軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

483 クマさん、和の国に戻ってくる

わたしがクリモニアに帰ってきてから数日がたった。

カガリさんは相変わらず、寝ては食べての繰り返しだ。

初めはクリモニアで騒がれるかもと思ったりもしたが、静かなものだ。食事も「お腹が減ったのじゃ」と言うけど、用意してあげれば文句を言わずに食べる。そして、寝てしまう。その繰り返しだ。

カガリさんが寝る中、わたしはお店や孤児院、ティルミナさんに顔を出したりする。

ティルミナさんに「戻ってきました」と言ったら、「どこかに行っていたの?」と言われた。

実際は一週間ほどだ。

タールグイで和の国を見つけ、温泉に入り。

畳を買ったり、冒険者ギルドに行ったりして、かまいたちの討伐の依頼を受けたりした。

それから、シノブの話を聞いて、敵討ちのジュウベイさんとの戦い。

そのあとはサクラに会い、カガリさんに会い、大蛇との戦い。

濃厚な数日間だった。

わたしが和の国で頑張っていた間も、お店はいつもどおりの日常の姿が流れていた。お店では子供たちはクマの姿で働き、孤児院ではコケッコウのお世話をする子供たち。

やっぱり、平和が一番だね。

そして、大蛇を倒したおかげかレベルが久しぶりに上がり、クマフォンのスキルがバージョンアップした。

クマフォンが糸電話のようになった。

そう言うとバージョンが下がったような気がするが、クマフォンを持っている者同士が話すことができるようになったのだ。

つまり、クリモニアにいるわたし、エルフの村にいるルイミン、和の国にいるサクラが同時に会話をできるようになった。

わたしが中継アンテナみたいな役目をして、会話ができるみたいだ。結局はわたしがいないと会話ができないので、意味がないような気がするけど、直接話せるので、2人は嬉しそうに話をしていた。

あと、役に立つときが来るのかわからない新しいスキルを覚えた。

クマの水中遊泳。

まだ、確かめていないけど、クマの着ぐるみの格好で水の中を泳ぐことができるらしい。

これは今後、水中の戦いがあるって意味じゃないよね。

とりあえずは水辺の近くにはいかないようにする。フラグはへし折るものだ。

でも、一度は確かめたいね。

そんなこんなで数日が過ぎた日、サクラから和の国に来てほしいと連絡があった。

カガリさんにどうするか尋ねると、「寝て、食べてたから大丈夫じゃ」と言っていたけど、いまだに幼女のままだ。

本当はムムルートさんにも来てほしかったそうだが、ムムルートさんには断られた。サクラはルイミンと会えると楽しみにしていたけど、今回はルイミンも遠慮した。でも、遊びに行く約束はしていた。

翌日、わたしはカガリさんと一緒に和の国に戻ってくる。

「扉をくぐるだけで、和の国とは信じられないのう。もしかして、ずっと和の国にいたのではないかと思ってしまうわ」

この数日間、カガリさんは体の回復に専念するため、家の外には一度も出ていない。でも、窓から外を見ているので、和の国でないことぐらいは理解している。

クマハウスから外に出ると、サクラの姿があった。

「お待ちしていました」

サクラだけでなく、シノブとスオウ王の姿もある。

サクラの顔色はいい。それに引き換え、シノブとスオウ王の顔色は悪い。

「カガリ様のお姿は戻られていないのですね」

サクラは小さい姿のカガリを見る。

「魔力や体力は戻っているんじゃが、どうしてか戻らん。クマの呪いかもしれぬ」

「勝手に人の呪いにしないでほしいんだけど」

「誰も、お主の呪いとは言っていないじゃろう。もしかして、お主は自分のことをクマと思っておるのか?」

「……!」

一瞬、言葉がでなくなる。

自分のことをクマと無意識に認識していた。否定はしないけど、肯定もしたくない。

わたしは言い返すことにする。

「それにそれを言うなら、狐の呪いでしょう。大狐になったあとに子供になったんだから」

「うぅ」

逆に今度はカガリさんが言い返せなくなる。

強い力を得るのは副作用があるものだ。わたしはクマの着ぐるみという外見を手に入れる代わりに強い力を得た。それと同時に羞恥心を捨てることになった。いや、全部は捨てていない。まだ、残っているはず。残っているよね?

