軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

546 クマさん、フィナの誕生日を知る

フィナとシュリは午前中は母親のティルミナさんのお手伝いをし、午後にクマハウスにやってくる。ノアも午前中に勉強などを行い、午後にクマハウスへやってくることになった。

型紙を作り終えたシェリーには先生になってもらい、こちらも午後に来てくれることになった。

「ユナさん、一人で作らないでくださいね」

と、ノアに言われたので、わたしも午前中はぬいぐるみ作りはせず、午後にみんなで作ることにした。なので、空いた時間にラルーズの街のアルカのところに絵本を持っていったり、和の国のサクラに絵本を持っていったりした。

絵本はサクラにではなく、カガリさんに渡した。流石にサクラがいる家まで行くには、少し面倒だった。絵本をカガリさんに渡したわたしは、前に約束したくまきゅうと温泉に入る。

夜もいいけど、昼に入る温泉も、風景が綺麗で気持ちよかった。

そして、午後はぬいぐるみ作りとなる。

「そういえば、フィナの誕生日はいつなんですか?」

布を縫っているノアがフィナに尋ねる。

確かに、誕生日はいつなんだろう。尋ねたことがなかった。

「……その」

「お姉ちゃんの誕生日も、もうすぐだよ」

フィナが言い難そうにしてると、シュリが答える。

「そうなんですか?」

ノアは驚く。

二人の話に耳を傾けていた、わたしも驚く。

「どうして、言ってくれなかったんですか!」

「その、お母さんが病気になってから、誕生日にお祝いごとをしたことがなかったので」

フィナは、そんな悲しいことを言う。

忘れがちだけど、わたしと会う前のフィナとシュリは父親がいなくて、ティルミナさんは病気で寝込んでいた。そんな状況では、誕生日を祝うどころではなかったはずだ。

でも、今はゲンツさんもいるし、ティルミナさんも元気になった。なにより、わたしがいる。フィナの誕生日の祝いをしないわけにはいかない。でも、その想いはわたしだけではなかった。

「それでは、わたしの誕生日に近いなら、お祝いを一緒にしましょう」

ノアが提案する。

祝うのは賛成だ。

でも、フィナは乗り気ではない感じだ。

「その、たぶん、今回はお母さんとお父さんが祝ってくれると思いますので」

「それなら、みんなをわたしの家に呼んで、お祝いしましょう。それなら、いいでしょう?」

フィナは断ろうとしたが、ノアが提案を出して、逃げ道を塞ぐ。

「今日、帰ったら、お父様にお伝えしないといけませんね」

もう、ノアの中では決定事項らしい。

フィナが助けを求めるようにわたしを見る。

わたしとしても、フィナの誕生日を祝うのは賛成だ。フィナには、この世界に来てから、一番お世話になっている。そのフィナの誕生日を祝わない理由がない。

だから、フィナへの言葉は。

「わたしも、ノアの案に賛成だよ」

「……ユナお姉ちゃん」

フィナは絶望的な表情をする。

フィナは遠慮したり、断ったりする。多少、強引なほうがいい。

もっとも、わたしがされたら、全力で逃げるけど。

「フィナへの誕生日プレゼントはどうしましょう? もう一つ、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみを作りますか?」

「その、大きなぬいぐるみは、家に置く場所が……」

まあ、大きな家じゃないと、くまゆるとくまきゅうの等身大のぬいぐるみを置く場所なんてないよね。置けたとしても、邪魔になる。

「うぅ、それでは、どうしましょう」

「プレゼントは、とくには……」

「ダメです! 絶対にプレゼントを用意します。当日までには考えておきます」

わたしも考えておかないといけないね。

なにかあるかな?

フィナといえば解体だけど、解体ナイフはミスリルナイフを持っているし、ワイバーンをプレゼントするわけにはいかないし。そもそも、11歳の誕生日プレゼントが魔物っておかしい。

