軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

507 クマさん、ユーファリアの街に入る

「うぅ、眠いです」

ノアは子熊化したくまゆるを抱きながら、小さくあくびをする。

「ほら、顔を洗って、食事にするよ」

「はぁ~い」

わたしたちは軽く食事をするとユーファリアの街に向けて出発する。

今日もくまゆるとくまきゅうに交互に乗りながら、ユーファリアの街に向かっている。

「確か、この道を進めばいいんだよね」

クマの地図を見ながら進むが、地図はクマさんフードが見た場所しか地図に表示されない。

そのため、一度も行ったことがないユーファリアの街の場所は分からない。

くまゆるに「ユーファリアの街に向かって」とお願いしてみたけど、悲しげに「くぅ~ん」と鳴いた。分かっていたけど、くまゆるとくまきゅうも行ったことがない場所にはいけない。クマモナイトの力でパワーアップして、そんな能力が開花したりしていないかなと思ったりしたけど、ダメだった。

「あっ、ユナさん。立て札があります!」

街道を進むと、分かれ道の場所で村の名前や街が書かれた立て札があった。

わたしたちはくまゆるから降りて、立札を確認する。

「ユーファリアはこっちだね」

間違っていないようでよかった。

前に近道をしようとして、森の中で迷ったことがあった。今回はスリリナさんに教わった通りに道なりに進んできたので、大丈夫だったみたいだ。

急がば回れとはよく言ったものだ。

「何もなければ今日中には着きそうだね」

フラグなんていらないから、何事もなく到着してほしいものだ。

「昨日、クリモニアを出発したばかりなのに、信じられません」

「これもくまゆるとくまきゅうのおかげだよ」

わたしはくまゆるの体を撫でる。

「うぅ、わたしもくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんが欲しい」

ノアはくまゆるに抱きつく。

「ほら、馬鹿なこと言っていないで、出発するよ」

「は~い」

ノアをくまゆるに乗せ、出発する。

街道を走るくまゆるが「くぅ~ん」と鳴くと街道から逸れる。

一応、人がいたときは驚かせないように、街道を外れて走るようにしている。

「また、冒険者ですね」

遠くから街道を見ると冒険者の格好をした数人が通る。

あまり気にしていなかったけど、思い返すと、確かに冒険者と何度かすれ違った。

「王都に向かっているんでしょうか?」

王都から来たけど、王都は寄らずに来たので、理由はわからなかった。

サーニャさんなら、何か知っていたかな?

今更、王都に戻るわけにもいかないし、もし気になるようなことがあれば、クマの転移門を使えばいいことだ。今は気にしないでユーファリアの街に向かう。

わたしたちは進み、街が見えてくる。

何も起きず、無事に到着することができたみたいだ。

「あれがユーファリアの街……綺麗です」

丘になっている場所から、ユーファリアの街が見える。街の中心に湖があり、その湖を中心に建物が広がっている。湖に向かう道は東西南北の4本に、さらにそれぞれの道の間に4本の道があり、8本の大きな道が湖に繋がっている。

ノアの言う通りここから見える街並みが綺麗だ。

やっぱり、道をちゃんと決めてから、建物を建てるといいね。好き勝手に建てると、迷子になるし、汚く見える。でも、戦争が起きた場合、簡単に攻め込まれそうだ。

「ユナさん、早く行きましょう」

わたしが街を眺めているとノアが体を揺する。

「そうだね。泊まる宿も探さないといけないしね」

まだ、夕暮れにはなっていないが、早めに宿を確保したい。遅くなればなるほど、宿は埋まる。

わたしたちを乗せたくまゆるはユーファリアの街に向けて駆けていく。

そして、いつもは気を付けているのに、クリモニアに帰る癖で、くまゆるに乗ったまま門の近くまで行ってしまった。門番がくまゆるに乗るわたしたちを見て驚く。

「なんだ!? クマ!?」

わたしは慌てて、くまゆるから降りて、くまゆるの前に立つ。

「この子は危険はないから大丈夫です」

わたしは危険がないことを門番に説明する。

「本当に大丈夫なのか?」

「くまゆるちゃんは人を襲ったりしません」

ノアがくまゆるの上から、頬を膨らませながら、擁護してくれる。

女の子二人がクマに抱き付く姿を見て、門番は納得する。

くまゆるを送還することで、街の中に入れるかと思ったら、話はそんなに簡単に済むことにならずに門番の中で一番偉い人が出てきた。

わたしたちは門番の休憩室、もとい取調室に連れていかれることになった。

その扱いにノアが怒って、貴族って身分を明かした。さらにわたしはその護衛ってことにして、ゴーレム討伐のときにエレローラさんからもらった紋章付きのナイフとギルドカードを見せた。

