軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

491 クマさん、温泉に入る

服を脱いだわたしたちはシュリを先頭に脱衣所から洗い場に移動する。

さっきも見たけど広い湯船だね。わたしたち全員が入っても余裕がある。

シュリが今にも温泉に入りたそうにしている。だけど、そんなシュリの腕をフィナが掴む。

「体を洗ってからだよ。こっちにおいで、洗ってあげるから」

フィナがシュリを連れて、洗い場に向かう。それを見ていたルイミンがサクラに声をかける。

「それじゃ、サクラちゃんの体はわたしが洗いますね」

「それでは、お返しにわたしがルイミンさんの体を洗います」

サクラとルイミンが一緒に離れていく。

「う~ん、それじゃ。わたしはカガリ様の体を洗ってあげるっすね」

シノブはカガリさんの脇の下に手を入れると持ち上げて移動する。

「妾を子供扱いするのではない!」

「もちろん、していないっすよ。だから、暴れないでくださいっす」

必然的にわたしは1人残される。

売れ残ったわたしは1人で寂しく、体を洗おうかと思ったら、一人ではなかった。足元に子熊化したくまゆるとくまきゅうが寄り添ってくる。

そうだね。わたしにはくまゆるとくまきゅうがいたね。

わたしはくまゆるとくまきゅうを連れて、洗い場に移動する。くまゆるとくまきゅうの体を洗ってあげることにする。相変わらずのモコモコで石鹸で洗うと、面白いほどに泡が立つ。その様子を見ていたシュリとサクラが声をあげる。

「ああ、わたしもくまきゅうちゃんを洗う!」

「くまきゅう様には何度も背中に乗せていただきました。お礼にわたしにも洗わせてください」

でも、2人はフィナとルイミンに止められる。

「シュリ、先に体を洗ってからだよ」

「サクラちゃんもだよ」

「うぅ、お姉ちゃん、早く洗って」

「ルイミンさん、ごめんなさい」

2人は体を洗ってもらい、お返しにフィナとルイミンの背中を洗ってあげてから、こっちにやってくる。

そして、2人はわたしの横でくまきゅうを洗い始める。もう、洗ったんだけど、くまきゅうはもう一度洗われることになった。くまきゅうも抵抗はせず、素直に洗われる。

「くまきゅうちゃん、モコモコだ~」

「くまきゅう様、いつも背中に乗せてくださってありがとうございます」

2人は楽しそうにくまきゅうを洗う。

くまゆるはのんびりとしていると、ルイミンがやってくる。

「それじゃ、わたしはくまゆるちゃんを洗いますね。今日は背中に乗せてくれてありがとうね。楽しかったです。それとエルフの村のときもありがとうね」

ルイミンもお礼を言いながら、くまゆるの体を洗い始める。くまゆるも二度目の体を洗われることになった。

「ユナお姉ちゃん、背中を洗いますね」

自分の体を洗っているとフィナが背後にやってくる。

それを見たサクラたちが「わたしもユナ様の背中をお洗いします」「わたしも~」「それじゃ、わたしも洗います」

ボッチだったわたしに人が集まり始める。そんなに集まってもわたしの体は一つしかない。

「わたしのほうはいいから、くまゆるとくまきゅうを洗ってあげて。あと、早く温泉に入らないと風邪を引くよ」

くまゆるとくまきゅうをエサにして、皆を引き離す。

一人だと寂しいと思ったが、人が集まると、それはそれで一人になりたいと思ったりするものだね。

そして、くまきゅうとくまゆるを洗い終えた、シュリ、サクラ、ルイミンはくまゆるとくまきゅうを連れて湯船に向かう。ちなみに、カガリさんも少しだけくまゆるを洗っていた。

お礼だったのかな?

「ユナお姉ちゃん、クマさんじゃないよ」

湯船に向かったシュリが声をあげる。

なんのことかと思って、シュリのほうを見ると、シュリはお湯が出ている竹筒の部分を見ている。

ああ、わたしの家のお風呂や孤児院のお風呂のお湯が出る場所はクマの口から出るようになっている。それで、クマじゃないと言っているらしい。

「わたしが作ったわけじゃないからね」

クマを作って、竹筒部分を口に入れればいいだけだ。魔法で簡単につくれるから、今度作ろうかな。今はクマさんパペットがないので魔法が使えない。こういうとき、魔法が使えないのは不便だね。

シュリは温泉が出ている竹筒の近くに入ろうとして、湯に手を入れる。

「熱いよ、これじゃ入れないよ」

「シュリ、一番奥の湯船なら、温度が低いから入れますよ」

サクラは竹筒からお湯が出ている場所から、一番離れた湯船を指す。シュリはサクラに言われた場所に移動して、湯に手を入れる。

「本当だ。熱くない」

どうやら、サクラの言うとおりに温度が低いみたいだ。

シュリは温泉の中に入る。そのあとをサクラ、ルイミン、フィナと続く。

「ふふ、みんなはお子様っすね」

シノブは温度がぬるい場所に入っているシュリたちを見て、笑みを浮かべる。そして、自分が大人ってことを示すかのように竹筒から湯が出ている温度が高い湯船に入る。

「シノブ姉ちゃん、熱くないの?」

「ふふ、このぐらい大丈夫っすよ。鍛えているっすからね」

強がりなのか、本当に大丈夫なのか、シノブは平気そうに湯に浸かっている。

そもそも鍛えるってなんだろう? 筋肉が付けば熱くても耐えられるとか? それとも普通に熱い温泉に慣れているってことなのかな?

