軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

516 クマさん、シアと合流する

ペチペチと柔らかいものに叩かれる。目を開けるとくまきゅうがわたしの頬を叩いていた。窓を見ると日が出始めている。

もう、朝みたいだ。

わたしはくまきゅうを抱えて起き上がる。

ふかふかのベッドだったけど、どちらかと言うと白クマの着ぐるみのおかげでぐっすりと眠ることができた。疲れも取れて、気持ちいい朝だ。

わたしは隣に眠るノアを起こさないようにしてベッドから降りる。そして、誰かがやってくる前に制服に着替えることにする。

くまきゅうが残念そうにするので、わたしはくまきゅうの頭を撫でてあげる。

「この街にいるときだけだよ」

わたしは制服の袖に腕を通して、着替えを終える。

次にわたしはベッドで寝ているノアに目を向ける。ノアはくまゆるを抱いて気持ちよさそうに寝ている。

そろそろ、起こしてあげないといけない。

「くまゆる、起こしてあげて」

くまゆるはノアの腕の中から抜け出すと、ノアの顔をペチペチと叩く。

これがクマパンチだね。

「うぅ、やめてください」

ノアはくまゆるの手を払いのける。

「ほら、ノア、そろそろ起きないと」

「もう少し寝かせてください」

起きないんだ。

なら、次の段階だ。

わたしはくまゆるに命令をする。

「くまゆる、GO!」

くまゆるは寝ているノアの体を登っていく。そして、くまゆるはノアの顔に覆い被さる。

徐々に息苦しくなったノアは起き上がる。

「苦しいです!」

くまゆるはノアを起こすことに成功した。

「ユナさん、酷いです」

くまゆるが起こしたのに、わたしが怒られた。

「すぐに起きないノアが悪いんだよ」

ダイブしなかっただけでも有り難く思ってほしい。流石にあれは危ないのでやめてあげた。

「そうですが、くまゆるちゃんも優しく起こしてほしかったです」

ノアは自分を起こしてくれた、くまゆるを見る。

「いや、初めは優しく起こしていたよ」

ペチペチとね。

「そうなんですか?」

ノアの質問にくまゆるは「くぅ~ん」と頷きながら鳴く。

「それでも起きなかったから、強硬手段に出たんだよ」

「昨日はいろいろとあったので、疲れていたみたいです。でも、次は、もう少し優しく起こしてください」

くまゆるは「くぅ~ん」と鳴く。

「とりあえず、起きたんだから、人が来る前に着替えて」

いつまでもクマの格好をさせておくわけにはいかない。メイドさんが来たら、驚くからね。

ノアはクマの制服を脱いで着替え始める。わたしはノアが着替えている間に、くまゆるとくまきゅうを送還する。

そして、ノアが着替えて、しばらくするとセレイユが部屋にやってきた。

「二人とも休めましたか?」

チラチラ。

セレイユは尋ねながら部屋を見ている。

「はい、朝までぐっすりと寝ることができました」

「うん、一応ね」

「……クマさんたちはいないのですね」

ああ、さっきからくまゆるとくまきゅうを探していたんだね。

「送還したからね」

「そうですか……」

セレイユは少し残念そうな表情をする。昨日のことからすると会いたかったのかな?

試しに目の前でくまゆるを召喚してみた。セレイユがパッと笑顔になる。送還すると、悲しそうな顔になる。

初めて会ったときと違って、表情が変わるもんだね。

「ユナさん、それは酷いと思います」

セレイユの反応を見て楽しんでいたら、ノアに怒られてしまった。

わたしは謝罪を含め、朝食の時間までくまゆるとくまきゅうを召喚して三人で過ごす。

それから、朝食をいただいたわたしたちはセレイユと一緒に学園に向かう。

「いつも歩きなの? 馬車とかじゃないんだね」

貴族令嬢だ。馬車で送り迎えがあってもいいと思うんだけど、昨日も1人で歩いていたっけ。

「ええ、朝から歩くのは気持ちいいですから、歩くことにしています。わたくしはこの街が大好きですから」

セレイユは微笑む。

そして、話をしながら学園までやってくると、制服を着たシアの姿があった。

「お姉様、お待たせしました」

ノアはシアを見つけると、嬉しそうに駆け出していく。それをわたしとセレイユが後を追う。

「どうして、セレイユと一緒に?」

ノアは昨日のことを説明する。

「それで1日だけ、お世話になりました」

「本当は1日とは言わず、街にいる間は、家にいてくださってもよかったんですが」

「いえ、昨日お話ししたとおりに、これ以上セレイユ様のご厚意を受けましたら、お姉様とセレイユ様が勝負をすることになりましたら、困ります」

ノアは昨日と同じ言葉で、失礼にならないように断る。

「残念です」

セレイユはなぜか、ノアではなく、わたしに視線を向ける。

くまゆるとくまきゅうに会いたいのかな?