でも、前ほど、恥ずかしくなくなっているのは事実だ。

これはまずいかもしれない。

「そろそろいいか。護衛を船に置いてきたから長居はできない。できれば話をしたい」

スオウ王はわたしたちの会話を打ち切るように話に入ってくる。

なんでも、わたしに会うため、護衛を船に置いてきたそうだ。

「それで、わたしがサクラ様の護衛と兼務することになったっす。スオウ王がわたしに頼むから、護衛の方に睨まれたっす」

「ユナのことを知っているのはお前しかいないんだから、仕方ないだろう。大蛇がいた島に1人で来ることはできないんだから」

どうやら、わたしが無理を言ってしまったらしい。

サクラから、話をどこでするか訪ねられた。お城でもサクラが住むお屋敷でも、準備をすると言われたけど、いろいろと考えた結果、島にあるクマハウスで話をすることになった。

普通に考えれば分かることだ。一国の王を大蛇がいた島に1人で行かせるとは思わない。

時間もないので、わたしは話を聞くため、クマハウスの中に全員を招き入れる。

「それで、どうなったのじゃ?」

「前に話した通りに、俺が集めた女性たちによって大蛇は討伐されたことになった。ユナのことを広める者もいない。話したとしても誰も信じないからな。それに前回言った通りに、メリットがない。だから、ユナが討伐に関わったことを知っていても、広まることはない」

よかった。これで和の国を歩いていても、大蛇を倒した英雄と祭り上げられることはない。

ミリーラの町じゃ、みんな知っているから困る。

「だが、カガリについては少し広まっている」

「なんじゃと!?」

「カガリがこの島にいることは結構な数の者に知られている」

まあ、何百年もいれば知られているよね。

男除けの結界まで張っているんだから。

「だから、必然的に大蛇を倒したのはカガリを中心とした女性たちとなっている」

「まて、倒したのはクマの嬢ちゃんだぞ。妾がしたことは風の大蛇を倒したぐらいじゃ」

「分かっている。でも大蛇という、大きな魔物の討伐となると英雄が必要になる」

「それが妾だと言うのか?」

「そうだ。カガリは大蛇の封印を守ってきた守り神とも言われている。実際にクマの嬢ちゃんが倒したと言ったとしても、誰も信じない。俺の言葉だとしてもな」

うん、分かる。

カガリさんのことを知っている者がいれば、カガリさんを英雄視する。どこの誰かも分からないクマの着ぐるみを着た女の子を英雄視はしない。もし、スオウ王がわたしを連れて、「この者が大蛇を討伐してくれた」と言ったとしても信じないと思う。

だけど、カガリさんは違う。

それなりの人物なら、知っているだろうし、一般人も噂程度には知っているかもしれない。

実際に島は男除けの結界が張られ、お世話をする人も島に行っている。そうなれば、船を使う。船を使えば、船乗りに知られる。カガリさんの顔を知らなくても、存在は知られていてもおかしくはない。

「冗談じゃないぞ」

「それで、カガリに尋ねる」

「このまま、国を救った英雄になるか。死んだことにするか決めてほしい」

「死んだことにするじゃと?」

「別に死んだからと言って、国から追い出すつもりはない。カガリには、何代にも渡って国を守ってくれた。これからもカガリのことは守っていくつもりだ。ただ、落ち着きたいという気持ちも知っている。城に部屋を用意してもいい。他の場所に家を用意することもできる。この島でもいいが、船の行き来があれば、カガリの存在を知られるかもしれない。俺ができるのはお前が望む未来を作ってやることだ。英雄になりたいなら英雄に。平穏を望むなら平穏な未来を」

スオウ王は真剣な表情でカガリさんに選択肢を並べる。

「考えるまでもない。死んだことにしてくれ。嬢ちゃんのおかげで大蛇はいなくなった。妾の存在は必要ないじゃろう。それに大蛇との戦いで、このような姿になったことは誰も知らぬ。この格好なら、妾のことは気づかぬだろう」

「スズランはどうする? お前の世話をしてきた者には」

「スズランには本当のことを話してもいい。あやつら親子には世話になってきたからのう。悲しませる必要もない。それに話したりもしないじゃろう」

「わかった。が、会って安心させてやってくれ。カガリの安否を尋ねられて誤魔化している」

「わかった」

「それで、死んだことにするが、どこに住む?」

「今は急がなくてもよい。嬢ちゃんのところで世話になっておるからな。ゆっくりと考えさせてもらう」

それって、しばらくはわたしのところにいるってこと?

カガリさんがわたしの代わりに大蛇を倒したことになった。しかも、死んだことにまで。そんなカガリさんに強く文句は言えないし、追い出すこともできない。

「それで、ユナ。おまえさんに尋ねたいことがある。大蛇はカガリを中心として討伐したことになるが、あのクマはなんだ? あのクマのせいで、変な噂が広まりそうだ。今は箝口令を敷いているが」

「あのクマ?」

なんのことを言っているのか分からないんだけど。

「大蛇が倒された場所にクマの形をした岩が転がっていたぞ。あれはなんだ?」

「クマの形をした岩……」

徐々に思い出す。

「あぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~」

思い出した。大蛇の頭を破壊するときに作ったクマの岩だ。