紋章付きのナイフにも驚かれたが、ギルドランクがCのほうが驚かれた。

「ノア、ありがとうね。助かったよ」

「酷いです。くまゆるちゃんは危険じゃないのに、あんな目で見なくてもいいのに」

「まあ、クマだから仕方ないよ」

クリモニアでは、くまゆるとくまきゅうのことは門番の誰しもが知っているので、普通にくまゆるとくまきゅうに乗って門の前まで移動している。

いつもは気を付けていたんだけど、今回は湖を見ながら走っていたから、見事に忘れてしまった。

「でも、ノアが庇ってくれたのは嬉しかったよ」

「当たり前です。くまゆるちゃんのためです。あまり、身分を明かして、強引にすることはしたくなかったのですが、くまゆるちゃんとユナさんがあのような目で見られるのは我慢できません」

でも、ノアのおかげで無事に街の中に入ることができた。

貴族の力を使って、横柄になるのは困るけど、ときには使い分けるのは大切だ。わたしはくまゆるを助けるために力を使ってくれたことが嬉しい。

やっぱり、新しい街に来るときは、見えない場所でくまゆるとくまきゅうを送還しないとダメだね。

「まあ、あの人たちも仕事なんだから仕方ないよ。それに何かをされたわけじゃないんだから、いつまでも頬を膨らませていないで宿屋に行くよ」

門番で足止めを食らったわたしは、解放されるついでに宿の場所を教えてもらった。ノアが貴族ってことを知って、態度が変わり、快く宿を教えてくれた。

値段は気にせず、貴族が泊まるような宿をお願いした。比較的近い場所にある。門を通って、大通りの道を進むとあるらしい。

お礼を言って、出ていこうとしたら、引き止められた。

貴族であるノアを歩かせるわけにはいかないから、馬車を用意すると言われた。でも、ノアはその申し出を断った。

「別に乗せてもらってもよかったんじゃない」

わたしは周囲の視線を感じながら尋ねる。新しい街に来ると毎度同じ反応を受ける。「くま?」「クマ?」「熊?」「ベアー?」馬車に乗せてもらえれば、宿屋までに好奇な視線を向けられることもなかった。

「そうですね。クリモニアだとユナさんと一緒に歩いても、こんなに視線を浴びることがなかったので忘れていました」

ノアも周囲の視線を感じているようだ。

「でも、自分の足で歩いて、街を見たかったんです」

「まあ、気にしないでいいよ。どっちにしろ、明日は街を散策するつもりだったんだから、同じことだから」

どうせ、街を歩けば、いつも通りに見られる。今更気にしても仕方ない。

わたしたちは視線を浴びながらも宿屋に到着する。

「大きいです」

街の門番が教えてくれた宿屋は、大きく立派だった。まさしくお金持ちが泊まる宿だ。

宿代も高そうだ。

でも、その分、セキュリティーはしっかりしているだろうし、貴族であるノアと一緒なら、多少高くてもこの宿のほうがいい。

宿の中に入ると、冒険者などの姿はなく、お金を持っていそうな商人がいるぐらいだ。

わたしは受付にいる女性のところに向かう。女性はわたしに気づくと驚いた表情をする。いつものことなので、気にせずに話しかける。

「すみません、二人部屋を一つお願いしたいんですが」

「えっと、ご両親の方は」

受付にいた女性は営業用の表情を作り、わたしの格好を見ても、なにもなかったように対応する。

ちゃんと教育されているみたいだ。どんなお客様(クマの着ぐるみ姿の女の子)が来ても、対応できるのは偉い。

「二人だけです」

「ここは他の場所と比べて、値段が高く……」

受付の女性は言い難そうに口にする。

まあ、女が二人、片方は子供。もう片方はクマの格好をしているから、対応に困っているようだ。

でも、追い出そうとしないのは好感が持てる。

「一泊いくら?」

女性は少し考えてから、答えてくれる。

「二人部屋でしたら、こちらの金額になります」

提示された金額は、一般の宿屋より5倍は高い。確かにこれなら、子供だけで泊まれるとは思わないかもしれない。

「お金の問題はないから、部屋を用意してくれる?」

わたしがクマボックスからお金を出すと、ノアが声をかけてくる。

「ユナさん、お金ならお父様から預かっていますから、わたしが払います」

「子供はそんなことを気にしないでいいんだよ」

「でも……」

「帰ったら、クリフに請求するから、気にしないで」

ノアが持っているお金はクリフのお金だけど、ノアの手からもらうのは抵抗がある。だから、ノアの申し出は断る。

「ノアの気持ちだけもらっておくよ」

ノアも納得してくれたのか、それ以上は言わなかった。

わたしは前金で数日分の宿代を払う。

受付の女性も一瞬驚いた表情をするが、お金を払えばお客様と判断して、すぐに部屋に案内してくれる。

でも、さっきから、わたしの格好が気になるのか、チラチラとわたしを見ている。だけど興味本位で尋ねてこない。

もし、この街に来るようなことがあったら、今度もこの宿屋に泊まろうかな。

「これから、おでかけになりますか?」

「ううん、今日は休ませてもらうよ」

「それでは時間になりましたら、夕食を運ばせていただきます」

案内をしてくれた女性は頭を下げると下がっていく。