していくものだ。今は優しい目でルイミンを見守ろう。

そんなわけで、わたしはフィナとシュリを連れて、街の中を歩く。

「ユナ姉ちゃん、ここはどこなの? ちいさい人が多い」

シュリが周りを見ながら言う。

そういえば、シュリは初めてだったんだよね。

わたしと同じ普通の人もいるが、ドワーフが多い。

そして、その住民のドワーフを見ていると逆にドワーフもわたしたちを見ている。正確にはわたしをだけど。

「くまさんだ~」「クマ?」

ほとんど来ない街に来ると、クマの恰好は目立つので、注目を集める。

どこに行っても、クマの恰好は目立つみたいだ。

「ここはドワーフの街だよ。えっと、王都で会った鍛冶職人のガザルさんとリッカさん。それから、クリモニアのゴルドさんとネルトさんの故郷かな?」

「そうなんだ」

シュリは目を輝かせながら、周囲を見る。

「勝手にどこかに行ったらダメだからね」

「いかないよ~」

「シュリ、絶対にわたしの手を離しちゃ、ダメだからね」

フィナがシュリの手を握っている。

こうやって見ると、仲良し姉妹だね。

「勝手に、どこにも行かないのに~」

でも、シュリは不服のようだ。

「フィナはどこかに行きたいところはある?」

「ロージナさんのところ行くなら、鍋やフライパン、調理道具をいくつか買っていきたいです。アンズさんやモリンさんに、また行くようだったら買ってきてほしいって、前に頼まれていたから」