ちなみに、シュリの誕生日は、まだ先のことらしい。

わたしの誕生日も聞かれたが、この世界の誕生日は分からないので、適当に誤魔化しておいた。

「それでは、誕生日パーティーには、ご両親にフィナのドレス姿を見せてあげましょうね」

「あのう、やっぱり、ドレスを着るのですか?」

「もちろんです。せっかく、差し上げたのですから、着てくださいね」

それって、わたしも着るってことだよね。

「もちろん、ユナさんもですよ」

念をおされた。

まあ、今回も身内だけのパーティーだと言うし、諦めることにする。

「お姉ちゃんたち、ドレスいいな」

話を聞いていたシュリが、羨ましそうにする。羨ましいなら、シュリと代わってあげたいぐらいだ。

でも、ノアがシュリの暗い表情を、明るくさせる。

「ふふ、そんな顔をしなくても、シュリには、わたしがシュリぐらいの年齢のときに着ていたドレスを用意するつもりです」

「ほんとう!?」

「はい、だから、大丈夫ですよ」

「ノア姉ちゃん、ありがとう」

「ふふ、どういたしまして」

ノアはお姉さんっぽく微笑む。

本当はぬいぐるみ作りを手伝ってくれているシェリーも誘いたかったが、他の孤児院の子供たちと同じ理由で、誘わないことにした。

翌日、ノアが発する言葉で、フィナが困った顔をする。

「フィナ、フィナのご両親も呼んでも構わないと、お父様の許可をもらいました。お父様もフィナのご両親に挨拶をしたいそうです」

「…………」

昨日の今日で、話が進む。

フィナは困り顔をする。

どうやらフィナは、まだティルミナさんやゲンツさんには話していなかったみたいだ。

クリフまで話がいってしまうと、流石にティルミナさんたちに話さないわけにはいかない。

ノアを止めなかったわたしの責任もあるし、フィナの誕生日パーティーも一緒にする案に賛同したのもわたしだ。

フィナが助けを求めるようにわたしを見るので、今度は助けてあげることにする。

この日のぬいぐるみ作りを終えると、わたしはフィナと一緒にフィナの家に向かう。

「あら、ユナちゃん。娘たちを送ってくれたの? ありがとうね」

ティルミナさんは笑顔で出迎えてくれる。

「大切な娘さんたちを借りていますから」

「ふふ、ユナちゃん、食事はまだでしょう。一緒に食べていって」

話もあるので、ティルミナさんの申し出に甘えることにする。

「それで二人とも、ノアール様のプレゼントのぬいぐるみは順調?」

ティルミナさんはフィナとシュリに尋ねる。

「うん、順調だよ」

「はい、今のところ大丈夫です」

「きっと、ノアール様も喜んでもらえるわ」

「そのことで、お母さんに言うことが……」

「なにかしら?」

「ノア姉ちゃんが、お母さんとお父さんも一緒だって」

フィナが言い難そうにしているところを、シュリが口を開く。

「えっと、どういうこと?」

シュリの説明ではいろいろと不足している。

なので、わたしが補足する感じで説明する。

「ノアの誕生日パーティーにティルミナさんとゲンツさんも誘われたんです。正確には、ノアとフィナの合同誕生日パーティーだけど」

「ごめんなさい。考えが追い付かないわ」

「フィナの誕生日って、もうすぐなんですよね」

「ええ」

「そのことを知ったノアが一緒にしようって話になったんです。それで、ティルミナさんとゲンツさんも参加するってことです」

「もしかして、領主様のお屋敷で?」

わたしは頷く。

「わたしとゲンツも一緒に?」

わたしは、もう一度、頷く。

ティルミナさんは、やっと理解する。

「無理よ! 絶対に無理! わたしとゲンツはフィナたちと違って面識がほとんどないのよ。前にエレローラ様が来られたときだって、緊張して話ができなかったのに」

珍しく、ティルミナさんが慌てている。

「クリフは別に悪い人じゃないよ」

「それは知っているわ。お店に来ることもあるし、フィナからも話を聞いているわ。だからと言って、領主様の娘さんの誕生日とフィナの誕生日パーティーを一緒にやると言われて、困らない親はいないわ」

まあ、普通に考えれば、貴族のお屋敷に行くことになれば、こんな感じになるよね。

まして、娘の誕生日パーティーと領主の娘の誕生日パーティーを一緒にすると言われたら、混乱もするだろう。

「ゲンツが帰ってきたら、相談しないとダメね」

そして、ゲンツさんが仕事から帰ってきた。

「嬢ちゃんもいたのか?」

「うん、お邪魔しているよ」

それぞれが席に座り、料理を前にする。

「ティルミナ、どうした? いつもと表情が違うが」

「ごめんなさい。あなたに相談があって」

ティルミナさんはゲンツさんにフィナの誕生日パーティーのことを話す。

「そんなことが……断れるのか?」

「あなたが断ってくれるの?」

「……無理だよな」

二人は諦めたように、ため息を吐く。

「お母さん、お父さん、ごめんなさい」

「フィナは悪くないわ」

「そんなに嫌なら、わたしが断ってくるけど」

ティルミナさんが断りにくいなら、わたしが代わりに言うことはできる。フィナとシュリの参加を断ることはできないけど、ティルミナさんとゲンツさんなら断れると思う。

「それは有り難いけど、断れないわ」

「だよな」

わたしも思い出す。

初めて、冒険者ギルドで領主の家に呼び出しをもらったことを。あのときも、簡単には断れない雰囲気があったし、ヘレンさんにも頼まれた。

今なら、クリフのことを知っているから、断っても問題はないと知っている。

でも、一般の人からしたら、領主は、身分が遥かに上の存在だ。

ティルミナさんとゲンツさんは行くことに決め、服装をどうするか悩み、最終的には商業ギルドのミレーヌさんに相談して、ナールさんのお店で服を借りることになったらしい。

ナールさんとテモカさんには、お世話になってばかりだ。