「妾はぬるいほうに行くかのう」

カガリさんはシノブとシュリたちのほうを見比べて、シュリたちが入っている湯船のほうに向かう。

「カガリ様はお子さまっすね」

「妾は熱いのは苦手なんじゃ」

わたし? もちろん、温度が低いほうに入るよ。熱い風呂が得意ってわけでもないし、個人的には温度が低いお風呂に長く入るタイプだ。

わたしが温度が低いほうに入ると必然的にくまゆるとくまきゅうも付いてくる。

シノブ以外全員が、温度が低いほうの温泉に入ることになった。

「うぅ、寂しいっす」

「こっちは、お子さまの風呂じゃ。大人はこっちにくるんじゃないぞ」

「酷いっす」

先程、お子さまとバカにされたことを根に持っているみたいだ。

シノブが頬を膨らませると、みんなは笑みを浮かべる。

「それにしても綺麗な星空ですね」

露天風呂から見える夜空は満天の星が広がっていた。

天気が良くてよかった。

「うん、とっても綺麗。サクラちゃん、呼んでくれてありがとうね」

「喜んでもらえてうれしいです」

都会の夜景も綺麗だけど、都会では満天の星を見ることはできない。でも、ここには地上に一つも光がないため、星空が綺麗に見える。そして、地球と同じように月も見える。その月が湖に映り、それも幻想的で綺麗だ。

みんなもお風呂の 縁(ふち) に寄りかかりながら、外を眺めている。

温泉に入りながら、星空を見るなんて贅沢だね。お風呂のときはこっちに来るのもいいかもね。

みんな、足を伸ばし、星空を眺めている。

「あっ、流れ星です」

サクラが声に出す。

全員が夜空を見ていたので、全員が流れ星を見ることができた。

「わたしたちの国では、流れ星を見ると、幸運をもたらしてくれるという言い伝えがあるんです」

「そうなんですか?」

「はい、ですが、わたしの幸運は訪れています。ユナ様にお会いでき、みんなに会えたことです」

サクラは恥ずかしがることもなく言う。

「うん、わたしもユナさんに会えたことかな」

「はい、わたしもユナお姉ちゃんに会えたことです」

「わたしも~」

サクラが言うとルイミン、フィナ、シュリと続く。

「そうじゃな、嬢ちゃんがいなければ、ムムルートの奴に会えることはなかった。会えなければ、どうなっていたか分からなかった。幸運じゃな」

「そうっすね。ユナに会えなかったら、この国はどうなっていたんすかね」

ここでわたしも、「わたしの幸運もみんなに会えたことだよ」って、恥ずかしいセリフは言えなかった。だって、恥ずかしいよ。言えるわけがない。

「ふふ、これでは流れ星より、ユナ様にお会いできることが幸運をもたらさせてくれるみたいですね」

「幸運のクマさん!」

シュリが叫ぶ。

「確かに幸運のクマさんですね」

みんなが笑い出す。

「ちなみに、狐も幸運だぞ」

カガリさんは負けじと言う。

たしかに元の世界でも、お稲荷って穀物や農業の神様ってことで、祀られているぐらいだからね。はっきりと言って、クマより狐のほうが上だ。そもそもクマを祀っている話なんて聞いたことなんてない。

この世界にクマ神なんているのかな。わたしはなんとなく、気持ち良さそうに湯船に浸かっているくまゆるとくまきゅうを見る。……神様かな。

それから、温泉に入りながら星空を楽しんだわたしたちは温泉を出る。

わたしは体に大きなタオルを巻き付けると、クマさんパペットからドライヤーを二つ取り出し、一つをフィナに渡す。

そして、わたしは備え付けの椅子を二つ用意し、片方の椅子に座る。そして、くまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「今日はどっちが先だっけ?」

わたしはくまゆるとくまきゅうの毛を乾かすとき、交互に乾かしてあげている。

わたしが尋ねると、くまゆるが近寄ってくる。

「今日はくまゆるだね」

わたしはもう一つの椅子の上にくまゆるを乗せて、タオルで拭き、ドライヤーを出して、くまゆるを乾かしていく。

「それはなんすか?」

「火の魔石と風の魔石を使った髪を乾かす魔道具だよ」

わたしはくまゆるに吹きかけている温風をシノブに向ける。

「温かいっす」

「それで髪を乾かすんだよ」

わたしはドライヤーの風をくまゆるに戻し、毛を乾かす。くまゆるは気持ち良さそうにする。

「便利そうじゃな。妾にも貸してくれ」

わたしはもう一つドライヤーを出す。

「三つしかないから、代わりばんこに使ってね」

シノブが受け取り、サクラとカガリさんの髪を乾かしていく。サクラの髪は黒い長い髪だ。カガリさんは金色の長い髪だ。シノブの髪も束ねてあっただけで、解くと長い髪だ。これは乾かすのに時間がかかりそうだね。

フィナとシュリは首にかかるぐらいで、短い。ルイミンの薄緑色の髪は長い。

フィナ、シュリ、ルイミンと交互に乾かしている。

わたしはみんなの様子を見ながら、くまゆるの毛を乾かしてあげる。

「はい、終わったよ。今度はくまきゅうだね」

くまゆるを椅子から下ろし、くまきゅうを椅子に乗せて、くまきゅうの毛を乾かしてあげる。

シュリもサクラもやりたそうにしていたが、2人の髪の毛が乾く前に、終わらせてしまった。

最後に自分の髪の毛を乾かし、着ぐるみを着る。

「ユナ様、その格好は?」

サクラに言われて気づく。

わたしはいつもの癖で白クマに着替えてしまった。

「くまきゅう様と同じ白いクマさんなんですね」

なにか、温かい眼差しで言われた。