「ロージナさんのところには行くけど、それはフィナの希望じゃないよね。誕生日プレゼントなんだから」

「それなら、また、あの上から景色が見たいです」

フィナは上のほうを指さす。

そこは試練の門がある場所だ。

「エルフの村、王都のお城、どれも上から見る景色が良かったので」

どうやら、高いところから見る景色が気に入ったみたいだ。

綺麗な景色は何度見ても飽きないし、見ていたいと思う。

「それじゃ、ロージナさんのところに寄ったら、行こう」

「はい!」

わたしたちはロージナさんのところに向かう。

「あれ?」

店の雰囲気が変わっている。

前に来たときは調理道具が売られている鍛冶屋って感じだった。でも、今は剣が並んでいる。

「お鍋とかないです」

「ないね」

本格的に剣を作るようになったみたいだ。

奥からは鉄を叩く音が聞こえてくる。剣を叩いているのかもしれない。

残念ではあるけど、本来の武器職人に戻れたのは喜ばしいことなのかもしれない。

「いらっしゃい」

わたしたちが店を見ていると、女性がやってくる。

「ユナちゃんとフィナちゃん?」

リッカさんの母親のウィオラさんだ。

身長が低いので、可愛いらしい女性だ。

「ウィオラさん、こんにちは」

わたしが挨拶をすると、フィナとシュリも挨拶をする。

「そっちの小さい子は、初めて見るね」

「フィナの妹のシュリです」

「シュリです」

「わたしはウィオラ。シュリちゃん、よろしくね。リッカのことは知っているのかしら? リッカの母親よ」

「うん、知っている。こないだ会ったから」

「こないだ?」

わたしはシュリの前に出て、フィナはシュリの口を塞ぐ。

「王都を出る前に会ってきたんです」

「そうなのね。お茶でも出すから、リッカの話でも聞かせてちょうだい」

手紙の件もあるので、お言葉に甘えて、お茶をいただくことにする。

「それで、あの子はガザルと上手くやっている?」

「見た感じは、仲良くやっていますよ。でも、人の多さに驚いている感じでした」

「やっぱり、王都は人が多いんだね」

「他の国の王都には行ったことはないけど、他の街とか比べると多いですよ」

首都だ。一番、人が多い。

「それで、リッカさんから手紙を預かっています」

わたしはクマさんパペットの口に咥えた手紙をウィオラさんに差し出す。

「ありがとう」

ウィオラさんは受け取って封筒を開けると、中から手紙とアクセサリーが出てきた。

「これは?」

「リッカさん。最近は、アクセサリーを作っているみたいですよ」

ウィオラさんは嬉しそうにアクセサリーを手にする。二つあるから、ロージナさんの分なのだろう。

ウィオラさんは手紙を読みながら、アクセサリーを見る。

「元気にやっているようでよかった」

ウィオラさんは手紙を折りたたむと、大切そうに封筒の中に戻す。

親子を離ればなれにさせてしまって罪悪感があったけど、リッカさんが幸せで、ウィオラさんが納得してくれているようでよかった。

「それで、ロージナさん、本格的に剣を作るようになったの?」

未だに奥から鉄を叩く音が聞こえてくる。

鍋を叩いている可能性もあるけど、店に並んでいる物を見れば、剣を叩いている可能性のほうが高い。

「ええ、おかげさまでね。ロージナが剣を作るようになって嬉しいけど。でも、鍋とか、包丁など、結構お得意様がいたから、困っているのよね」

まあ、確かに、ロージナさんの作った調理器具は、うちのお店でも好評だ。

「それじゃ、お鍋とか売っていないんですか?」

フィナが残念そうにする。

「他の場所で探そうか?」

残念だけど、こればかりは仕方ない。

作ってもらうわけにもいかないし、時間もない。

それに他の職人だって、十分に上手いはずだ。職人はロージナさんだけではない。

「もしかして、わざわざ買いに来てくれたの?」

「半分は旅行、半分は買い物かな?」

わたしはフィナの誕生日プレゼントで旅行に来ていることを話す。

「そうだったのね。でも、安心して。前に作った物が倉庫に仕舞ってあるから」

「そうなの?」

「欲しいお客さんがいたら、販売しているの」

「それって、売れ残りって言うんじゃ」

「違うわよ。そこにある剣も倉庫にある調理道具も、みんな買ってくれる人を長い間待って、自分に相応しい持ち主を待っているだけよ」

なんだろう、夢のあるような出会いの言い方だけど、売れていない商品は、売れ残りだよね?

まあ、物によっては値段が高くて手が出せないから、残っている場合もあるけど。

わたしたちは売れ残りでなく、使ってくれる人を待つ調理道具がある倉庫に移動する。

「フィナ、好きな物を選んでいいよ。お金ならわたしが払うから」

店で使うなら、わたしのお金で払うのが基本だ。

「分かりました」

フィナとシュリは調理道具を集めていく。せっかくなので、わたしも予備として購入することにした。

「はい、代金」

「ありがとう」

代金は割り引いてくれた。

言葉では感謝したけど、残り物の在庫処分じゃないよね?

まあ、実際に良い物なので、良い買い物をしたと思うことにする。

そして、買い物を終えた頃、奥から鉄の叩く音が止まり、ロージナさんがやってきた。

「ロージナさん。剣一筋になったんですね」

「とは言っても、ブランクが長かったせいで、自分が思い描く剣がまだ作れない。本当なら、お礼に嬢ちゃんに剣を作ってやりたいんだが。もし、数年後でよければ、嬢ちゃんのために剣を作らせてほしい」

「そのときはお願いするよ」

数年後がどうなっているか分からないけど、そう約束をして店を後にした。

そして、フィナの希望である試練があった高台に向かう。

「ユナ姉ちゃん。この階段、登るの?」

シュリが階段を見ながら、上を見る。前も思ったけど、かなりの段数がある。

「フィナ、抱っこしてあげようか?」

フィナは何かを思い出したように口を開く。

「大丈夫です。シュリ、自分の足で頑張って登ろうね」

フィナはそう言うとシュリの手を握ると階段を登っていく。

お姫さま抱っこのほうが早いと思うんだけど、残念だ。まあ、自分の足で登ったほうが上から見た景色も感動もあるかもしれない。

自分の足で登る山と、ヘリコプターで登る山では感動が違うって言うし。まあ、どっちの経験もしたことがないわたしじゃ比べることはできないけど、前者の方が苦労している分、感動も大きいと思う。

わたしたちは長い階段を一段一段、登っていく。フィナもシュリも平気な顔をして階段を上る。わたしはクマ靴のおかげで楽だけど、クマ靴がなければ、絶対にこんな階段は登れない。毎日のように引き篭もっていたわたしと、毎日外で駆け回っている二人とでは、足の鍛え方が違う。

そういえば、王都の城の階段も結構あったけど、普通に登っていたね。

そして、やっとのことで登り切ると、すでに先客がいた。

「あ~。ムムルートお爺ちゃんと、ルイミンちゃんだ」

シュリは二人を見掛けると、駆け出していく。

まだ、走る元気があるみたいだ。シュリ、凄い。

「ユナさんたちも来たんですね」

「フィナが来たいって言うからね。そういうムムルートさんとルイミンも?」

「はい、いろいろと連れ回されて、最後にここに来ました」

ムムルートさんが試練の神殿のほうを見ている。

「もしかして、ムムルートさんも参加したことあるの?」

「昔の仲間が参加したことがあった。だから、ちょっと懐かしくてな」

ムムルートさんの昔って、どのくらい昔のことなんだろう。

「その仲間とこの景色を見たが、変わりないのう」

「エルフの村から近いけど、来ないの?」

比較的、近いと言ってもいいと思う。

「最近は、別の若い者に行かせておるからな。こうやって、村を出るのも久しぶりじゃ。長を息子のアルトゥルに譲って、旅に出るのもいいかもしれぬな」

そう考えると、サーニャさん、ルイミン、または弟のルッカが長になるのは、わたしが生きている間には無理そうだね。

わたしはフィナたちを探すと、景色を見ている姿があった。

「ユナお姉ちゃん、凄いよ」

「お城の上から見た景色も綺麗でしたが、ここから見る景色も綺麗です」

ルイミンは感動している。

「フィナはどうして、ここに来たかったの?」

「エルフの村では滝の上、王都ではお城の上から見ました。本当ならこんな経験はできないと思います。でも、ユナお姉ちゃんのおかげで経験ができました。だから、自分が行った場所の全てを見てみたいと思ったんです」

フィナは目を大きく輝かせ、嬉しそうにしている。

本当に連れてきてあげられてよかった。

「それじゃ、クリモニアでも大きな塔でも建てて、眺めてみようか?」

「クマの形をした塔ですか? クリフ様に怒られますよ」

フィナが笑みをこぼす。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚し、飽きるまで景色を眺め、後にした。