軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

501 クマさん、和の国のお土産を持って行く

クマの道しるべを調べ終わると、わたしはお礼として、和の国で買った飴細工をフィナにプレゼントする。

まあ、お礼でなくても、お土産としてプレゼントするつもりだった。

「綺麗です。これお菓子なんですか?」

重箱に入った飴細工を見て、フィナは驚く。

「お魚に果物、動物に鳥もあります。これが全部、お菓子なんて信じられないです」

「それじゃ、一つ食べてみる? フィナにはシノブの時にお世話になったし、今日も絵本を手伝ってもらったし、さっきの玉を調べるのも手伝ってくれたから、一つここで食べていいよ。でも、みんなには内緒だよ」

みんなには一つの予定だ。

「それじゃ、これ」

フィナは黄色のヒヨコを選ぶ。クマを選ぶと思ったんだけど、違った。フィナはヒヨコの飴細工を舐める。

「本当に甘いです」

フィナは美味しそうに舐め始め、どんどん形が変わっていく。しばらくするとヒヨコの形は姿を消していた。

「美味しいけど、なにか悲しくなります」

それには同意だけど、それは仕方ない。どんな食べ物だって、食べれば消える。作った人に感謝しながら、食べればいい。飴細工を綺麗と思ってくれれば、作ったおじさんも喜ぶ。