「一緒に行けないのは残念ですが、みなさんは街を楽しんできてください」

「セレイユ、ありがとうね」

「セレイユ様、ありがとうございました」

セレイユは学園の中に入っていく。

「それじゃ、わたしたちも行こうか」

わたしたちはセレイユとは逆に学園から離れるように歩き出す。

「それで、どこに行こうか?」

「わたし、お母様とお父様にお土産を買っていきたいです」

「それなら、昨日セレイユに聞けば良かったね」

「いえ、お姉様と一緒に選びたかったから」

「ふふ、ノア、ありがとう。それじゃ、一緒に選ぼうか」

「はい!」

わたしもフィナに買っていこうかな。

「でも、シアは交流会で活躍した話が一番のお土産になるんじゃない?」

普通の親っていうのは子供の活躍は一番のお土産話になる。

「そうですね。街に帰ったら、お姉様の活躍をお父様に話しますね」

「プレッシャーをかけないで」

笑いが起きる。

シアには活躍してほしいね。

わたしたちはいろいろな場所を回りながら、エレローラさんやクリフに渡すお土産を探したり、食事をしたりする。

「美味しかったです」

「このあいだ、学生のみんなで食べたとき、美味しかったから、ノアにも食べさせてあげようと思っていたの」

食事を終えたわたしたちは八本ある大通りの一本を歩いている。同じような道があるから、結構迷うかもしれない。

「あれは、冒険者ギルド?」

大きな建物があり、冒険者ギルドの看板があった。

「シアは、今でも冒険者ギルドに行っているの?」

「たまにマリクスの付き合いで行くぐらいですね。でも、最近はわたしとでなく、同じ騎士を目指す子と行っているみたいです」

そうなんだ。

この辺りの魔物はクリモニア付近と同じなのかな?

それとも見たことがない魔物がいたりするのかな?

和の国は流石に違った魔物がいた。元、ゲーマーとしては少し気になる。

「ユナさん、入りますか?」

わたしが冒険者ギルドを見ていたらノアが尋ねてくる。

「今回はノアの護衛で、シアの応援で来たんだから、別にいいよ」

「ユナさんは冒険者なんですから、気にしないでいいですよ。それに、入りたそうな顔をしていましたよ」

そんなに表情に出ていた?

わたしはクマさんパペットで顔を擦る。

「それと、滅多に入れる場所ではないので、わたしも冒険者ギルドに入ってみたいです」

「でも、危ないよ。冒険者に絡まれたりするかもよ」

「そうなんですか?」

「わたし、初めてクリモニアや王都の冒険者ギルドに行ったら、絡まれて、戦うことになったんだよ」

わたしは何もしてないのに。

「それって……」

「それは……」

二人がわたしのことを見る。

「なに?」

「クマさんの格好だったからじゃないかな?」

「わたしもそう思います」

確かに、クマの格好のせいで絡まれたような気がする。

それ以外ないよね。でも、小娘だったからって理由もあった気がするんだけど。

「まあ、今回は制服を着ていますから、大丈夫ですよ」

そうなのかな?

わたしはシアに引っ張られるように冒険者ギルドの中に入る。

「人、少ないですね」

ノアの言う通り、冒険者が少ない。いないわけじゃないけど、隅のほうの椅子に数人が座っている程度だ。

「みなさん、仕事に行っているのでしょうか?」

時間的に、仕事へ行っている時間ではある。でも、クリモニアや王都の冒険者ギルドでは休んでいたり、情報収集をしている冒険者、明日の仕事を探していたりする冒険者がいて、それなりの人数がいた。

でも、ここの冒険者ギルドはそんなことをしている冒険者はいない。さらに、受付嬢はなにもすることがないのか、暇そうにしている。

「あなたたち、冒険者ギルドに用なのかしら?」

受付嬢と目が合うと、声をかけてきた。

「その制服は、王都の学生かしら?」

「はい、王都の学生です。魔法の交流会に参加するために来ました」

「そうなのね。それで、その学生さんたちが、どうして冒険者ギルドに?」

「その、見学しにです」

「あら、将来は冒険者? 若い子がなってくれるのは嬉しいわ」

「一応、冒険者ギルドには登録しています。それで、王都とどう違うのか見に来たんです」

「ああ、そうだったのね。暇だから、ゆっくり見ていってね」

「あのう、どうして、冒険者がいないんですか?」

「それは仕事に行っているからよ」

「それにしても人がいないかと」

さっきも言ったが、このぐらいの大きな街で冒険者ギルドに人が少ないのはおかしい。

「王都から来たんじゃ知らないのかしら? この時期になると周辺の魔物の数が減るのよ。それで実力がある冒険者は皆、他の街に行っちゃうの。だから、どうしてもこの時期になると冒険者の数が減るのよね」

それってつまり、出稼ぎで冒険者が居なくなったわけか。

「時期になると魔物が減るなんてことがあるの?」

わたしはシアに尋ねる。

「季節によって、現れやすい魔物は違ってきますよ。でも、この暖かい時期は変わらないと思うんですが」

「本来はそうなのよね。でも、数年前からかしら? この時期になると魔物の目撃情報がなくなるのよ。強い魔物が出たりしたら、魔物が逃げ出したりして、いなくなることもあるんだけど。冒険者が調べた限り、平和そのものなのよね。でも、しばらくすると魔物が戻ってくるのよ。本当に不思議なのよ」

強い魔物が現れると、追い出されたように魔物がやってくる。それはブラックタイガーのときに経験している。

もしかして、小さくて強い魔物がいるとか?

「だから、冒険者がいなかったわけなんですね」

「そんなわけで、冒険者がいないから、わたしも暇なの」

だから、この受付嬢はいい話し相手が来たと思って、話しかけてきたみたいだ。

それから、暇にしている受付嬢の暇つぶしに付き合うことになった。

冒険者ギルドのことを聞こうと思ったのに、ギルド嬢は王都の話が聞きたいのか、いろいろと尋ねてくる。

このままでは無駄に時間が過ぎてしまうので、わたしはタイミングを見て話を打ち切る。

「それじゃ、わたしたちは、これで失礼しますね」

「もう、行っちゃうの? もう少し王都の話を聞きたかったのに」

「でも、後ろで怒っている人がいますよ」

受付嬢が後ろを見ると、怖い顔をしている男性がいた。

「……ギルドマスター」

「サボっていないで、仕事をしろ!」

「してます。王都の情報収集です」

わたしたちは受付嬢がギルドマスターに言い訳をしている間に、冒険者ギルドを後にした。