それから、フィナにはティルミナさんたちの分を選んでもらう。

「好きなのを選んでいいよ。シュリとティルミナさん、ゲンツさんの分を選んであげて」

「選ぶのが難しいです。でも、シュリにはクマさんがいいと思います」

「フィナはクマでなくていいの? クマはみんなが欲しがると思って多めに作ってもらったんだけど」

恥ずかしい思いをして、飴細工を作るおじさんに、クマの格好をしたわたしが、クマの飴細工を頼んだ。恥ずかしくないわけがない。

でも、フィナはさっきはヒヨコを選んでいた。

フィナはわたしの言葉に恥ずかしそうにすると、

「……えっと、わたしもクマさんがいいです」

と答え、フィナは自分用にクマの飴細工を手に取る。

それからティルミナさんとゲンツさんの分にはリンゴとイチゴの飴細工を選んだ。

それから、次のお店が休みの日。わたしはお店にお土産を持っていくことにする。

くまさんの憩いの店の二階にはモリンさんとカリンさんが住んでいる。モリンさんは朝早くから市場に行っているらしく、お店にはカリンさん1人だけだった。

「カリンさん、これお土産です」

わたしは風鈴が入った小箱を渡す。

カリンさんは小箱を受け取ると小箱の蓋を開ける。中にはフィナとシュリが選んだ鳥の絵が描かれた風鈴が入っている。

「綺麗」

カリンさんは箱から風鈴を取り出すと、チリーンと小さく音が鳴る。

「これはなんですか?」

「風鈴と言って、音を楽しむものかな?」

口で説明するよりは、聞いてもらったほうが早い。

わたしはカリンさんに風鈴を持ってもらうと、軽く風魔法で風を起こす。すると風鈴はチリーン、チリーンと綺麗な音を奏でる。

「綺麗な音がしますね」

「風でなびくと音が鳴るから、どこか窓際に置くといいよ」

「ユナちゃん、ありがとう。飾らせてもらうね」

カリンさんは嬉しそうに風鈴を見ている。気に入ってもらえたようでわたしも嬉しい。

そして、わたしはもう一つのお土産を出す。

「あと、ここから好きなのを一つ選んで」

重箱に色々な飴細工が入っている。

「これも綺麗だけど、飾りなの?」

「これは飴細工と言って、舐めるお菓子だよ。甘くて美味しいよ」

「食べ物なの?」

カリンさんは不思議そうに飴細工を見る。

カリンさんは棒に突き刺さっている魚の飴細工を手にする。

「食べてみていい?」

「一つだけですよ。孤児院の子供たちにも持っていく予定だから」

わたしが許可を出すとカリンさんはペロッと飴細工を舐める。

「甘い」

カリンさんは何度か舐める。

「こんなお菓子もあるんだね。これ、ユナちゃんが作ったの? まさか、これをお店に出すとか……」

「言わないよ」

わたしの言葉にカリンさんはホッとする。

本来はパン屋だったのが、ピザやポテトチップスが増え、ケーキまで作るようになった。流石のわたしも飴細工で商売をしようとは思わない。

「お出かけした場所に売っていたから、買ってきたんだよ。珍しいお菓子と思ったから」

「王都でも見たことがないよ」

それから、モリンさんの飴細工を選んでもらう。

「それじゃ、わたしはアンズの店に行くから、モリンさんによろしく言っておいてね」

くまさんの憩いの店を後にしたわたしはくまさん食堂に向かい、裏口から入る。

「あれ、ユナさん。朝食ですか? なにか作りますか?」

出迎えてくれたアンズが、来た早々にそんなことを言う。

そんなにわたしって、食べに来ているかな? 自分で作ったり、クマボックスに入っているパンなどを食べているから、そんなに多くはないはず。

「ううん、大丈夫。ちょっとお土産を持ってきたから、渡そうと思って、みんなはいる?」

「いますよ。フォルネさんは部屋でのんびりしていると思いますが、セーノさんはまだ寝ていると思いますよ」

早い時間とは言わないけど、もう起きていてもいい時間だ。

「セーノさんの最近のお気に入りは二度寝らしいです」

わたしも二度寝は好きだけど、せっかくの休日にいいのかな? セーノさん、若いんだから、どこかに出かけるとか、デートに行くとか、いろいろと休日にやることがあると思うんだけど。

まあ、休日だから二度寝ができるって話だけど。

セーノさんはともかく、アンズはちゃんとデートするような相手はいるのかな?

「なんですか?」

わたしがアンズの顔をじっと見ていたら、気になったのか尋ねてくる。

「アンズは休日にどこかに出かけたりはしないの?」

「もちろん、行きますよ。ミリーラの町と違っていろいろな食材があるから、街を歩くのは楽しいです」

目を輝かせながら言う。

うん、これは駄目だ。

デーガさん。わたしにアンズの結婚相手を見つけることはできそうもないよ。

アンズの結婚相手は気長に待ってもらうことにする。わたしとしてもアンズが結婚して、お店を辞められても困るしね。

「それで、みんなを呼んでくればいいんですか?」

「ううん、大丈夫。アンズが渡してくれればいいよ」

わたしは風鈴が入った小箱を差し出すと、アンズは受け取る。

「開けてもいいですか?」

「いいよ」

アンズが小箱を開けると金魚の絵が描かれた風鈴が出てくる。

「これは風鈴ですね」

「知っているの?」

「はい。和の国のものですね。商人が売っているのを見たことがあります。もしかして、ミリーラの町で買ってきたんですか?」

「まあ、そんなところかな……」

目を軽く逸らしながら、答える。

流石に和の国に行って買ってきたとは言えない。

「綺麗な音がするんですよね。でも、高いから買えなかったんです。こんな高いものをもらってもいいんですか?」

作っている和の国で買ったから、安かったんだよ。とは言えない。

「気にしないでいいよ。アンズたちがいつも頑張ってくれているお礼だから」

「ありがとうございます。それじゃ、ありがたく貰いますね」

アンズは嬉しそうに風鈴を眺める。

「あと、これも一緒に買ってきたから」

わたしは飴細工を出す。

「これはなんですか?」

どうやら、飴細工は知らなかったみたいだ。

「甘いお菓子だよ」

「これ、お菓子なんですか? 魚ですよ。果物もありますし」

驚いたように見る。

流石にミリーラの町でも飴細工は売っていなかったらしい。

わたしはカリンさんと同じように、飴細工を選んでもらう。

アンズはセーノさんたちの分を含め、全て魚を選んだ。

アンズらしい。

くまさん食堂を後にしたわたしは孤児院に向かう。

今頃は子供たちはコケッコウのお世話をしている。

わたしは邪魔にならないように孤児院の中に入り、院長先生がいる部屋に向かう。

「ユナさん、いらっしゃい」

院長先生は幼い子たちのお世話をしている。子供たちは院長先生に寄り添う感じに寝ている。院長先生の傍だと安心できるのかな。

「それで今日はどうかしましたか?」

「ちょっと、出かけていたのでお土産を持ってきました」

「いつも、ありがとうございます。ユナさんにはお世話になってばかりで」

「そんなことはないよ。院長先生は子供たちのお世話をしているし、その子供たちは一生懸命に仕事をしているんだから」

「それもユナさんのおかげです」

気恥ずかしいので、話は打ち切り、クマボックスから風鈴が入った小箱を取り出す。そして、小箱を開け、院長先生に見せる。

「窓際などに飾ってください。風が吹くと綺麗な音を聞かせてくれます。暑いときに聞くと、気分が落ち着きますよ」

心の中で、たぶんと付け足す。

実際はテレビなどで風鈴の音は聞いたことはあるが、家には無かった。風鈴を経験をしたことがないので、テレビなどの受け売りだ。

わたしは小箱から風鈴を一つ出して、チリーンと鳴らしてみる。

「綺麗な音ですね」

「気に入ってもらえたなら、嬉しいです。いくつかあるので、飾ってください」

孤児院は他と違って多く買ってきた。

「子供たちも喜びます。ありがとうございます」

風鈴を小箱に戻し、院長先生に渡す。

それから、子供たちの人数分と院長先生、リズさん、ニーフさんの分の飴細工を置いていく。

分けるのは院長先生にお願いする。仕事が終わるまで、待っているのもあれだし、寝ている子もいる。

それに院長先生なら、喧嘩をしないように渡せるはずだ。

ちなみに院長先生は不思議そうに飴細工を見ていた。

やっぱり、食べ物とは思わなかったらしい。

孤児院を後にしたわたしはノアのところに向かう。

ノアのお屋敷に到着するとメイドのララさんに案内され、ノアの部屋に案内される。

「ユナさん、いらっしゃい!」

わたしが部屋に入ると、ノアは嬉しそうに駆け寄ってくる。

部屋にはクマのぬいぐるみが飾られている。その横には絵本が置かれている。

クマグッズコーナーだね。

「今日はどうしたんですか?」

「ちょっとお出かけしていたから、お土産を持ってきたよ」

「お土産ですか?」

わたしは風鈴が入った小箱をノアに渡す。

「ありがとうございます。開けてもいいですか?」

「いいよ。気に入ってくれればいいけど」

「ユナさんからのプレゼントなら、なんでも嬉しいです」

と言ったのに、数十秒後には……

「どうして、クマさんの絵じゃないんですか!」

ノアにプレゼントした風鈴の絵は青い魚の絵が描かれた風鈴だ。

「わたし、くまさんの絵が良かったです。ユナさん、描いてください!」

「無理を言わないで」

とは言ったけど、何も描いていない風鈴があればできるのかな?

ガラスに描けばいいだけだから、できなくはないはずだ。

「それじゃ、ノアはクマじゃないから、いらないんだね」

「いります。我儘を言ってごめんなさい」

わたしが取り上げようとすると、胸に抱え込んで取られないようにする。

「ララ、これを窓に飾ってもらえる」

「かしこまりました」

ララさんは台を持ってきて足場にすると、窓の上のほうに風鈴を取り付ける。

すると、窓から風が吹き込み、チリーン、チリーンと綺麗な音色を奏でる。

「綺麗な音ですね」

「これがクマさんでしたら、最高でした」

やっぱり、ノアをここまでクマ好きにしたのはわたしが原因だよね。

でも、飴細工にはクマがあったので喜んだ。

「ちゃんと、食べるんだよ」

「もったいなくて、食べられません」

「それじゃ、持って帰るよ」

あのクマのグッズコーナーに置かれでもしたら困る。

「ユナさん、意地悪です」

「別に意地悪で言っているわけじゃないよ。お菓子だから、食べないと駄目だよ」

わたしはノアがクマの飴細工を食べるまで、待った。

「美味しかったですけど、クマさんが居なくなってしまいました」

残念そうにするが、食べ物だからそればかりは仕方ない。

「あと、絵本を描いたから、ノアに見てもらおうと思うんだけど」

前に絵本に出してほしいと言っていたので、見せることにする。

「絵本ですか!」

「うん。でも、これはフローラ姫に渡すからあげられないよ。見るだけだよ」

「はい、それでも構いません。でも、新しい絵本も複写するんですよね」

「そのつもりだよ」

孤児院の子供たちに渡すつもりだから、エレローラさんに頼むつもりだ。

「そしたら、1冊ください」

まあ、そう言うよね。

わたしは約束して、先日、フィナと一緒に描いた絵本をノアに渡す。

ノアはパラパラと絵本を捲っていく。

そして、貴族の女の子がでてくるところで手が止まる。

「この女の子はわたしですか?」

「絵本に出してほしいって言っていたからね。ダメだった?」

ノアは首を横に振る。

「嬉しいです。ユナさん、ありがとうございます。女の子と友達になるんですね」

「現実でも、フィナ(女の子)とノア(貴族の女の子)は仲良しだからね」

わたしの言葉にノアは嬉しそうにする。